ワゴンRはスズキのワゴン型軽自動車。本稿では5代目・MH34Sおよび新設定のMH44S系(2014年8月マイナーチェンジ~)を後期型とし、これを扱う。
出典:スズキ認定中古車
5代目 スズキ・ワゴンRとは?
2012年8月にフルモデルチェンジし、5代目となったワゴンR。5代目はライバルのムーブに競り勝つため、従来のモデルサイクルを前倒しするという異例のフルモデルチェンジだった。
エクステリア・インテリア概要
5代目ワゴンRでは先代で採用されたスタイリッシュな箱ボディを継承し、そこからさらに丸みを与えたことでスタイリッシュ路線が洗練された外観に仕上がった。
また、ノーマルのワゴンRでは同年代の7代目アルトのような丸みをヘッドライトに与えることで、ヨーロピアンな雰囲気も演出した。
出典:ホンダ認定中古車
インテリアはグレー&ベージュの2トーンカラーインパネで暖かみや明るさを表現。
メカニズム、エンジン、パッケージング概要
メカニズムではそれまでのK6A型に変るR06A型エンジンを新規に採用。
軽自動車としては初となる低燃費技術の「エネチャージ」、「新アイドリングストップシステム」、「エコクール」を全グレードに採用。
ハイテン鋼などで徹底的に軽量化(先代比-70kg)したことで自然吸気エンジンのFFモデルでは28.8km/L(JC0モード)、ターボ仕様のFFモデルでも26.8km/L(JC08モード)を実現するなど燃費が飛躍的にアップした。
パッケージングは室内長2,165mm。前後乗員間距離は1,000mmを確保しAZワゴン時代よりもさらに拡大。最小回転半径も4.4mで取り回しの良さを両立。
機能装備
機能装備は「助手席前倒し機構」、「リアシートワンタッチチルトダウン(分割可倒式)」、「フルフラットシート」で、多彩なシートアレンジを可能とした。
収納スペースは伝統の「助手席シートアンダーボックス」のほか、手提げ袋などを掛ける「ショッピングフック」、箱型ティッシュも置ける「助手席インパネトレイ」豊富な収納スペースを設定。
このほか「アドバンストキーレスエントリー&キーレスプッシュボタンスタートシステム」はXGグレード以外で標準装備とした。
5代目ワゴンのモデル構成
モデル構成は先代と同じくノーマルモデルとカスタムモデル(スティングレー)の2種類。
ただし、先代(4代目)の前期に設定されていたノーマルモデルのターボ仕様は5代目では未設定で、カスタムモデルのスティングレーのみの設定となった。また、4代目で好評だった特別仕様車の「FXリミテッド」を引き続きカタロググレードに設定。
グレード構成もベーシックな「FX」または上級な「FXリミテッド」の2種類と、シンプルになった(※ただし、2013年7月マイナーチェンジ(2型)以降では3種類以上のグレード構成になる)。
5代目後期型ワゴンR(MH44S)とは?特徴と前期(MH34S)との違い
後期型ワゴンRの改良点
その5代目ワゴンRは2014年8月のマイナーチェンジでフロントデザインの変更等を行い後期型となった。
出典:スズキ認定中古車
出典:ホンダ認定中古車
5代目後期モデルでは全グレードでフロントデザインを大幅変更。ヘッドライトやグリル、バンパーを新デザインとし、前期のヨーロピアンな顔つきから、ベーシックな顔つきに変更。
出典:ホンダ認定中古車
インテリアでも前期のベージュ内装からグレー内装に変更。シート表皮、ドアトリムクロスがグレー色に変更された。
マイルドハイブリッド(S-エネチャージ)専用・FZグレードの追加
出典:スズキ認定中古車
そして後期型の大きな特徴はエクステリアの変更以外にエネチャージを進化させたS-エネチャージ専用車を追加設定(MH44S系)。
従来のエネチャージではバッテリーとは別の第2の蓄電池を設け、オルタネーターの代わりに蓄電池から電力を供給することで無駄なガソリン消費を抑えるものだったが、S-エネチャージではモーター機能付きのオルタネーターを採用。
発電の他、エンジンのアシスト源(スターターモーター機能とモーターアシスト機能)として使うことでマイルドハイブリッド仕様に進化した。
さらに蓄電池は高効率リチウムイオンバッテリーを採用したことで、充電や給電性能を向上。モータアシストに必要な大電流に対応させた。
これらS-エネチャージを採用したことで燃費性能はさらに向上し、自然吸気エンジンのFFモデルで32.4km/L(JC08モード)。同年代のライバルである5代目ムーヴを大きく引き離す大台を達成。
