ミニキャブバンは三菱のワンボックス型軽自動車。軽バンと呼ばれる軽貨物車である。本稿では6代目U61V/U62V型の後期型(2011年11月~2013年10月まで)を扱う。
6代目 三菱・ミニキャブバンとは?
1999年1月にデビューした6代目三菱・ミニキャブバン。ミニキャブトラックと同時デビューで新規格の軽商用車として誕生した。
形はエブリイやハイゼットカーゴと同じようにフロントタイヤを最前方に配置&エンジンを運転席したに設けるキャブオーバー型&ロングホイールベースを採用。
ただし、独自設計で足元空間を拡大するなど差別化を図っていた。
また、当時の軽自動車、しかも商用の軽貨物としては珍しいリアコンビネーションランプにハイロー独立式の4灯式を採用。乗用モデルらしい豪華な装備品も特徴であった。
ボディカラーも基本の白(ソフィアホワイト)、銀(シンフォニックシルバー)に加え、商用車(軽バン)では珍しい濃青のランスブルーの3色を設定。
出典:ガリバー
パッケージングは先代よりも全長100mm拡大の全長3395mm(※ハイルーフ車)。全幅は80mm拡大の全幅1475mm、全高1890mm。
室内長は2名乗車時に1855mmで室内幅は1370mm、荷室高は1230mmとし、人や荷物をたっぷり積める室内空間とした。
センターミッドシップレイアウトによる採用による前後50対50の理想的な分担荷重、2,390mmのロングホイールベースに1,290mmの前後トレッド、サスペンションは前輪マクファーソンストラット、後輪トルクアーム式3リンクリジット&コイルスプリングにより快適な乗り心地を実現。
安全面では50km/hでの前面衝突に対する乗員の生存空間、および50km/hでの後面衝突時の燃料漏れ防止基準をクリア。
加えて自動車安全情報の55km/h前面衝突、着座位置の地上高が高いために新衝突安全基準を免除されている側突にも充分対応とした。
また、運転席SRSエアバッグを全車に標準装備、助手席SRSエアバッグは一部標準装備。3点式チャイルドシート固定機構付リヤシートベルトを全車標準装備。
4センサー3チャンネルABSをオプションで全車にオプション設定とした。
エンジンはリーンバーンMVV搭載の3G83型3気筒自然吸気エンジンを設定。駆動方式はFRとパジェロミニなどでお馴染みのパートタイム4WD(イージーセレクト4WD)の2種類で、4WDモデルでは走行中でも道路状況に応じてハイローの切り替えを容易とした(※時速80km以下に限る)
トランスミッションは5MTと3ATの2種類。自然吸気エンジンの5MT車にはハイロー切り替えの副変速機を搭載。上級のCLグレードには4AT車も設定した。
6代目ミニキャブバンのグレード展開はエアコン装備の上級CLグレード、パワステやAMラジオを標準装備したスタンダードなCDグレード、廉価グレードのCSグレードの3種類。
6代目ミニキャブバンU61V/U62V 後期型の改良点と前期との違いなど
その6代目ミニキャブバンは2011年11月のマイナーチェンジで後期型となった(※ミニキャブトラックと同じくマイナーチェンジ)。
出典:ダイハツ認定中古車
後期型ではフロントデザインを再び大型変更。よりベーシックな雰囲気を与えシンプルなイメージとした。さらに上級グレードのブラボー系ではメッキグリルも標準装備する。
前期型や中期型ではインナーブラックのヘッドライトにブラックカラーのグリルだっため、かなりイメージが変わった。U61V/U62Vの前期・中期・後期を見分けるポイントはここにある。
出典:三菱認定中古車
また、テールランプまわりも大幅変更し、ハイゼットカーゴと同じシンプルなデザインとなった。さらにハイマウントストップもLED化し、全グレードに標準装備とした。
内装ではシート生地を変更しより上質感を高め、カップホルダー用フロアコンソールボックスの容積を大型化。フロントシートのヘッドレストも大型化し快適性を向上。
ボディカラーには「ホワイトソリッド」(※ブラボー系グレードにはオプションでホワイトパール)、「クールシルバーメタリック」に加え後期モデルではボディカラーとして「チタニウムグレー」と「ブラック」を含めた全4色を設定。
また、グレード構成も変更され5ナンバー乗用モデルの「タウンボックス」廃止に伴い最上級グレードとして「ブラボー」と、ターボ仕様の「ブラボーターボ」を追加。かつての懐かしい名称が復活することとなった。
これと同時に前期や中期までの最廉価なCSグレードは廃止された。
よって後期型ミニキャブバン(U61V/U62V)ではベーシックな「CDグレード」、上級の「CLグレード」、タウンボックス後継の最上級「ブラボー」、同ターボ仕様の「ブラボーターボ」の4構成とした。
