アルトはスズキのハッチバック型軽自動車。本稿では8代目のHA36SおよびHA36V型を扱う。
出典:スズキ認定中古車
スズキ 8代目・アルトとは?
2014年12月にフルモデルチェンジし、8代目となったスズキ・アルト。
8代目のアルトは個性と実用性を両立させた独特のエクステリアに新世代プラットフォームと徹底した軽量化、新型エンジンに新型トランスミッション、広くなった室内空間に先進の自動ブレーキとフルモデルチェンジに相応しい相当なアップデートとなった。
①シンプルかつスタイリッシュなデザイン
8代目アルトの外観はシンプルさの中に美しさや品格を追求。特に眼力を追求したヘッドライトに特徴的なフォルム、バンパー下部に移動したコンビランプに大きなリア開口部などデザインと実用性を両立させている。
②アルトエコよりもさらに進んだ低燃費としっかりした走り
新プラットフォームには軽量衝撃吸収ボディー、「テクト」を採用。エンジンは新世代のR06A型エンジンを大幅改良し低中速の動力性能を高めつつ燃費性能を大きく向上させた。
トランスミッションは副変速機付きCVTを車体の軽量化に伴い変速比を最適化。
バングレードではそれまでの3ATから5AGSの採用により先代の3ATモデルよりも大幅な燃費向上とダイレクトな走りを実現。
低燃費技術としては「エネチャージ」と「新アイドリングストップシステム」と「エコクール」をグレード別に設定。
ボディは最大で約60kgの軽量化。一番軽いグレードで約610kgを実現し自然吸気エンジンながら軽快な走りと高燃費を実現。
さらに軽量化しつつ剛性を確保したテクトにより走りそのものも良くなっている。
③快適な室内空間にイージードライブ
新プラットフォームの採用により2460mmのロングホイールを実現。
室内長はクラストップレベルの2040mmで前後の乗車間距離は900mmを実現。先代よりも室内空間が広くなった。
また、チルトステアリングを上級グレードで採用しドライビングポジションを調整可能としたほか、豊富な収納スペースを用意し扱いやすさも向上。
最小回転半径は4.2mと軽自動車としての小回りの良さも踏襲されている。
④先進安全技術を搭載
レーダーを使った自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」をグレード別に設定。
スリップや横滑りを抑えるESPは全グレードに標準装備。ヒルホールドコントロールはグレード別。シートベルトリマインダーを標準装備とした。
2018年12月には自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」がステレオカメラとセンサーを併用した「デュアルセンサーブレーキサポート」にアップデート(2型改良)。
誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストを搭載し、安全装備を充実させた。
また、リヤバンパーに内蔵した4つの超音波センサーによる「後退時ブレーキサポート」も設定。あわせて後方誤発進抑制機能、リヤパーキングセンサーを搭載している。
8代目・H36S型/HA36Vアルトの2型、3型の改良点と違い
2018年12月・2型改良
2018年12月の一部改良(2型)では自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」が「デュアルセンサーブレーキサポートに」アップグレード。
衝突被害軽減ブレーキに対歩行者への動作も可能となったほか、「後退時ブレーキサポート」、車線逸脱警報機能やハイビームアシストも追加された。
また、内装色も「ネイビー」を新採用。インパネやドアトリムのカラーも「グレージュ」を採用するなどインテリアのリフレッシュが行われた。
さらに上級グレードではディスチャージヘッドライトをオプション設定とした。
2020年10月・3型改良
2020(令和2)年10月の3型改良ではLとL(スズキセーフティサポート装着車)」に電動格納式カラードドアミラーを標準装備化。
Sグレードにはオートエアコンを標準とした。さらにボディカラーには新色の「フェニックスレッドパール」を追加設定し全7色とした。
さらに新グレードとしてディスチャージヘッドランプ、キーレスプッシュスタートシステム等を搭載した「S(アップグレードパッケージ装着車)」、バックアイカメラを搭載した「S(アップグレードパッケージ・バックアイカメラ装着車)」を追加設定した。
また全グレードで国交省のオートライト義務化に伴いオートライトを標準装備化。ヘッドライトのOFFスイッチが廃止されて常時ONのみの仕様となった。
8代目アルト(HA36S/HA36V)のグレード VP,F,L,S,Xの違い
8代目アルトのグレード構成は軽バン(4ナンバー軽貨物)がVPグレードで1種類。