5代目の後期型では「マイルドハイブリッド」という大きな仕様変更がなされたマイナーチェンジとなっている。
グレード体系の見直し
なお、2014年8月マイナーチェンジではグレード体系が見直されデビュー当初のFXかFXリミテッドの2種類(※2013年には最廉価のFX-Eグレードが追加となるが)に対し、FXの下位グレードとなるFAグレード(※FX-Eの後継グレード)を新設定。
またそれまでの上級グレードであったFXリミテッドを廃止しマイルドハイブリッド仕様のFZに置き換え、ノーマル系ワゴンRでは低価格グレードと上級グレードの拡充をはかった。
ちなみに、MH34Sは5代目ワゴンRでS-エネチャージが搭載されない前期および後期モデル(5代目後期でもFXなど廉価グレードではS-エネチャージが非搭載)のこと。
MH44Sは5代目後期のS-エネチャージ搭載モデルのことで両者では型式が異なる。
5代目・後期型ワゴンR グレードの違い FX、FX-E、FXリミテッド、特別仕様車など
5代目後期ワゴンRのグレード構成は、廉価「FA」、ミドルグレード「FX」、「FX レーダーブレーキサポート装着車」、「FX レーダーブレーキサポート セットオプション装着車」、上級「FZ」の6種類。
特別仕様車にはFXグレードをベースにS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)を搭載しつつ価格を抑えた「FXリミテッド」が設定されていた。
カスタムモデルのワゴンRスティングレーについてはこちらから。
FAグレード
5代目後期ワゴンRの廉価グレード。前期のFX-Eグレードに置き換わる形で新設定。装備を簡略化し価格を抑えた一番安いグレード。
出典:スズキ認定中古車
FXのCVTグレードからエネチャージ・アイドリングストップシステム・エコクール、フルオートエアコンを非装備化。
さらにボディカラーも
- 「スペリアホワイト」
- 「シルキーシルバーメタリック」
- 「ブルーイッシュブラックパール3」
に加え、FX-Eに設定のなかった
- 「アーバンブラウンメタリック」
- 「イノセントピンクパールメタリック」
- 「フィズブルーパーツメタリック」
を追加した全6色を設定。
5MTの設定は無し。
FXグレード
5代目ワゴンのミドルグレード。
安い部類のグレードだが、フルオートエアコンやエネチャージ・アイドリングストップシステム・エコクール、メッキグリルなど快適装備や機能装備などは標準装備している(※ただしインパネ一体型CDオーディオはレス仕様)。
外観ではスチールホイール+ホイールキャップに非エアロタイプのバンパー、リアスポイラーレスでベーシックな見た目が特徴。
ボディカラーもFAは6色設定だったが、FXではオプションのミステリックバイオレットパールとパールホワイト2色を追加した全8色設定(※スペリアホワイトは非設定)。
5代目後期ワゴンRで唯一、CVTのほか5MTモデルも設定する。
MT仕様のFXグレードについてはこちらから。
FX レーダーブレーキサポート装着車
上記FXグレードに自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」、「誤発進抑制機能」、「エマージェンシーストップシグナル」、「車両走行安定補助システム(ESP)」の4点を標準装備したグレード。
FX レーダーブレーキサポート セットオプション装着車
上記FXグレードに自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」、「誤発進抑制機能」、「エマージェンシーストップシグナル」、「車両走行安定補助システム(ESP)」の4点に加え、セットオプションの「14インチアルミホイール」、「キーレスプッシュスタートシステム」を標準装備したFXの最上級グレード。
FZグレード
5代目後期ワゴンRの最上級グレード。エネチャージを進化させたマイルドハイブリッドの「S-エネチャージ」と自動ブレーキの「レーダーブレーキサポート」を標準装備する。
出典:スズキ認定中古車
外装では
- 専用大型メッキグリル(LEDイルミネーション付き)
- エアロタイプのアンダーガーニッシュ
- サイドアンダースポイラー
- ルーフエンドスポイラー
- LEDターンランプ付きドアミラー
- アルミホイール
でスポーティな外観に。
内装では
- タコメーター+マルチインフォメーションディスプレイ付きの2眼式メーター
- 本革巻きステアリング
機能装備には「キーレスプッシュボタンスタートシステム」など豪華な装備が特徴。