6代目・後期ミニキャブバン(U61V/U62V)と初代NV100クリッパー(U71V/U72V)との違い
6代目最終型ミニキャブバンと初代NV100クリッパーではフロントデザインとエンブレムなどが異なる。
フロントデザインはグリルとバンパーがミニキャブバン・NV100クリッパーでそれぞれ専用品となり、三菱はグリルレスのようなベーシックなデザイン。日産はVモーショングリルで差別化される。
また、上級グレードではそれぞれメッキグリルが標準装備となる。
ボディカラーは前期や中期型ではクリッパーバン専用色の「ワインレッドメタリック」や「ナイトバイオレット」の設定があったが、後期モデルではミニキャブバンと同じ全4色となった。
このほか内装は同じだが、グレード構成が若干異なり、ミニキャブバンではCD、CL、ブラボー、ブラボーターボの4種類だが、NV100クリッパーではDX、GX、GXターボの3種類となる。
6代目後期ミニキャブバン グレード構成 CD、CD2シーター、ブラボー、ブラボーターボ、ミニキャブ・ミーブの違いなど
6代目後期ミニキャブバンのグレード構成は「CD」、「CD2シーター」、「ブラボー」、「ブラボータボ」の4種類。標準ルーフとハイルーフの2種類があるが、標準ルーフはCDグレードのみ設定。
後期モデルでは前期と比較して最廉価のCSグレードとCLグレードが廃止され、エントリーグレードがCDに変更。
また、5ナンバー乗用モデルのタウンボックス廃止に伴い、CLからブラボー&ブラボーターボがタウンボックス後継モデルとなっているのが大きな特徴だ。
かつての4ナンバー乗用仕様の「ブラボー」が6代目後期で復活した。
CDグレード
ミニキャブバンのエントリーグレード。日産・NV100クリッパー「DX」としてOEM。
前期CSグレードよりもひとつ上のグレードのため装備は若干豪華。エクステリアではUVカットガラスを標準装備。プライバシーガラスは非装備。
快適装備はキーレスエントリーがオプション選択可能となり、パワステを標準装備する。ただし、後期でもパワーウィンドウは非設定(日産版にはオプション設定)。
リアシートは軽バンらしくフロントはヘッドレスト一体式。リアはヘッドレスト無しで左右一体可倒式の簡易的なシートで、表皮もビニールレザーで簡素。
ボディカラーは「ミスティックバイオレットパール」と「チタニウムグレーメタリック」を含めた全4色を設定。
CD2シーター
上記CDグレードを2名乗車化したグレード。リアには後部座席が設置されずデフォルト状態でフルラットな荷台が付く。
ハイルーフ仕様のみ。4WDも非設定でFRの2WDモデルのみ。
ブラボーグレード
6代目後期ミニキャブバンの上級グレード。CLグレードを廃止し、後期で新設定されたタウンボックス後継グレード。快適装備がDXグレードよりも豪華になる。日産には「GX」グレードとしてOEM。
エクステリアにはカラードドアミラー&カラードドアハンドル、UVカットガラスとプライバシーガラス、ホイールキャップを標準装備。
快適装備のパワーウィンドウやキーレスエントリー、CDオーディオ+2スピーカーで豪華な仕様に。
内装ではタコメーター付き2眼式メーターに、フロントシートもブラボーグレードでは専用ヘッドレスト分離式シート(助手席シートバッグテーブル&アシストグリップ付き)+ドアトリムクロスにリアシートも左右分割式シートを採用する。
ボディカラーもDXに追加でGXのみ設定の「ブラックマイ歌」と、オプションカラーの「ホワイトパール」の全4種類(※標準カラーのホワイトソリッドは非設定)。ATのトランスミッションは4ATを採用する。
ブラボーターボ
6代目後期ミニキャブバンの最上級ターボグレード。初代NV100クリッパーには「GXターボ」としてOEM。
出典:三菱認定中古車
ブラボーの装備に追加でターボエンジンを標準採用する。このほかエクステリアではフロントにメッキグリルを標準装備。
内装ではインパネのシルバー加飾、シルバー加飾付き3本ステアリングなどがターボには標準装備となり装備も最上級仕様となる。
なお、これ以降ミニキャブバンの上級グレードはブラボーとブラボーターボを用いるようになり、エブリイ(DS17V)OEMとなった8代目(DA17V)でもブラボーまたはブラボーターボが設定されている。
派生モデル ミニキャブ・ミーブ
6代目後期ミニキャブバンのCDグレードをベースに、3気筒エンジンを撤去して替わりに電動機を搭載した電気自動車仕様。アイミーブの電気自動車のコンポーネントを共通化することで車両価格を大幅に抑制して誕生した軽商用EV。
ボディカラーはホワイトソリッドとクールシルバーメタリックの2色のみで、オプションのエクシードパッケージを選択するとメッキグリルやカラードドアミラー、専用デカール、フロント/リアシートの生地張り化などでドレスアップも可能だった。駆動方式はMRのみ。
