パジェロミニは三菱のSUV(RV)型の軽自動車。本稿では2代目・H53AおよびH58Aの2008年9月マイナーチェンジ~2013年1月までを後期型(最終型)とし、これを扱う。
出典:三菱認定中古車
- 三菱 2代目・パジェロミニとは?
- 2代目後期型(最終型)パジェロミニの特徴と前期、中期との違い
- 2代目後期型パジェロミニのグレード XR、ZR、VR、ナビエディション、エクシード、特別仕様車の違いなど
- パジェロミニついに復活か?MNKVより2026年発売予定
- パジェロミニ後継モデルはeKクロスをベースで登場?
- 2代目後期パジェロミニのエクステリア(外装)
- エンジン・機能装備・安全装備など
- パジェロミニのMTモデルは難しい?楽しい?
- 2代目パジェロミニH53AとH58Aの違い
- 2代目パジェロミニ(H53/H58)の持病について
- 2代目パジェロミニ(H53/H58)の燃費改善について
- 2代目後期パジェロミニのインテリア(内装)
- 2代目後期型パジェロミニのまとめ
三菱 2代目・パジェロミニとは?
パジェロミニは「パジェロ」と名がつくことから想像できるように、クロカンであるパジェロの弟分としてデビューした。
1994年に初代がデビューし、1994年にジムニーに対向する形で登場した初代・パジェロミニ。そのパジェロミニは1998年の軽自動車新規格を受けて同年の10月に2代目へとフルモデルチェンジした。
2代目ではそれまでの特徴だった丸目ヘッドライトを廃止し、オーソドックスな角型ヘッドライトを採用。新規格に対応したことでボディ形状は全長で100mm、全幅で80mm拡大するもののスタイリング(パジェロスタイル)はほぼ先代を踏襲。顔つき以外は先代とほぼ同じ外観となっている。
また、モノコック高剛性ボディにクラッシャブルボディ構造とブレーキアシスト機構の採用で、当時の軽自動車としては優れた衝突安全性を誇っていた。
エンジンは新開発となる4A30型4気筒SOHC16バルブ新リーンバーンMVVエンジンと4A30型4気筒DOHC20バルブインタークーラーターボエンジンを搭載。また、先代のオートマは3ATだったが、2代目で電子制御式4ATに置換された。
(※ただし排ガス規制に引っかかりこの4気筒DOHC20バルブツインスクロールターボは2002年9月のマイナーチェンジで廃止、代わりに自然吸気エンジンをターボ化した4気筒SOHC16バルブインタークーラーターボに切り替わった。)
デビュー当初からパジェロミニはジムニーに対して「シティユース」というキャラクターを出していたがこの2代目ではそれが顕著だった。
ベースモデルに対してより個性的な顔をもたせたり(パジェロミニ・デューク)、初代を彷彿とさせる丸目を用意したり(パジェロミニ・リンクス)。
はたまたレカロシートを装備したスポーティーなモデルを追加したり(パジェロミニ VR-S)とまさにムーヴとムーヴカスタムの関係のようなグレード展開をSUVで行っていた。
基本性能は変わらないものの見た目をアレンジし、個性的なモデルを投入することでジムニーに対抗していた。
2代目後期型(最終型)パジェロミニの特徴と前期、中期との違い
2代目パジェロミニ・後期型の改良点
その2代目パジェロミニは2008年9月にマイナーチェンジを行い後期型(最終型)となった。

2代目後期型パジェロミニ(フロント)

2代目中期型パジェロミニ(フロント)
2代目最後のマイナーチェンジではフロントのデザインが一新されたほか、リアのコンビランプを前期型までのデザインに変更。

2代目後期型パジェロミニ(リア)

中期型パジェロミニ(リア)
タイヤの位置も中央に移動し、リアナンバープレートの位置がリアゲートからリアバンパー左側へ移動。中期型からデザイン変更し、テールランプの位置が元に戻った。

