ワゴンRはスズキのワゴン型軽自動車。スティングレーはそのスポーティーモデルである。本稿では5代目ワゴンRに設定されていた3代目ワゴンRスティングレーの2014年8月~2017年1月までを後期型とし、これを扱う。
出典:スズキ認定中古車
スズキ 3代目・ワゴンRスティングレーとは?
2012年8月にフルモデルチェンジし、5代目となったワゴンR。
5代目ワゴンRでは先代で採用されたスタイリッシュな箱ボディを継承し、そこからさらに丸みを与えたことでスタイリッシュ路線が洗練された外観に仕上がった。
また、ノーマルのワゴンRでは同年代の7代目アルトのような丸みをヘッドライトに与えることで、ヨーロピアンな雰囲気も演出した。
メカニズムではそれまでのK6A型に変るR06A型エンジンを新規に採用。軽自動車としては初となる低燃費技術の「エネチャージ」、「新アイドリングストップシステム」、「エコクール」を全グレードに採用したことで自然吸気エンジンのFFモデルでは28.8km/L(JC0モード)、ターボ仕様のFFモデルでも26.8km/L(JC08モード)を実現するなど燃費が飛躍的にアップした。
先代からRRに代わるスポーティーモデルとして登場した「スティングレー」は、ノーマルモデルと同時デビュー。
スティングレーとしては3代目となり、初代や2代目から続く直線基調のヘッドライトやグリルを継承。一方で3代目ではボディ形状にあわせてエッジを効かせた顔つきとなり、ノーマルモデル以上に洗練された雰囲気が強くなった。
3代目・後期型ワゴンRスティングレー(MH44S)とは?改良点と特徴
出典:スズキ認定中古車
その3代目ワゴンR・スティングレーは2014年8月のマイナーチェンジでフロントデザインの変更を伴い後期型となった。
後期型の大きな特徴はエネチャージを進化させたS-エネチャージの採用である。
従来のエネチャージではバッテリーとは別の第2の蓄電池を設け、オルタネーターの代わりに蓄電池から電力を供給することで無駄なガソリン消費を抑えるものだったが、S-エネチャージではモーター機能付きのオルタネーターを採用。
発電の他、エンジンのアシスト源(スターターモーター機能とモーターアシスト機能)として使うことでマイルドハイブリッド仕様に進化した。
さらに蓄電池は高効率リチウムイオンバッテリーを採用したことで、充電や給電性能を向上。モータアシストに必要な大電流に対応させた。
これらS-エネチャージを採用したことで燃費性能はさらに向上し、自然吸気エンジンのFFモデルで32.4km/L(JC08モード)。同年代のライバルである5代目ムーヴを大きく引き離す大台を達成。
これ以外でも「S-エネチャージ」化に伴い発電機能付きオルタネーターをエンジンの始動に使うことで、アイドリングストップ時の「キュルキュル音」が皆無で、かつスムーズという特徴もある。
同年代のダイハツ車、ホンダ車等にはないスズキだけの特質すべき点だ。
出典:スズキ認定中古車
出典:ホンダ認定中古車
このほか後期型(3型)のエクステリアはフロントグリルやバンパーデザインを刷新しより存在感のある顔つきに変化。
このほかにもインテリアではシルバー加飾&ブラック内装のシート表皮を新デザインに変更。
自動ブレーキでは「後退時左右確認サポート機能」と「自動俯瞰機能」を追加。スマートフォン連携ナビゲーションとセットのオプション設定とした。
装備面ではスティングレーのターボ仕様にクルーズコントロールを追加。最廉価グレード(FAのFF車)を除いて運転席シートヒーターを標準装備化。助手席ヒートシーターはオプション設定車を増やした。
3代目後期型ワゴンRスティングレー(MH44S)と前期(MH34S)との違い
MH34SとMH44Sの違いは大きく分けてS-エネチャージ搭載か、そうでないかの違いがある。MH34Sは非搭載のガソリンエンジンモデル。MH44SはS-エネチャージを搭載したモーターとエンジンのマイルドハイブリッド仕様車。
ひとつ注意点としてはS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)の適用グレードがある。2014年8月の時点ではS-エネチャージは自然吸気エンジンのスティングレーのみに適用され、ターボエンジンのTグレードは未搭載だった。そのため同じ年式でもマイルドハイブリッドが搭載されていない。
