ワゴンRはスズキのワゴン型軽自動車。スティングレーはそのスポーティモデルである。本稿では3代目のMH22S系に設定されていた初代スティングレーを扱う。
出典:ガリバー
スズキ 3代目・ワゴンRとは?
2007年2月登場に登場したスズキ・ワゴンRスティングレー。それまでワゴンRのカスタムモデルといえば「ワゴンR RR」であったが、スティングレーはもう一つのカスタムモデルとした誕生した。
ベースは3代目ワゴンRの後期型であるMH22S。これに水平基調の専用ヘッドライト、グリル。専用バンパーとフォグランプ、クリアーコンビランプが組み合わされるが、RRと大きく違うのはスティングレー専用にフェンダーを再設計した部分だ。
これによりボンネットのエッジが際立ち、張り出しの大きなボディスタイルに変化している。また、アルミホイールも専用デザインのスタイリッシュなものとし、RRとは全く異なる個性的なモデルとなっている。
インテリアはRRとほぼ同じ黒系のカラーで統一。インパネセンターガーニッシュには光沢ブラックカラーとすることで上級感を演出。シートも専用シート表皮を採用した。
また、ディスチャージヘッドランプは全グレードで標準装備とし、最上級のDIグレードではサブウーファーを含めた7スピーカーによるハイグレードサウンドシステムを採用。奥行きのある上質な音響空間を実現した。
エンジンはK6A型の自然吸気エンジンと60馬力仕様のMターボ、そして新開発の64馬力同直噴ターボエンジン(スティングレーDI)の3種類を設定。
この直噴ターボエンジンは5代目セルボのSRでも採用されたパワーと低燃費を両立させたエンジンで、最上級グレードに相応しい豪華なエンジンが奢られている。
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なお、スティングレーは3代目ワゴンR・MH22Sのモデル終盤に登場し、生産期間はわずか1年半ほどだった。そのためMH22S型の中でも台数が少なく、2代目スティングレー(MH23S)よりタマ数が少ない。
NH22Sスティングレーとは?特徴や標準モデル、RRとの違い
MH22Sスティングレー系スティングレーと標準モデルとの違いは外装ではヘッドライト、バンパー、グリル、フロントフェンダー、アルミホイール、テールランプがスティングレー専用品となる。
また、同年代のMH22SワゴンRのRRとも異なっている。
インテリアではインパネセンターガーニッシュ、ステアリングホイール、シート表皮、ドアトリムクロスなどがステアリング専用品となる。
エンジンはRRと共通でK6A型自然吸気エンジン、K6A型ターボエンジン、K6A型直噴ターボエンジン(DIターボエンジン)の3種類を設定。トランスミッションや駆動方式も同様に4ATのみ、FFまたは4WDとなっていた。
NH22Sスティングレーの特徴とマツダ版・AZワゴンカスタムスタイル(MJ22S)との違い
兄弟モデル、マツダ・AZワゴンカスタムスタイル(MJ22S)と初代ワゴンRスティングレー(MH22S)の違いはフロントグリル。
MJ22S型初代AZワゴンカスタムスタイルでは、マツダのアイデンティティでるペンダゴングリルを取り入れたメッキグリルを装着し、初代ワゴンRスティングレーのスケルトンメッキグリルとはイメージが大きく異る顔つきとなる。
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ただし、これ以外はヘッドライト、バンパー、テールランプなど同じ仕様で、エンブレム以外は標準ワゴンRほど差別化はなされない。
ただしボディカラーではスズキに設定のオプション色、「スパークブラックパール」がマツダ版では非設定でボディカラーが少ない。
なお、初代ワゴンRスティングレーにはワゴンRの国内累計販売台数300万台を記念した特別仕様車「ワゴンRスティングレー リミテッド」が登場したが、AZワゴンカスタムスタイル(MJ22S)にはOEMされなかった。
初代・ワゴンRスティングレー(MH22S)のグレード X,T,DI,特別仕様車の違いなど
初代ワゴンRスティングレーのグレード展開は自然吸気エンジンの上級「スティングレーX」、ターボエンジン搭載の「スティングレーT」、最上級ターボ仕様で直噴ターボエンジンの「スティングレーDI」の3種類。
これ以外に特別仕様車が1種類設定されていた。
標準ワゴンRについてはこちらから。
もうひとつのカスタムモデル、ワゴンR RRについてはこちらから。
スティングレーX
自然吸気エンジンの上級グレード。スティングレーとしてはエントリーグレードに位置。装備もTグレードより若干簡略化される。
エクステリアではLEDサイドターンランプ付きドアミラーが非装備。
快適装備のフルオートエアコン、ディスチャージヘッドランプにフォグランプ、キーレススタートシステムは標準装備。
オーディオは6スピーカー仕様だが、オーディオレス仕様となっていた。
スティングレーT
スティングレーXにターボエンジンを搭載したグレード。ただし64馬力ターボでなく燃費と出力のバランスをとったMターボという60馬力仕様となる。