2代目中期型パジェロミニ(インテリア)
内装ではインパネとスピードメーター、シート表皮を刷新。メカニズムでもAT仕様車では減速時のロックアップ機構を追加することで燃費を若干アップさせた。
全体的にはちょうど同時期の親パジェロそっくりの顔つきとなり、パジェロから見ると小さくしたような可愛さを持ち、他の軽自動車から比べるとSUVらしい力強さを併せ持つ良いデザインに仕上がっている。
ライバルによくスズキのジムニーがあげられるが、両者の性格は異なり本格的なオフロードであるジムニーに対し、パジェロミニはシティユースをメインとした車で街乗り(オンロード)メインの車となっている。
かつてはそれを象徴するグレード構成だったが、最後のモデルではターボ系とNA系に純正ナビを足したグレードのみとなった。レカロシートを装備したスポーツモデルの「VR-S」、個性的なフロントデザインの「デューク」、4灯式ヘッドライトの「リンクス」は廃止されている。
2代目パジェロミニの生産終了とその理由、ジムニーの大ヒット
2代目パジェロミニは後期型マイナーチェンジ後から約4年後の2012年6月に生産を終了した。その理由としては
・販売台数が最盛期の1/10に落ち込んでいた
・独自プラットフォームのためコスト削減が難しく整理車種対象となった
・2012年9月以降に適用の「歩行者頭部保護基準」に対応できなかった
などが要因とされている。
パジェロミニはFRベースの4WDゆえにFFベースの軽自動車とは部品の共有化が難しく、安く作って利益を上げる必要がある軽自動車としては高コストな部分や、そこからお金をかけて改良し保安基準に対応させたとしてもエコカー全盛期だった当時の三菱としては採算が取れないと判断したものと思う。
ただ、結果的にパジェロミニがラインナップから姿を消しジムニーが4代目で原点回帰なデザインと硬派なクロカン性能で大ヒットしたことをみると、当時の三菱の判断は大きな間違いであったと言わざるをえない。
2代目後期型パジェロミニのグレード XR、ZR、VR、ナビエディション、エクシード、特別仕様車の違いなど
2代目後期型パジェロミニの基本グレードは、自然吸気エンジン・エントリー2駆仕様「XR」、自然吸気エンジンエントリー+ナビ「ナビエディションXR」。
ターボ仕様はエントリー・ターボ「ZR」、上級ターボ「VR」、上級ターボ+ナビ「ナビエディションVR」、最上級ターボ仕様「エクシード」の計6種類。
これ以外に後期モデルは特別仕様車に「ホワイトパールセレクト」、「リミテッド」、「プレミアムセレクション」、「プレミアムセレクションファイナルアニバーサリー」の4種類があった。
なお、中期型までに設定されていた自然吸気エンジン&4WD仕様の組み合わせは後期モデルで廃止されている。
XRグレード
XRグレードは自然吸気エンジン専用グレードで、一番価格が安かったグレード(※パジェロミニ・リミテッドを除く)。
ボンネットにターボ用のエアインテークが無いのが特徴で、後期モデル唯一のFR専用グレードでもあった。
出典:三菱認定中古車
装備面ではフォグランプ、EBD付きABS、ルーフスポイラーがオプション設定。ボディカラーは豊富でVRと同じ2トーンカラーや3ウェイ2トーンカラー(※一部オプションカラー)が選択可能だった。
15インチアルミホイールが標準装備でミッションは4ATのみ。駆動方式も2WDのみとなる。
見た目はほぼVRと同じで、ターボが付いて無いグレードという見分け方もできる。
XRナビエディション
XRナビエディションはXRグレードにナビゲーションシステム(三菱マルチエンターテイメントシステム)を標準装備した豪華グレード。
ZRグレード
ZRグレードはターボ仕様であるものの、装備を簡略化しVRよりも価格を安くしたターボ廉価グレード。
出典:三菱認定中古車
外装では非メッキグリルに樹脂タイプ(非塗装)の手動ミラー、樹脂タイプのアウタードアハンドル、スチールホイールで簡素な外観に。フォグランプやルーフスポイラーのオプション設定も無し。
ボディカラーもXRやVRとは異なりモノトーンカラー4色のみの設定。安全装備ではEBD付きABSを標準装備しつつ、トータルで価格を抑えていた。
トランスミッションには5MTと4ATの2種類を設定し、4WDのみとなる。
VRグレード
VRグレードはターボ仕様のエントリーグレード。ZRで簡略化された装備が豪華仕様となり見た目が良くなる。
出典:三菱認定中古車
外観はボディカラー同色電動格納ミラー、カラーアウタードアハンドル、15インチアルミホイール。
装備面ではEBD付きABSを標準装備し、フォグランプ、ルーフスポイラーがオプション設定。
ボディカラーは豊富でXRと同じ2トーンカラーや3ウェイ2トーンカラー(※一部オプションカラー)が選択可能だった。
トランスミッションには5MTと4ATの2種類を設定し、4WDのみとなる。
VRナビエディション
VRナビエディションはVRグレードにナビゲーションシステム(三菱マルチエンターテイメントシステム)を標準装備した豪華グレード。
XRナビエディションのターボ仕様的な位置づけ。
エクシード
エクシードは最上級ターボ仕様グレード。VRグレードに対して本革巻きステアリングや特別仕様車で好評だった特徴的な3ウエイ2トーンボディカラーのみを設定し上級感や個性を強調。
出典:三菱認定中古車
機能装備・快適装備としてルーフレールや撥水ドアガラス、親水ドアミラー、フォグランプ、運転席シートヒーターなどを標準装備としノーマルモデルよりも上級な雰囲気と便利機能が与えられている。
トランスミッションは4ATのみで、4WDのみとなる。

