N-BOX(エヌボックス)はホンダのトールワゴン型軽自動車。本稿ではデビュー当初(2011年12月)からフロントデザインの変更を行う前(2015年1月)までを前期型と定義し、これを扱う。
出典:ホンダ認定中古車
ホンダ 初代・N-BOXとは?
長く続いたホンダの軽売り上げ不振を払拭すべく、N計画の第1号として2011年12月にデビューしたN -BOX。
ライバルのタントやパレットよりも背の高い1.78Mという高さに、ホンダ得意のガソリンタンクを床下に設置するなど、とにかく車内の広さがこの車の売りだ。
またホイールベースも長く立てにも上にもまさにスーパーなワゴンに仕上がっている。タントやパレット(現行はスペーシア)の後出しということで、このあたりは研究しまくったという印象が強いモデルだ。
運転のしやすさも入念に考えられ、ミニバンと同等のアイポイントや死角を減らすサポートミラーの設定など、幅寄せや駐車を容易にした設計。
新開発のエンジンの採用や同社初のCVTの採用で、当時としてはクラストップレベルのを実現した低燃費と走行性能、軽量化や効率化を追求した新設計ボディの採用もホット。
使い勝手もセンタータンクレイアウトの採用で低床な室内を活用したシートアレンジを採用。また大開口のテールゲートで長くて大きい荷物の積み下ろし(自転車など)も快適とした。
安全装備としてはVSAとヒルスタートアシストをを全グレードに標準装備。サイドカーテンエアバッグを助手席サイドエアバッグをセットでタイプ別設定した。
「あんしんパッケージ」は初代N-BOXの2013年12月の一部改良以降に設定されたセットオプション。安全装備などの
- シティブレーキアクティビティシステム
(低速域衝突軽減ブレーキ + 誤発進抑制機能) - サイドカーテンエアバッグシステム
- 前席用i-サイドエアバッグ
をセットにしたオプション。2代目モデルでは「ホンダセンシング」として一部を除いて自動ブレーキなどの安全装備は標準装備化されているが、初代では一部を除いてオプション扱いだった。
初代・前期N-BOXのグレード G、G・Lパッケージ、GターボLパッケージ、2トーンカラースタイルの違いなど
初代前期N-BOXのグレード構成は下から順番にエントリー「G」、上級「G・Lパッケージ」、上級ターボ仕様「GターボLパッケージ」。
上級2トーン仕様「2トーンカラースタイルG・Lパッケージ」、上級2トーンターボ仕様「2トーンカラースタイルG・ターボLパッケージ」の5種類。
これ以外の特別仕様車には「SSパッケージ」、「ターボSSパッケージ」、「2トーンカラースタイルSSパッケージ」、「2トーンカラースタイルSSターボパッケージ」の4種類がある。
派生モデルのN-BOX+(エヌボックスプラス)、カスタム仕様のN-BOXカスタムについてはこちらから。
Gグレード
初代N-BOXのエントリー(廉価)グレード。装備が一番シンプルで価格が最も安いモデル。
上級のG・Lグレードと比較して
パワースライドドアが非装備(手動スライドドア)、
サイドエアバッグ+カーテンエアバックは非設定で、エアコンがマニュアル式エアコン。
アレルクリーンシート、ハーフシェイド・フロントウインドウ、リアセンターアームレスト、2色インパネ、インパネ加飾、フロアカーペットも非設定&非装備で簡略化される。
また、エクステリアではホイールキャップで見た目も貧相。
ただしベーシックといえど
- スマートキー
- イモビライザー
- プッシュ式エンジンスタート
- チルトステアリング
- 電動パワステ
- パワーウィンドウ
- パワードアロック
など快適装備は一通り標準装備する。
なお、2013年12月の一部改良でマニュアル式エアコンが廃止され、プラズマクラスター搭載フルオートエアコンに置き換えられた。
さらに自動ブレーキの「あんしんパッケージ」がオプション選択可能となった。
G・Lパッケージ
初代N-BOXの上級グレード。Gグレードよりも内外装の装備が豪華になる。
外装では
- 左側電動パワースライドドア(リア右側はオプション設定)+両側イージークローザー
- ハーフシェイド・フロントウインドウ
- 14インチアルミホイール
を標準装備。
インテリアでは
- アレルクリーンシート
- リアセンターアームレスト
- ブラウン&ベージュの2トーンインパネ
