キャロルはマツダのハッチバック型軽自動車。スズキ・アルトのOEMモデルである。本稿では7代目のHB36S型を扱う。
出典:マツダ認定中古車
7代目 マツダ・キャロルとは?
2015年1月にフルモデルチェンジし、7代目となったマツダ・キャロル。
キャロルはマツダの軽自動車の中でも息の長いモデルで、初代は360CC時代に登場。その後一旦消滅したが550CC時代に復活。その後はスズキからアルトのOEM供給を受けて販売され続けている。
7代目キャロルは8代目アルトと同じく個性的かつスタイリッシュなエクステリアに新世代プラットフォームによる大幅な軽量化&高剛性化。
これと同時にパワートレインの効率改善で燃費を大幅アップさせた。室内空間も広くなり先進の自動ブレーキも備えるなどフルモデルチェンジに相応しい内容となっている。
出典:マツダ認定中古車
①シンプルかつスタイリッシュなデザイン
エクステリアはスマートさと眼力を備えたフロントマスクに存在感あふれるバックスタイル。
全高を低めにしフロントからリアにかけて流れるようなデザインとした。また、インテリアは機能性とデザイン性を両立させた。
ボディカラーには新規色の「シフォンアイボリーメタリック」や「ピュアレッド」を含む全7色を設定。
②燃費性能の向上
エンジンは新世代のR06A型エンジンを大幅改良し低中速の動力性能を高めつつ燃費性能を大きく向上。
トランスミッションは副変速機付きCVTを車体の軽量化に伴い変速比を最適化。プラットフォームを刷新し軽量かつ高剛性を両立させた。
また、燃費向上に貢献する新技術の「エネチャージ」「アイドリングストップシステム」「エコクール」をCVTグレードに標準装備とした。
③快適性能を向上
室内長を2040mmへ拡大。先代比で145mm長くなり、前後乗員距離は85mm拡大し900mmとなった。
これにより後部座席の足元がかなり広くなり居住性が向上している。また、運転席シートヒーターをCVTグレードに標準装備。
助手席シートヒーターは4WD仕様車へ標準装備とし、フロントドア中間には2段ストッパーを採用した。
④安全装備を充実化
安全装備は横滑り防止装置のDSCとトラクションコントロールのTCSを全グレードに標準装備。
CVT仕様車には「レーダーブレーキサポート」「誤発進抑制機能」「エマージェンシーストップシグナル」も全グレードで標準装備。
運転席と助手席のシートベルトリマインダーは全車に標準装備とした。
8代目スズキ・アルトと7代目キャロルの違い
先代までのキャロルはスズキからOEM供給される際にマツダ仕様として「ペンタゴングリル」を採用した差別化がなされていたが、今回の7代目キャロルではそれを廃止。
8代目ではエンブレム以外は完全に同じ外観となった。
また、スズキには軽貨物のバングレード(アルトバン)の設定があるのに対しマツダでは非設定。さらに5AGSを備える最廉価版グレードの設定もなく、5MT仕様車はFFのみとかなりグレード構成が厳選されている。
一方でエクステリア以外では若干の仕様の違いがある。まずステアリングホイールは全グレードでシルバーの加飾が施される。
さらにアルトの上級グレード(X)にあったバックドアの2トーン仕様の設定がなく、廉価グレードに位置するGFとGXはFFモデルの設定のみとなる。
さらにボディカラーの設定も一部少なく、
- ブルーイッシュブラックパール3
- フレンチミントパールメタリック
- コフレピンクパールメタリック
- フォーンベージュメタリック
- フェニックスレッドパール
が非設定。
また、5MTのGF除く全グレードに自動ブレーキが標準搭載され、GLのみ自動ブレーキのレス仕様をオプション設定として選択可能となる。
グレード展開もアルトのグレードにGの文字を追加したグレード名称が適用されるが、GFとGXには4WDが非設定となり、一部簡略化される。
さらにアルトに設定のあるスポーツグレード、「アルトワークス」や「アルトターボRS」、スズキのアルト40周年を記念する「Lリミテッド」等特別仕様車の設定は非設定となっている。
7代目・HB36S型キャロルの一部改良、2型、3型の違いなど
2017年5月・仕様変更
上級GXに専用設定の「パールホワイト」を廃止し、「ピュアホワイトパール」に差し替え。
2018年12月・一部改良(2型相当)
