ekワゴンは三菱のワゴン型軽自動車。本稿では2代目の2008年8月マイナーチェンジ~2013年5月までを後期型と定義しこれを扱う。
2代目 三菱・eKワゴンとは?
2006年9月にフルモデルチェンジし、2代目となった三菱・eKワゴン。
2代目のフルモデルチェンジでは軽自動車史上の中でも異例で、キーコンセプトを踏襲し初代とほぼ同じボディスタイルとなった(ただし、ボディは流用ではなくルーフ以外は新設計)。
その中でも大きく変更されたのは外装ではヘッドライトとグリル、バンパー、リアコンビランプを刷新。特にリアコンビランプでは軽自動車初となるLEDストップランプを純正で全グレード標準搭載。
内装ではそれまでのコラムシフトからインパネシフトに変更し、新スピードメーターや新シートを採用。
また、乗用タイプの軽自動車としてはこれまた初となる電動パワースライドドアを一部グレードで採用(あわせてスライドドアイージークローザーも採用)し、初代のイメージはそのままに使い勝手を大きく向上させた。
さらに使い勝手も向上させ、新発想の「マルチポジションユーティリティ」のもと、同じ規格の取付部をインパネや助手席シートバック背面などに全車標準装備。
取付部に様々なユーティリティアイテムを自由に取り付け・移動・交換できるようにした。
これにより利便性や機能性を図るとともに、ユーザー自身の室内カスタムにも柔軟に対応させた。
2代目ではオーディオにもこだわり、6ポジションの8スピーカーシステムの「ハイグレードサウンドシステム」や、 HDD搭載のナビ付きオーディオ、「三菱マルチエンターテイメントシステム(MMES)」を新たにメーカーオプションとして設定。
エンジンは初代からのキャリーオーバーとなるが、触媒の改良などにより初代よりも排出ガスを低減。また、4AT(※FFのみ)に直結機構付きのトルクコンバーターを採用することで燃費向上も図った。
安全面では頚部衝撃低減フロントシートの採用、ボンネットの形状変更で歩行者保護に対応、衝撃吸収構造ステアリングコラム、衝突時のブレーキペダル後退抑制構造などを採用した。
2代目・後期型eKワゴンの改良点と前期型との違い
その2代目eKワゴンは2008年8月にフロントデザインの変更を伴うマイナーチェンジで、後期型となった。
後期型ではフロントグリルを大型化し上質感と親しみやすさをアップさせたほか、電動パワースライドドア搭載グレード(MSおよびGS)ではワッフルタイプの新シート生地を。
それ以外のヒンジドア(非スライドドア)モデルではベージュ系のメッシュタイプ生地の採用で内装をリフレッシュした。
さらにボディカラーに「ミントグリーンソリッド」、「サンフラワーイエローソリッド」、前期型・特別仕様車のブルームエディションで好評だった「サクラピンクメタリック」、「ダークブルーマイカ」の計4色を追加。
ユーティリティでは「マップランプ」、「運転席ドア限定アンロック」、「セキュリティーアラーム」、「コンフォートフラッシャー」を全グレード標準装備。
これ以外にもキーレスエントリーキーから簡単にカスタマイズ可能なETACS機能を強化し外観と内装、および機能面で充実化をはかったマイナーチェンジとなっている。
2代目・後期型eKワゴン(H82W)のグレード M、MX、MS、G、GS、マーブルエディションの違いなど
2代目後期型eKワゴンのグレード展開は廉価グレード「M」、上級4AT仕様「MX」、スライドドア搭載「MS」、最上級「G」、最上級スライドドア搭載「GS」グレードの全5種類。
これに子育て主婦向けの装備を充実させた特別仕様車「マーブルエディション」が設定されていた。
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M
2代目後期eKワゴンの廉価グレード。他のグレードよりも装備が若干簡略化され価格を抑えたグレード。
エクステリアではホイールキャップ、プライバシーガラスを標準装備。
快適装備はマニュアル式エアコン、パワステ、パワーウィンドウ、1DINタイプのAM/FMラジオ付きCDプレイヤー、電波式キーレスエントリーなどひととおり標準装備する。
トランスミッションは3ATと5MT。
安全装備は運転席&助手席エアバッグは標準装備だが、ABSがオプション設定となる。
MX
Mグレードの3ATを電子制御式4ATに置換した上級グレード。後期モデルで新設定された。
Mグレードの3ATと比較して巡航時の騒音が抑えられ、燃費も良くなる。
ただし、4ATに持病的な故障のリスクもあるため中古車を選ぶ時は状態をよく確認すること。