一時一般向け販売を休止したが、現在では再販され「CD 16.0kwh」モデルのみとなっている。
エクステリア(外装)
出典:三菱認定中古車
フロントデザイン。後期型ではそれまでの特徴的なインナーブラックのヘッドライトを辞めて一般的インナーメッキに変更。
ヘッドライト形状も変更し、グリルもグリルレスのようなデザインに。バンパーのデザインもシンプルなデザインに変更されてている。
これによりそれまでの個性的で押しの強い顔つきから、よりベーシックかつシンプルなデザインとした。
出典:三菱認定中古車
乗用モデル仕様のブラボーとブラボーターボではメッキグリルが標準装備となる。
出典:三菱認定中古車
サイド。このあたりは中期型とほぼ同じ。ただしヘッドライトがインナーメッキ仕様となり、先端部分の見た目が若干異なる。このあたりは前期・中期か後期かを見分けるポイント。
出典:三菱認定中古車
足元は12インチスチールホイール。U61V/U62Vの純正タイヤサイズは145R12-6PR。
ブラボーとブラボーターボでは新たにホイールキャップが標準装備となった。
出典:三菱認定中古車
リア。後期型ではリアのデザインも変更された。特徴的な4灯式テールランプを廃止し、ライバルと同じ一般的な2灯式へ変更。デザインも横長のベーシックスタイルとした(標準ルーフ仕様は変更なし)。
なお、テールランプは同年代のハイゼットカーゴ(S320V/S330V)のテールランプを流用しており、よく見るとDAIHATSUの文字を確認できる。
また、後期モデルではハイマウントストップランプもLED化され、クリアータイプとなる。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは自然吸気エンジンと後期モデルはターボエンジンを追加。3G83型直列3気筒SOHC(リーンバーンエンジン)の最高出力48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。
ブラボーターボでは3G83型直列3気筒SOHCインタークーラー付きターボエンジを搭載。最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは8.8kg・m(86N・m)/3000rpm。
トランスミッションはオートマミッションが3ATと4AT(※4ATはブラボーターボのみ)。マニュアルが5MT(ターボ仕様には非設定)。駆動方式はFRかパートタイム4WD。
パートタイム4WDでは時速80km以下であれば走行中にFRと4WDの切り替えが可能なイージーセレクト4WDを搭載する。さらに5MTではハイローの切り替え(副変速機)も付く。
安全装備としてはSRS運転席&助手席エアバッグ、フロントシートベルトプリテンショナーを標準装備。ABSはCDとCLグレードがオプション設定。ブラボー系では標準装備する。
6代目ミニキャブバン U61VとU62V型との違い、ハイルーフと標準ルーフの違い
6代目・後期型ミニキャブバンのU61VとU62Vとの違いは駆動方式。U61Vは後輪を駆動するFRのミニキャブバン。U62VはU61Vベースで前輪を駆動する4WDのミニキャブバン。
ミニキャブバンの4WDシステムはパートタイム4WDで、運転者が任意にFRか4WDを切り替えるタイプ。普段は2駆で走行するため燃費が良いか、悪路に応じて自分で切り替える必要性があるのと、タイトコーナーブレーキング現象も発生するため取り扱いは少々難しい。
また、ミニキャブバンのハイルーフ車とは標準ルーフよりも全高が少し高く、その分室内高も高いモデル。
6代目後期ミニキャブバンでは上級のCLとブラボーが全てハイルーフ仕様となり、CDは標準ルーフまたはハイルーフの2種類となる。標準ルーフの全高が1785mmに対し、ハイルーフは1890mmと、約100mm程度高くなる(※乗用モデルのタウンボックスはすべてハイルーフ仕様だった)。
ラゲッジスペースで背の高い荷物を乗せる場合や、より沢山の荷物を載せる場合はハイルーフを。それ以外は標準ルーフを選択しよう。
U61V/U62Vミニキャブバンの持病 4ATの不具合・トラブル・故障
U61VとU62Vに搭載された4ATは不具合の事例が多く報告されている。これはミニキャブバンに限った話でなく、同年代の2代目パジェロミニ、トッポBJ、eKワゴン、eKスポーツの4ATでも同様の不具合が見られる。