2018年12月の一部改良(2型)では自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」が「デュアルセンサーブレーキサポートに」アップグレード。
衝突被害軽減ブレーキに対歩行者への動作も可能となったほか、「後退時ブレーキサポート」、車線逸脱警報機能やハイビームアシストも追加された。
5MT専用グレードの「GF」にはエマージェンシーストップシグナルが新たに標準装備化。
また、内装色も「ネイビー」を新採用。インパネやドアトリムのカラーも「グレージュ」を採用するなどインテリアのリフレッシュが行われた。
さらに「GS」と「GX」ではディスチャージヘッドライトが標準装備となった。
2020年10月・一部改良(3型相当)
2020(令和2)年10月の3型改良では「GL」に電動格納式カラードドアミラーを標準装備化。
「GX」グレードでは「メッキバックドアガーニッシュ」を追加。
「GS」グレードには「フルオートエアコン」を標準装備化。
AM/FMラジオ/CDプレーヤーが「GS」と「GX」にも標準装備とする一方で、「GS」グレードでは
- ディスチャージランプからハロゲンランプに変更
- 15インチアルミホイールから13インチスチールホイール+ホイールキャップに変更
- LEDターンランプ付きドアミラーを廃止
となるなど、コストダウンがなされた。
また全グレードで国交省のオートライト義務化に伴いオートライトを標準装備化。ヘッドライトのOFFスイッチが廃止されて常時ONのみの仕様となった。
7代目キャロルのグレード一覧 GF、GL、GS、GXの違いなど
7代目キャロルのグレード展開はエントリー「GF」、ミドル「GL」、上級「GS」、最上級「GX」の4種類。
特別仕様車や軽貨物(キャロルバン)の設定は無く、基本グレードのみの設定。
先代モデルで設定の低燃費仕様「キャロルエコ」は「アルトエコ」同様にベースグレードに吸収され消滅した。
GF
7代目キャロルのエントリーグレード。アルト「F」のOEMグレード。
装備が最も簡易的でその分価格が安いグレード。
エクステリアでは非塗装・手動ドアミラーに非塗装アウタードアハンドル、スチールホイール+ホイールキャップを標準装備する。
快適装備のスモークガラス(プライバシーガラス)は非装備で、アルトバンに近い雰囲気もある。
また、前席のみパワーウィンドウを標準装備し、リアは手動ウィンドーも非装備となるなど、簡略化がなされている。
さらに安全装備の
- レーダーブレーキサポート
- 誤発進抑制機能
- エマージェンシーストップシグナル
も非装備。
トランスミッションにはOEM・乗用モデルとしては珍しい5MTが設定され、7代目キャロルの中でもマニアックなグレード。アルト「F」の5AGSが非設定のため実質マニュアルトランスミッション専用グレードとなっている。
先代と同じく2WD(FF)のみで、4WDが非設定。
GL
7代目キャロルのミドルグレード。アルト「L」のOEMグレード。
快適装備がGFグレードよりも拡充され、乗用モデルらしい装備となる。
GLグレードではエクステリアのアウタードアハンドルをボディ同色化。
パワーウィンドウが全席に標準装備となり、4WDモデルでは運転席&助手席シートヒーターを標準装備する。
さらに安全装備の
- レーダーブレーキサポート
- 誤発進抑制機能
- エマージェンシーストップシグナル
も標準装備(※レス仕様も選択可)。
ただし、電動格納ミラーはオプション設定(※ただし、2020年10月の3型改良以降は標準装備化)。
トランスミッションはCVTのみとなるが、燃費性能は5MTモデルよりも良くエコカー的な側面も持つ。
GS
7代目キャロルの上級グレード。アルト「S」グレードのOEM。
GFやGLよりも内外装や機能装備が良くなる。
エクステリアにはボディ同色の電動格納ミラーを標準装備。UVカットガラスも全ガラスに適用。
さらにプライバシーガラスがリアドアとリアハッチガラスに標準装備となり、運転席シートリフターも標準装備となる。
さらに安全装備の
- レーダーブレーキサポート
- 誤発進抑制機能
- エマージェンシーストップシグナル
も標準装備。見た目や機能装備&安全装備が充実する。
GX
7代目キャロルの最上級グレード。アルト「X」グレードのOEM。GSグレードに追加でさらに装備が充実する。
エクステリアには7代目キャロル唯一となる、15インチアルミホイールを標準装備(※ノーマルは13インチスチールホイール)。
