スクラムバンはマツダの(軽貨物)ワンボックス型軽自動車で、スズキ・エブリイ(DA17V型)のOEMモデルである。本稿では5代目DG17V型に設定された特別仕様車、「PAスペシャル」を扱う。
出典:マツダ認定中古車
5代目 マツダ・スクラムバンとは?
2015年3月にフルモデルチェンジし、5代目となったスクラムバン。
マツダのスクラムバンはマツダを代表する軽ワゴンのAZワゴン(現在はフレアに改名)よりも長い歴史を持つOEMモデルである。
古くは1989年に2代目エブリイのOEM供給を受けてスタートし、OEM先のエブリイが乗用モデルとして「エブリイワゴン」と名前を改めたのを機にマツダでも乗用モデルをスクラムワゴンと変更し、乗用5ナンバーと4ナンバー・スクラムバンの2本立てに移行した。
その3代目となるスクラムバンとスクラムワゴンは2015年3月に登場。OEM元であるスズキ・エブリイワゴンのフルモデルチェンジから1ヶ月後のことであった。
エクステリアはスズキ版同様にそれまでのイメージを継承しつつよりスタイリッシュになったヘッドライトとこれに乗用モデルでは大型のメッキグリルを組み合わせスタイリッシュ感と精悍さを両立させたデザインとした。
荷室長もPCやPAグレードでは1910mm(※2名乗車でリアシート倒した状態)の長さでクラストップレベルを実現。
エンジンはそれまでのK6A型エンジンに変わり新世代のR06A型エンジンを採用。
低速域からのトルクと高速域での伸びやかな走りで軽快な走りと低燃費を両立。オートマチックトランスミッションも先代までの3ATに変わり5MTをベースにクラッチを自動化した5AGSを新規採用。
商用モデルでありながらワンランク上の部品で静粛性アップや低燃費化を実施した。これにより2駆(FR)の5AGSモデルでは20.2km/L(JC08モード)の低燃費を実現するなどフルモデルチェンジに相応しいメカニズムが与えられた。
低燃費化に関しては高張力鋼板などの使用範囲の拡大やエンジン、足回り、内装、電装部品などで軽量化を実施し先代比で最大40kgの軽量化を実現。
インテリアは機能性を重視し、ベージュを基調に包み込まれるような安心感と広々とした開放感に満ちた室内空間を実現した。
収納スペースもインパネドリンクホルダーやセンターミドルトレー、フロントドアポケットなどをインパネに効率よく配置。頭上の上にはオーバーヘッドシェルフの採用(※バスター、PCグレードのみ)でより利便性を高めた。
安全装備としては当時の軽ワンボックスタイプとしては初となる衝突被害軽減ブレーキ等を採用。グレード別に設定した。
スクラムバン(DG17V)とエブリィ(DA17V)との違い
スクラムバンとエブリィの違いはエンブレム程度で、内外装は同じ。
かつてのマツダ軽自動車はマツダオリジナルの専用デフォルメが与えられていたが、スクラムバンではそれがなく、5代目でもエンブレム違いのOEMモデルとなっている。
グレード体系はエブリィより少なく廉価グレード「PA」、ミドルグレード「PC」、上級「バスター」の計3種類。
ターボ仕様の「ジョインターボ」に相当するグレードは非設定で、全て自然吸気エンジンのみ&ハイルーフ仕様のみ(標準ルーフは非設定)。
ボディカラーの設定も少なく、上級バスターでも「ブルーイッシュブラックパール」を含めた3色のみ。ジョイン系グレードのカラフルなボディカラーは非設定。
一方でミニキャブバンやNV100クリッパーには非設定の特別仕様車がスクラムバンには設定されている。
特別仕様車 スクラムバン・PAスペシャルとは?PAリミテッドとの違いなど
PAスペシャルとは?
