ワゴンRはスズキのワゴン型軽自動車。本稿では3代目と呼ばれるMH21系の後期型(2005年9月~2008年8月)について記述する。
3代目 スズキ・ワゴンRとは?特徴など
2003年9月フルモデルチェンジを受け、3代目となったスズキのワゴンR。
先代同様にマツダには3代目AZワゴンとしてOEM供給される。MH系はプラットホームの刷新で先代よりも一回り大きく、より箱型に近くなったのが大きな特徴だ。
加えて屋根を長く広く、ドアの開口部も広げることで乗り降りのしやすさを向上。全体的なデザインも、角は丸みがあるものの直線を基調としており、初代のような雰囲気も。
どの世代にも受け入れられやすいオーソドックスなものとなっている。
外観以外にメカニズムではスバルと共同開発のフロントサスを採用したり、スポーティーモデルのRRでは軽自動車初となる直噴ターボの搭載など、技術も大きく進歩した。
また、車内の収納スペースを豊富に設定することで使い勝手も向上させた。
安全装備としてはそれまでのABSのみから積載重量に応じて後輪の制動力をコントロールし、リヤブレーキを最大限に機能させる「EBDシステム」(電子制御制動力配分システム)をABSにプラス。
軽量衝撃吸収ボディーの「TECT」も一新しより安全性を向上させた。
3代目ワゴンR(MH21S)後期型の改良点と前期との違い
その3代目ワゴンRは2005年9月にフロントデザインの変更を含むマイナーチェンジを行い後期型となった。
後期型ではフロントグリルとフロントバンパー(※リミテッドとRR-DI)のデザインを刷新したほか、リアのコンビランプをクリアータイプ(クリアーテールランプ)に変更。
さらにホイールキャップやアルミホイールのデザインを変更した。
内装でもスピードメーターを自発光式メーターへ変更。
機能装備ではヘッドライトの「マニュアルレベリング機構」を全グレードに標準装備。
後期モデルではインパネやシート表皮&ドアトリムクロスのデザインも小変更するなど、内外装でスタイリッシュな変更が与えられたマイナーチェンジとなった。
3代目ワゴンR、MH21SとMH22Sとの違い
3代目ワゴンRのMH21SとMH22Sの違いは年式にある。
MH21Sは3代目ワゴンRデビュー当初の2003年9月~2007年4月まで用いられた。この間、本稿でも扱っている2005年9月にマイナーチェンジを受け後期型となるが、型式はMH21Sのままとなっいた。
そのためMH21Sだからといって一概に後期型や前期型といった区別が出来ない(逆にMH22Sは3代目後期型マイナーチェンジ後のため確実に後期といえるが)。
MH22Sは2007年5月以降の3代目ワゴンRの型式である。
3代目後期 ワゴンRのグレード FA、FX、FT、FX-Sリミテッド、FT-Sリミテッド、ナビスペシャル、リミテッド違いなど
3代目後期ワゴンRのグレード展開は自然吸気エンジンで廉価グレード「FA」、ミドルグレード「FX」、上級ターボ搭載「FT」の3種類。
特別仕様車には「FX-Sリミテッド」、「FT-Sリミテッド」、「250T」、「250X」、「ナビスペシャル」、「リミテッド」などが設定されていた。
FA
3代目後期ワゴンRの廉価グレード。装備を簡略化し、価格を抑えた安いグレード。
エクステリアはリアのプライバシーガラスが非装備で、足元もホイールキャップ+スチールホイールで簡素な外観。
インテリアではFXと同じくタコメター付きの2眼式メーターを採用。
ボディカラーも「ブルーイッシュブラックパール3」、「スペリアホワイト」、「シルキーシルバーメタリック」の3色のみ。
快適装備はパワステとパワーウィンドウ、マニュアル式エアコンなどを標準装備するが、電波式キーレスエントリーやオーディオ、スピーカーは非装備(オーディオレス&スピーカーレス仕様)。
4WDモデルには運転席シートヒーターも標準装備。
安全装備は運転席&助手席エアバッグは標準装備だが、ABSは非設定。
5MTと4ATの2種類を設定する。
FX
3代目後期ワゴンRのミドルグレード。FAよりも装備が良くなる。
エクステリアではプライバシーガラスを標準装備。
ボディカラーもFAより増えて、全8色を設定。
快適装備はパワステとパワーウィンドウ、マニュアル式エアコンに加えて電波式キーレスエントリーとAM/FM+CDオーディオが標準装備となる。
4WDモデルには運転席シートヒーターも標準装備。
安全装備は運転席&助手席エアバッグを標準装備し、ABSがオプション選択可能となる。
FXでも5MTと4ATの2種類を設定。
FT
3代目後期ワゴンRのターボ搭載上級グレード。60馬力のMターボ仕様エンジンを搭載し、FAやFXよりも加速が良くなる。
エクステリアではフロントアンダースポイラー、サイドアンダースポイラー、リアスポイラーでフルエアロ化。ただし足元はスチールホイール+ホイールキャップ仕様。