- ガーニッシュ付きステアリングホイール
- シルバー塗装オーディオガーニッシュ
- ベージュ・フロアカーペット
などを標準装備。
快適装備にはアレルフリー高性能脱臭フィルター付きフルオートエアコンを標準装備。サイドエアバッグ+カーテンエアバックをオプション設定する。
なお、2013年12月の一部改良で「アレルフリー高性能脱臭フィルター付きフルオートエアコン」が「プラズマクラスター搭載フルオートエアコン」に置き換えられた。
さらにこの時にG・Lパッケージでも「ディスチャージヘッドランプ」と「あんしんパッケージ」がオプション選択可能となった。
G・ターボLパッケージ
デビュー当初は無かったが、2012年12月に追加設定された標準N-BOXの最上級ターボ仕様グレード。
G・Lパッケージの装備内容に加えて
- クルーズコントロール+パドルシフト
- 両側パワースライドドア
- 本革巻きステアリング
- クロームメッキエアコンアウトレットノブ/リング
が標準装備。加えてターボLパッケージでは「ディスチャージヘッドランプ」がオプションで選択可能。
2013年12月の一部改良では「あんしんパッケージ」が選択可能となる。
2トーンカラースタイルG・Lパッケージ
2013年12月に追加設定された2トーンカラーグレード。G・Lグレードをベースにボディカラーを2トーンカラー専用とした上級グレード。
ボディカラーは新色で2トーンカラーの
- 「チェリーシェルピンク・メタリック×ブラック」
- 「プレミアムブロンズ・パール×ホワイト」
- 「プレミアムダイナミックブルー・パール×ホワイト」
の3色のみ。ルーフ部分とドアミラー&アルミホイールで色塗り分けがなされる。
装備内容はG・Lパッケージとほぼ同じだが、インパネとドアガーニッシュがボディ同色塗装に変更され内装にポップ感が出る。
2トーンカラースタイルG・ターボLパッケージ
上記2トーンカラースタイルG・Lパッケージのターボ仕様版。
2トーンカラースタイルG・Lパッケージに追加で
- パドルシフト
- クルーズコントロール
- 本革巻きステアリング
- 両側パワースライドドア
が標準装備となる。ディスチャージヘッドランプはオプション設定。
特別仕様車 SSパッケージ/ターボSSパッケージ
2013年5月登場の特別仕様車で、N-BOXを生産する本田技研の鈴鹿製作所の名称が付いたモデル(SS:スズカスペシャル)。
SSパッケージではG・Lパッケージの装備に加えて
- 両側パワースライドドア
- クロームメッキ(
アウタードアハンドル/セレクトレバーボタン/エアコンアウトレットノブ/リング) - シルバーリング塗装ドリンクホルダー(運転席/助手席)
- シルバー塗装メーターリング
- 運転席ハイトアジャスター(ラチェット式)
- 4WD仕様ではシートヒーター(2WDにはオプション設定)
を標準装備する。
ターボSSパッケージでは
- ディスチャージヘッドランプ
- パドルシフト
- クルーズコントロール
- ブラックインテリア
- 本革巻きステアリング
- クロームメッキインナードアハンドル
- セレクトレバーボタン
が追加で標準装備。
第1弾のSSパッケージ/ターボSSパッケージについてはこちらから。
特別仕様車 2トーンカラースタイルSSパッケージ/2トーンカラースタイルSSターボパッケージ
前期・2トーンカラースタイルSSパッケージの特別装備
2014年5月設定の特別仕様車。2トーンカラースタイルにSSパッケージを適用したモデルで、SSパッケージの第2弾。
ノーマルの2トーンカラースタイルには非設定で、2トーンカラースタイルSSパッケージ専用色の「イノセントブルー・メタリック×ホワイト」を新設定。
「プレミアムブロンズ・パール×ホワイト」、「プレミアムダイナミックブルー・パール×ホワイト」を含めた3色のボディカラーのみを設定する。
これ以外は2トーンカラースタイルG・Lパッケージと同じ装備だが、インテリアにブラックインテリアが採用され、カスタムのような雰囲気となる。
前期・2トーンカラースタイルSSターボパッケージの特別装備
2トーンカラースタイルSSターボパッケージは上述の2トーンカラースタイルSSパッケージに追加で
- パドルシフト
- 本革巻きステアリング
- クルーズコントロール
- ディスチャージヘッドランプ
