【初代 ミニキャブバンOEM】日産 クリッパーバン(NV100クリッパー)U71V/U72V型 | シン・軽自動車マニア

【初代 ミニキャブバンOEM】日産 クリッパーバン(NV100クリッパー)U71V/U72V型

NV100クリッパー(クリッパーバン)

クリッパーバンは日産のワンボックス型軽自動車。軽バンと呼ばれる軽貨物車(4ナンバー車)で、三菱・ミニキャブバン(U61V/U62V)のOEMモデルである。本稿では初代U71VとU72V型(2003年12月~2011年12月まで)の前期~中期型を扱う。

U71V/U72V型クリッパーバン
画像参照元:日産認定中古車
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概要

2003年9月に登場した日産クリッパーバン。日産史上初の軽自動車、モコ(スズキ・MRワゴンのOEM)に続く第2弾の軽自動車として誕生した。

クリッパーバンは第1弾のモコとは異なり、今度は三菱自動車から6代目ミニキャブバン(U61V/U62V)のOEM供給を受けての販売となった。車名のクリッパーはかつて日産が販売していた商用小型トラックからとったもので、日産の商用車として連想しやすい車名を採用し、OEMモデルではあるが、存在感の高さを狙うものだった。

ちなみにクリッパーの由来は「駿馬、俊足を誇る馬」を意味する英語(CLIPPER)からとられている。

クリッパーバンはボディスタイルにキャブオーバー型&ロングホイールベースを採用。同年代のライバル(エブリイやハイゼットカーゴ)と同じスタイリングとした。

ボディカラーも基本の白(ソフィアホワイト)、銀(シンフォニックシルバー)に加え、商用車(軽バン)では珍しい濃青のミディアムブルーパール(三菱版はランスブルー)、クリッパーバン専用色となる濃赤のワインレッドメタリックの4色を設定。

パッケージングは全長3395mm(※ハイルーフ車)。全幅1475mm、全高1890mm。室内長は2名乗車時に1855mmで室内幅は1370mm、荷室高は1230mmを確保。

バックドア開口幅は1285mm、荷室床面地上高も650mmで人や荷物をたっぷり積める室内空間とした。

センターミッドシップレイアウトによる採用による前後50対50の理想的な分担荷重、2,390mmのロングホイールベースに1,290mmの前後トレッド、サスペンションは前輪マクファーソンストラット、後輪トルクアーム式3リンクリジット&コイルスプリングにより快適な乗り心地を実現。最小回転半径4.3mとした。

安全装備としてまた、運転席SRSエアバッグを全車に標準装備。助手席SRSエアバッグシステム&前席プリテンショナーシートベルト、ABSを3点セットオプションとし日産仕様としてすべてのグレードでオプション設定とした。運転者&助手席には昇降グリップを標準装備し、365mmのステップ高でラクラク乗降。

エンジンはリーンバーンMVV搭載の3G83型3気筒自然吸気エンジンを設定。駆動方式はFRとパジェロミニなどでお馴染みのパートタイム4WD(三菱製イージーセレクト4WD)の2種類で、4WDモデルでは走行中でも道路状況に応じてハイローの切り替えを容易とし、高い走破製を実現(※時速80km以下に限る)。

トランスミッションは5MTと3ATの2種類。自然吸気エンジンの5MT車にはハイロー切り替えの副変速機を搭載。上級のGLグレードには4AT車も設定した。

初代クリッパーバンのグレード展開は上級GLグレード(三菱版はCLグレード)、スタンダードなDXグレード(三菱版はCDグレード)、廉価グレードのSDグレード(三菱版はCSグレード)の3種類。

上級のGLグレードはハイルーフ車のみの設定で、DXとSDにはハイルーフと標準ルーフの2種類を設定する。

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初代クリッパーバン(U71V/U72V)と初代クリッパーリオ(U71W/U72W)の違い

4ナンバー商用モデルのクリッパーバンU71V/U72Vと5ナンバー乗用モデルのクリッパーリオU71W/U72Wとでは外観、内装、装備面などが異なる。

型式も後ろにVが付くとバン(VAN)を意味し、Wが付くとワゴン(Wagon)を示している。

基本的に軽貨物のクリッパーバンでは質素で、乗用モデルのクリッパーリオでは豪華な装備となる。

U71V/U72V初代クリッパーバンのフロントグリル

 

U71W/U72W初代クリッパーリオのフロントグリル

まず外観。クリッパーバン(※2005年12月マイナーチェンジ以降)ではインナーブラックのヘッドライトに日産専用ウインググリル(ボディ同色)。

初代クリッパーリオではインナーメッキのヘッドライトに同じウィンググリルでもメッキグリルの組み合わせで、構成が180度違う。また、バンパーもそれぞれ専用品で、リオの方がより上級感が高い。