3代目スティングレーのターボ仕様にS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)が搭載されたのは遅れて半年後の2015年8月から。
型式もここでMH44Sに変更になっているのでターボ仕様のS-エネチャージ車を中古購入の際には注意が必要だ。
前期ターボでも充分性能は良いのだが、マイルドハイブリッドの追加でさらにそれに磨きがかかり、加速性能のほか燃費性能、クルーズコントロール搭載などで魅力が高くなる。
3代目前期ワゴンRスティングレー グレード構成と違い
3代目後期ワゴンRスティングレーのグレードは大きく分けて自然吸気エンジン上級「X」と上級ターボ仕様「T」の2種類。
後期では前期スティングレーに設定の無かった特別仕様車が1種類ある。
標準モデルのワゴンRについてはこちらから。
Xグレード
3代目ワゴンRスティングレーのエントリーグレード。自然吸気エンジン仕様でベーシックなグレード。
出典:日産認定中古車
後期モデルではマイルドハイブリッドの「S-エネチャージ」と自動ブレーキの「デュアルセンサーブレーキサポート」が標準装備となり、自動ブレーキの
- レーダーブレーキサポート
- 誤発進抑制機能
- エマージェンシーストップシグナル
- ESP
- ヒルスタートアシスト
も標準装備する。
このほかエクステリアには先代と同じく
- ディスチャージヘッドランプ
- フォグランプ
- スティングレー専用ヘッドライト&グリル
- スティングレー専用エアロバンパー
- サイドアンダースポイラー
- リアスポイラー
- 14インチアルミホイール
を標準装備。
インテリアでも「ブラック内装」に「シルバー加飾のインパネ」や「ピアノブラックのオーディオパネル」、「3眼式メーター」など上質感を高めている。
ステアリングは「本革巻きステアリング」を採用し、「フルオートエアコン」や「プッシュ式エンジンスタート」など、標準ワゴンRよりも装備が豪華となる。
Tグレード
3代目ワゴンRスティングレーの上級ターボ仕様。ターボエンジンを搭載し、走りも良いグレード。
後期モデルでは自然吸気エンジンのXと同じくマイルドハイブリッドの「S-エネチャージ」を搭載(※ただし少し遅れて2015年8月以降)。
自動ブレーキのレーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESP、ヒルスタートアシストも標準装備する。
Xグレードの装備に追加で
- 専用デザインの切削加工15インチアルミホイール
- LEDターンランプ付きドアミラー
- パドルシフト付き本革巻きステアリングに
加え後期モデルではクルーズコントロールなどが標準装備となる。
特別仕様車 Jスタイル
2014年12月設定の特別仕様車。日本(Japan)をテーマに鮮やかなゴールド装飾を内外装に取り入れたモデル。
エクステリアでは
- 専用ゴールドメッキフロントグリル
- LEDイルミネーション
- リモート格納ミラー(ゴールドLEDターンランプ付きドアミラー)
- 15インチアルミホイール
- ボンネットとサイドに専用デカール
- ゴールドアウタードアハンドル
- ゴールメッキバックドアガーニッシュ
- LEDフォグランプ
- J STYLEエンブレム
- フロントガラスにプレミアムUV&IRカットガラス
を。
インテリアでは
インテリアでは
- ゴールド仕様オーディオガーニッシュ
- ゴールド仕様エアコンルーバーリング
- ゴールド仕様インパネオーナメント
- ゴールド仕様ドアトリムオーナメント
- ゴールド仕様スピーカーガーニッシュ
- ゴールド仕様ドアアームレスト
- ゴールド仕様ステアリングガーニッシュステアリングスイッチ
- ゴールド仕様メーターリング
- 専用ファブリックシート表皮
- 専用フロアマット
- 専用携帯リモコンカバー
快適装備としては運転席&助手席シートヒーターを標準装備。バックアイカメラをメーカーオプション設定とし、内外装でゴールドをあしらいJapanスタイル的なテーマで特別感を演出していた。