アンテナも伸縮式のピラーアンテナが可倒式のルーフアンテナに変更。LEDターンランプ付きドアミラーやディスチャージランプを標準装備する。
ボディカラーはGX専用色の「パールホワイト(後にピュアホワイトパールに置換)」が選択可能だが、バックドアをボディカラーとは異なる2色に塗り分けた「2トーンバックドア」はキャロルでは非設定。
内装ではフルオートエアコンにキーレスプッシュスタートシステムを標準装備し、見た目や快適装備が豪華になる。
2WD(FF)のみの設定で、4WDは非設定。
GXグレードは2020年10月の3型改良で廃止。以降はGSグレードが最上級グレードとなった。
7代目キャロルのエクステリア(外装)
出典:マツダ認定中古車
7代目キャロルは8代目アルトと同じく個性的なヘッドライトとそれを強調するヘッドライトまわり。
右側のみ開口部を設けたグリルなどシンプルでありながら個性的な顔つきとなっている。先代のキャロルと比べるとかなりのモデルチェンジとなっている。
なお、マツダ版の仕様変更はエンブレムがSマークからMマークに変更になるだけでこれ以外はまったく同じ。
ただし、人によっては安っぽく見えるスズキマークからマツダマークに変更になるので若干雰囲気が異なって見える。
ちなみにスズキ同様にヘッドライト部分をドレスアップ可能な「めがねガーニッシュ」がオプション設定されており、スズキ版と比べると種類が若干少ないが、眼力を強調するカスタムも可能だ。
出典:マツダ認定中古車
ヘッドライトは基本はマルチリフレクターだが、2018年12月2型改良以降はGSとGXでディスチャージヘッドランプが標準装備となった。(※後に2020年10月3型改良ではGSグレードのディスチャージヘッドランプがマルチリフレクターへ変更となる)
出典:マツダ認定中古車
サイド。全高は先代のキャロルより若干低くなり、リアにかけて独特の切込みデザインや窓も狭く独特のスタイリングとなっている。LEDターンランプ付きドアミラーは最上級のGXグレードのみ付く。
サイドビューからのアルトとの違いは足元以外はなく、完全にまったく同じ外観となる。
出典:マツダ認定中古車
足元は13インチホイールキャップ&スチールホイール。タイヤサイズは145/80R13。
出典:マツダ認定中古車
上級グレードのGXのみ15インチアルミホイールとなる(※2020年10月の3型改良でGXのアルミホイールを廃止し他グレード同じ13インチホイールキャップとなる)。タイヤサイズは165/55R15。
出典:マツダ認定中古車
リア。7代目アルト同様にコンビランプがバンパー下部に移動。これにより開口部が大きくなり実用性がアップした。
マツダ仕様としてはリアゲート中央のSマークがMマークへ。車名エンブレムがALTOからCAROLへ。
車名エンブレムの貼り付け位置がアルトは右下に対し、キャロルは左下に変更となる。なお、アルトにはエネチャージエンブレムも付いているが、キャロルでは省略される。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。
最高出力52ps(38kW)/6500rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpmを発生。トランスミッションはCVTもしくは5MTの2種類。
駆動方式はFFまたは4WDだが、5MTは最廉価のGFグレードでFFのみ。また、最上級のGXグレードではFFのCVTのみなど4WDが選択できないグレードが存在する。
5MT仕様車以外ではエネチャージシステムを装備し、レーダーブレーキサポートと誤発信抑制機能、エマージェンシーストップシグナルはを標準装備。
5MT車と共通で横滑り防止装置のDSCとトラクションコントロールのTCSを全グレードに標準装備する。
2018年12月以降はレーダーブレーキサポートがアップデートし、「デュアルセンサーブレーキサポート」に置換。
ステレオカメラとレーダーを併用したスズキの新世代自動ブレーキシステムで、デビュー当初のレーダーブレーキサポートに比べ歩行者検知が可能となり、動作範囲も約5km/h~30km/h以下から、約5km/h~100km/h以下までにアップデートされている。
これにより高齢運転者に推奨する「セーフティ・サポートカーS」(サポカーS)のワイドに相当する車種となる。これ以外に
- 誤発進抑制機能
