キャロルはマツダのハッチバック型軽自動車。スズキ・アルトのOEMモデルである。本稿では5代目・HB24S型の後期型(2006年12月~2009年1月)について扱う。
出典:マツダ認定中古車
5代目 マツダ・キャロルとは?
2004年9月にフルモデルチェンジし、5代目となったマツダ・キャロル。
キャロルは先代の4代目以降からスズキの完全OEMモデルとなり、6代目も同じくスズキ・6代目アルトのOEM供給を受け販売されていた。
コンセプトは「日常の自分の時間に、気軽に使えるお気に入りのクルマ」。主に女性ユーザーをターゲットとし、親しみやすいベーシックな外観、機能的で明るいインテリア、優れた低燃費と安全性能などがウリであった。
5代目キャロルは先代の4代目より全高が50mm、室内高は30mm、シート着座高は25mmアップ。Aピラーの傾斜も少なくして先代よりも運転しやすさがアップした。また、最小回転半径も4.1mと狭いスペースでも運転しやすくしている。
エクステリアは曲線と直線をうまく組み合わせたデザインで、内装でも明るいベージュ色のインパネやドアトリムなどで新鮮さや楽しさを演出。
視認性の高い大型スピードメーターや大型グローブボックス、コンソールボックス、コンビニフック、ドリンクホルダーなどを配置し使い勝手も向上させている。
ボディカラーには「ミントグリーンメタリック」に加え新色の「ココナッツベージュメタリック」、「ムスクブルーメタリック」を含めた全8色を設定。
エンジンは先代に引き続きK6A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを採用。これに4AT、3AT、5MTのいずれかを組み合わせた。
安全装備として軽量衝撃吸収ボディ、歩行者保護対応、ペダル後退抑制機構、前席シートベルトの性能向上、インテリアなどに採用した衝撃軽減構造とし、Gグレードの4WDモデルと、XグレードにはABSを標準装備とした。
5代目キャロル(HB24S)と6代目アルト(HA24S)との違い
スズキ版との違いはフロントデザインと商用モデル(バンタイプ)の設定が無い点。フロントデザインに関しては先代の4代目後期型キャロルからデフォルメデザインが採用されたが、5代目でもそのデザインを踏襲。
マツダのアイデンティティーである「ペンダゴングリル」を取り入れマツダらしさを表現しスズキ版と差別化をはかった。
一方でアルトには存在する4ナンバー商用モデル(バンタイプ)はキャロルには無く、すべて5ナンバーの乗用モデル(セダンタイプ)のみの展開となっている。
また、乗用モデルのグレード展開も若干異なりアルトに設定のある(電動格納ミラーレス、ABSレス、キーレスレスなどの)最廉価グレード、「Eグレード」の設定がないなど、グレードが簡略化される。
5代目キャロル・後期型の改良点と前期との違い
そのキャロルはベースモデルのアルト同様、2006年12月にフロントデザインとインテリアの変更を伴うマイナーチェンジで後期型となった。
後期型5代目キャロルではグリルの開口部が拡大し、バンパーも新デザインの一体型となったほか、内装ではシート表皮とドアトリムのデザインを変更(茶系色へ)。
上級グレードのXグレードではAピラーとドアサッシュをブラックカラーに変更。
ボディカラーでは新色でピンク系の「アンティークローズメタリック」、黄緑系の「ライムグリーンメタリック」を新採用。内外装でイメージを刷新させたマイナーチェンジとなった
5代目・後期キャロルのグレード一覧 GⅡ、Xの違いなど
5代目後期キャロルのグレード展開はエントリー「GⅡ」と上級「X」の2種類のみ。
前期は「G」最上級「X エクステリアパッケージ」、特別仕様車の「Gスペシャル」などの設定があったが、後期ではシンプルに2本立てとなった。
GⅡ
5代目後期キャロルのエントリーグレード。アルト「GⅡ」のOEM。
エクステリアではプライバシーガラスとホイールキャップを標準装備しスタイリッシュな外観が特徴。
インテリアでは「GⅡ専用のベージュシート表皮」を採用。
機能装備も
- 電動格納ミラー(4WDモデルはヒーテッドドアミラー)
- キーレス
- パワステ
- エアコン
- パワーウィンドウ
- セキュリティアラーム
などを標準装備。
ボディカラーも後期モデルの新色「アンティークローズメタリック」、「ライムグリーンメタリック」を含めた7色を設定。
トランスミッションは5MTと3AT、駆動方式はFFと4WDの2種類。
X
5代目後期キャロルの上級グレード。アルト「X」のOグレード。後期では最上級「X エクステリアパッケージ」が廃止となり装備内容が一部統合されている。
エクステリアでは電動格納ミラー+カラードドアミラー、リアガラスがプライバシーガラスに変更、ドアサッシュブラックアウト化、アルミホイールを標準装備。
インテリアでもリアシートが分割可倒式シートに変更となり内外装で質感が高くなる。
また、ATモデルでは唯一4ATを採用し静粛性や燃費も良くなる。
2007年6月の一部改良ではEBD付きのABSが標準装備化された。
エクステリア
出典:マツダ認定中古車
フロントデザイン。マツダのOEMモデル共通のペンタゴングリルとマツダエンブレムにより、マツダ風にアレンジされているのが特徴で、4代目後期に比べるとグリルは小さくなったものの先代のイメージが若干残るデザインだ。
後期型ではこの開口部が拡大しペンダゴンの形が良くわかるデザインへと変更された。また、バンパーと一体化したことでグリルとのつなぎ目がなくなり見た目もすっきりとしている。