ワゴンRスティングレーJスタイルについてはこちらから。
エクステリア(外装)
フロント
出典:スズキ認定中古車
フロント。後期型ではフロントデザインの小変更が行われた。ヘッドライトとグリルの形状は同じだがバンパーの形状変更とグリルしたに新たにメッキグリルが付いたことで目元がより引き締まり、精悍なイメージが強くなった。
自然吸気エンジンとターボ仕様の両方でHIDヘッドライト(ディスチャージ式&ハイロー切り替え)を標準装備。
グリル内蔵イルミネーションLED
出典:スズキ認定中古車
前期同様にグリルにはイルミネーションLEDが内蔵される。イルミネーション部分はセンターのグリルの他、ウィンカー隣のサイド部分。TグレードではフォグランプまわりにもLEDが追加された。
グリルやヘッドライト内部はブルーメッキ化され昼間でも前期とはまた違った雰囲気となっている。また後期型ではフォグランプをLED化。省電力に貢献する。
サイド
サイド。形状変更などの大幅な変更点はないが
後期アルミホイール、タイヤサイズなど
自然吸気エンジン用の14インチアルミホイール(タイヤサイズ155/65R14)はデザインが刷新され、迫力ある見た目となった。
出典:スズキ認定中古車
ターボエンジン用の15インチアルミホイール(タイヤサイズ165/55R15)は前期と同じでエアロダイナミックなデザイン。
リア
出典:スズキ認定中古車
リア。後期型ではバックドア下部にメッキガーニッシュが追加された他、クリアーコンビランプのメッキがブルーメッキ化され、ヘッドライト同様に印象が若干異なっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型3気筒DOHC自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類。自然吸気エンジンは最高出力52ps(38kW)/6000rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。
先代のK6A型のターボエンジンとR06Aターボエンジンとでは最大トルクに差があり、K6Aでは3500回転で10.8kgを出してたが、R06Aでは3000回転で9.7kgの最大トルクに達成する。
最大トルクそのものは少し下がったが500回転低くなったためより街乗りでは乗りやすいエンジンとなっている。
後期型ではこのエンジンに加えてオルタネーター機能付きのモーター(出力1.6kW)が加わる。ただし、2014年8月マイナーチェンジ当初は自然吸気エンジンのみ、S-エネチャージ仕様となり、ターボエンジン車は2015年8月マイナーチェンジ以降でターボ車もS-エネチャージ仕様になった。
トランスミッションは副変速機付きのCVT。駆動方式はFFか4WDだ。この他MH34系では減速時アイドリングストップシステム、エコクールが全グレードで標準装備となる。
先代よりもボディを軽量化し、さらにエネチャージシステムによるエンジンのロスを軽減したことで、特にターボモデルの走りと燃費は先代以上に良い出来となっている。1.3Lクラスの普通車と同じかそれ以上と言ってもいいだろう。
CVT(副変速機内蔵)により100kmの回転数は2600rpmとこれも優秀だ。また、S-エネチャージではハイブリッド化による走りのモーター感は皆無なものの、登坂時ではモーターのアシストで若干登坂能力が改善されており、特に自然吸気エンジンでは効果が期待できる。
さらに素晴らしいのはアイドリングストップ時の再始動音で、あの独特のエンジンスタート音がとても静かな点。これは確実に軽自動車の質感を向上させるポイントである。
この他安全装備としてレーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESP、ヒルスタートアシストを全グレード標準装備。
「後退時左右確認サポート機能」と「自動俯瞰機能」を採用したバックアイカメラはスマートフォン連携ナビゲーションとセットでメーカーオプションに設定。クルーズコントロールシステムはターボ仕様のTグレードに標準装備。
インテリア(内装)
インパネまわり