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
- 後退時ブレーキサポート
- 後方誤発進抑制機能
- ハイビームアシスト
も搭載する。
キャロルHB36SとアルトHA36Sの関係 社外品、ワークスやRSのパーツも流用可能
7代目キャロルHB36SとHA36SはOEMの関係にあり、基本的にエンブレムが違う程度。
このため8代目アルト(HA36S用)のパーツが7代目キャロルに流用可能だ。純正パーツはもちろん、社外パーツも流用でき、アルトワークスやアルトターボRSなどの純正品や社外品でもポン付け可能。
ただしマフラーに関しては4WDと2WD用で構造が異なるため、アルトと同じく注意が必要。
7代目キャロルのインテリア(内装)
出典:マツダ認定中古車
インパネ。デザインは水平基調を主軸とし先代よりもシンプルにかつ使いやすさを追求したデザインとなっている。
なお、2018年12月改良(2型)ではインパネの一部やドアトリムガーニッシュ色にグレージュが採用される。
マツダ仕様としてステアリングの中央のマークがSからMマークへ変更となり、かつキャロルではウレタンステアリングホイールにシルバー加飾が施される。
出典:マツダ認定中古車
スピードメーターもマツダとスズキとで共通だ。タコメーター無しのシンプルな1眼タイプ。
エネチャージの状態をスピードメーターのバックカラーとして表示し、右側にはエネチャージの回生状態等を表示するマルチインフォメーションディスプレイを備える。
出典:マツダ認定中古車
エアコンは上級グレードのGXとGLのみオートエアコン。これ以外はマニュアル式エアコンとなる。
出典:マツダ認定中古車
GFグレードのみ設定の5MTのシフトノブ。
出典:マツダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。バンモデルのようにヘッドレスト一体型のシート。これは軽量化にともないこのフロントシート形状がかなり見直されたためである。
出典:マツダ認定中古車
なお、デビュー当初はシート表皮が白系。2018年12月改良(2型)ではシート表皮色がネイビー色に変更になった。
出典:マツダ認定中古車
リアシート。同様に2018年12月以前と以降とではシート表皮の色が異なる。ヘッドレストはGXとGSグレードで付き、これ以外では省略される。ベーシックなセダン型の軽自動車だが、足元はかなり広く居住性は高い。
出典:マツダ認定中古車
フロントシート同様に2020年12月の改良以降はシート表皮がネイビー色となる。
出典:マツダ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:マツダ認定中古車
リアシートを倒した状態。
まとめ
7代目キャロルは個性と機能性を兼ね備えた内外装に新プラットフォームによるさらなる軽量化と高剛性化。エンジン&CVTの改良によりさらなる高燃費の実現などアルト同様にフルモデルチェンジに相応しい内容となった。
先代のキャロルと比べると差別化されていたエクステリアのマツダオリジナルな部分が無くなりかなり大人しいモデルとなってしまったのが残念だが、マツダ的にはそこまでコストを掛けずにマツダの長年の軽自動車ユーザーに対して細々と販売を行いたい現れなのだろう。
ただのエンブレムの変更に終わるOEMモデルとなってしまった7代目キャロルだが、マツダエンブレムによるイメージ効果で雰囲気が若干異なり、人によってはアルトよりもよく見える場合もある。
圧倒的に台数が多いアルトと被りたくない人の選択肢としても有用なモデルである。
7代目キャロルの中古車は安価だが、タマ数はアルトより少なめで探しづらい
7代目キャロルの中古車は、需要がN-BOXなどのスライドドア付きスーパーハイトワゴンにシフトしている関係で本家スズキ・アルトと同じくセダンタイプは人気無い。
そのため安価で買いやすいのだがタマ数が本家よりもかなり少なく、実際に探すとなると見つけづらいのがネック。
先代モデルでは専用デフォルメがあったものの、7代目ではエンブレムのみとなってしまい、かなり大人しい仕様だが、廉価グレードには5MTの設定があるなど現行モデルにはない魅力があるのも事実。
スズキブランドが苦手な人には嬉しい選択肢といえよう。
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