その5代目スクラムバンに2015年12月。廉価グレードのPAをベースに快適&実用装備や安全装備をプラスした特別仕様車が設定された。
そこがこの「PAスペシャル」である。
PAスペシャルとPAリミテッドの違い
PAスペシャルはエブリイに設定でも同時に設定されたPAリミテッド(レーダーブレーキサポート装着車)のOEMモデル。
ただし、本家にあった4WDの設定がなく2WD&ATの組み合わせのみ。
PAスペシャルの特別装備
PAスペシャルではPAに非装備だった
- 電波式キーレスエントリー
- リアのスモークガラス(ダークティンテッドガラス)
- 全面UVカット機能付ガラス
- セキュリティアラームシステム
を標準装備化。
さらに自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」を標準装備するなど軽貨物でありながら充実の装備をプラスした特別仕様車。
2019年7月の一部改良では自動ブレーキが「デュアルカメラブレーキサポート」にアップグレード。性能が大幅向上した。さらに
- タコメーター付き3眼式スピードメーター
- オーバーヘッドシェルフ
- オートライトシステム
も標準装備化し使い勝手や機能性がアップした。
2021年9月の一部改良では「フロントパワーウィンドウ」を追加で標準装備化。
PAスペシャルはカタロググレードに昇格し、PAリミテッド同様に継続販売されている。
エクステリア
フロントデザイン。5代目スクラムバンは先代のデザインと踏襲しつつ、ベーシックでありながらよりスタイリッシュなデザインになっている。
フロントからはPAスペシャル、PCスペシャルはほぼ同じ見た目なので区別は付きづらい。
ただしボディカラーが追加となった2019年7月以降はPCスペシャルで「ブルーイッシュブラックパール」が新設定となっており、黒色ボディカラーの場合はPCスペシャルかPAスペシャルかの見分けが付く。
ヘッドライトはマルチリフレクターのハロゲンヘッドランプでディスチャージなどのオプション設定は無し。
マツダ仕様としてはフロントのブランドマークがSマークからMマークに変更となる程度。これ以外はまったく同じ外観で、ボディカラーも「スペリアホワイト」1色のみ。
出典:日産認定中古車
サイドもベースモデルと同じ。PAスペシャルではPAに非装備のリアガラス、クォーターガラスにプライバシーガラス(スモークガラス)と、「セキュリティアラーム」も標準装備となる。
安い軽バンでありがちな「プライバシー無し仕様」からグレードアップする。
足元は12インチスチールホイールで、商用モデルらしくタイヤサイズは145/80R12。
リア。PAスペシャルとしてリアゲートガラスもプライバシーガラスを標準装備した。これ以外はPAグレードと同じ。
マツダ仕様としてはリアゲートのエンブレムがMマークに変更となり、車名デカールもSCRUMになる程度でエブリイとほぼ同じ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型直列3気筒自然吸気エンジンまたは同インタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジンは最高出力49ps(36kW)/5700rpm、最大トルク6.3kg・m(62N・m)/3500rpm。
2022年4月一部改良では排気側にも可変バルブタイミング機構を用いた改良型を採用。
最大トルクも若干抑えられ、自然吸気エンジンは最高出力49ps(36kW)/6200rpm、最大トルク6.1kg・m(60N・m)/4000rpmとなった。
ターボは非設定でトランスミッションもATのみ(※デビュー当初は5AGSが設定され、2019年7月の一部改良で4ATに置き換えられた)。駆動方式も2WD(FR)のみとなる。
「PAリミテッド・レーダーブレーキサポート装着車」がベースため、自動ブレーキのレーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPにABSがブレーキアシスト付きとなる。
2019年6月以降はレーダーブレーキサポートが「デュアルカメラブレーキサポート」にアップデート。加えて車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストも追加。
さらに後退時用衝突被害軽減ブレーキ「後退時ブレーキサポート」も追加され、誤発進抑制機能は前方に加え後方にも対応した。
スクラムバン(DA17V)の最大積載量 AmazonFlexで利用可
スクラムバンの最大積載量は全グレードで350kg。
最近登場したスペーシアベースでは最大積載量が200kgのため、AmazonFlexの条件に適合せず使えないが、スクラムバンはPAでもPC、バスター、PAリミテッドのいずれのグレードでもAmazonFlexで使える。