内容はバルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。これが発病すると冷間時に1速から2速へシフトアップするときに、ムチウチのような大きな変速ショックが発生しする。10分程度走ると不具合は消えるのだが、これを放置すると最悪ミッションが壊れて自走不可となる。
バルブボディまわりを交換や修理しすると治るケースがある(直らない場合はATのコンピュータ交換か、ミッション載せ替えが必要)。可能であればミッションそのものが故障し、高額修理となる前に修理することをオススメする。
中古で購入する場合は、4AT搭載のミニキャブバン(ブラボーグレード)でこれら変速ショックが無いか確認すること(※3ATの不具合はほとんど無いためATを買うなら3ATまたは5MTがオススメ)。
格安で購入しても修理に多額の費用がかかるとかなり痛い。また仕事で使おうと思っている人は故障して不動車となり、足が無くなると営業に支障を来しかねないので注意されたし。
インテリア(内装)
出典:三菱認定中古車
インパネ。後期型ミニキャブバンデザインが刷新された後期モデルが適用される。前期のインパネよりもドリンクホルダーが左右エアコン吹き出し口前に増設され、使い勝手が大幅向上している。
後期モデルではシフトノブ付近のカップホルダー収納スペースが廃止され、多目的に使えるシンプルなボックス形状に変更された。
ステアリングはウレタンステアリング。
ATのシフトノブは中期と同じデザイン。フロアシフトを採用。
U61V/U62Vの5MTも引き続き中期と同じフロアシフト。
4WDモデルでは左側に副変速機のレバーが備わる。4WDへの切り替えはインパネに設けられたスイッチで行う。
スピードメーター。後期型デザインが適用され見やすくなっている。タウンボックスではタコメーター付きの3眼式に対し、ミニキャブバンでは従来どおりでタコメーター無しの1眼式だったが、
乗用モデル仕様のブラボーが追加されたことにより、ブラボーとブラボーターボのみタコメーター付きの3眼式タイプが採用された。
エアコンはマニュアル式エアコン。
出典:三菱認定中古車
CDグレードのフロントシートはセパレートタイプ。軽貨物らしい形状のヘッドレスト一体型シートとなる。後期モデルではヘッドレスト部分が大型化され、より安全性や快適性がアップした。
出典:三菱認定中古車
ブラボーとブラボーターボではヘッドレスト分離型の乗用モデルシートを採用。より快適性がアップする。
出典:三菱認定中古車
後期型ミニキャブバンのリアシート。
出典:三菱認定中古車
ブラボーとブラボーターボのリアシート。ヘッドレスト分離型でかつシート座面も厚くCDグレードよりはかなり快適なシートとなる。ただし後ろ方向へのリクライニング機能は非搭載で、若干不便。
出典:三菱認定中古車
ラゲッジスペース。軽バンなのでリアシートを立てた状態でもかなり広い。
出典:三菱認定中古車
リアシートを倒した状態。ブラボーグレードは左右分離可倒式。CDグレードは一体可倒式。
出典:三菱認定中古車
フルフラット状態。ブラボーは乗用モデルなのでラゲッジスペースがカーペットタイプ。
出典:三菱認定中古車
CDグレードは従来どおりの汚れても大丈夫なラゲッジマットとなる。
6代目後期・ミニキャブバンのまとめ
出典:三菱認定中古車
6代目後期型のミニキャブバンは、再び大幅変更されたフロントデザイン。使い勝手が向上したインパネデザインなど、前期や中期よりもさらにイメージチェンジしたモデルとなった。
中期型よりもベーシック感やシンプルなイメージが強く、基本のCDグレードは軽バンらしいモデルに。
追加設定のブラボーやブラボーターボは4ナンバーでありながらメッキグリルやホイールキャップ、ABSに快適な前後シートなど豪華装備が特徴となっている。
中古市場では年数経過もあり、6代目・後期型ミニキャブバンでも手頃な個体が多い。ただし生産台数的には自社生産撤退を決めた最後のモデルでもあり、タマ数は少なめ。中期型よりも探しづらいのがネック。とりわけ復活したブラボーターボはそれが顕著で、超希少車種となっている。
この後の7代目ミニキャブバン以降はスズキ・エブリイのOEMモデルとなり、日産のNV100クリッパー同様にエンブレムを三菱に変更した程度のモデルになってしまう。軽バンでも個性を求めたい人には最終モデルで高年式な4ナンバー軽貨物車である。
なお、ブラボーの4ATのモデルには持病的なリスクもあるため、できるなら5MTか3ATの個体をオススメする。4ATを購入する場合は変速ショックが大きくないかかならず試乗して状態をよく確認することをおすすめする。
ちなみに6代目ミニキャブバンの後期モデルは日産へ姉妹モデル、初代NV100クリッパーバンとしてOEM供給されている。
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