特別仕様車 ホワイトパールセレクト
2009年5月設定の特別仕様車。オプション設定のホワイトパール色を専用ボディカラーとし、フロントバンパーやリア、スペアタイヤケースもパールホワイトで統一してプレミアム感を演出した特別モデル。
パールホワイトセレクトは2代目の前期型にもあった特別仕様車、「パールセレクト」の後期バージョンに相当する特別仕様車。
「VR」をベースに外装ではボディ、フロントオーバーライダー部分、リアバンパーセンター部分、リアのスペアタイヤケースをホワイトパールカラーで統一。
フロントフォグランプも標準装備としそれまでのSUV感のあった塗り分け部分をホワイトパール一色にして上級感を演出。
内装でも本革巻ステアリングホイール、寒冷地仕様(運転席シートヒーター、ヒーテッドドアミラー含む)も標準装備として機能性とプレミアム感を与えつつお買い得な特別仕様車。
トランスミッションは4ATのみで、4WDのみとなる。

特別仕様車 リミテッド
パジェロミニ・リミテッド(H53A)の特徴と装備、違い
2009年8月設定の特別仕様車。新車価格100万円を切るバーゲンプライスだった特別モデル。
リミテッドでは自然吸気エンジン&2WD、4AT仕様の最廉価グレードであるXRをベースにオーディオとスピーカー、バニティミラーを非装備化(オプション設定)。電動格納ミラーを手動式に変更するなどして価格を抑えた。
その一方でフロント&リヤ間欠ワイパーや、マルチモードキーレスエントリーシステムなどの便利装備はそのままとしベース車よりも約23万円安くしお買い得とした特別仕様車。

リミテッドが発売された背景…
こんなにも安い特別仕様車が出てきた背景は時代にある。
時はリーマンショックの影響で新車販売が落ち込んだ時代。装備を簡略化しびっくりするぐらい衝撃的なバーゲンプライスで販売促進を狙う特別仕様車だった。
ちなみに同じような理由で、アイ、ekワゴン、トッポにもバーゲンプライスなリミテッド仕様が発売された。
特別仕様車 プレミアムセレクション
2010年12月設定の特別仕様車。上質な本革&ファブリックシートやリアビューモニター、撥水ドアガラスなどを与えた特別モデル。
出典:三菱認定中古車
プレミアムセレクションではエクステリアはベースモデル(VR)と同じだが、機能装備でリアビューモニターと撥水ドアガラスを標準装備。
インテリアではプレミアムセレクション専用の本革&ファブリックシートと本革巻きステアリングを与え上質とした特別モデル。
トランスミッションは4ATのみで、4WDのみとなる。