このほかミニキャブバンではアウタードアハンドルやドアミラーが未塗装の樹脂タイプに対し、タウンボックスではボディカラー同色のアウタードアハンドル&ドアミラー(※グレードいよってはメッキドアミラー)となる。

内装でもインパネは同じだが、スピードメーターがクリッパーバンではタコメーター無しの1眼式に対し、クリッパーリオではタコメーター付きの2眼式。

U71V/U72V初代クリッパーリオのフロントシート

 

U71W/U72W初代クリッパーリオのフロントシート

シートもフロントはクリッパーバンがヘッドレスト一体型の貧弱で簡素なシートに対し、クリッパーリオはヘッドレスト分離型で、シート形状も上質かつファブリックシート表皮となる。また、クリッパーバンではドアトリムクロスが省略される。

U71V/U72V初代クリッパーリオのリアシート

 

U71W/U72W初代クリッパーリオのリアシート

リアシートも同様で、クリッパーバンではヘッドレストが無い一体可倒式の簡易的なシート。クリッパーリオではヘッドレスト付きで分割可倒式のリアシートとなる。

クリッパーバンはあくまで荷物を載せて運ぶ軽貨物という位置づけなので、特に後部座席は簡易的となる。その一方で荷室長はクリッパーリオの方が少し長く、ラゲッジスペースも汚れても大丈夫なようにカーペットでなく、ラゲッジマットなどが使われる。

6代目ミニキャブバン(U61V/U62V)と初代クリッパーバン(U71V/U72V)との違い

クリッパーバン(U71V/U72V)とミニキャブバン(U61V/U62V)との違いは外観、エンブレム、グレード構成、ボディカラー、安全装備などが異なる。

まず一番大きく異なるのはフロントデザイン。日産版のクリッパーバンでは日産共通デザインのウインググリルを取り入れた日産車らしい顔つきが与えられるのが特徴だ。これによりひと目で日産の軽バンがわかるようになっている。

ただしOEMモデルとしてデビューした当初(2003年10月~2005年11月まで)は専用グリルの設定がなく、エンブレム程度の変更だった。そのため初期のクリッパーバンは三菱ミニキャブバンとほぼ同じ外観となる。

画像参照元:オークファン

このほか、ミニキャブバンに設定のあった2名乗車仕様の2シーターは未設定。ボディカラーには日産クリッパーバン専用色として「ワインレッドメタリック」、2010年8月以降は「ナイトバイオレット・パール(オプションカラー)」が設定される(ただしビジネスユースな軽バンとしては派手すぎて嫌われてたのか、この色のクリッパーバンはかなり希少)。

初代クリッパーバン(U71V/U72V)の中期型と前期型の違い、一部改良など

2004年10月一部改良

2004年10月の一部改良では全車「平成17年基準排出ガス50%低減レベル(☆☆☆)」認定を取得。同時に、助手席SRSエアバッグシステムと頭部衝撃緩衝材付アシストグリップ(運転席側)を標準装備し、フロント周りの車体補強などで衝突安全性を向上させた。

2004年10月一部改良(中期マイナーチェンジ)

2005年12月にはマイナーチェンジを実施し中期型に。フロントグリルをミニキャブバンと共通品から日産風デザインを取り入れたウィンググリル仕様に変更。グリルを差別化した。

このほか全グレードにトリップメーターとヘッドライトレベライザーを標準装備化。最上級グレードのGLにはプライバシーガラスとカセット一体AM/FM電子チューナーラジオ+2スピーカーを標準装備とした。

2006年12月一部改良

2006年12月一部改良では助手席側にサイドアンダーミラーを標準装備したほか、速度計表示の精度向上を図ったことで保安基準に適合させた。

2007年6月仕様変更

2007年6月には5ナンバー乗用モデル仕様の「クリッパーリオ」(タウンボックスOEMモデル)を追加設定。

2010年1月一部改良

2010年1月一部改良ではインパネデザインを大幅変更し近代化。ドリンクホルダーをインパネ両サイドに追加&スピードメーターのデザインも刷新しスタイリッシュかつ使い勝手を向上させた。これ以外に全グレードで半ドア警告灯やAM/FMラジオを標準装備。

2010年8月一部改良

2010年8月一部改良ではエンジンのフリクション低減等の改良で燃費性能をアップ。バンの2WD車は「平成22年度燃費基準+10%」を達成。また、一部グレードでシート生地を変更。このとき新規ボディカラーとしてDXのハイルーフ車とGLグレードに「ナイトバイオレットパール」を追加(※オプションカラー)。