インパネ。後期型ではシルバー加飾のブラック基調となる。
ステアリング
スティングレーでは自然吸気エンジンとターボエンジンの両方で本革巻ステアリングホイール。チルト機構付き。ターボ仕様では前期と同じく7速マニュアルモード用のパドルシフト付き。
スピードメーター
スピードメーター。S-エネチャージ化によりメーター内右側が液晶化され右側へ移動。燃料計はデジタル表示化。
マルチインフォメーションディスプレイには「回生発電」、「アイドリングストップ」、「エンジン再始動」、「モーターアシスト」、「通常走行」を示す状態表示が加わった。
またスピードメーターはエコドライブをブルー(通常運転)、グリーン(高燃費)、ホワイト(減速エネルギー)の3種類カラーで表示しエコドライブをサポートする。
後期フロントシート&リアシート
フロントシートはベンチシートタイプ。スティングレー専用のブラック内装でスポーティな雰囲気としている。後期ではシート表皮が刷新されより上質な雰囲気となった。このほかドアトリムクロスやドアスイッチパネル部にはピアノブラック加飾、インナードアハンドルもメッキ仕様で上級感も演出。
出典:Goo-net
リアシート。足元はかなり広くスライド機構付きでラゲッジスペースとの調節も可能だ。後部座席もドアスイッチパネルのピアノブラック加飾、メッキドアハンドルで上級感がある。
リアスピーカーも全グレードに標準装備となり、6スピーカーシステムを採用する。
ラゲッジスペース
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。
先代からスペアタイヤが廃止され、パンク修理キットが付く。
3代目後期ワゴンRスティングレーのまとめ
3代目後期ワゴンRスティングレーの総評
出典:スズキ認定中古車
3代目ワゴンR・スティングレーの後期型は外観のグレードアップの他、S-エネチャージの採用で燃費が飛躍的にアップ。
アイドリングストップ制御が上品になったほか、自然吸気エンジンでは登坂能力が若干向上するなどフルモデルチェンジに近いメカニズムのアップデートが行われたマイナーチェンジとなっている。
軽自動車としてはかなり技術を注ぎ込んだ形で、当時のライバルたちを引き離した感じだが、新車価格上昇も顕著で一番安い自然吸気エンジンのFFが前期最終時に1,382,400円だったのが、1,461,240円になるなど150万円に迫る価格帯となっている。
燃費だけで言えば2~3km/L程度の違いなので車の使い方によってはS-エネチャージの恩恵をうけらられない部分もある。ここは悩みどころかもしれない。
ただ、それを省いても軽自動車でマイルドハイブリッドを投入してきたスズキの技術力・コストカット力は大したもので評価できるポイントだ。
MH44S型ワゴンRスティングレーは年数経過で価格が下落&買いやすいモデルに
中古市場ではかつては高値で推移していたが、年数経過もありかなり買いやすい価格帯に落ちてきた。
走行距離によってはエネチャージや自動ブレーキの性能を考慮しても前世代モデルよりお買い得感がかなりある。
特にS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)を採用したスズキのアイドリングストップは再始動が非常にスムーズで、ダイハツやホンダと比べてもアイドリングストップであることを感じさせない上質なデキ。
またこの後のフルモデルチェンジした4代目(6代目)ではデザインがかなり個性的に変化するため、往年のスティングレーなデザインが好みという場合にも選択肢となりうる1台である。
※その後のマイナーチェンジで6代目ワゴンRには往年のスティングレー顔を採用した「カスタムZ」が追加されている
OEMモデル マツダ・フレア カスタムスタイル(MJ34S/MJ44S)
なお、スティングレーはマツダ自動車へ初代フレアカスタムスタイルとしてもOEM供給されている。
後期モデルでは専用グリルが廃止されほとんど見た目が同じエンブレム違いのOEM車となってしまい、個性が薄まったがスズキブランドに抵抗がある場合は、マツダ仕様もオススメである。
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