このほかMXグレードではアルミホイールや本革巻きステアリングをオプション設定するが、ABSが非設定。
MS
Mグレードをベースに助手席後方電動スライドドアを標準装備したグレード。
電動スライドドアにより使い勝手が大幅向上する。
G
2代目eKワゴンの最上級グレード。
外観はM系グレードと同じだが、MXと同じく電子制御式4ATを採用し、安全装備にはABSも標準装備する。
また、オプション設定でブラック内装(ブラックインテリア+本革巻きステアリング)が選択可能だった。アルミホイールもオプションで選択可。
GS
最上級Gグレードに助手席後方電動スライドドアを標準装備したグレード。
電動スライドドアにより使い勝手が大幅向上する。
特別仕様車 リミテッド
2009年8月設定の特別仕様車。
4AT搭載の「MX」グレードをベースに電動格納式リモコンドアミラー、パワーウィンドウ、マルチモードキーレスエントリーなど便利装備はそのままに装備を厳選し、お買い得した特別仕様車。
リミテッドでは上述の便利装備をそのままとする一方でコストカットのためオーディオと運転席バニティミラー、ホイールキャップなどを省略。
これによりベースモデルよりも5万2000円安くし、FFモデルでは新車価格が100万円を切る「99.8万円」とした特別仕様車。
特別仕様車 マーブルエディション
子育てママ向けに様々な装備を施した特装車。電動パワースライドドア搭載の「MS」と「GS」グレードがベース。
マーブルエディションでは授乳時に気になる視線から守る「カーテン」や、「ベビーカーホールドアタッチメント」、「ISO FIX対応チャイルドシート固定用アンカー」、「キーリングイルミネーション」や、「ラゲッジルームランプ」などが標準装備。
「赤ちゃん見るミラー」や「キッズピロー」が「マーブル エディション」、「キッズ用テーブル」を専用オプションとして設定。
フロントシートはあえてセパレートシートを採用し、後席の子供とのコミュニケーションをとりやすくした特別仕様車。
特別仕様車 ナビコレクションM/ナビコレクションMX
2011年1月設定の特別仕様車。
「M」グレードと「MX」グレードをベースにオプション設定の「7インチワイドディスプレイSSDナビゲーション[MMES](地上デジタルテレビチューナー[ワンセグ]付き)」を標準装備としつつ、価格を抑えたお買い得仕様車
エクステリア
フロントデザイン。前期はスタイリッシュかつベーシックな感じのグリルだったが、後期型ではこれを刷新。グリルそのものを大型化し、メッキで格子状に覆うことで上級感と親しみやすさを演出した。
ベーシックなモデルなだけにグリルデザインだけでかなり印象が変化している。これ以外ではバンパーのデザインも新しくなった。
サイド。このあたりは前期型と同じ。写真のボディカラーは特別仕様車のブルームエディションに専用設定された「サクラピンクメタリック」で、後期型モデルでは純正色として選択可能となった。
前期同様にMSおよびGSグレードでは助手席側のリアドアが電動パワースライドドアとなる。
足元は13インチスチールホイール+フルホイールキャップ。
リア。このあたりも前期と同じ。
コンビランプは全グレードでインナーメッキを使ったクリアーコンビランプ。ストップランプはLED化されている。なお、後期型ではそれまでエンブレムだった「eKWAGON」がシールタイプへ変更された(※eKスポーツを除く)。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3G83型の3気筒SOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は50ps(37kW)/6500rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpmを発生。
トランスミッションは3AT、4AT、5MTの3種類。ただし3ATと5MTは廉価グレードのMグレードのみで、それ以上では4ATのみとなる。駆動方式はFFまたは4WD。ブレーキアシスト付きABSを全グレードで標準装備する。
フロントデザイン変更直後ではエンジンの改良が無かったが次の2009年7月マイナーチェンジで走行抵抗の低減とFFの4ATモデルでエンジンおよびATの制御見直しで燃費がアップ。
FFの4ATモデルと4WDの5MTモデルで「平成22年度燃費基準+15%」を達成した。
安全装備のABSはGとGSに標準装備。Mグレードではオプション設定。MXには非設定となる。