快適装備はパワステとパワーウィンドウ、マニュアル式エアコンに加えて電波式キーレスエントリーとAM/FM+CDオーディオが標準装備となる。
4WDモデルには運転席シートヒーターも標準装備。
安全装備は運転席&助手席エアバッグを標準装備し、EBD付きABSも標準装備となる。
4ATのみで5MTの設定は無し。
特別仕様車 FX-Sリミテッド
ミドル「FX」グレードをベースとした特別仕様車。後期モデルでもマイナーチェンジが適用され、継続販売された。
FX-Sリミテッドでは外装に
- フロントメッキグリル
- フロントアンダースポイラー&リアアンダースポイラー
- サイドアンダースポイラー
- ルーフエンドスポイラー
- ブルーリフレクタータイプのヘッドランプ
- 14インチアルミホイール
- ローダウンサスペンション
を標準装備。オプション設定でRR用のプロジェクターヘッドライト(ディスチャージヘッドランプ)が選択できた。
内装では
- ブラックとシルバーのツートンカラーの本革巻ステアリングホイール
- ブラック基調の柄付きファブリックシート表皮
- メッキインサイドドアハンドル
- 2DINサイズのオーディオセット(MD/CDステレオ+6スピーカー)
を標準装備とし、内外装でスポーティーな雰囲気を与えつつお買い得した特別仕様車。
特別仕様車 FT-Sリミテッド
ターボ搭載の「FT」グレードをベースとした特別仕様車。
こちらも前期モデルからの継続販売で、後期マイナーチェンジが適用された。
外装では
- 大型フロントメッキグリル (※2007年5月一部改良以降)
- フォグランプ (※2007年5月一部改良以降)
- フロントアンダースポイラー
- リアアンダースポイラー
- サイドアンダースポイラー
- LEDターンランプ付きドアミラー(※2007年5月一部改良以降)
- ルーフエンドスポイラー
- ブルーリフレクタータイプのヘッドランプ(※2007年5月一部改良以降)
- 14インチアルミホイール
- ローダウンサスペンション
を標準装備。オプション設定でRR用のプロジェクターヘッドライト(ディスチャージヘッドランプ)が選択できた。
内装では
- ブラック&シルバーのツートンカラーの本革巻ステアリングホイール
- ブラック基調の柄付きファブリックシート表皮(※2007年5月一部改良以降)
- メッキインサイドドアハンドル
- 2DINサイズのオーディオセット(MD/CDステレオ+6スピーカー)
を標準装備。
機能装備ではキーフリーシステムが2007年5月一部改良で標準装備化。
内外装でスポーティーな雰囲気を与えつつお買い得した特別仕様車。
特別仕様車 250T/250X
ワゴンRの国内累計販売台数250万台達成を記念して販売された特別仕様車。
250Tはターボ搭載「FT」グレード。250Xは自然吸気エンジン「FX」グレードがベース。
250Tには「ビレットタイプのメッキグリル」、250Xには「メッキガーニッシュ付きフロントグリル」をそれぞれ特別装備。
このほか共通で記念モデルの追加装備として
- ディスチャージヘッドランプ
- ローダウンサスペンション
- 14インチアルミホイール
- 「250LIMITED」ロゴ入り記念エンブレム
- ミュージックキャッチャー機能付HDDナビゲーションシステム
- 運転席シートリフター
- チルトステアリング
などを標準装備しつつ、お買い得な価格とした特別仕様車。
特別仕様車 ナビスペシャル/ナビスペシャルターボ
2006年10月設定の特別仕様車。「HDDナビゲーション」を標準装備とした特別仕様車。
ナビスペシャルでは外装に
- メッキガーニッシュのフロントグリル(ナビスペシャル特別装備)
- ワゴンRR用のディスチャージヘッドランプ
- ローダウンサスペンション
- サイドアンダースポイラー
- ハイマウントストップランプ付きリアスポイラー
- 14インチアルミホイール、「Special」専用エンブレム
を標準装備。
内装では
- HDDナビゲーションシステムに
- フルオートエアコン、
- 本革巻ステアリングホイール、
- 運転席シートリフター、
- チルトステアリング
を標準装備とし、スポーティー感と利便性を高めた特別仕様車となっていた。
特別仕様車 リミテッド
ワゴンRの新車販売台数No.1と国内累計販売台数300万台を達成を記念して販売された特別仕様車。
ワゴンRリミテッドのエクステリアは
- メッキビレットのフロントグリル
- マルチリフレクタータイプのフォグランプ
- LEDターンランプ付きドアミラー
- ハイロー切替式のディスチャージヘッドランプ
インテリアでは
- アルカンターラとスエード調ジャージを採用した専用シート表皮
- メッシュ調のインパネセンターガーニッシュ
- ブラックメッキのメーターベゼル&エアコンルーバーリング、
- サンドブラック柄のドアアームレスト
- シルバーステッチ入り本革巻ステアリングホイール