ボディカラーも新色「ムーンライトバイオレットパールメタリック」をFZ、FX、スティングレーに専用設定。
FZグレードについてはこちらから。
特別仕様車 FXリミテッド
2015年12月設定の特別仕様車。
FXをベースにマイルドハイブリッドのS-エネチャージやスタイリッシュな外装パーツ、ブラックインテリアで機能性と内外装をアップグレードした特別仕様車。
出典:スズキ認定中古車
FXリミテッドではFXに追加で
- LEDターンランプ付きドアミラー
- ルーフエンドスポイラー
- 14インチアルミホイール
を標準装備とし、若干スタイリッシュなエクステリアとした。
インテリアでは
- ブラックインテリア
- 専用ファブリックシート
- ステアリングオーディオスイッチ
- シルバーインサイドドアハンドル
- シルバールーバーエアコンリング
を。
快適装備としては
- タコメーター&マルチインフォメーションディスプレイ付き2眼式メーター
- 運転席シートリフター
- チルトステアリング
- キーレスプッシュスタートシステム
を標準装備とし、内装は機能的にアップグレード。
特に内装の追加装備は歴代のFXリミテッドの特別装備を踏襲し、最新のS-エネチャージを適用しつつ、ベースモデルよりも約8万円アップの価格上昇に抑えたお買い得仕様となっていた。
FXリミテッドについてはこちらから。
エクステリア
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。それまでの前期型では欧州風の丸みを帯びたヘッドライトが特徴だったが、後期型ではこれを廃止。
3代目や4代目に通じるスクエアに近いヘッドライトに先祖返りした。グレードによりデザインが若干異なり、後期型で新設定された最廉価グレードのFAやFXでは格子に近いグリル。
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Sエネチャージを搭載する上級グレード(FZ)では太い横のラインが特徴の専用メッキグリル(LEDイルミネーション付き)を装備する。
FZでは大型のメッキグリルにより存在感が増し、オーソドックスながらも精悍な顔つきとなっている。
出典:ホンダ認定中古車
ちなみにこちらが5代目の前期型ワゴンR。ボディデザインは同じなのにフロントの違いだけでずいぶんとイメージが変わっている。
ヘッドライトをよく見ると下部の丸みが取れただけでなく、ウィンカー球の位置が上限反転&ポジション球は左右反転していることがわかる。
出典:ホンダ認定中古車
左右にかけては特に変更はなし。セキュリティーアラームは全グレードで標準装備。
最廉価FAとベーシックなFXグレードでは14インチフルホイールキャップ。
FZグレードでは新デザインの14インチアルミホイールとなる。
出典:ホンダ認定中古車
リア。FAやFXグレードでは特段の変更はないが、
出典:スズキ認定中古車
新設されたマイルドハイブリッド仕様のFZグレードではスティングレーや20周年記念特別仕様車に使われていたクリアーコンビランプを標準装備とした。
プリウスに代表されるトヨタのハイブリッドカーがクリアータイプのコンビランプを積極的使うので、これに習っての採用だろうか。
他にはリアスポイラーもFZでは標準装備。バックドア右下のエネチャージエンブレムもFZグレードでは「S-ENECHAGE」に置き換わっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型3気筒DOHC自然吸気エンジンのみで、ターボエンジンはカスタムモデルのスティングレーのみに設定。自然吸気エンジンは最高出力52ps(38kW)/6000rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
後期型ではこのエンジンに加えてSエネチャージを採用した上級の「FZグレード」では小型のモーターに回生発電とアシストのマイルドハイブリッド仕様となる。FZグレードでは従来型のオルタネーターに加えてアシスト用のオルタネーター機能付きのモーター(出力1.6kW)が加わる。
トランスミッションは副変速機付きのCVTもしくはFAとFXグレードで5MTも設定される。駆動方式はFFか4WDだ。この他減速時アイドリングストップシステム、エコクールが全グレードで標準装備となる。