このほかエクステリアではXで簡略化された切削加工14インチアルミホイール、LEDサイドターンランプ付きドアミラーを標準装備。
見た目がスティングレーXよりも良くなる。
ただしスティングレーXと同じくオーディオレス仕様となっていた。
スティングレーDI
スティングレーに64馬力の直噴ターボエンジンを搭載した最上級グレード。
装備はスティングレーTに加えてインテリアでハイグレードサウンドシステムを採用。
サブウーハーを含む7スピーカーを採用し、インパネ一体型AM/FMラジオ付きMDプレイヤーも標準装備。豪華で快適な室内空間とした。
特別仕様車 スティングレーリミテッド
2008年6月設定の特別仕様車。ワゴンRの国内累計販売台数300万台を記念した特別仕様車。
スティングレーXをベースにリミテッド特別装備としてアルカンターラとスエード調ジャージを採用した専用シート表皮を採用。
このほかベースモデルに非設定だったFFモデルにCVTを設定。外装ではLEDターンランプ付きドアミラーとガラスアンテナを標準装備。
内装ではメッシュ調のインパネセンターガーニッシュ、シルバーステッチを施した本革巻ステアリングホイール、専用ドアトリム表皮を採用。
便利機能としてオートライトシステムを標準装備とし、特に内装において魅力的な装備を与えた特別仕様車。
スティングレーリミテッドについてはこちらから。
エクステリア(外装)
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フロントデザイン。スティングレーの大きな特徴はフロント。ノーマルともそれまでのワゴンR RRとも全く異なる水平なデザインを基調としている。
ヘッドライトおよびグリルは横一直線で統一され、旧来のデザインを彷彿とさせる一方でディスチャージヘッドライトを標準装備し、ヘッドライト部分は迫力のあるデザインとなっている。
クリアータイプとなったグリルもそれまでのスズキ車にはなかったデザインで非常に新鮮だ。それまでのワゴンR RRよりも個性の強いモデルといえよう。
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横から。フロントデザインの変更に伴い、ボンネット部分もスティングレー専用となっている。ベースよりもボンネットの角を高くしてよりスクエアなデザイン感を出している。
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足元は専用デザイン(切削加工)の14インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは165/55R14。
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リア。コンビランプは以前からあったクリアータイプを採用。RRで用いられていたようなマルチリフレクターではないので少しデザインが古臭く見える。
ただこの点は社外品やRRの純正流用で対応可能で、人気車種ということもあり結構な数のコンビランプがリリースされている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3種類の構成で、3気筒NAの「X」、3気筒Mターボ(60馬力)の「T」、3気筒直噴ターボエンジン(64馬力)の「DI」というグレード構成。「DI」グレードの直噴ターボエンジンはセルボSRでも採用された軽自動車初となるターボエンジン。
スティングレーXの自然吸気エンジンは最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。
スティングレーTの最高出力は60ps(44kW)/6000rpm、最大トルク8.5kg・m(83N・m)/3000rpmのM(マイルド)ターボ仕様となる。
スティングレーDIの直噴ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3500rpm。ちなみにスペック上は直噴ターボエンジンも通常の64馬力ターボエンジンも同じ値となる。
直噴ターボはシリンダー内に高圧のガソリンを直接噴射することでそれまでのターボエンジンよりも燃焼効率がアップし、低燃費に貢献するというもの。実際のところカタログ燃費ではひとつ下のMターボよりもDIターボの方が若干良かった。
ただしコスト面の関係から2代目以降では採用されず、初代スティングレーのみの幻のエンジンとなっている。トランスミッションは全グレードで4ATのみで、駆動方式はFFまたは4WDとなる。なお最終型のスティングレーリミテッドにはNAとCVTが組み合わされる。
安全装備として運転席&助手席エアバッグとEBD付きABSを全グレードに標準装備する。
MH22S スティングレーX、スティングレーT、スティングレーDIの違いと特徴、直噴ターボの注意点・故障リスク
スティングレーXはVVTを搭載したK6A型自然吸気エンジン搭載モデルで、NAエンジンともいう。一番価格が安く、中古車のタマ数は最も多い。
