AZワゴンはマツダのワゴン型軽自動車。RRはそのスポーティーモデルでスズキ・ワゴンR RRのOEMモデルである。本稿では3代目AZワゴンに設定されていたRRについて記述する。
概要
2003年10月にフルモデルチェンジし、3代目となったマツダ・AZワゴン。
先代同様にスズキ・ワゴンRのOEM供給をうけて販売されるモデルである。3代目はベースモデルのフルモデルチェンジから一ヶ月遅れてのデビューとなった。
3代目AZワゴンは先代よりも一回り大きく、スクエア型のボディが特徴でこれにより室内空間が拡大。快適性や使い勝手をより向上させた。ドア開口部も先代より広くなり乗降性もアップしている。
インテリアでもスクエアボディと同じく水平感とフラットな空間を演出。シンプルでありながら開放的なデザインとした。また、ATのシフトレバーは足元空間が広く使えるコラムシフトを採用。AZワゴン(ワゴンR)はこの代から質感がアップしより近代的なモデルとなっていく。
プラットフォームも一新しスバルと共同開発した新サスペンションにより乗り心地や走行性・静粛性を向上。
スポーティーモデルのRRでは軽自動車初となる直噴ターボの搭載など、技術も大きく進歩した。また、車内の収納スペースを豊富に設定することで使い勝手も向上させた。
安全装備としてはそれまでのABSのみから積載重量に応じて後輪の制動力をコントロールし、リヤブレーキを最大限に機能させる「EBDシステム」(電子制御制動力配分システム)をABSにプラス。軽量衝撃吸収ボディーの「TECT」も一新しより安全性を向上させた。
3代目AZワゴンとAZワゴンRRの違い
標準モデルのAZワゴンに対し、AZワゴンRRはスポーティなカスタムモデルの位置づけ。スズキ版・ワゴンR・RRのOEMモデルで、先代に引き続き継続設定された。
RRでは専用ヘッドライト、専用グリル、バンパー、サイドアンダースポイラー、リアスポイラー、専用テールランプ、アルミホイールで迫力ある外観に。
内装でも専用ブラックインテリアと本革巻きステアリングで質感を高めている。エンジンも64馬力ターボエンジンと、RR専用の直噴ターボエンジンの2種類を設定し、低燃費とパワーを両立させたプレミアムな上級グレードとなっている。
3代目AZワゴン・RRと3代目ワゴンR・RRとの違い
マツダAZワゴン・RRと、OEM元のスズキ・ワゴンR RRとではグリルやエンブレムが専用デザインに変更される程度で、内装などは同じ。
ただし、グリルのデザインはマツダ共通のペンタゴングリルを採用し、ひとめでマツダとわかるデザインに変更されている。スズキよりも上質感がああり、人によってはAZワゴンを好みやすい。
他にグレード構成も同じで、RRと直噴ターボエンジンのRR-DIの2種類。ただしワゴンRには設定のあった特別仕様車、「RRーSリミテッド」はマツダへはOEM供給されなかった。
なお、3代目ワゴンR・RRは2005年9月にマイナーチェンジを実施し、フロントデザインが変更されたがマツダ版では外観のデザイン変更がなく、前期と同じ外観のままだった。
スズキ版ではオプション化されたディスチャージヘッドランプもAZワゴンではそのままで、内装はスズキと同じくインパネセンターガーニッシュやステアリングガーニッシュ、スピードメーターのデザインが変更された。
3代目AZワゴン・RRとRR-DIの違い
3代目AZワゴンのRRグレードとRR-DIグレードの大きな違いは搭載エンジン。
RRは通常の64馬力ターボエンジンモデルで、RR-DIは軽自動車初の直噴ターボエンジンを搭載したグレード。直噴ターボエンジンは他にセルボSRとワゴンR・スティングレーDIにも設定され最上級グレードの位置づけであつた。
このほかRRとRR-DIでは見た目は同じだが、快適装備などが異なりRRはマニュアル式エアコンにAM/FMラジオの組合せだったが、RR-DIではフルオートエアコンにAM/FM/CDプレイヤーが標準装備となっていた。
AZワゴンRRのエクステリア(外装)
フロントデザイン。AZワゴンRRはノーマルモデルとは一味違う顔つき最大の特徴。ヘッドライトはディスチャージ式を標準採用し、見た目にも迫力のあるデザインとなっている。
グリルはマツダ専用の物が与えられ、アイデンティティである五角形をあしらった形をしている。
サイドからは特に変更はし。足元は14インチアルミホイールを標準装備する。
リア。コンビランプはスズキ版と同じスポーティーなデザインのものが付いている。エンブレムまわりがマツダ専用担っている以外はベースと同じだ。
