タウンボックスは三菱の1BOX型軽自動車。本稿では初代U61W系の前期型(1999年4月~2000年10月まで)について扱う。
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三菱 初代・タウンボックスとは?
1999年4月にデビューした三菱・タウンボックス。それまであったブラボーの後継車としてデビューした。
スタイリングはエブリイやアトレーと同じようにフロントタイヤを最前方に配置&エンジンを運転席したに設けるキャブオーバー型を採用。ただし、独自設計で足元空間を拡大するなど差別化を図っていた。
また、当時の軽自動車としては珍しいリアコンビネーションランプにハイロー独立式の4灯式を採用。この点も差別化がなされていた。
パッケージングは全長3395mm、全幅1475mm、全高1890mm。室内長は1840mmで室内幅は1220mmとし、人や荷物をたっぷり積める室内空間とした。
安全面では50km/hでの前面衝突に対する乗員の生存空間、および50km/hでの後面衝突時の燃料漏れ防止基準をクリア。加えて自動車安全情報の55km/h前面衝突、着座位置の地上高が高いために新衝突安全基準を免除されている側突にも充分対応とした。
また、運転席SRSエアバッグを全車に標準装備、助手席SRSエアバッグは一部標準装備。3点式チャイルドシート固定機構付リヤシートベルトを全車標準装備。4センサー3チャンネルABSをオプションで全車にオプション設定とした。
エンジンはリーンバーンMVV搭載の3G83型3気筒自然吸気エンジンと、パワーや静粛性の高いミニカダンガンで有名な4A30型4気筒20バルブインタークーラー付きターボエンジンの2種類を設定。
駆動方式はFRとイージーセレクト4WDの2種類で、トランスミッションは5MTと4ATの2種類。自然吸気エンジンの5MT車にはハイロー切り替えの副変速機を搭載。
5ナンバーの乗用モデルとして、フロントシートにはローバックセミバケット式シートを採用。リアシートには左右独立のリクライニング付リヤシートとし、利便性や後部座席の快適性をアップさせている。
グレード構成は廉価グレードのSXグレード(タコメーター非装備)、ベーシックな自然吸気エンジンのLXグレード、上級でターボ仕様のRXの2種類。すべてハイルーフ仕様となる。
初代・前期型タウンボックスと中期、後期型との違い
初代タウンボックスは前期型、中期型、後期型でフロントデザインが大きく違い、内装も前期・中期と後期型で異なる。また、エンジンも前期型のみ伝説の4気筒20バルブターボエンジンを搭載し、その後はSOHCターボに置換されるなど違いがある。
フロントデザインは前期型(2000年10月までは異型台形のヘッドライトにグリルレスの個性的な顔つき。)中期型(2000年11月~2007年11月)は顔面整形されヘッドライトが横長+一般的な横長グリル。後期型(2007年12月~)ではグリルデザインが変更されよりスタイリッシュになる。
内装も中期型(~2007年11月)まではインパネにドリンクホルダーが無いタイプ。ただし、前期型ではさらにオーディオ収納スペースが1DINしか使えない。
後期型(2007年12月~)ではインパネ両端にドリンクホルダーが追加され使い勝手が向上する。また、ステアリングホイールのデザインやスピードメーターもこのときに変更された。
この他前期型の初代タウンボックスはリアシートを倒してフルフラットにした最、左右分離型のシートのせいでリアシート真ん中が出っ張って完全なフルフラットにはならない。
中期型以降ではこれが不評でフルフラットにできるよう改良されている。
またターボエンジンも前期型と中期型以降では異なり、前期型の2002年8月モデルまでは4気筒20バルブターボエンジン。それ以降は排気ガス規制をクリアできず&高コストのため3気筒SOHCターボエンジンに置換された。
さらに4WDも前期まですべてパートタイム4WDを採用してたが、SOHCエンジンに置換された後のRX4WDターボではフルタイム4WDに変更となった。
初代・前期型タウンボックス U61W/U62W/U63W/U64Wそれぞれの違い
初代、前期のタウンボックスはエンジンや駆動方式により型式が異なる。まず、3気筒自然吸気エンジンの場合はU61WまたはU62W。ターボエンジンの場合はU63WまたはU64Wとなる。
駆動方式でも異なり、自然吸気エンジンで2駆(FR)だとU61W。自然吸気エンジンの4WDはU62W。かわってターボエンジンの2駆(FR)だとU63W、ターボで4WDならU64Wとなる。
なお、前期型の4WDはいずれもパートタイム4WD方式だったが、中期型(2002年8月以降)では自然吸気エンジンのU62Wではパートタイム4WD。ターボエンジンのU64Wではフルタイム4WDに変更となった。
