NV100クリッパーは日産の軽ワンボックス型軽自動車。4ナンバーと呼ばれる軽商用車(軽バン・軽貨物)である。本稿では2代目DR64V型を扱う。
出典:日産認定中古車
2代目 日産・NV100クリッパーとは?
2013年8月にフルモデルチェンジし、2代目となった日産・NV100クリッパー。
2代目モデルは初代とは大きく異なり、三菱ミニキャブバンOEMモデルからスズキ・エブリイOEMモデルへとチェンジした。
これは三菱がミニキャブバンおよびミニキャブトラックの自社生産から撤退したためで、日産・軽バンの大きな分岐点となった。
OEM先をスズキに選択した理由としては当時、ワンボックス型の軽バンを自社生産していたのはダイハツ、ホンダ、スズキの3社のみ。
スズキに関しては以前からモコ(MRワゴン)や、ピノ(アルト)でのOEM実績があり、スズキ・エブリイを選択するのは自然な流れだった。
出典:日産認定中古車
特にスズキにしても日産の強力な販売網でエブリイの販売台数を稼げることになるのでメリットは大きかった。
2代目モデルはOEM供給にあたり、初代NV100クリッパーのようなデフォルメは一切されずエンブレムの変更程度のみ。グレード構成は初代を踏襲し、上級グレードにはターボエンジンも設定される。
エクステリアはエブリイと同じベーシックな顔つきにハイルーフ車ではリアバンパー埋込式テールランプの採用でリアゲートの開口部を大きく取り、荷物の積み下ろしを容易としている。
インテリアではベージュとグレーの2色を採用し、軽バンながらスタイリッシュかつシンプルな室内空間を演出。
インパネも収納スペースを多々もうけ、助手席インパネトレー、インパネフック、フロントカップホルダー、リッド付きインパネポケットハイルーフ車にはオーバーヘッドシェルフなど利便性を向上。
加えて上級グレードのGXとGXターボでは専用シートの採用で軽バンながら乗用モデルのような快適なシートを与えた。
出典:日産認定中古車
パッケージングは全車にインパネシフトを採用し、前席は左右ウォークスルーを実現。前席と後席に内蔵式乗降ステップを採用。
また乗り降りしやすいよう大型乗降グリップも使用。荷室長も1700mmを確保した。
エンジンはK6A型直列3気筒DOHCエンジンを全グレードに搭載。GXターボにはインタークーラー付きターボエンジンを設定。トランスミッションも先代と同じ5MTまたは3ATの2種類で、GXターボのみ4ATを設定する。
駆動方式はFRと4WDの2種類だが、GXターボのみフルタイム4WDで、これ以外はパートタイム4WDとなる。
L型ロアアーム+サスペンションフレームの新構造を採用し、サスペンションの取付け剛性を上げることで、操縦安定性と乗り心地を向上させた。
ボディにはハシゴ状のフレームや高張力鋼板を多用した新開発ボディーを採用し、万が一の歩行者への頭部衝撃を緩和する衝撃吸収構造をボンネットやフェンダーなど車体前部に採用。
乗員に対してはピラーやルーフサイドなどの一部に衝撃吸構造を採用した。
快適装備としてはパワードアロックを全グレードに標準装備。カテキン・エアコンフィルター付きのマニュアル式エアコン、AM/FMラジオ(JOINグレードはCD付き)を全グレードに標準装備も全グレードに標準装備とした。
安全装備としては運転席・助手席SRSエアバッグを全車に標準装備。GX系グレードにはセキュリティアラームシステムも標準装備とした。
NV100クリッパーDR64Vのグレード DX,DX GLパッケージ,GX,GXターボの違い
2代目NV100クリッパーのグレード構成は下から順にDX、DX GLパッケージ、GX、GXターボの4種類。
DXのみ標準ルーフ車が設定され、GXとGXターボはハイルーフ車のみとなる。
DXグレード
DXは廉価グレード。エブリイのPAに対応しドアミラーが樹脂タイプの未塗装&手動タイプ。後部座席やリアゲートのプライバシーガラスが未装備で、ホイールキャップも無し。
快適装備もキーレスエントリーやパワーウィンドウ、フロントスピーカーがレス仕様。ボディカラーも白とシルバーの2色のみとなるなど軽バンらしい質素な外観&装備となる。
DX GLパッケージ