特別仕様車 プレミアムセレクションファイナルアニバーサリー
20012年3月設定の特別仕様車。2代目パジェロミニ生産終了前に設定された長年の感謝を込めた特別仕様車。
「プレミアムセレクション ファイナルアニバーサーリー」では先に発売されていた上級な特別仕様車、「プレミアムセレクション」をベースにさらに装備の充実化をはかったモデル。
プレミアムセレクションファイナルアニバーサリーでは外装ではフォグランプ、撥水ドアガラス、親水ドアミラー、メッキタイプのドアミラーを標準装備。このほかルーフレールをシルバー塗装。
内装ではブラウン色の専用本革&スエード調ファブリック表皮を標準装備。ほかに本革巻きステアリング、運転席シートヒーターを標準装備。
便利装備としてはリアビューカメラ付きバックミラーを標準装備する特別仕様車。
トランスミッションは4ATのみで、4WDのみとなる。

パジェロミニついに復活か?MNKVより2026年発売予定
2013年を最後に生産終了で絶版となっている三菱・パジェロミニ。
数年前から後継モデルの新型パジェロミニの噂がチラホラ飛び出し、出ては消え、出ては消えを繰り返していたが、ベストカー2022年6月号でかなり確証が高い情報が出てきた。
これによれば三菱と日産の合弁会社、MNKVより新型パジェロミニの開発のGOサインが出て、開発中とのこと。
エンジンもガソリン仕様とガソリン+モーターのハイブリッド、モーターのみのピュアEVの3種類が計画されており、ジムニーに対抗すべく開発に力が入っている模様。新世代パジェロミニに期待したいところ。
特にライバルだったジムニーが予想以上の売れ行きで、雪国以外でも需要がある点や自社のパジェロミニユーザーが乗り換えでジムニーや他のモデルに流れていることを考えると、いつ復活してもおかくしくない状況にある。
開発は三菱が主導で、日産が加わる形とのことで当然ながら日産仕様のパジェロミニも登場するはず。その時はかつてのキックスとはならないものの、日産バージョンも楽しみである。
また、新型パジェロミニが登場すればスズキ側もこれを意識するはずで、改良や特別仕様車の発売など切磋琢磨の好循環が生まれる。ユーザー側にはとても嬉しいパジェロミニの復活となりそうだ。
※その後新型パジェロミニのニュースは流れ、とりあえずeKクロススペースをベースに改良したデリカミニが登場した

さらにその後の某クルマ雑誌の続報で、今度はeKシリーズをベースとしたパジェロミニのが2025年に登場するとの情報が出た。実現すればスズキ・ハスラーやダイハツ・タフトを強く意識したFFベースの4人乗りモデルとしての再登場が噂されている。
初代や2代目とは性格が全く異なる街乗りに便利なクロスオーバー系になりそうだが、雪国などでは大雪やわだち道に対してハスラーでもかなり走破性があるので、パジェロミニが得意だった林道程度であれば問題なく走破できるものと思う。
特にデリカミニで実績のあるビスカスカップリングを電子制御で常時4WD化した独自の制御システムや、グリップコントロール、ヒルディセントコントロールなど電子制御を搭載し、EV化や運転アシストのマイパロットなど、最新装備が満載となることが予測される。
パジェロミニ後継モデルはeKクロスをベースで登場?
デリカミニが発表されたことでパジェロミニ復活は流れてしまったが、ここにきて再度パジェロミニが復活する噂が出ている。
この話ではeKシリーズのプラットフォームをベースに最低地上高を高め、大径タイヤを履くクロスオーバーSUVとしての登場とされている。
この手のモデルはスズキ・ハスラーが絶好調で、これに負けじとダイハツ・タフトも登場するなど人気が続いている。


2代目と同じく本格的なSUVモデルとなるとボディ構造からまったくの新設計となり、開発費や生産コストが上昇するうえに、そこまで売れるかも不透明。
そこでeKシリーズのプラットフォームを流用し、4ドア化することで生産コストや開発費、開発時間を削減し、室内空間を広く取り使い勝手を向上させた2代目までの硬派なモデルとは決別したハスラーやタフトなどに対抗できるよりライトSUV(クロスオーバーSUV)で登場すると見られている。