乗用モデル(5ナンバー)は廉価グレードがF、ミドルグレードがL、上級グレードがS、最上級グレードがXで全4種類。
これ以外に特別仕様車が1種類設定された。
ターボ仕様のアルトターボRSとアルトワークスについてはこちらから。
VPグレード
8代目アルトの軽貨物グレード。
装備が8代目の中で最も簡易的でかつリアシートの足元が極端に狭く、その分ラゲッジスペースが広い実質2名乗車の経済グレード。
出典:スズキ認定中古車
安いといっても快適装備は一通り付いており、パワーステアリング、キーレスエントリー、集中ドアロック、マニュアル式エアコン、スピーカー内蔵型AM/FMラジオ、セキュリティアラームシステムを標準装備する。
一方で、電動格納ミラーは非装備(手動式ミラー)。パワーウィンドウはオプション設定。ホイールキャップも無し。安全装備は運転者&助手席エアバッグとEBD付きABSを標準装備する。
装備が簡略化されているがため車重も軽く(5MT・FFモデルで610kg、5MT・4WDでも670kg)、軽快な走りと低燃費もアルトバンの特徴となっている。
さらに4ナンバー貨物登録ゆえに1年間の税金(軽自動車税)もHA36Sより安い。
Fグレード
8代目アルト・乗用モデルの廉価グレード。乗用モデルの中では装備が最も簡易的でその分価格が安いグレード。
エクステリアでは手動ドアミラーに非塗装のアウタードアハンドル、スチールホイール+ホイールキャップを標準装備する。
快適装備のスモークガラス(プライバシーガラス)は非装備で、VPグレードに近い雰囲気もある。また、前席のみパワーウィンドウを標準装備し、リアは手動ウィンドーとなるなど、簡略化がなされている。
トランスミッションに5MTの設定があり、VP以外の乗用グレードの中では隠れた人気グレードだった。
Lグレード
8代目アルトのミドルグレード。快適装備がLグレードよりも拡充され、乗用モデルらしい装備となる。
Lグレードではエクステリアのアウタードアハンドルをボディ同色化。
パワーウィンドウが全席に標準装備となり、4WDモデルでは運転席&助手席シートヒーターを標準装備する。
ただし、電動格納ミラーはオプション設定(※ただし、2020年10月の3型改良以降は標準装備化)。
トランスミッションはCVTのみとなるが、燃費性能は5MTモデルよりも良くエコカー的な側面も持つ。
Sグレード
8代目アルトの上級グレード。FやLよりも内外装が良くなる。
エクステリアにはボディ同色の電動格納ミラーを標準装備。
UVカットガラスを全ガラスに適用。さらにプライバシーガラスがリアドアとリアハッチガラスに標準装備となり、運転席シートリフターも標準装備となる。
自動ブレーキの「スズキセーフティサポート」がSグレードから標準装備となり、見た目や機能装備&安全装備が充実する。
Xグレード
8代目アルトの最上級グレード。Sグレードに追加でさらに装備が充実する。
エクステリアには8代目アルト唯一となる、15インチアルミホイールを標準装備(※ノーマルは13インチスチールホイール)。
アンテナも伸縮式のピラーアンテナが可倒式のルーフアンテナに変更。LEDターンランプ付きドアミラーやディスチャージランプを標準装備する。
ボディカラーもバックドアをボディカラーとは異なる2色に塗り分けた「2トーンバックドア」をオプションで選択可能。
内装ではフルオートエアコンにキーレスプッシュスタートシステムを標準装備し、見た目や快適装備が豪華になる。
なお、Xグレードは2020年10月の3型改良で廃止。以降はSグレードが最上級グレードとなった。
特別仕様車 Lリミテッド
Lリミテッドは2019年6月設定の特別仕様車。アルトが誕生して40周年を記念して設定。
出典:スズキ認定中古車
Lリミテッドではミドルグレードでデュアルセンサーブレーキサポートを装備した「L スズキ セーフティ サポート装着車」をベースにエクステリアでは電動格納式リモコンドアミラー、カラードドアミラー、4WD仕様にはヒーテッドドアミラー、リアドアとバックドアにスモークガラス、全面にUVカット機能付きガラス、40周年記念エンブレムを。
インテリアにはブラック内装を採用。
ブラックカラーのインパネカラーパネル、ピアノブラック調ドアアームレスト、サテンメッキ調のエアコンサイドルーバーリング、同じくサテンメッキ調のエアコンセンタールーバー、メッキインサイドドアハンドルを。
ボディカラーには40周年記念特別設定となる「ブリスクブルーメタリック」を含む全5色を設定しつつ大変お買い得とした特別仕様車。
8代目アルトのエクステリア(外装)
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。8代目の大きな変更点は外観だ。先代ともその先代とも似つかない個性的なスタイリングはまるで初代アルトを彷彿とさせるような原点回帰となっている。
アイラインを強調したメガネのようなヘッドライト部分は可愛らしさとエレガントさを掛けあわせており、好き好きは別れてしまうが個性的なデザインだ。
