キャロルはマツダのハッチバック型軽自動車。スズキ・アルトのOEMモデルである。本稿では5代目HB24S型の前期型(2004年9月~2006年11月)を扱う。
出典:カーセンサー
5代目 マツダ・キャロルとは?
2004年9月にフルモデルチェンジし、5代目となったマツダ・キャロル。
キャロルは先代の4代目以降からスズキの完全OEMモデルとなり、6代目も同じくスズキ・6代目アルトのOEM供給を受け販売されていた。
コンセプトは「日常の自分の時間に、気軽に使えるお気に入りのクルマ」。主に女性ユーザーをターゲットとし、親しみやすいベーシックな外観、機能的で明るいインテリア、優れた低燃費と安全性能などがウリであった。
5代目キャロルは先代の4代目より全高が50mm、室内高は30mm、シート着座高は25mmアップ。Aピラーの傾斜も少なくして先代よりも運転しやすさがアップした。また、最小回転半径も4.1mと狭いスペースでも運転しやすくしている。
エクステリアは曲線と直線をうまく組み合わせたデザインで、内装でも明るいベージュ色のインパネやドアトリムなどで新鮮さや楽しさを演出。
視認性の高い大型スピードメーターや大型グローブボックス、コンソールボックス、コンビニフック、ドリンクホルダーなどを配置し使い勝手も向上させている。
ボディカラーには「ミントグリーンメタリック」に加え新色の「ココナッツベージュメタリック」、「ムスクブルーメタリック」を含めた全8色を設定。
エンジンは先代に引き続きK6A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを採用。これに4AT、3AT、5MTのいずれかを組み合わせた。
安全装備として軽量衝撃吸収ボディ、歩行者保護対応、ペダル後退抑制機構、前席シートベルトの性能向上、インテリアなどに採用した衝撃軽減構造とし、Gグレードの4WDモデルと、XグレードにはABSを標準装備とした。
5代目キャロル(HB24S)と6代目アルト(HA24S)との違い
スズキ版との違いはフロントデザインと商用モデル(バンタイプ)の設定が無い点。フロントデザインに関しては先代の4代目後期型キャロルからデフォルメデザインが採用されたが、5代目でもそのデザインを踏襲。
マツダのアイデンティティーである「ペンダゴングリル」を取り入れマツダらしさを表現しスズキ版と差別化をはかった。
一方でアルトには存在する4ナンバー商用モデル(バンタイプ)はキャロルには無く、すべて5ナンバーの乗用モデル(セダンタイプ)のみの展開となっている。
また、乗用モデルのグレード展開も若干異なりアルトに設定のある(電動格納ミラーレス、ABSレス、キーレスレスなどの)最廉価グレード、「Eグレード」の設定がないなど、グレードが簡略化される。
5代目・前期キャロル(HB24S)のグレード一覧 G、Gスペシャル、GⅡ、X、X エクステリアパッケージの違いなど
5代目前期キャロルのグレード展開はエントリー「G」、ミドル「GⅡ」、上級「X」、「X エクステリアパッケージ」を設定。
特別仕様車には「Gスペシャル」が設定されていた。
G
5代目前期キャロルのエントリーグレード。アルト「G」グレードのOEM。マツダではエントリーグレードの位置づけだが、アルトではミドルグレードに相当し、装備はアルトのEグレードよりも良い。
エクステリアではアウタードアハンドルがボディ同色化。ホイールキャップを標準装備。
ただしプライバシーガラスは無く、アルトバンのようなリアガラスが特徴。ドアミラーも樹脂で手動タイプ。
機能装備もキーレスやパワステ、エアコン、パワーウィンドウ、セキュリティアラームなどを標準装備。
ボディカラーも「ココナッツベージュメタリック」、「ブライトレッド2」を含めた7色を設定。
ただしアルトに設定の「ブルーイッシュブラックパール3」はキャロルには非設定。
トランスミッションは5MTと3AT、駆動方式はFFと4WDを設定。
GⅡ
2006年7月に追加設定された5代目前期キャロルのもうひとつのエントリーグレード。アルト「GⅡ」のOEM。
Gグレードに置き換わる新グレードで投入され、入れ替えでGグレードが消滅した。
エクステリアではプライバシーガラス、ホイールキャップを標準装備し、Gグレードよりもスタイリッシュな外観が特徴。
インテリアでも「GⅡ専用のベージュシート表皮」を採用。
機能装備も
- 電動格納ミラー(4WDモデルはヒーテッドドアミラー)
- キーレス
- パワステ
- エアコン
- パワーウィンドウ
- セキュリティアラーム
などを標準装備。
ボディカラーも「ミルクティーベージュメタリック」、「ブライトレッド2」、「ラベンターメタリック」を含めた6色を設定。
X
5代目前期キャロルの上級グレード。アルト「X」のOEMグレード。
エクステリアでは電動格納ミラー+カラードドアミラー、リアガラスがプライバシーガラスに変更。
インテリアでもリアシートが分割可倒式シートに変更となり内外装で質感が高くなる。
また、ATモデルでは唯一4ATを採用し静粛性や燃費も良くなる。
X エクステリアパッケージ
Xグレードをベースに
- フォグランプ
- 14インチアルミホイール
- ドアサッシュブラックアウト
などをセットで標準装備とし、よりスタイリッシュ感をプラスした最上級グレード。アルト「X セットオプション」のOEMグレード。
特別仕様車 Gスペシャル
2005年7月設定の特別仕様車。アルト「Gスペシャル」のOEM。
Gグレードをベースにアルミホイールや電動格納式リモコンドアミラーなど上級仕様の装備を採用した上で価格を抑えた、お買い得感な特別仕様車。