ウィンカー球も前期ではグリル横に配置されていたのに対し後期型ではバンパー部へ移動。ヘッドライトまわりがすっきりとシンプルなデザインとなった。加えてバンパーの開口部も長方形から五角形に変更されている。
出典:Goo-net
こちらは前期型の「Xエクステリアパッケージ」グリル開口部が後期よりも狭く、ウィンカー球の位置も違う。なお、フォグランプはエクステリアパッケージの標準装備品。
出典:マツダ認定中古車
横から。背の低いハッチバックタイプでワゴンタイプのような腰高感が無い。先代よりボンネットエリアを切り詰め居住スペースを拡大している。サイドの変更点は特に無し。
出典:マツダ認定中古車
赤いキャロルのものはスタイリッシュパッケージのアルミを履いていたが基本的にはフルホイールキャップが標準装備となっている。デザインは前期と変更はなく同一のもの。
出典:マツダ認定中古車
リア。先代と同じくコンビランプは中央部に設置。ベースとの相違点はエンブレムのみでコンビランプ自体は共通となる。マツダ版ではリアゲート上部中央にマツダロゴエンブレム。
リアゲート左下にMAZDAエンブレム。右側にCarolエンブレムが付く。先代では中央のマツダロゴエンブレム以外の2つ(MAZDAとCarol)はデカールだっためリアビューの印象が若干良くなった。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:マツダ認定中古車
エンジンは前期型と同じくK6A型3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。
最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.2kg・m(61N・m)/4000rpm。
先代キャロルのベースとなった5代目アルトではアルトワークスやアルトエポターボなどにターボエンジンの設定があったが、マツダ版ではその設定がなく、今回の5代目キャロルでも自然吸気エンジンのみの設定となっている。
トランスミッションは3AT、4AT、5MTの3種類。
ただし、3ATと5MTは標準グレードのGⅡグレードのみで、上級グレードのXでは4ATのみとなる。駆動方式はFFまたは4WD。
安全装備の運転席&助手席エアバッグは全グレードに標準装備。GⅡ ・FFモデルのみABSがオプション設定で、それ以外のGⅡ・4WDとXグレードでは標準装備となる。
インテリア
出典:マツダ認定中古車
インパネ。先代よりもデザインが良くなって近代的に。コストの関係上安っぽく見えるのは仕方ないが値段相応の見た目となっている。デザイン自体は前期型と同じ。
出典:マツダ認定中古車
スピードメーターは全グレードでタコメーターが無い。ステアリングはウレタンステアリング。エアコンはすべてマニュアル式エアコン。
出典:マツダ認定中古車
GⅡグレードのMTシフトノブ。
出典:マツダ認定中古車
フロントシート。シフトがATもMTもフロアシフトということでセパレートタイプとなる。後期型でシート表皮が刷新され、アルト同様茶系色となった。ドアトリムクロスも同様に変更されている。
出典:マツダ認定中古車
リアシート。フロント同様に後期型では茶系色に変更。上級グレードのXグレードではヘッドレストが付いているがバンタイプに毛が生えた程度の作りで長時間乗るには辛いか。
基本的に街乗り用と考えたほうが良い。足元は先代より広くなっている。スライド機構は非搭載。
出典:マツダ認定中古車
こちらはGⅡグレードのリアシート。前期の標準グレードであるGグレード同様にヘッドレスト無しとなる。
出典:マツダ認定中古車
Xグレードのラゲッジルーム&シートを倒した状態。分割可倒式でここらへんは同年代のワゴンRと共通。使い勝手は良い。
出典:マツダ認定中古車
GⅡグレードのリアシートを倒した状態。商用モデル(バンタイプ)のように左右一体型となっている。利便性は若干低下するがそこまで求めないのなら問題ないか。
まとめ
5代目後期キャロルの総評
出典:マツダ認定中古車
5代目の後期型キャロルは先代と同じく使い勝手の良いベーシックな軽自動車である。デザインに若干の変更が加えられているので、ただ単にエンジンのみを変えたOEMモデルとは少し違う。
全体的にベースよりもマイナーなモデルとなるので他人と同じもの(街中で他の人とおなじになるの)が嫌な人にオススメなモデルである。特に前期型よりもグリル開口部が大きくなりウィンカー球の位置も変更されたことでさらに個性が強くなった。この点は評価できるポイントだ。
中古相場では年式もそれなりに経過していることからそれほど高くなく購入しやすい値段設定。次のアルトのOEMである7代目キャロルの燃費が大幅に良くなっているため、デザイン重視か、燃費重視化で悩みどころ。
タマ数はアルトに比べると圧倒的に少ないが近年では少なくなった5MT車の設定もあり、安価でスタイリッシュなミッション車としての需要がありそうな1台だ。
兄弟車・日産ピノ(HC24S)
なお、この5代目HB24S型キャロルのベースとなった6代目アルト(HA24S型)は、日産へピノ(HC24S)としてもOEM供給されている。
同じくフロントデザインが日産風にアレンジされ、キャロルともアルトとも若干異なる顔つきとなっている。絶対数もアルトに比べると少ないので、他人と被りづらいメリットもある。5MTの設定もあり、中古価格も安いので背の低いセダンタイプの5MTな軽自動車としていかがだろうか。
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