初代クリッパーバン グレード構成と違い

初代クリッパーバンのグレード構成は「SD」、「SD2シーター」、「DX」、「GL」の4種類。標準ルーフとハイルーフの2種類があるが、最上級GLはハイルーフのみの設定。

基本的にはグレード構成が同じだが、日産版のほうが若干装備が豪華で、例えばエントリーグレードのDXではキーレスエントリーやCDオーディオがオプション選択可能となるなど、違いがある。

SDグレード

クリッパーバンのエントリーグレード(廉価グレード)。三菱・ミニキャブバン「CS」グレードのOEM。

装備を簡略化し、価格を抑えたグレードで、外観では樹脂タイプのドアミラー&ドアハンドル、プライバシーガラス、ホイールキャップが非設定。

快適装備ではキーレスエントリー、パワーウィンドウ、パワステが非装備。エアコンとAM/FMラジオは標準装備。

ボディカラーもクールシルバーメタリック1色のみの設定(※ミニキャブバンのホワイトソリッドは非設定)。

安全装備として運転席エアバッグは標準装備となる。

SD2シーター

上記SDグレードを2名乗車化したグレード。リアには後部座席が設置されずデフォルト状態でフルラットな荷台が付く。

DXグレード

クリッパーバンのミドルグレード。快適装備がSDグレードよりも豪華になる。ミニキャブバン「CD」グレードのOEM。

エクステリアではプライバシーガラスとUVカットガラスをオプション設定。

快適装備もキーレスエントリーとCDオーディオがオプション選択可能となり、パワステを標準装備する。ただし、前期ではパワーウィンドウは非設定で、ホイールキャップも無し。

ボディカラーはナイトバイオレットパールが増え2色を設定。

GLグレード

クリッパーバンの最上級グレード。ミニキャブバン「CL」グレードのOEM。

エクステリアにはUVカットガラスとプライバシーガラスを標準装備。

快適装備のパワーウィンドウやキーレスエントリー、CDオーディオ+2スピーカーで豪華な仕様に。フロントシートもGLグレードのみ上級なファブリックシート表皮を採用。

AT車はGLグレードのみの4ATを採用する(SDやDXでは3AT)。

エクステリア(外装)

フロント

フロントデザイン。初代クリッパーバンは、6代目ミニキャブバンの中期型マイナーチェンジ以降のモデルがOEM供給された。そのため6代目ミニキャブバンでも初期の特徴的な顔つきでなく、顔面整形されたビッグマイナーチェンジ後と同じデザインとなる。

デビュー当初は日産オリジナルのデフォルメが無く、エンブレムの変更程度だったが、

中期型以降のフロント(ウィンググリル)

2005年12月ではフロントデザインのデザインを日産仕様に変更。当時の日産共通デザインの「ウィンググリル」を取り入れた専用品で差別化した。これにより三菱版よりもスタイリッシュな顔つきとなる。

サイド

サイド。このあたりはミニキャブバンとまったく同じ。

タイヤサイズ、純正スチールホイール

足元は12インチスチールホイール。U71V/U72Vの純正タイヤサイズは145R12-6PR。

リア

リア。リアゲート真ん中に日産エンブレム、左側に車名の「CLIPPER」デカールが付く。ミニキャブバンと同じくハイロー独立式の4灯式テールランプは当時としても。現在でも珍しいテールランプ。

エンジン・機能装備・安全装備など

エンジンは自然吸気エンジンのみの設定。3G83型直列3気筒SOHC(リーンバーンエンジン)の最高出力48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。

トランスミッションはオートマミッションが3ATと4AT(※最上級GLグレードのみ搭載)。マニュアルが5MT。駆動方式はFRかパートタイム4WD。

パートタイム4WDでは時速80km以下であれば走行中にFRと4WDの切り替えが可能なイージーセレクト4WDを搭載する。さらに5MTではハイローの切り替え(副変速機)も付く。

安全装備としてはSRS運転席&助手席エアバッグ、フロントシートベルトプリテンショナーを標準装備。ABSはオプション設定となっていた。

初代クリッパーバンU71V/U72V型との違い、ハイルーフと標準ルーフの違い

初代クリッパーバンのU71VとU72Vとの違いは駆動方式。U71Vは後輪を駆動するFRのクリッパーバン。U72VはU71Vベースで全輪を駆動する4WDのクリッパーバン。

クリッパーバンの4WDシステムはパートタイム4WDで、運転者が任意にFRか4WDを切り替えるタイプ。普段は2駆で走行するため燃費が良いか、悪路に応じて自分で切り替える必要性があるのと、タイトコーナーブレーキング現象も発生するため取り扱いは少々難しい。