Gスペシャルでは
- アルミホイール
- 電動格納式リモコンドアミラー(4WDはヒーテッドドアミラータイプ)
- AM/FMラジオ付きCDステレオ
- スモークガラス(リアドア、バックドア)
などを標準装備とし、Xグレードに近い上級な内外装で魅力を高めた。
なおキャロルでは3ATのみの設定となり、アルトGスペシャルに設定の5MTは非設定となっていた。
エクステリア
出典:カーセンサー
フロントデザイン。5代目キャロルはベースの6代目アルト同様に縦方向に長いヘッドライトが大きな特徴だ。
先代は横長の楕円形に近いヘッドライトだったためイメージがかなり変化した。これにマツダ専用となるペンダゴンを取り入れたグリルを装着。
スズキ版はベーシック感の強い穴あきグリルだったがこちらはデザイン性に優れたスタイリッシュなグリルとなっており、マツダらしさを表現している。
マツダエンブレムとも相まってアルトの安っぽさが若干薄れたデザインだ。なお、フロントバンパーは共通品となる。
出典:カーセンサー
さらに上級グレードの「Xエクステリアパッケージ」ではフォグランプとアルミホイールが標準装備となり、ドアサッシュ部分がブラック塗装される。
出典:カーセンサー
サイド。マツダ専用の変更点は主にフロントデザインで、サイドやリアにかけてはほぼ共通だ。5代目キャロルでは丸と直線を組み合わせたシンプルかつ無駄のないボディスタイルとなっている。
写真は上級グレードのXのものだが、標準グレードのGではドアミラーとハンドルカバーが標準では非塗装タイプ、リアガラスとリアゲートガラスが非スモークタイプとなる。
足元は全グレードでフルホイールキャップを装着。一部特別仕様車(Gスペシャル)、Xエクステリアパッケージ等ではアルミホイールの設定もあった。
出典:カーセンサー
リア。このあたりもエンブレム以外はアルトと同じ。マツダ版ではリアゲート上部中央にマツダロゴエンブレム。リアゲート左下にMAZDAエンブレム。右側にCarolエンブレムが付く。
先代では中央のマツダロゴエンブレム以外の2つ(MAZDAとCarol)はデカールだっためリアビューの印象が若干良くなった。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:カーセンサー
エンジンはK6A型3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。
最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.2kg・m(61N・m)/4000rpm。
先代キャロルのベースとなった5代目アルトではアルトワークスやアルトエポターボなどにターボエンジンの設定があったが、マツダ版ではその設定がなく、今回の5代目キャロルでも自然吸気エンジンのみの設定となっている。
トランスミッションは3AT、4AT、5MTの3種類。ただし、3ATと5MTは標準グレードのGグレードのみで、上級グレードのXでは4ATのみとなる。駆動方式はFFまたは4WD。
安全装備の運転席&助手席エアバッグは全グレードに標準装備。GグレードのFFモデルのみABSがオプション設定で、それ以外のGグレード4WDやXグレードでは標準装備となる。
インテリア
出典:カーセンサー
インパネ。先代よりもデザインが洗練され、近代風になった。プラスチック感があるため安っぽさを感じるがパット見の雰囲気は良い。なお、デザイン自体はアルトと同じだ。
出典:カーセンサー
スピードメーター。こちらもベースと同じでタコメーター無しのシンプルタイプ。
出典:カーセンサー
ATのシフトノブ。
出典:カーセンサー
MTのシフトノブ。
出典:カーセンサー
フロントシートはセパレートタイプ。
出典:カーセンサー
リアシート。標準グレードのGと上級グレードのXとでは若干異なり、標準グレードでは左右一体型でヘッドレスト無し。
出典:カーセンサー
上級グレードのXでは左右分割式でヘッドレスト付きとなる。
この手の車で後部座席に乗って長時間移動することは考えづらいがヘッドレスト付きのほうが見た目にも乗り心地にもプラスか。なお、GとXともにリアシートのスライド機構は非搭載。
出典:カーセンサー
Gグレードのラゲッジルーム。商用モデル(バンタイプ)のようなラゲッジルームとなっている。
出典:カーセンサー
Gグレード、リアシートを倒した状態。
- 出典:カーセンサー
上級グレードのXグレードのラゲッジルーム。商用モデルではリアシートを少し前に配置し、ラゲッジルームを広く取る設計がなされるが、これは乗用モデルということで、広さ自体はGグレードと変わらない。
出典:カーセンサー
リアシートを倒した状態。
まとめ
5代目キャロルの前期型はベーシックかつモダンな6代目アルトをベースにマツダ専用のデフォルメを与えスズキ版よりもスタイリッシュとしたモデルである。
性能面や機能面、内装ではアルトと変わりないのだが見た目がこちらの方が良いため6代目アルトを検討している人はこちらもオススメなモデルだ。
中古価格も人気車種ではないため安価で買いやすい。年式はかなり古くなってきているが4代目よりは比較的新しいため故障のリスクも少ない。
また、近年では希少になってきた5MTの設定があるセダンタイプの軽自動車として、中古の価格面でかなり魅力的なモデルである。
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