eKクロス スペースのマイナーチェンジで誕生したデリカミニが好調なことこからも、eKクロスベースのパジェロミニの話はかなり有力視されている。
2代目後期パジェロミニのエクステリア(外装)
フロント
出典:三菱認定中古車
フロントデザイン。後期型ではヘッドライトとグリル。バンパーのデザインを刷新した。ヘッドライトは同年代のパジェロのような異型角型に変更され、グリルもメッキライン2本を太くした大型のものとなった。
出典:三菱認定中古車
加えてバンパーもヘッドライト同様にパジェロのデザインを取り入れひと目で「パジェロミニ」であることがわかるような顔つきとなった。
2代目の中では前期や中期よりもスタイリッシュになり、上品さもプラスされたようなデザインである。
ZRグレードではモノトーンカラーのみの設定でグリルもブラック塗装グリル。VRグレードでは2トーンカラーが選択可能になり、メッキグリルを標準装備する。
サイド
出典:三菱認定中古車
サイド。スタイリングは角ばったデザインがメインで、ボンネットのエリアもかなり広い。エンジンも縦置きされているため、ワゴンRなどの軽自動車と比べるとかなり普通車のように見える。このあたりは特に変更はなし。
2代目後期パジェロミニのタイヤサイズ、純正アルミホイールなど
出典:三菱認定中古車
足元はVR系グレードで15インチアルミホイールを標準装備。サイズは175/80R15でテリオスキッド純正と同じサイズ。ZRグレードではスチールホイールとなる。
2代目後期パジェロミニのリア
出典:三菱認定中古車
リアのコンビランプは中期型でバンパーに埋め込まれたタイプだったが、このマイナーチェンジで再び元の位置に。上部のハイマウントストップランプもバックドア上部からリアガラス内側へ移動。
さらに後期型ではコンビランプのウィンカーがクリアータイプに変更された。また、ナンバープレートの位置もバックドアからバンパーへ移動。ナンバープレートが移動したことでスペアタイヤの位置も右寄りから中央に移動している。
出典:三菱認定中古車
オプションパーツのジムニーのようなメッキグリル、フロントスキッドプレート、リアスキッドプレートなどを付けると個性的にカスタムも可能。
ヤフオクなどで中古品が出回っているので、こちらが便利。これ以外にビレットタイプのグリルもオプション設定されていたが、かなり希少でめったに出て来ない。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:三菱認定中古車
搭載されるエンジンは、4A30型4気筒SOHCのNAまたはインタークーラー付きターボ仕様。これをエンジンルームに縦置きで搭載。
かつてはミニカダンガンで採用されていたDOHCの4気筒ツインスクロールターボエンジンを搭載したグレードが存在したが、排ガス規制をクリアできず廃止となり、最終モデルでは完全に消滅している。
自然吸気エンジンでは最高出力52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4500rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.0kg・m(88N・m)/4000rpm。
ミッションは今時珍しい5MTと旧式のトルコン4AT。ただし、後期型ではATのロックアップ機構を減速時にも適用することで若干の燃費性能を改善した。
この他4WD仕様車はイージーセレクト4WDと呼ばれるシステムが搭載される。具体的には2駆→4駆(高・低)の切り替えスイッチを備え、いざという時は4駆、普段は2駆とユーザーが切り替えることができる。普段は2駆で走れば燃費を稼げるという仕組みだ。
なおABSは2代目デビュー当初はオプション設定となっていたが、後期型では全グレードに標準装備化されている。
パジェロミニのMTモデルは難しい?楽しい?
パジェロミニのMT車は難しい
パジェロミニには5MTの設定があり、ターボ車であれば走りが楽しそうなモデル。
ただし落とし穴があって、ギア比が軽トラや軽バンと同じローギアー(全体的に高いギア比)に設定されている点。
変速比 第1速 | 4.200 |
---|---|
第2速 | 2.450 |
第3速 | 1.524 |
第4速 | 1.000 |
第5速 | 0.807 |
後退 | 3.776 |
最終減速比 | 5.625 |
パジェロミニ(H58A)ターボ車・5MTギア比
これは元々軽トラ・軽バンで使っていたミニキャブ用のミッションを流用して作られたことに起因する。
変速比 第1速 | 3.545 |
---|---|
第2速 | 2.105 |
第3速 | 1.521 |
第4速 | 1.148 |
第5速 | 0.897 |
後退 | 3.272 |
最終減速比 | 4.705 |
参考:アルトワークス(H36S)の5MTギア比
パジェロミニではオフロードを走行することを念頭に、1速は特に悪路などでのトルク重視のセッティング。ゆえにいとも簡単に吹け上がり、その一方で時速は20kmぐらいしか出ない。
そのため流れにのって走るには素早く2速に入れてシフトチェンジしていくか、初めから2速発進する必要があるのだが、このあたりは他のMT車と大きく異なる点である。
また、3~5速においてもギア比がクロスしておりシフトチェンジの際にエンジン回転数が落ちやすい。特に時速60km付近で4速から5速に入れるとエンジン回転数がかなり下がってしまい変速ショックも発生しやすい。
これら理由からパジェロミニのMTモデルは難しいとされている。
逆にこの難しいMTを乗りこなすのも醍醐味であり、MTなパジェロミニの楽しみのひとつ。車重は重たいがローギアなギア比と全体的にクロスしている故にどこからでも加速を味わうことも可能だ。
パジェロミニのMT車は楽しい
パジェロミニのMT車が楽しい要因は、その難しいギア比を攻略する以外に普段はFR車であることにある。
4WDのイメージが強いパジェロミニだが、パートタイム4WDの採用により、舗装路面ではFR(後輪駆動)で走行する。
コーナーになればFRらしいクイックなハンドリングと、コーナリング中もアクセルを踏んでいけば素直に曲がり、FRのスポーツカーのような一面を持っている。
軽自動車やコンパクトカーで一般的なFFモデルとはこのあたりが大きく異なる。
特に前期のツインカムターボと組み合わせれば、官能的な20バルブのエンジンサウンドにジムニー顔負けのスポーティな加速力を見せる。