2代目eKワゴン(H82W)の持病 4ATの故障、サーモスタットの劣化(オーバークール)など
eKワゴンの4ATにはバルブボディ破損によるトランスミッション故障のトラブルがある
2代目eKワゴンに搭載された4ATには有名なトラブルがある。他の三菱車(アイやパジェロミニ、タウンボックス、OEMのオッティ)でも同様のトラブルが報告されている。
※特に2代目前期(2006年8月~2008年10月以前)と初代eKワゴンの4ATモデルでは特に不具合が発生しやい
eKワゴンに採用されている電子制御式4ATのバルブボディ内のストッパープラグという部品に不具合(破損など)が生じて変速が上手く行われにくくなる。
これが発病すると修理が必要になり、放置すると自走不能な状態にまで発展する。
修理する場合もバブルボディーAssy交換だけなら10万コース。
最悪ATミッションの交換となった場合は、リビルト品と工賃で総額30万円ほどかかる高額修理となるケースも(※ミッション交換以外で安くなおる場合もあり)。
三菱自動車からもこの4ATのリコールが出ており、対策済みの個体であれば問題ないが、未対策や対策済みでも調子が悪い場合もある。
そのため4ATを搭載するeKワゴンを購入する場合は、一応2代目後期モデルでもかならず変速ショックがひどくないか、後退はちゃんど可能かどうか試乗して確認することをオススメする。
この年代の三菱製軽自動車はサーモスタットが弱い
もうひとつはサーモスタットの劣化。
同じくサーモスタットも不具合が起きやすく、10年や10万キロを越えた個体だとサーモスタットの弁が開きっぱなしになり、オーバークール状態になるケースがある。
このオーバークール状態だといつまで経っても水温計があがらずヒーターから温風が出てこなくなる。アイドリングも高くなりがちなので燃費も悪化してしまう。
いつまで経っても水温計が真ん中まで上がらず、ヒーターからもぬるい温風しか出ない場合はサーモスタットを疑う価値はある。
インテリア
インパネ。デザインやカラーは前期と同じ。後期型ではマップランプが全グレードで標準装備となった。
スライドドア搭載モデルでは右側に電動パワースライドドアのスイッチが付く。
ダッシュボード。
スピードメーター。デザインの変更は無いが2010年8月マイナーチェンジではエコランプが追加された。
最廉価のMグレードには引き続き5MTを設定。
フロントシートはベンチシートタイプ(※5MTのみセパレートタイプ)。後期型ではシート表皮が刷新され、スライドドア搭載モデルでは撥水加工を施した肌触りのよいワッフルタイプの新デザイン生地に。
非スライドドア(ヒンジドア)モデルではメッシュタイプのベージュ色ののシートに変更された。
リアシート(スライドドアモデル)。リアシートのスライド機構は非搭載。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
2代目後期eKワゴンの総評
2代目・eKワゴンの後期型は、上品になった顔つきと新しくなったマイナーチェンジとなった。
2代目前期ではスタイリッシュ感やベーシック感の強い顔つきだったが、後期型では上級路線に変更されイメージチェンジが施されている。好き好きは別れると思うが、好みによっては魅力的に見えるだろう。
ただ、後期型になっても依然として初代と同じ古いメカニズム(エンジンやトランスミッション)は健在で、他社がCVTを積極的に採用する中で主力は4ATモデルとなっていた。
廉価グレードに5MTを設定した点は評価出来るが、4ATではライバルに見劣りする部分があり特にモデル末期(2012年あたり)ではそれが顕著だった。
ただし、中古車としてみれば年数経過や2世代前のモデルのため中古価格はかなりお手頃。古いメカニズムではあるが街乗りオンリーであれば十分な性能を持っているため、比較的高年式&低走行でありながら購入しやすい価格は魅力的にうつるかもしれない。
特に昨今では少なくなった立体駐車場に入る全高のモデル(さらにグレードによってはスライドドア付き)でもあるため、安くて比較的新しい足車としての需要はまだまだありそうだ。
兄弟・OEMモデル 日産2代目オッティ
なお同時期にマイナーチェンジしたOEMモデル(日産版)の2代目オッティ(後期型)では三菱版のような思い切った変更はなく、前期のバージョンアップ的なデザインとなっている。
三菱版がしっくりこない人は日産版の2代目オッティ・後期型を確認してみると良いだろう。
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