エクステリア(外装)
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フロントのデザインは大きな異型台形型のヘッドライトが特徴だ。ちょっと不細工気味に見えるがこの後の中期型以降でオーソドックスな形にマイナーチェンジされているので、個性としては強みがあるデザイン。
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グリルがオプション扱いだったが、グリル付きのデザインであればシマリのあるデザインにみえる。ヘッドライト下の小さなライトはフォグランプ。
上級ターボ仕様のRXグレードではメッキグリルが標準装備となる。
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サイドから。この手の軽自動車らしく高さがあり、かつボンネットは非常に小さい。足元は13インチホイール。
LXグレードはスチールホイール+ホイールキャップで、ターボのRXグレードでは13インチアルミホイールを標準装備する。タイヤサイズは165/65R13。
電動スライドドアは非装備で両方とも手動式のスライドドア。
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リア周り。軽自動車では珍しい4灯式ブレーキランプを採用している。なお写真の車ではオプションのメッキコンビランプカバー、サイドに同じくオプションのステッカーを貼っている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒の3G83型SOHC自然吸気エンジン(リーンバーンMVV)と、ミニカ・ダンガンで有名な4A30型直列4気筒DOHC20バルブインタークーラー付きターボエンジンの2種類。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.0kg・m(98N・m)/3000rpm。
エンジンは同年代のパジェロミニよりも最大トルクが0.2kg引き下げられ、より中速域メインのセッティングとなっている。
なお、この後の2002年8月一部改良では排気ガス規制により3気筒のSOHCターボ(3G83型)に置き換わった。
自然吸気エンジンの方は最高出力48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。
トランスミッションは5MTまたは4ATで、駆動方式はFRまたはパートタイム4WD。自然吸気エンジン&5MTの4WD仕様ではシフトノブ付近のスイッチによりFRと4WDを切り替えるシステム(イージーセレクト4WD)を搭載する。
安全装備としてLXは運転席エアバッグを標準装備(助手席はオプション)。RXでは運転席と助手席両方のエアバッグを標準装備。ABSは全グレードにオプション設定。
初代・後期型タウンボックス(U61W/U62W)の持病 4ATの不具合・トラブル・故障
U61WとU62Wに搭載された4ATは不具合の事例が多く報告されている。これはミニキャブバンに限った話でなく、同年代の2代目パジェロミニ、トッポBJ、eKワゴン、eKスポーツの4ATでも同様の不具合が見られる。
内容はバルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。これが発病すると冷間時に1速から2速へシフトアップするときに、ムチウチのような大きな変速ショックが発生しする。10分程度走ると不具合は消えるのだが、これを放置すると最悪ミッションが壊れて自走不可となる。
バルブボディまわりを交換や修理しすると治るケースがある(直らない場合はATのコンピュータ交換か、ミッション載せ替えが必要)。可能であればミッションそのものが故障し、高額修理となる前に修理することをオススメする。
特にタウンボックスの中でも前期型(2002年8月以前)の4ATが故障しやすく、それ以降は故障しやすいストッパープラグが対策品になるので、ATの不具合事例は少ない(ただし絶対に壊れないわけでないので注意は必要)。
中古で購入する場合は、4AT搭載のタウンボックスでこれら変速ショックが無いか確認すること(※5MTはこのような故障の事例は無いのでできればマニュアル車をオススメする)。格安で購入しても修理に多額の費用がかかるとかなり痛い。
インテリア(内装)
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インパネ。1999年デビューの車なので少し古臭い。ドリンクホルダーもインパネに無く少し使いづらい。