また、いざとなれば4WDに切り替えて悪路を走行することもでき、FRやFFが四苦八苦するような悪路でも、その高い最低地上高と組み合わせて難なくクリアしてしまう。そのMTを自由自在に操って。
このあたりがパジェロミニのMT車、特にターボ車が楽しいとされている部分である。
2代目パジェロミニH53AとH58Aの違い
パジェロミニのH53AとH58Aの違いは駆動方式。H53Aはエンジンをボンネットに配置し後輪を駆動するFRのパジェロミニ。H58Aはボンネットにエンジンを配置し全輪を駆動するパートタイム式4WD。
それぞれに自然吸気エンジンとターボエンジンが設定され、かつ5MTまたは4ATの組み合わせとなる。
2代目パジェロミニ(H53/H58)の持病について
中古車で今なお人気の2代目パジェロミニ。しかしながらH53およびH58型にはいくつか壊れやすい持病とよばれる部分がある。ボディは頑丈なのだが、それ以外での不具合の事例がいつくかあげられている。
AT・バルブボディ(ストッパープラグ)の故障
いちばん有名なのは4AT。バルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。特に1998年10月~2002年8月までの2代目の前期型では不具合が発生しやすい。
このストッパープラグは2002年9月一部改良で対策品に変更され、以後は前期よりも故障しずらくなった(※まったく故障しないわけでないが)。
後期モデルでは故障しずらくなり、ほとんど聞かないの大丈夫かと思うが、まれに不具合を抱えた個体も存在するので購入の際は試乗して変速ショックなどがないか確認してほしい。
傾向としてエンジン回転数が高くなってATF温度が上昇しの油圧が低くなるようなシチュエーションを多用すると故障のリスクが高くなる。例えば高速道路で速いスピードで巡航したり、峠や林道などの起伏の激しい登り坂が続くような場面がこれらに該当する。
一度もATFを交換すること無く、このような環境下で使用され続けた中古のパジェロミニは特に注意したい。
ちなみに同年代で同じ4ATを採用する他の三菱製軽自動車でも故障しやすく、トッポBJ、eKスポーツ(OEMのオッティ)、アイ、タウンボックスなどで同様の不具合・故障の報告がある。
サーモスタットの寿命
次に有名なのはサーモスタットの故障。サーモスタットは冷却水付近にあるパーツで、温度によって弁が開いたり閉じたりするのだが、これが壊れた開いたままの状態になる。
そうなると走行しても水温計が真ん中まであがらず、あるいは全然上がらずヒーターすら効かなくなってしまう。さらにアイドリング回転数も上昇するため極端に燃費が落ちる。パジェロミニで燃費が7~8と極端に悪い場合、サーモスタットの故障を疑う価値はある。
パジェロミニのサーモスタットは経年劣化や過走行で壊れやすく、特に10年以上または10万キロ以上の個体であれば不具合が起きやすい。
こちらについては素人のDIYでも作業可能なので特に大きな心配は不要だが、発生した場合はできるだけはやめの対処をおすすめする。
なお、古いパジェロミニのサーモスタット交換の際に紙パッキンを使用する時は「液体ガスケット」も併用することをオススメする。
新しい紙ガスケットをそのまま使うと、どんなに綺麗にヤスリで削りとっても古いガスケットが残り、密着性が低くなり、高確率で水漏れの原因になる(管理人も自分の車で経験した)。
なので、紙ガスケットの周囲に薄く液体ガスケットを塗って気密性を高くすると水漏れが回避可能となる。
点火プラグとイグニッションコイルの摩耗
あとは持病とまではいかないが過走行のパジェロミニ(8万キロ以上)は点火プラグとイグニッションコイルが交換時期にきている場合がある。