もしコンビランプを変更したい場合はスズキ用の社外品を流用することが出来る。ワゴンR用は数多く販売されているのでドレスアップも楽しい。
エンジン・機能装備
エンジンは3気筒のターボのみの設定。先代の2代目AZワゴン RRには2種類のターボ(60馬力のマイルドターボ&64馬力のハイプレッシャーターボ)が設定されていたが今回も同じように2種類用意。ただしマイルドターボはラインナップされず、従来型のSターボ「RR」と今回のモデルから初採用かつ軽自動車としても初となる直噴ターボエンジン(DIターボ)の「RR-DI」の2種類となる。
K6A型ターボエンジンは最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3500rpm。
K6A型直噴ターボエンジンは最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3500rpm。ちなみにスペック上は直噴ターボエンジンも通常のターボエンジンも同じ値となる。
トランスミッションは4ATのみで駆動方式はFFまたは4WD。この直噴ターボはスペシャリティカーのセルボSRにも採用された高効率なターボエンジンで、出力こそかわらないものの、カタログ燃費が非直噴よりも1km/lアップしている。
直噴ターボエンジンの注意点・不具合・要メンテナンス箇所など
AZワゴンRR-DIに搭載される高性能かつ低燃費なK6A型直列3気筒DOHC直噴ターボエンジンは、走行距離が増えてくると直噴エンジンゆえのトラブルや不具合が報告されている。
直噴エンジンはその構造上、エンジン内にスラッジやカーボン(ガソリンの燃え残りカス)が溜まりやすく、特に市街地でのストップ・アンド・ゴーなど低回転しか使わない乗り方では堆積しやすい。
カーボンやスラッジが堆積するとアイドリングが不安定になったり、アイドリング中にエンストしたり、燃費や加速が悪化してしまう。新車時ではきれいなので問題ないが、数万キロ~この問題が発生しやすく、直噴エンジンでは顕著に症状が出やすい。
これを解決するにはエンジンをオーバーホールして物理的にカーボンやスラッジを乗り除くか、強力なガソリン添加剤を投入して走行中に汚れを削ぎ落とす方法の2パターンがある。
オーバーホールでは高額なため強力なガソリン添加剤、株式会社AZのFCR-062やワコーズのヒューエルワンやを連続投入すると改善する可能性がある。
中古のセルボSRを購入または購入検討中の人、あるいはAZワゴンRR-DIやワゴンR・RR-DIに現在乗っているいる人は直噴ターボエンジンのカーボンデポジットに関しても考慮いただきたい。
AZワゴン・RRのインテリア(内装)
インパネはステアリングのエンブレム以外はベースと同じ。ステアリングは本革巻きステアリングで、RRがマニュアル式エアコン。RR-DIではフルオートエアコンとなる。
2005年9月マイナーチェンジ以降のモデル(後期型)ではインパネのセンターガーニッシュとステアリングガーニッシュのデザインが変更された。
スピードメーターはホワイトタイプを採用。右側がタコメーターで左がスピードメーターの2眼式。
なお、後期型ではブラック基調の自発光式メーターに変更される。
ステアリングは本革巻きステアリング。
フロントシートはセパレートタイプだがサイドのサポートが付いておりスポーティーな印象だ。
リアの足元は広い部類に入る。
それでいてラゲッジルームも広い。これはボンネットを切り詰めて室内空間を確保していることに由来する。
リアシートを倒した状態。
3代目AZワゴン・RRのまとめ
AZワゴンのRRは大ヒットしたワゴンR RRのマツダ版的な軽自動車である。
見た目はスズキに近いものの専用のグリルが与えられることでベースとは差別化し、マツダらしさが出ている。他のマツダ版軽自動車同様にベースのスズキ車を街で見かけることは多いがマツダ版はあまり見ないことが多く、他人と同じものを嫌う人にとっては選択肢となりそうだ。
もしワゴンRを探している人でちょっと違うワゴンRがほしいなと感じだらマツダ版を検討してみてはどうだろうか。
中古市場では年数経過もあり比較的安価に買えるモデル。ただしタマ数がワゴンR・RRに対して少ないので見つけづらいのがネック。また、直噴ターボエンジンは過走行気味だと不具合をかかえている場合もあるので、メンテナンスや対策が必要になるが軽自動車でも珍しい3気筒直噴ターボエンジンは所有欲を満たしてくれる1台である。
コメント