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シフトノブの下には4WD切り替えスイッチが付いている(※4WD仕様車のみ)。
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5MT仕様。シフトブーツのデザインが古いので見た目が少し悪いか。
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スピードメーター。左がスピードメーター。右側がタコメーターの2眼式。写真のタコメーターは4A30型20バルブツインカムターボのスピードメーターで、レッドゾーンは8000rpmから。
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3気筒自然吸気エンジンではレッドゾーンが7000rpmのタイプとなる。なお、SXグレードではタコメーターレスの1眼タイプとなる。
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最廉価グレードのSXではタコメーター無しの1眼式タイプ。トリップメーターも非装備な簡易的メーターとなる。
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ステアリングはウレタンステアリング。
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エアコンはマニュアル式エアコン。
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フロントシートはヘッドレスト分離型のセパレート式。ブルーとグレーを基調とし、真ん中に明るいブルーンアクセントカラーを入れてスタイリッシュ感を演出している。
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リアの足元はかなり広い。タウンボックスの後部座席は手回し式のウィンドウとなる。後部座席はヘッドレスト一体式でかつ左右のシートがそれぞれ分かれたタイプ。
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ラゲッジスペース。この手のワンボックスは後部座席を倒さずとも荷室がかなり広い。
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前期型はフルフラットにするとセパレートシートが影響して真ん中にくぼみ(へこみ)が出来る。この点が不評で中期型ではこれを改善するためにベンチシート&アームレストのリアシートを採用してフルフラット化された。
ただしバイクなどを積載する際はあのくぼみが丁度良いので、あえてタウンボックスでも前期型を選ぶ人も中には居た。
まとめ
U61W/U62W系タウンボックスの前期型は、他車にはない独特なデザインと4A30DOHCターボが魅力の1台である。特に5MTと4A30ターボの組み合わせは、好きな人にはたまらないものでエブリイやアトレーでは味わえない独特の魅力がある。
特にタウンボックス登場前はブラボーGTという、4ナンバー軽バンに同じ4気筒20バルブターボエンジンを搭載し、セミバケットシートも搭載した異端モデルが存在した。タウンボックスはそのブラボーGTの後継モデルとしてかなり気合の入った軽ワンボックスであった。
タウンボックスはエブリイワゴンやアトレーワゴンに本気で対抗したはずだったが、デザインが不評過ぎてそこまで売れず、すぐさまマイナーチェンジで顔面整形するも特に2000年7月に発覚した三菱リコール隠し事件も重なりタウンボックスの販売は低迷だった。
その後も排気ガス規制やコスト高も重なり2002年8月で20バルブターボが消滅。以後は普通の3気筒エンジンを積んた軽ワンボックスとなる。
4A30ターボ&5MTを搭載したワンボックスを探している、あるいはマイナーなワンボックスで他人とは違うデザインが良いという人にオススメな1台。この後の中期型ではSOHCターボに切り替わったり、見た目がオーソドックスになってしまったので、個性でいえば前期のほうが魅力があるかもしれない。
ブラボーGTのときもそうだったが、この箱ボディに4気筒20バルブターボエンジン&5MTを搭載して販売するあたり、今考えるとかなり変わっていたモデルであることを気付かされる。
ただし中古市場では年数経過とタマ数が元々少ないこともあり数の少ない希少モデル。特に5MTとなるとそれが顕著でかなり探しづらい。また、タウンボックスの4ATには持病的な不具合があり、購入する場合は変速ショックが無いかかならず試乗して確認することを強くオススメする。
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