特にパジェロミニのイグニッションコイルは2気筒で1本を使用するタイプ。1本1気筒のタイプより2倍負荷がかかり、かつ4気筒で高回転を多様しがちな4A30型エンジンではイグニッションコイルにかかる負荷もかなりのもので、一般的な軽自動車のイグニッションコイルの寿命目安である8万キロよりも短めと考えたほうが良い。
過走行のパジェロミニで点火プラグ、イグニッションコイル、プラグコードをセットで新品交換すれば燃費改善や加速向上などが期待できる。
2代目パジェロミニ(H53/H58)の燃費改善について
パジェロミニに搭載されたエンジンは4気筒の高回転型。そのため点火プラグやイグニッションコイルの劣化がはやく、車重やカタログ燃費以上に燃費を悪化させる要因となりうる。
特に2代目パジェロミニは生産終了から新しいものでも10年は経過し、安い中古車なら10万キロを越えた個体を買うケースもあると思う。
軽自動車の点火プラグはイリジウムでも5万キロが限界だが、高回転なパジェロミニのエンジンでは4万キロが限界とみる。
そしてイグニッションコイルもセミダイレクトイグニッション式のため2気筒で1つを併用(残り一個はプラグコードで供給)するタイプ。1気筒1個タイプよりも劣化がはやく、点火プラグが劣化してくるとイグニッションコイルへのダメージも大きくなる。
そのため過走行なパジェロミニ(8万キロ以上)の場合は点火プラグやイグニッションコイル+プラグコードを新品交換することにより燃費アップやトルクの回復などが期待できる。
なお、点火プラグの限界を越えて使用し続けた場合、プラグ先端の金属がシリンダーに溶け落ちバルブを損傷させエンジンブローを引き起こす場合もある。
その際はエンジン載せ替えやオーバーホールなど高額な修理費用がかかるため、特に現状渡しの中古車を購入した場合はまず点火プラグやイグニッションコイルの確認をオススメする。
※H53/H58A型 H51A/H56A型 パジェロミニ用NGK点火プラグ プレミアムRX4本 DCPR7ERX-P
※H58A後期16バルブSOHCターボ&自然吸気エンジン用イグニッションコイル
※H51A/H56A型、H53A/H58A型の16バルブSOHCターボ用/自然吸気エンジン用プラグコード
2代目後期パジェロミニのインテリア(内装)
インパネ
出典:三菱認定中古車
インパネ。後期型ではインパネが刷新されスタイリッシュに変化。インパネの助手席側、運転席側の両方にカップホルダーを。
助手席アッパーグローブボックス、センターボックスを新たに装備し使い勝手を向上させている。
中期モデルまでは年式やグレードによりオーディオスペースが1DINタイプもしくは2DINタイプのものがあり、使い勝手が悪い場合があったが後期モデルは全グレードで2DINタイプが使えるようになった。
エアコン
出典:三菱認定中古車
エアコンは全グレードでマニュアル式エアコンを採用。
ステアリング
出典:三菱認定中古車
ステアリングは基本はウレタンステアリングホイールで、上級グレードのエクシードや特別仕様車(ファイナルアニバーサーリー)などでは本革巻ステアリングホイールとなる。
スピードメーター
出典:三菱認定中古車
スピードメーターもデザインが変更され3眼タイプとなり、2010年8月マイナーチェンジではエコランプが追加された。左側からタコメーター、真ん中がスピードメーター、右側が燃料残量計と水温計。
ATシフトノブ、5MTシフトノブ
出典:三菱認定中古車
シフトはフロアシフトを採用。このあたりは後期型で改良されず前期と同じデザインとなる。