現行の他社ではこのような顔つきの軽自動車は見かけないので非常に斬新。このデザインを手がけたのは日産やアウディでもデザインをしたことがある和田智氏ということで、ベーシックな軽自動車でありながらデザインにはかなり力が入っている。
出典:スズキ認定中古車
横から。ハッチバックタイプだが少し背が高め。ただ、全体のデザインとのバランスがとれており後部の窓あたりなどは独特の形をしている。
LEDターンランプ付きドアミラーは最上級のXグレードのみ付く。Sグレードでは電動格納式ドアミラー。Lグレード以下では手動式の無着色ドアミラーとなる。
出典:スズキ認定中古車
足元は13インチのフルホイールキャップ&スチールホイール。
出典:スズキ認定中古車
上級グレードのXのみ15インチアルミホイールとなる(※2020年10月以降はXグレードが廃止)。
出典:スズキ認定中古車
リア。先代まで歴代のアルトはハッチバック横にコンビランプを装備していたが8代目ではバンパー部に移動。ちょうど初代ワゴンRをも連想させるデザインで、懐かしくも新鮮さがある。
コンビランプがバンパー下部に移動したことでリアゲートの開口部が拡大。特に日常的に仕事や運搬で使うバングレードにおいて荷物の積み下ろしがしやすくなった。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:スズキ認定中古車
エンジンはR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。
最高出力52ps(38kW)/6500rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpmを発生。
トランスミッションはグレード別で上級からミドルグレードの「X」と「S」と「L」グレードがCVTのみ。FとLが5MTまたは5AGSを設定する。駆動方式はFFまたは4WD。
AGSとはオートギアシャフトのことで、既存のMTをベースにクラッチ操作を自動化。ATのような操作感覚でMTのダイレクトな走行感や加速感が得られるスズキの新しいトランスミッションだ。
廉価グレードのFとバンのVP以外ではエネチャージシステムを装備し、レーダーブレーキサポートと誤発信抑制機能はグレード別設定。エマージェンシーストップシグナルはバンを除く全グレードで標準装備。
2018年12月以降はレーダーブレーキサポートがアップデートし、「デュアルセンサーブレーキサポート」としてグレード別に設定。
ステレオカメラとレーダーを併用したスズキの新世代システムで、デビュー当初のレーダーブレーキサポートに比べ歩行者検知が可能となり、動作範囲も約5km/h~30km/h以下から、約5km/h~100km/h以下までにアップデートされている。
これにより高齢運転者に推奨する「セーフティ・サポートカーS」(サポカーS)のワイドに相当する車種となる。これ以外に誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能、ハイビームアシストも搭載する。
この他に横滑り防止装置のESP(※バンのVPグレードは非搭載)、EBD・ブレーキアシスト付ABS、ヒルホールドコントロール(※5MTを除く)、オートライトシステム、セキュリティーアラーム、エマージェンシーストップシグナルは全グレードに標準装備。
8代目アルト・HA36SとHA36Vとの違い
HA36SとHA36Vとの違いは乗用モデルか貨物仕様かの違い。HA36Sは乗用モデルの5代目アルト。HA36Vは貨物モデルの5代目アルト。
HA36Vは貨物仕様のため後部座席が非常に狭く、かつ垂直の簡易的なシートのため長時間乗車はかなり辛い。
基本的にリアは荷室として使うのを前提としたモデル。また、フロントシートも乗用モデルに比べると質素なデザイン&シート表皮で、その他の快適装備も(手動式ドアミラー、樹脂色のドアハンドル、鉄チンホイールなど)簡略化されている。
また、トランスミッションもバングレードにはCVTが非設定で、5MTまたは5AGSの2種類となっていた。
その一方で軽貨物登録ゆえに1年間の税金も安く、車重も乗用モデルより軽量となっている。
8代目アルトのインテリア(内装)
インパネ。デザインは水平基調を主軸とし先代よりもシンプルにかつ使いやすさを追求したデザインとなっている。
なお、2018年12月改良(2型)ではインパネの一部やドアトリムガーニッシュ色にグレージュが採用される。
出典:スズキ認定中古車
エアコンは最上級のXとSグレードにオートエアコン。
それ以外のLとFではマニュアル式エアコンとなる。
Fグレードのみの5MTのシフトノブ。
同じくFグレードのみに設定の5AGSのシフトノブ。CVT仕様と同じく5AGSはインパネ仕様となる(アルトワークスのようなパドルシフトの設定はなし)。