を標準装備する。
2トーンカラースタイルSSパッケージ/2トーンカラースタイルSSターボパッケージについてはこちらから。
初代・前期型N-BOXのエクステリア(外装)
出典:ホンダ認定中古車
フロントデザイン。オーソドックスかつベーシックといった感じの顔つきで万人受けしやすいデザインがN-BOXの特徴だ。
タントと(当時はパレット)スペーシアの中間ぐらいというフロントフェイスは両者のいいとこ取りだろうか。ヘッドライトは箱型ボディにあわせてスクエアを基調とし、わずかに曲線を与えることで若干のスタイリッシュさを表現。
これにオーソドックスなグリルと太めのメッキラインでフロント部分を控えめながら精悍に仕立てている。
出典:ホンダ認定中古車
サイドから。このあたりはタントやスペーシアと似たり寄ったりだが、エヌボックスではリアハッチ部分がわずかに傾斜し、フロントガラスの傾斜がきつくなっている。
フロントガラスにはUVカット機能付ガラス、フロントコーナとフロントドアににはそれぞれ高熱線吸収とUVカット機能付ガラスを装着。リアドアやテールゲートにもには高熱線吸収ガラス、高熱線吸収/UVカット機能付プライバシーガラスを装着する。
出典:ホンダ認定中古車
スライドドアは両側装備で、G・Lパッケージでは後部左側が電動パワースライドドア(タッチセンサー/挟み込み防止機構付)となる。
さらにG・Lパッケージではスライドドア・イージークローザーも備わる。これ以外にドアにはセキュリティアラームが全グレードで備わり、ロックされたドアをムリに開けようとすると、光や音で警告を発する。
ドアはスマートキーシステム仕様でワンタッチでロックを解除。ドアミラーはリモコン操作で格納出来る。
足元は13インチスチールホイール+ホイールキャップでタイヤサイズは145/80R13。ターボ仕様のターボパッケージでは14インチアルミホイール(タイヤサイズ155/65R14)を標準装備する。
出典:ホンダ認定中古車
リアは最近流行りのLEDブレーキランプにクリアーコンビランプ。ライバルとは違うデザインで個性が出ている。
エンジン・機能装備・自動ブレーキなど
出典:ホンダ認定中古車
エンジンは新開発のS07A型3気筒自然吸気エンジン。最高出力は58ps(43kW)/7300rpm、最大トルクは6.6kg・m(65N・m)/3500rpm。
バイク屋のホンダらしいエンジンで、自然吸気エンジンであっても最高出力や最大トルクがかなり高めなのが特徴だ。これにホンダとしては軽初となるCVTが組み合わされる。
なお、ターボモデルはデビュー当初N BOXカスタムのみの設定だったが、1年後の2012年12月マイナーチェンジで「ターボパッケージ」グレードとして追加された。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは10.6kg・m(104N・m)/2600rpm
駆動方式はFFか4WDで、雪国にはうれしいVSA(横滑り防止装置)とヒルスタートアシストが標準装備となっている。
安全技術としては2012年12月マイナーチェンジでエマージェンシーストップシグナルを標準装備。2013年12月マイナーチェンジではオプション設定として「あんしんパッケージ」を導入。
シティブレーキアクティブシステム、サイドカーテンエアバッグシステム、前席用i-サイドエアバッグシステムをひとまとめにしたオプションで、ホンダの軽自動車としては初の自動ブレーキ技術であった。
初代・前期N-BOXの持病 CVTの不具合について、ガラガラ、ギー、ゴーなど変なうなり音がする原因など
NシリーズのCVT不具合の内容と原因
初代の前期型N-BOXのCVTは、走行距離が増えるとミッション内部の加工片が偶発的にドリブンプーリーベアリング内部に噛み込み、ベアリング内部の軌道面が剥離して異音が発生するケースがある。
これに関してはホンダからCVTの延長保証が出ており、不具合が発生しやすいようだ。
特にCVTフィールドを定期的に交換していないと異音が発生しやすく、一度も交換していないようなN-BOXは発生の可能性が高くなる(初代N-BOXのCVTフィールドは4万キロごとが交換推奨時期)。
※ただし定期的な交換をしている場合でも走行距離によっては異音が発生するケースもあり