自動ブレーキ等に関しては上級のFZグレードで「レーダーブレーキサポート」、「誤発進抑制機能」、「エマージェンシーストップシグナル」、「車両走行安定補助システム(ESP)」の4点を標準装備。FXグレードでは4点がセットオプションとなり、最廉価のFAグレードでは未設定。この他「ヒルホールドコントロール」(CVT仕様のみ)とABSは全グレード標準装備。
S-エネチャージではハイブリッド化による走りのモーター感は皆無なものの、登坂時ではモーターのアシストで若干登坂能力が改善されており、特に自然吸気エンジンでは効果が期待できる。
さらに素晴らしいのはアイドリングストップ時の再始動音で、あの独特のエンジンスタート音がとても静かな点。これは確実に軽自動車の質感を向上させるポイントである。
インテリア
インパネ。ここらへんは特に目立った変更はない。上級のFZでは本革巻ステアリングホイールを標準装備。イモビライザーは全グレードで標準装備。
エアコンパネル。デビュー当初は全グレードでオートエアコンとなっていたが、最廉価グレードのFA(FX-E後継)グレードではコストカットのため4代目ワゴンR以来のマニュアル式エアコンが復活した。
スピードメーター。FXでは従来通り(前期)のエコドライブアシスト照明で、効率が良い運転状態になるとスピードメーター照明色が青色から緑色に変化する。
最上級のFZグレードではS-エネチャージの導入によりスピードメーター右端がデジタル化。
追加された液晶パネルにより回生発電やモーターアシストなどの状態を表示する。
最廉価のFAグレードとFXグレードの5MTではタコメーターをカット。シンプルなスピードメーター(※エコドライブインジケーター付き)となる。
5MTのシフトノブ。FXグレードの5MT仕様ではアイドリングストップ機能が備わる。走行中にブレーキを踏んで停車し、シフト位置をニュートラルに戻しクラッチを離せば、自動でエンジンが停止。再度クラッチを踏み込めばエンジンが再始動する。
さらにFAグレードも含めた5MTの全グレードで「エンジンリスタート機能」を追加。エンスト時にシフト位置をニュートラルに戻し、クラッチを踏み込むだけでエンジンが再始動する。
出典:ホンダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。後期型ではインテリアがグレー系に変更され、シートカラーもグレー化された(前期はベージュ系)。シート表皮はファブリックタイプ。
出典:ホンダ認定中古車
5MTではセパレートタイプとなる。運転席シートヒーターはFZ、FX、FA 4WD車に標準装備。助手席側はFZの4WD、FX CVT4WD車に標準装備。
出典:スズキ認定中古車
助手席下の収納ボックスは健在。
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構付き。全グレードで後部座席のヘッドレストが付く。後部座席には「リアヒーターダクト(※FAのFFモデルは非装備)」により温風を伝達する。
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。
スペアタイヤは非装備でパンク修理キットを備える。
まとめ
5代目の後期ワゴンRは万人受けする外観に燃費も向上したモデルで、好みの分かれる前期に比べると親しみやすいデザインとなっている。
これなら5代目前期で躊躇した人でも受け入れやすいデザインになっており、2代目や3代目ワゴンRからの乗り換えユーザーをターゲットにできる。もちろん使い勝手はおりがみつきだから普段の街乗りや買い物、通勤といったシーンで活躍しそうだ。
ただし、上級グレードのFZ(S-エネチャージ)はマイルドハイブリッド化に伴うリチウムイオンバッテリーなどのコストのため、自然吸気エンジンながら新車価格は約138万円からとなっており、一昔前のターボグレードのような値段となっている。さすがにノンターボでは高すぎと感じる部分はいささか多い。
これに対処スべく2015年12月にはマイルドハイブリッド仕様でありながら一部をコストカットし価格を抑えたお買い得なS-エネチャージ仕様の「FXリミテッド」が追加設定となった。こちらは新車価格が約122万円からとかなり下がったためマイルドハイブリッドに興味のある人はこちらもあわせてチェックして欲しい。
この5代目後期以降では低燃費以外ににアシストモーターのおかげで、ターボ無しでも発進加速や追い越し加速が良い特徴がある。かなりオススメのモデルである。
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