DX GLパッケージはDXに快適装備をプラスしたエントリーグレード。スズキのPCに相当しプライバシーガラスを標準装備し、パワーウィンドウ、キーレスエントリーなど快適装備が標準装備となる。
また、ボディカラーも白とシルバー以外のブルーイッシュブラックパールを含めた合計3色が設定される。
GXグレード
GXグレードは上級グレード。フロントシートとリアシートがエブリイワゴンと同じ上級なシートに変更となり、快適性がアップする。
電動格納ミラーはつかないが、DX GLパッケージに対してフロントスピーカー、CDプレイヤー、EBD付きABSとセキュリティアラーム、リアシートが分割式シートとなるなど快適装備が増える。
GXターボ
GXターボはGXにターボを搭載した最上級グレード。
NV100クリッパーで唯一のターボエンジンを搭載し、このグレードのみタコメーター付きスピードメーターが備わる。
GXと同じくフロントシートとリアシートがエブリイワゴンと同じ上級なシートに変更となり、快適性がアップする。
なお、スズキ版のジョインターボは5MTの設定があったが、日産版では4ATのみとなる。
このほかEBD付きABSとセキュリティアラーム、CDプレイヤーも標準装備となる(ただし電動格納ミラーは非装備)。
2代目NV100クリッパーDR64Vとスズキ・エブリイ(DA64V)との違い、前期・後期の違いなど
OEM元の5代目エブリイ(DA64V)と2代目NV100クリッパーとの違いはエンブレムのみ。これ以外は全く同じで見分けは少々難しい。
グレード構成は若干異なり、スズキにあったPCグレードは直接設定されず、エブリイのPAが「DX」。PCは「DX GLパッケージ」。ジョインは「GX」、ジョインターボは「GXターボ」に相当する。
なお、初代時代にはミニキャブバンと同じ特別仕様車の設定があったが、2代目では一切なく基本グレードのみの展開だった。
エクステリア(外装)
出典:日産認定中古車
2代目NV100クリッパーは5代目エブリイがベース。日産仕様としてはボンネットのエンブレムがスズキマークから日産マークに変更となる程度であとは全く同じ。
出典:日産認定中古車
フォグランプを装着するとこのようになる。
出典:日産認定中古車
サイドから。軽バンらしいオーソドックスな箱型スタイル。ミニキャブバンベース時代とほぼ同じ見た目だが、荷室長はDA64Vベースの2代目の方が短く縦方向に少し狭くなった。
全グレードドアハンドルやドアミラーは樹脂タイプ。DXグレードはリアのプライバシーガラスが非装備。
出典:日産認定中古車
足元は12インチスチールホイール。タイヤサイズは145R12-6PR LT。
出典:日産認定中古車
GX系グレードではホイールキャップが標準装備。
出典:日産認定中古車
リア。5代目エブリイベースとなったことでハイルーフ車では引き続きテールランプがバンパー下部にくる。より開口部を広くでき、横方向に開口部が大きくなったので荷物の積み下ろしが楽になる。
出典:ガリバー
なお、標準ルーフ仕様のDXグレードのみエブリイワゴンと同じテールランプとテールゲート、バンパーが採用される。
出典:日産認定中古車
日産仕様としてはリアのエンブレムが日産マークに変更。車名デカールはスズキのリアゲート右下に対し、MV100クリッパーでは左下に貼り付けられる。
エンジン・機能
出典:日産認定中古車
エンジンはK6A型直列3気筒DOHC12バルブ自然吸気エンジンと同インタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジンの最高出力は49ps(36kW)/5800rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3500rpm。
トランスミッションは5MTまたは3AT、4AT(※GXターボのみ)の3種類。駆動方式はFRまたは4WD。ただしGXターボのみフルタイム4WDで、それ意外の4WDでは運転者による切り替え方式のパートタイム4WDとなる。
安全装備としては運転席・助手席SRSエアバッグを全車に標準装備。PC、GX系グレードにはセキュリティアラームシステムとABSも標準装備とした。