そのまま放置し続けると加速不良から走行不能にまで発展するため、乗り続ける場合はかならず対処が必要となる。
なお、N-BOX以外にN-BOXカスタムや同年代のN-WGNやN-ONEなどNシリーズとS660の前期モデルの一部で同様の不具合が発生している。
保証期間
①初度登録日から経過、6年未満の車両
5年または10万km以内 ⇒ 7年または10万km以内
②初度登録日から経過、6年以上の車両
5年または10万km以内 ⇒ 保証期間延長開始後から1年または10万km以内
CVT不具合に対する修理費用について
万が一この現象が出ているモデルで保証期間がすぎると自己負担による有償修理(ミッション載せ替え)が必要。不具合の部品だけの交換は難しく、トランスミッション丸ごと(ASSY)交換となる
新車登録年以外に10万キロ以上の車では保証外なため、8年落ちの個体や10万キロ超過の過走行車を買う場合は要注意。
購入後に不具合が発覚しても保証外なため自腹修理となり、ミッション本体と工賃をあわせると約30万円ぐらいの高額修理になる場合がある。
そのため中古で初期モデルのN-BOXカスタムを買う場合はこの不具合が出ていないか、あるいは対策済みなどかを確認してから購入することを強くオススメする。
初代・前期型N-BOXのインテリア(内装)
出典:ホンダ認定中古車
インパネ。ノーマルタイプではベージュ系の内装となる。エンジンスタートはプッシュスタート式でイモビライザー付き。
出典:ホンダ認定中古車
スピードメーターは自発光式メーターを採用。全グレードでタコメーター付き。エコ運転中はパネル部分をグリーンでお知らせする。
出典:ホンダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。
出典:ホンダ認定中古車
リアシート。
出典:ホンダ認定中古車
リアシートはスライド機構を備える他、このようにラゲッジルーム側にも折りたためるチップアップ機構を搭載。荷物を乗せたり、子供が着替えをしたりと様々な使い方が可能だ。
出典:ホンダ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:ホンダ認定中古車
後部座席を倒すととても広いエリアが出現する。
初代・前期N-BOXの総評
N BOXはライバルの後出しだけあって、広さや走りにおいても一つ上をいく出来になっている。またデビュー当初からVSAが標準装備となっていて、これは軽自動車においては非常に珍しい装備であった。
トールワゴンタイプを探している人にはまず選択肢として入れておきたい1台である。ノーマルモデルではデビュー当初、ターボエンジンの設定が無かったが、後に追加されたためパワー不足を感じる人はノーマルモデルでもターボエンジン仕様を選ぶと良い。
特に車重が1トン近くもあるので普通車感覚の人にとっては自然吸気エンジンでは物足りなさを強く感じる。
また上述したとおり初代・前期型N-BOXのCVTには持病的なトラブルがあるので、対策済みか交換済みあるいはトラブルが発生していない個体を選ぶようにしたい。
なお、2015年2月にはフロントデザインを変更し後期型へ移行。外観がより上質となった他、燃費向上や標準でインテリアのブラック化、360度対応のスーパーUV/IRカットガラスなどデビュー当初よりも改善点が多いため新車の予算がある場合は後期型も検討されたい。
初代・前期型N-BOXは年数経過・旧モデル化で値ごろな価格帯に
中古市場ではかつては初代の前期型でも意外といい値段が付いたが、年数経過や3世代前の初代モデルとうこともあり、値ごろ感が出てきた。
一方でCVTトラブルで交換修理になった場合はリビルド品でも高額出費になるため、その点は注意したいところ。
スーパーハイトワゴンにこだわらないのであれば、同年代の同年式であれば背の低いアルトやミライースなどに比べると割高感があり、燃費もあまり良くないのでそこれはトレードオフ。広さがさほど重要でないのならアルトエコ、アルト、ミライースあたりを選んだほうが良い。
なお、同じスーパーハイトワゴンでも値段で選ぶ場合は同年代のスズキ・パレットや、OEMの日産ルークス、ダイハツの2代目タント後期型あたりはより安価で買いやすい。
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