旧モデルで比較的手頃なダイハツ・10代目ハイゼットカーゴのクルーズターボでは最大積載量が200kgで条件に適合しない問題があるが、スクラムバンではその心配は無用だ。
もちろん、AmazonFlex以外にウーバーイーツやWoltなど地方のフードデリバリー配達や小口配達(個人の委託契約)にも使えるので、このあたりは一番応用力が高い軽バンでもある。
エブリイ(DA17V)の税金 軽貨物・4ナンバー登録で安い
スクラムバンは4ナンバー・軽貨物登録の軽自動車。
軽貨物で自家用登録だと1年間の税金が5,000円。乗用モデルのスクラムワゴンなどの一般的な5ナンバーの軽自動車は10,800円のため、年間5,800円浮く計算になる。
浮いた軽自動車税分は他の物を買ったり、12ヶ月点検や2年に一回の車検代に充当できる。仮にスクラムバンを10年保有すれば単純計算58,000円もの節税になる。
また、営業用として使う場合は「営業用貨物車」となり、年間3,800円とさらに安くなる。
ただし黒ナンバー登録(事業用)で使うと、乗用で使えた自動車保険が使えず、黒ナンバー専用の自動車保険が必要になり、これがかなり高いので軽自動車税が安いメリットはあまり無い。
インテリア
出典:マツダ自動車
インパネ。商用モデルのためベーシックなカラーだが、機能性を重視したデザインとなっている。
5代目からは新たな収納スペースとしてインパネドリンクホルダーやセンターミドルトレー、フロントドアポケット、オーバーヘッドシェルフ(2022年4月以降はオーバヘッドコンソール)などが追加されている。
PAスペシャルとしての変更点は特に無く、ベースモデルと同じ。
2019年7月の一部改良ではオーバーヘッドシェルフもPAスペシャルに標準装備となった。
出典:スズキ認定中古車
スピードメーター。デビュー当初~2019年5月までのPAスペシャルではベースモデルと同じシンプルな1眼タイプ。
出典:スズキ認定中古車
2019年6月の一部改良以降は、デュアルカメラブレーキサポートが適用されスピードメーターも変更。
右側の燃料残量計をデジタル化&マルチインフォメーションディスプレイを備え、自然吸気エンジンで自動ブレーキを備えた3眼式メーターとオートライトシステムがPAスペシャルに標準装備となった。
出典:スズキ認定中古車
ステアリングはウレタンステアリング。エアコンは全グレードでマニュアル式エアコン。
5AGS搭載の2019年6月以前のPAスペシャルではDモード時に左に倒すとATのマニュアルモードのようにシフトアップやシフトダウンを任意に選択可能となる。
2019年7月以降は4AT仕様となっため、マニュアルモードは非搭載。
出典:スズキ認定中古車
フロントシートはセパレートタイプ。PAスペシャルではヘッドレスト一体型シートを採用し、生地もビニール素材が用いられる。さらにドアトリムクロスは非装備。
出典:スズキ認定中古車
PAスペシャルのリアシート。軽バンらしいヘッドレスト無しの質素な一体可倒式シートとなる。シート表皮もビニールレザーで見た目はファブリック表皮に劣るが、汚れても拭きとりやすいなど機能性を重視する。
ただし、リアシートはバン仕様のためスライド機構とリクライニング機構は非装備となる。またリアガラスはPAスペシャル仕様としてスモークガラスを採用するが、窓自体は手動式ウィンドウで、パワーウィンドウがレスとなる。
出典:スズキ認定中古車
PAスペシャルのラゲッジスペース。
出典:スズキ認定中古車
PAスペシャルのリアシートを倒してフルフラットにした状態。
PAグレードと同じで配送などビジネスユースをメインとするためラゲッジスペースの素材は汚れても拭き取りやすいタイプ。
まとめ
5代目スクラムバンに設定された特別仕様車、「PAスペシャル」は、PAグレードをベースに快適装備や安全装備を標準装備しつつ、価格を抑えた特別モデルである。
スズキ版・エブリイのPAリミテッドとほぼ同じだが、標準で自動ブレーキを採用し、特に2019年7月以降のモデルであれば「デュアルカメラブレーキサポート」にアップグレードとなり、タコメーター付き3眼式メーターやオーバーヘッドシェルフなど使い勝手や機能装備が充実化する。
軽バンでありながら、価格を抑えつつも機能装備や快適装備にもそこそここだわりたい人には嬉しいモデルである。
中古市場では本家PAリミテッドに比べるとタマ数が全然なく、希少グレード。2WDで5AGSしか設定が無い点が降雪地帯ではネックだが、非積雪地域で2WDモデルでも問題ない場合は、廉価PAグレードよりも積極的に選びたいグレードといえる。
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