なお、自動ブレーキ類の装備は一切なし。
インテリア(内装)
出典:日産認定中古車
インパネ。先代とは異なりベージュとグレーの2トーンカラーを採用し、シンプルながらスタイリッシュなデザインとなる。
また、収納スペースも多く設定され、実用面や快適性もアップしている。が、先代にあったインパネドリンクホルダーは無く、少々不便か。
加えてハイルーフ車には初代に無かったフロントルーフ付近の収納スペース、オーバーヘッドシェルフが備わり書類やテッシュなど軽いものを収納可能となった。
出典:日産認定中古車
ステアリングは全グレードでウレタンステアリング。
パートタイム4WD車ではインパネにもうけられた4WDスイッチをON・OFFにすることで2WDと4WDを任意に切り替えて使う。
2代目ではAT、MTの両方でインパネシフトを採用し、運転席から助手席の移動を容易とした
5MTのシフトノブ。エアコンはマニュアル式エアコン。
出典:日産認定中古車
スピードメーター。DX系、GX系の自然吸気エンジングレードではタコメーター無しの単眼式のシンプルなメーター。文字盤も見やすく機能的。
出典:日産認定中古車
GXターボのみ乗用のエブリイワゴンと同じタイプのタコメーター付きメーターとなる。左がスピードメーター、右がタコメーターの2眼式。
出典:日産認定中古車
キーレスエントリーはスズキの商用車でよく見られる1ボタン式。ミニキャブベース時代は2ボタン式だったため、解錠か施錠なのかわかりずらいのは少々残念なポイント。
出典:日産認定中古車
DXとDX GLパッケージのフロントシート。ベースモデルの5代目エブリイはデビュー当初、廉価グレードでヘッドレスト一体型シートを採用していたが、保安基準対応たのめヘッドレスト分離式のセパレートシートへ変更された。日産へはこの仕様変更後がOEM供給されており廉価グレードでもこのシートとなる。
出典:日産認定中古車
GXとGXターボのフロントシート。ジョインやジョインターボに相当するグレードではDXよりもシート形状が良く、生地も上質なシートとなる。またドアトリムクロスもGX系グレードではシート生地と同じ色が採用される(DXはドアトリムクロスは無し)。
出典:日産認定中古車
DX系のリアシート。軽バンらしい簡易的なシートで長時間乗るのは少々つらい。
出典:日産認定中古車
GXとGXターボのリアシート。左右分割式のヘッドレスト付きシートで軽バンながら後部座席の快適性も高い。ただし乗用モデルよりも足元空間が少し狭い。
出典:日産認定中古車
ラゲッジスペース。軽貨物なのでリアシートを倒さない状態でもラゲッジスペースは広々。
出典:日産認定中古車
リアシートを倒した状態。2代目NV100クリッパーでは助手席を前側方向に倒すことが可能となり、長ものを積む場合に重宝する。
2代目NVクリッパーのまとめ
出典:日産認定中古車
2代目NVクリッパーはOEM元が三菱ミニキャブバンからスズキ・エブリイと変更となり、内外装が大幅変更。外装に至っては日産のデフォルメが無くなりほぼエブリイと同じOEMモデルとなった。
商用車でも日産らしい外観を求める人には残念なフルモデルチェンジだったが、引き続き日産から軽バンを買うことができたことは評価できるポイントでもある。
2代目NVクリッパーは5代目エブリイのモデル末期にOEM供給されため販売期間は2年ほど。すぐさまフルモデルチェンジし3代目へ移行した。そのため中古市場ではベースのエブリイより少ないものの、初代U71V/U72Vと同じぐらいタマ数があり、日産の販売網による賜福が確認できるモデルである。
中古価格は年数相応で、5代目エブリイとほぼ同程度。エブリイとは被りづらい変化球が欲しい人は2代目NV100クリッパーでも良いのかも。
この後の3代目では新型エンジンや軽量ボディ、5AGSに自動ブレーキなど最新装備が盛り込まれより完成度が高くなる。
燃費も3代目では良くなるため、予算に余裕がある場合は素直に3代目NV100クリッパーをオススメする。
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