5MTのシフトノブも同様。シフトブーツがゴム製で若干見た目が古いが、SUVらしい味のあるデザインでもある。
フロントシート
出典:三菱認定中古車
フロントシートはセパレートタイプ。後期型ではブラウン系のシート表皮とドアトリムクロスに変更された。
リアシート
出典:三菱認定中古車
リアのシートは引き続き補助的なもの。昨今の軽自動車と比べるとどうしても狭い雰囲気だが、以外と足元空間はあり、シート生地もちゃんとしており少なくとも軽バンのリアシートよりは快適。
出典:三菱認定中古車
リアシートを倒せばフルフラットになり、そこそこの荷室が出来る。リアシートは左右分割可倒式でシートアレンジも可能。
2代目後期型パジェロミニのまとめ
2代目パジェロミニ後期モデルの総評
2代目・後期型のパジェロミニはリフレッシュされたフロントデザインとインテリア、改善したATの燃費など近代化が図られたマイナーチェンジとなっている。
2代目デビュー当初はオーソドックスな角目ヘッドライトでベーシック感が強かったが、この後期型ではそれが改善されよりスタイリッシュに変化した。個性的なモデルゆえにこの顔面変更の価値は大きく、それまでのイメージを刷新するものであった。
ただし、パジェロミニそのものは1tちかくもある車重ゆえターボ無しでは非常に加速が悪い点に注意。ターボ仕様であってもその他のターボ車と比べると鈍足で、非常にゆっくりと加速する。
ターボだからといって加速性能を求めるではないモデルなのだ。燃費も悪く、さらにはその大きなタイヤは、交換時に軽自動車でありながら値段が張るので、その点も考慮する必要があるだろう。
その分、特に冬期時は街なかの除雪されていない雪道では、小さなタイヤを履いた軽自動車では不安定な道でも大径タイヤと高い車高で難なくクリアできる。雪国では非常に心強い1台だ。
普通の軽自動車以上に、維持費がかかってしまうが軽自動車でも雪道での走破性能を求めたい人には良い選択肢だろう。ボディ(フレーム)も強固に作られているので、他の軽と比べると少し安心だ。さらに年式が新しい最終モデルでは一番故障の心配が少ないだろう。
パジェロミニの値上げ、相場の高騰理由はジムニーの影響か?
パジェロミニは2012年末に生産が終了したものの、昨今はSUVが人気となる中、軽自動車でもジムニーが注目されその影響は中古車に飛び火。現在の相場はボロい中古ジムニーでも高くなっている。

一方かつてパジェロミニの中古は、ジムニーが高騰する以前は安価な中古車という位置づけだった。
ただし、新車のジムニー大人気と納期遅れが中古ジムニーの価格を押し上げ、かつてのライバルだったパジェロミニにも派生。2代目後期モデルの相場が上昇するという事態に繋がった。

ただし、高いのは2008年8月マイナーチェンジ以降の後期モデルがメインで、それ以前の中期や前期であれば年数経過もあって比較的安価。

経年劣化や過走行による故障のリスクがあるが、きちんとメンテナンスされた個体であれば価格は魅力的だ。
パジェロミニOEM、日産のパジェロミニ、キックス
なお、2008年10月にはパジェロミニ史上初となるOEMモデルが日産へ供給された。
日産版では「キックス」となり、専用フロントグリルにより日産のエクストレイルを彷彿とさせる顔つきと専用カラーの「ラズベリーレッドパール(赤系)」が与えられている。

デフォルメはこの程度なのだが、グリルが個性的なため不思議と日産風に見えるため少し個性や違いが欲しい場合は日産版も要チェックである。
2代目パジェロミニの全体数と比較しても日産版のタマ数が少ないので、他人と被りづらいのもポイント。
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