- 専用ドアトリムクロス
快適装備としてはフルオートエアコンを標準装備。
内外装や機能面で特別感を高めたモデルとなっていた。
エクステリア
フロントデザイン。前期型では箱型ボディにマッチする直線を貴重としたオーソドックスなグリルだったが、後期型ではこれを大変更。
半楕円のようなそれぞれ微妙にデザインが違うパーツをを上下2つに並べ、これをメッシュ形状で覆い、中央にはアクセントとしてラインを一本引いいたようなデザインに。
グリルだけの変更だがベースがベーシックデザインだっため、かなり違ったイメージとなっている。
これに加えヘッドライトも内部を少変更。前期ではウィンカー部が下部で横長に配置されていたのに対し、後期では内部で丸型となっている。
サイドから。このあたりは特に変更点はなし。足元は引き続き13インチスチールホイール+フルホイールキャップ(FAではホイールキャップレス仕様)。タイヤサイズは155/65R13。
リア。後期型ではコンビランプのデザインが変更され、前期よりもバックランプ部分が拡大し、周囲をクリアーで覆ったデザインとなった。この点も後期で上質なイメージとしている。
ただ、コストカットの関係かキラキラのマルチリフレクターではないので接近するとイマイチな感じもある。この点は社外品(純正タイプやユーロテール等)が数多くリリースされているので交換すると良いだろう。
エンジン・機能装備・安全装備など
搭載されるエンジンはK6A型3気筒DOHC自然吸気エンジンと3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンの2種類(スポーツグレードのRRについてはこちらを参照)。
自然吸気エンジンは最高出力54ps(40kW)/6500rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/3500rpmを発生。
ターボエンジン(Mターボ)は最高出力60ps(44kW)/6000rpm、最大トルク8.5kg・m(83N・m)/3000rpmを発生する。
Mターボは街乗りでの使いやすを重視したマイルドターボのことで出力は60馬力と、自主規制値よりも抑えられている。
ターボも中回転域を重視し、どちらかといえばパワーよりも燃費に性能をふってある。
トランスミッションは5MTか4ATの2種類(ただし、5MTは廉価グレードのみで、ターボエンジンとの組み合わせは無い)。駆動方式はFFまたは4WDの2種類。
安全装備としては運転席&助手席エアバッグは全グレードに標準装備。FAではABSを非設定。FXグレードでオプション設定。FCでは標準装備する。
インテリア
インパネ。後期型では廉価グレードのFAを除いてインパネセンターガーニッシュが刷新された。
さらにステアリングパッドの意匠も変更。法改正にともないマニュアルレベリング機構が追加。
スピードメーターはホワイトタイプから自発光式メーターへ。廉価グレードを含む全グレードで変更され、タコメーターも備える。
エアコンはマニュアル式エアコンを採用。一部特別仕様車ではフルオートエアコンを採用する。
フロントシートはベンチシートタイプ(※MTを除く)。ドアトリムクロスと共に後期型で刷新された。
リアシート。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
3代目後期ワゴンRの総評
3代目ワゴンRの後期型は、前期よりも上質となった外観や内装が特徴の軽自動車である。
この後の4代目や5代目と比較すると箱型か強いボディフォルムだが、ヘッドライトのデザインが個性的になるので、3代目後期はフロントデザインと合わせてこれはこれでまとまっている。
ベーシックなワゴン軽自動車として万人うけしやすいモデルといえよう。
中古市場ではかなり安価なモデルとなっていて、NAモデルならなお手頃だ。
ただ、この代のワゴンRのNAは前期同様に重たいボディに4ATなので加速がかなり悪い。燃費も街乗りでは効率が悪くあまり良くない。
その点は注意が必要だが、できるなら加速性能と燃費を両立したMターボをおすすめしたい。
また、特別仕様車はRRのようなグリルやヘッドライトを装着したものがあり、見た目もスポーティになる。タマ数は少ないが安くても内外装にこだわりたい人は特別仕様車もオススメ。
兄弟車 マツダ・3代目AZワゴン(MJ21S)
3代目ワゴンRはマツダへ「AZワゴン」としてOEM供給された。
フロントグリルをマツダデザインに変更し、テールランプもAZワゴン専用とするなど、差別化が図られていた。
これにより外観がスズキよりもスタイリッシュで洗練された雰囲気となるため、タマ数は少ないがAZワゴンも同じく安価で地方都市や田舎での街乗り軽自動車として重宝する。
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