次にスティングレーTは60馬力のマイルドターボと呼ばれるK6A型直列3気筒ターボエンジンを搭載するモデル。スティングレーXの次にタマ数が多く、絶対的なパワーは無いものの燃費とパワーを両立したエンジン。
スティングレーDIは3代目ワゴンR・RRやセルボSRにも搭載されたK6A型直列3気筒DOHC直噴ターボエンジンを搭載するモデル。初代スティングレーの中でもタマ数が少なく希少グレード。
パワーは通常の64馬力エンジンと同じながらすぐれた低燃費を実現したスズキの傑作エンジンを搭載する。
一方でスティングレーDIにも搭載された直噴ターボエンジンは構造上、エンジンの燃焼室内にカーボンデポジットやススなどが溜まりやすく、過走行のスティングレーDIではカーボン等の堆積により燃費や加速性能の悪化、ノッキングやエンストなどが発生しやすくなっている可能性がある。
カーボンデポジットの除去は市販の燃料(ガソリン)添加剤で簡単に可能なので、スティングレーDIの中古車を購入する際は燃料添加剤も視野に入れておくと良い。
なお、この後の2代目スティングレーではこの直噴ターボエンジンは搭載されず、初代限りで廃止となった。
その理由としては軽自動車のエンジンとしては高コストな点と、直噴化せずとも効率よく熱効率を上昇させる方法が判明したためである(その後ワゴンRスティングレーはロングストロークのR06A型エンジンとマイルドハイブリッドを組合せた次世代モデルMH44S型へと進化する)。
インテリア(内装)
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インパネ。車のイメージに合うよう黒を基調としている。RRではセンターガーニッシュがシルバー系だったが、スティングレーでは黒系でより上級感を演出。
MH系のワゴンRは、デビュー当初従来タイプのスピードメーターだったが後期型で自発光式メーターに変更されている。このスティングレーは後期モデル以降に追加されたので全グレードで自発光式メーターとなる。
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ステアリングは全グレードで本革巻きステアリング。TとDIグレードではキーレススタートシステムを採用し、エンジンキーをシリンダーに差し込まずにエンジン始動が可能となる。
エアコンは全グレードでフルオートエアコンとなる。
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フロントシートはベンチシートタイプだがサイドのサポートが付いたタイプ。
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ドアパネルはピアノブラックで加飾され上級感がアップしている。
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リア。ワゴンRの3代目ということでリアの足元は広めの設計がされている。リアシートはスライド可能で荷室と足元の広さ調整も可能だ。
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ラゲッジルーム。
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リアシートを倒した状態。
初代ワゴンRスティングレーの総評
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初代のワゴンRスティングレーはベースとは全く異なる個性的なデザインが特徴のカスタムモデルである。
ワゴンRでは普通感が漂うがこのデザインなら所有欲も満たしてくれる1台。デビューがワゴンRの3代目後半での追加設定、ということもありあまり生産されず次の4代目(スティングレーは2代目)へとバトンタッチした関係から中古市場ではタマ数が少なめである。
燃費性能の面では現行モデルに及ばないが冒険のない安定したスクエアな形は初代スティングレー特有のもの。それまでの軽自動車とは一味ちがうデザインで、普通車からの乗り換えでも抵抗感が薄く有用なモデル。
特にパワフルかつ低燃費で軽自動車唯一の直噴ターボエンジンは初代スティングレーだけの特徴なので、ターボエンジンが好きな人には嬉しい軽ワゴンである。
中古市場では年数経過によりかなり安価な価格帯のモデルとなる。経年劣化や摩耗など考慮すべき部分はあるが、とにかく値段が安くて見た目もそこそこ良いワゴンタイプの軽自動車を探している場合は有力な候補のひとつである。
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なお、2008年6月にはワゴンRの国内累計販売台数300万台を記念した特別仕様車「スティングレー リミテッド」が登場している。
アルカンターラ&スエード調ジャージを採用した専用シート表皮や本革巻きステアリング、オートライトなど豪華装備が特徴で、初代スティングレーの中でもより上質な内装が際立つスティングレーである。
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