スピードメーター。タコメーター無しのシンプルな1眼タイプ。エネチャージの状態をスピードメーターのバックカラーとして表示し、右側にはエネチャージの回生状態等を表示するマルチインフォメーションディスプレイを備える。
ステアリングはウレタンステアリングホイールのみ。
フロントシートはセパレートタイプ。表皮が白系のファブリックシートだが、バンモデルのようにヘッドレスト一体型のシートとなる。
これは軽量化にともないこのフロントシート形状がかなり見直されたためである。
なお、2018年12月改良(2型)ではシート表皮色がネイビー色に変更になった。
リアシート(デビュー当初)。ベーシックなセダンタイプだが、足元はかなり広い。
リアシート(※写真は2018年12月改良の2型以降)。グレードによりヘッドレストの有無が異なる。上級グレードのXとSはヘッドレスト付き。LとFではヘッドレスト無しとなる。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。左右分割式ではない一体型なので、分けて倒して分割するなど細かい使い方はできない。
またハスラーなどのように完全なフルフラットにはならないのでこの点も割り切りは必要だ。
8代目アルトの総評
8代目アルトは先祖返りした個性的なデザインに、徹底的な軽量化でハイブリッド車にも匹敵するぐらいの燃費性能を得たフルモデルチェンジとなった。
その軽量化は他車を追従させない徹底的なもので、同じような形状をした同時期のライバル「初代・後期型ミライース」と比べても(ただしアルトは一番軽いバングレードのVP、ミライースも同じく一番軽いDグレードとすると)120kgほどの差があり、軽自動車というパワーが無い車においては驚異的な差である。
この軽量化は加速性能、ブレーキ性能、燃費性能の全てに寄与し、CVTグレードで1Lあたり37kmという驚異的な燃費性能をたたき出している。
また価格の面でもかなり良心的で5MTや5AGSグレードを選択すれば新車でも80万円台~(商用バンに至っては70万円前後~)とかなり良心的な価格設定も大きな特徴のひとつで、昨今の軽自動車は普通車に肩を並べるべく高級化し、値段も時によってはコンパクトカーよりも高いこともあった。
その点この8代目アルトは軽自動車が本来あるべき姿を示すようなスズキの新しい提案ともいえる1台である。
デザインは非常にクセがあるが見慣れれば個性的で愛着あるデザインでもある。燃費性能においてはピカイチなのでとりあえずハッチバックタイプを購入しようとしている人は要チェックな1台である。
なお、2019年11月にはアルト生誕40周年を記念する「Lリミテッド」が発売された。
お手頃な自動ブレーキ搭載のLグレードがベースながらブルー系専用色に専用エンブレム、ブラック内装にアクセント的なインテリアパーツで特別感が強調されている1台となっており中古で探す場合は一考の価値ある特別仕様車となっている。
中古市場では8代目アルトの初期モデルが特に安価、希少な最後のMT仕様も選べるマニア好みな1台
中古市場では次の9代目モデルが登場している点、豊富なタマ数と不人気なセダンタイプゆえに中古価格がかなり手頃で見つけやすく、とても買いやすいモデル。
初期モデルに至っては走行5万キロ以下の固体であれば30万~50万円。3万キロ以下の上級グレードでも50万円以下という場合もあり、かなり安価となっている。
絶対的な室内空間広さやスライドドアの使い勝手はN-BOXやタント、スペーシアなどのスーパーハイトワゴンに勝てないが、低燃費で中古価格が安いという点は通勤や買い物などの街乗り軽自動車としては魅力的な部分である。
また9代目には無いMTモデルの設定もあり、ワークスのような過激さは無いものの軽量ボディと相まって運転の楽しさも味わえるモデルである。改造ベースとしても面白い。
乗用タイプのアルト以外に、硬派なバンタイプ(アルトバン)にもMT仕様も設定されており、こちらは4WDの設定がないが軽貨物・4ナンバーの税金と低燃費で維持費も安く、軽量ボディとあわせてとても楽しい1台だ。
8代目アルトのOEMモデル マツダ・7代目キャロル
なお8代目アルトは先代と同じくマツダ自動車へ7代目キャロルとしてもOEM供給された。
アルトとの違いはエンブレム程度で、先代モデルとは仕様が異なる。グレード展開もアルトバンやターボRS、ワークスなどの設定がなく、基本グレードのみ。
ただし、エンブレムやマツダブランドによりアルトとは雰囲気が少し異なる部分もあり、他人と被りたくない人はあえて「キャロル」を選んでみるの悪くない。
販売台数はアルトよりも少ないため少し探しづらいが、こだわりたい人には嬉しい選択肢。タマ数はかなり少ないが、マツダ版にもMTモデルの設定がある。
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