ビートはホンダのオープン型軽自動車。「バージョンZ」はその特別仕様車である。
概要
1991年5月登場のホンダビート。当時はバブル全盛期に発売され、同時期にNSXが開発・販売されたこともあり「ミニNSX」と呼ぶ場合もある。
エクステリアはスポーツカーらしい低い全高に、量産車として世界初のミッドシップフルオープンモノコックボディを採用。ヘッドライトからリアフェンダーまで一直線のようなラインでつなげ、ミッドシップを主張する「大型エアインテーク」を採用。さらにフロントピラーと幌をブラックに統一することで、ボディカラーとの対比で鮮やかなコンストラストとし、その流れるようなボディラインを強調するデザインともしている。
インテリアはバイクのような特徴的なスピードメーターに、インパネ上部と下部をツートンカラーで統一。デザインは乗る人を包み込むようなスポーツカーらしいデザインとした。さらにシート表皮はゼブラカラーを施したバケットシートを採用し、フロントからリアまで続くセンターコンソールの採用などで軽自動車でありながら本格的なスポーツカーの雰囲気をもたせている。
また、ビートでは利便性を向上させるため幌は1人でも簡単に開閉可能な軽量タイプとし、耐候性に優れたマニュアル式ソフトトップを採用した。
エンジンは同年代のアクティトラックやトゥデイなどでも採用されていた「E07A型直列3気筒SOHC自然吸気エンジン」をベースにビート用にチューニング。
F1エンジンの技術を応用した「多連スロットル」、「燃料噴射制御マップ切り換え方式」を採用したエンジンコントロールの採用、エアクリーナーの大型化、専用インテークマニホールドなどを採用するMTRECエンジンにより、自然吸気エンジンながら軽自動車自主規制一杯の64馬力を発生する高回転エンジンとなった。
これに5MTのみを組み合わせ、エンジンを運転席すぐ後ろに配置し後輪を駆動するMR方式を採用。前後重量配分も43:57とし、サスペンションはフロントにストラット、リアにデュアルリンクストラットの4輪独立懸架を採用し、MRを最大限に引き出すジオメトリーを設定。
また、タイヤサイズも前に13インチ、後ろに14インチのサイズ違いを採用し旋回性能や直進安定性を向上させた。そして軽自動車では初となる4輪ディスクブレーキを採用し優れた制動性能を与えている。
ホンダ・ビートは高回転型自然吸気エンジンとMRレイアウトの採用で軽自動車でありながら回して楽しい本格的なライトウェイトスポーツカーを実現。コストが優先される軽自動車において、これだけの豪華なスポーツカーとしての性能を与えたのはまさにバブル期の象徴ともいうべきモデルであった。
アメリカ25年ルール解禁でアメリカ輸出がスタート。ビートの人気が上昇&高騰中
1991年に初登場したビートは最新モデル1996年といずれも25年以上も前となる。昨今は日本でしか販売されなかった日本車(JDM:Japanese domestic market)が日本のアニメやゲーム、ワイルドスピードなどの映画の影響でアメリカで人気となっており、その筆頭としてGT-Rの高騰がある。
軽自動車でもカプチーノやビート、AZ-1など軽自動車ABCと呼ばれるスポーツカータイプの軽自動車は2016年から初期型の輸出が行われており、かつ現地でも人気になりつつある。元々ビートの中古価格はあまり下がらず手堅く推移していたが、その影響もあり価格は年々上昇傾向にある。そして国内で販売されているビートの中古相場も上昇傾向が続いている。
アメリカでは絶対に見かけない日本限定の軽自動車。小さくて可愛いのに走りは本格派なカプチーノやビート、AZ-1にアメリカの車好きマニアから人気を得つつあるのだ。そのためビートも今後どんどん値段が上がっていくことが予想される。少なくとも今より安くなることは無いと思う。
ビート特別仕様車、バージョンZの特徴とノーマルとの違い
そのビートのモデル終盤である1993年12月に追加された特別仕様車がこの「バージョンZ」である。
ビートの特別仕様車には800台限定のバージョンF、500台限定のバージョンCなどがあるがこれはその第3弾で最終版となる。
バージョンZではインテリアにブラックタイプのスピードメーターを特別装備し、専用ボディカラーとして濃い緑色の「エバーグレイドグリーンメタリック」を設定。
エクステリアではマッドガード、リアスポイラー、エキパイフィニッシャー等を標準装備する特別仕様車となっている(後にこれらは標準化しベースグレードとなる)。
エクステリア
フロントデザイン。このあたりの変更点は特に無い。バージョンZでは専用色としてダークグリーン系の「エバーグレイドグリーンメタリック」を設定。ビートの一般的なイメージは明るいイエローかレッドなのでこのダークグリーンはバージョンZを見分けるポイントでもある。ベースグレードと比較すると渋いカラーで印象は異なって見える。
ボンネット内部の様子。
足元はビート純正のアルミホイールを標準装備。フロントが13インチ、リアが14インチの異径サイズとなる。
リア。トランク部分にはバージョンZの標準装備としてLEDハイマウントストップランプ付きリアスポイラー。マフラー部にはエキパイフィニッシャーを装着。
バージョンZ専用装備としてリアバンパー下部の両サイドにマッドガードを装着。
エンジン・機能
エンジンはE07A型3気筒SOHC自然吸気エンジンをリアに搭載。NAながらMTRECにより最高出力は64ps(47kW)/8100rpmを発生。トルクは6.1kg・m(59.8N・m)/7000rpm。トランスミッションは5MTのみで駆動方式はMR(ミッドシップレイアウト)となる。
安全装備関連ではABSは非設定で、エアバッグも運転席のみオプション設定となっていた。
インテリア
インパネ。
ステアリング。
バージョンZではスピードメーターがブラック化された(ノーマルはホワイトタイプ)。
フロントシートはセミバケットシートタイプ。ただしサポートはあまり無く、ライトな仕様。
幌クローズ時。
トランクルームは一応あるがかなり狭い。
まとめ
ビートのバージョンZとは専用色のエバーグレイドグリーンメタリックによる渋い外観とブラックスピードメーター、リアスポイラー、マッドガードなどが特徴のモデルである。
鮮やかなカラーのノーマルビートと異なり落ち着いた印象があるため、派手な色が苦手な人に嬉しい仕様となっている。軽ABCトリオ(AZ-1、ビート、カプチーノ)の中では一番安価であるが、それでも20年落ち近い軽自動車としてはかなり高い値が付いており気軽に買いづらいモデルだが、それを許容できてかつ完全な趣味車が目的であれば面白い1台である。
車内がとても狭くて絶対的なスピードは遅く、急な登り坂で失速するなど欠点はあるがフィーリングは独特のものがあり、それがビート好きにはたまらない部分である。特に特別仕様のエバーグレイドグリーンメタリック色もバージョンZの魅力的なポイントである。
なお、上述の通り近年ではアメリカでも人気が出つつあり価格も上昇傾向。そのため今後は極端に上がらずとも値段が下がることも考えられず欲しい人は今のうちに買ってしまうことを強くオススメする。
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