また、クリッパーバンのハイルーフ車とは標準ルーフよりも全高が少し高く、その分室内高も高いモデル。

クリッパーバンでは上級のGLグレードが全てハイルーフ仕様となり、DXやSDは標準ルーフまたはハイルーフの2種類となる。標準ルーフの全高が1785mmに対し、ハイルーフは1890mmと、約100mm程度高くなる(※乗用モデルのクリッパーリオはすべてハイルーフ仕様)。

ラゲッジスペースで背の高い荷物を乗せる場合や、より沢山の荷物を載せる場合はハイルーフを。それ以外は標準ルーフを選択しよう。

初代クリッパーバンU71V/U72Vの持病 4ATの不具合・故障

U71VとU72V(U61VとU62VのOEM)に搭載された4ATは不具合の事例が多く報告されている。これはミニキャブバンに限った話でなく、同年代の2代目パジェロミニ、トッポBJ、eKワゴンeKスポーツの4ATでも同様の不具合が見られる。

内容はバルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。これが発病すると冷間時に1速から2速へシフトアップするときに、ムチウチのような大きな変速ショックが発生しする。10分程度走ると不具合は消えるのだが、これを放置すると最悪ミッションが壊れて自走不可となる。

バルブボディまわりを交換や修理しすると治るケースがある(直らない場合はATのコンピュータ交換か、ミッション載せ替えが必要)。可能であればミッションそのものが故障し、高額修理となる前に修理することをオススメする。

クリッパーバンのベースモデルとなったミニキャブバン(タウンボックス)では2002年8月一部改良時に問題の部品(バルブボディ内のストッパープラグ)が対策品に交換されている。それ以前よりは故障しずらいが、まったく故障しないわけではないので注意が必要だ。

中古で購入する場合は、4AT搭載のミニキャブバン(GLグレード)でこれら変速ショックが無いか確認すること(※3ATの不具合はほとんど無いため3ATがオススメ)。

格安で購入しても修理に多額の費用がかかるとかなり痛い。また仕事で使おうと思っている人は故障して不動車となり、足が無くなると営業に支障を来しかねないので注意されたし。

インテリア(内装)

インパネ

インパネ。デビュー当初~2009年12月までのデザイン。パジェロミニにようにインパネ部にドリンクホルダーがなく、少々使いづらい。

2010年1月一部改良以降のインパネ。デザインが近代化され、インパネ両端のエアコン吹き出し口付近にドリンクホルダーが新規追加された。このほかオーディオ収納スペースも上部へ移動し、カーナビなどが使いやすくなる。

ステアリング

ステアリングはウレタンステアリング。

2009年12月以降のモデルではインパネ同様に近代化デザインとなる。

シフトノブ

ATのシフトノブ。フロアシフトを採用。

5MTのシフトノブもフロアシフト。

4WDモデルでは左側に副変速機のレバーが備わる。4WDへの切り替えはインパネに設けられたスイッチで行う。

スピードメーター

スピードメーター。2009年12月までは少しレトロふうな1眼式メーター。軽貨物らしい必要最低限でシンプルなデザイン。

2010年1月一部改良ではスピードメーターも刷新。より見やすく近代化改修された。クリッパーリオではタコメーター付きの3眼式に対し、クリッパーバンでは従来どおりでタコメーター無しの1眼式となる。

エアコン

エアコンはマニュアル式エアコン。

フロントシート

フロントシートはセパレートタイプ。ヘッドレスト一体型でサイトサポートが弱そうな質素なつくり。最上級のGXグレードのみシート表皮がファブリックシートとなる。

リアシート

リアシート。

ラゲッジスペース

ラゲッジスペース。軽バンなのでリアシートを立てた状態でもかなり広い。

リアシートを倒した状態。

初代クリッパーバンのまとめ

初代クリッパーバンの前期&中期モデルは、6代目ミニキャブバンのOEMモデルながら専用ボディカラーや、中期型以降では専用グリルなどで差別化。三菱版よりもスタイリッシュかつ洗練されたようなイメージをもたせた軽バンとなっている。

中身はミニキャブバンそのものなのだが、日産ブランドと追加の小変更により三菱のネガティブな部分が薄れており、安っぽさも感じさせない軽バンが日産クリッパーバンの特徴である。

中古市場では年数経過もありかなり安く購入できるモデル。ミニキャブバンよりもスタイリッシュかつ格安な軽バンが欲しい場合は選択肢のひとつといえる。注意したいのは4ATに持病的な問題を抱えているので、できれば5MTまたは3ATのモデルを選択するようにしたい。

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