ワゴンRはスズキのワゴン型軽自動車。スティングレーはそのスポーティーモデルである。本稿では5代目ワゴンRに設定されていた3代目ワゴンRスティングレーの2012年9月~2014年7月までを前期型とし、これを扱う。
概要
2012年8月にフルモデルチェンジし、5代目となったワゴンR。5代目ワゴンRでは先代で採用されたスタイリッシュな箱ボディを継承し、そこからさらに丸みを与えたことでスタイリッシュ路線が洗練された外観に仕上がった。
また、ノーマルのワゴンRでは同年代の7代目アルトのような丸みをヘッドライトに与えることで、ヨーロピアンな雰囲気も演出した。
メカニズムではそれまでのK6A型に変るR06A型エンジンを新規に採用。軽自動車としては初となる低燃費技術の「エネチャージ」、「新アイドリングストップシステム」、「エコクール」を全グレードに採用したことで自然吸気エンジンのFFモデルでは28.8km/L(JC0モード)、ターボ仕様のFFモデルでも26.8km/L(JC08モード)を実現するなど燃費が飛躍的にアップした。
先代からRRに代わるスポーティーモデルとして登場した「スティングレー」は、ノーマルモデルと同時デビュー。スティングレーとしては3代目となり、初代や2代目から続く直線基調のヘッドライトやグリルを継承。
一方で3代目ではボディ形状にあわせてエッジを効かせた顔つきとなり、ノーマルモデル以上に洗練された雰囲気が強くなった。
3代目・前期型ワゴンRスティングレー(MH34S)と後期(MH44S)との違い
3代目ワゴンRスティングレーは、2014年8月のマイナーチェンジ(3型)以降の後期とそれ以前(前期)とでは外観、内装、メカニズムで大きく異る。
後期型(3型)のエクステリアはフロントグリルやバンパーデザインを刷新しより存在感のある顔つきとなったほか、インテリアではシルバー加飾&ブラック内装のシート表皮を新デザインに変更。
メカニズムでは自然吸気エンジンにマイルドハイブリッドの「S-エネチャージ」を採用し、発進加速や追い越し加速をモーターでアシストすることで走りを強化。これと同時に燃費も改善した(※ターボ仕様は遅れて2015年8月にマイルドハイブリッド化)。
これ以外でも「S-エネチャージ」化に伴い発電機能付きオルタネーターをエンジンの始動に使うことで、アイドリングストップ時の「キュルキュル音」が皆無で、かつスムーズという特徴もある。同年代のダイハツ車、ホンダ車等にはないスズキだけの特質すべき点だ。
このほか自動ブレーキでは「後退時左右確認サポート機能」と「自動俯瞰機能」を追加。スマートフォン連携ナビゲーションとセットのオプション設定とした。
装備面ではスティングレーのターボ仕様にクルーズコントロールシステムを追加。最廉価グレード(FAのFF車)を除いて運転席シートヒーターを標準装備化。助手席ヒートシーターはオプション設定車を増やした。
3代目前期ワゴンRスティングレーのグレード X,T,特別仕様車の違いなど
3代目前期ワゴンRスティングレーのグレードは大きく分けて「X」と「T」の2種類。
ただし3代目ではデフォルトでインパネ一体型オーディオがレス仕様となり、デビュー当初はこれを標準装備した「オーディオ装着車」というグレードがXとTにそれぞれ存在した。
さらに自動ブレーキが初搭載されたときはこれが「レーダーブレーキサポート装着車」に置き換わった。
Xグレード
3代目ワゴンRスティングレーのエントリーグレード。自然吸気エンジン仕様でベーシックなグレード。
エクステリアには先代と同じくディスチャージヘッドランプやフォグランプ、サイドアンダースポイラー、リアスポイラー、アルミホイールを標準装備。
インテリアでもブラック内装にシルバー加飾のインパネやピアノブラックのオーディオパネル、3眼式メーターなど上質感を高めている。ステアリングは本革巻きステアリングを採用し、フルオートエアコンやプッシュ式エンジンスタートなど、標準ワゴンRよりも装備が豪華となる。
Tグレード
3代目ワゴンRスティングレーの上級ターボ仕様。ターボエンジンを搭載し、走りも良いグレード。
Xグレードの装備に追加で専用デザインの切削加工15インチアルミホイール、LEDターンランプ付きドアミラー、パドルシフト付き本革巻きステアリングなどが標準装備となる。
特別仕様車 Jスタイル
2014年12月設定の特別仕様車。日本の和をテーマにした鮮やかなゴールド装飾を内外装に取り入れた特別モデル。
エクステリアでは
- 専用ゴールドメッキフロントグリル、
- LEDイルミネーション、
- リモート格納ミラー(ゴールドLEDターンランプ付きドアミラー)、
- 15インチアルミホイール、
- ボンネットとサイドに専用デカール、
- ゴールドアウタードアハンドル、
- ゴールメッキバックドアガーニッシュ、
- LEDフォグランプ、
- J STYLEエンブレム、
- フロントガラスにプレミアムUV&IRカットガラス
を特別装備。インテリアでは
- ゴールド仕様オーディオガーニッシュ&
- ゴールド仕様エアコンルーバーリング
- ゴールド仕様インパネオーナメント
- ゴールド仕様ドアトリムオーナメント
- ゴールド仕様スピーカーガーニッシュ
- ゴールド仕様ドアアームレスト
- ゴールド仕様ステアリングガーニッシュ
- ゴールド仕様ステアリングスイッチ
- ゴールド仕様メーターリング
- 専用ファブリックシート表皮
- 専用フロアマット
- 専用携帯リモコンカバー
を特別装備。快適装備としては運転席&助手席シートヒーターを標準装備。バックアイカメラをメーカーオプション設定とし、内外装でゴールドをあしらいJapanスタイル的なテーマで特別感を演出したモデル。
ワゴンRスティングレー Jスタイルについてはこちらから。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。先代のイメージである水平基調を保ちつつ、ヘッドライトは左右にエッジと切り込みが入りより洗練されたデザインとなっている。
なお、この代からイルミネーションが追加され、ヘッドライトとグリルの部分が鮮やかに点灯する。
サイド。先代のスタイリッシュボディを継承しつつ、ボンネットを厚くしフロントやリアの一部に丸みやエアロダイナミクスな形状を与えたことで先代よりも洗練されたイメージを演出した。
上級グレードではLEDターンランプ付きドアミラーを標準装備。
足元は自然吸気エンジンで14インチアルミホイール。タイヤサイズは155/65R14。
ターボモデルではスタイリッシュなデザインの15インチアルミホイールとなる。タイヤサイズは165/55R15。
リアのコンビランプはクリアテールだが、ストップランプがLED仕様となっている。またウィンカーやバックランプの配置が前後逆転している。
ストップランプ部分はLED化に伴い、メッキリフレクターが無くなり先代のコンビランプと比較すると若干見劣りする。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは新採用のR06A型3気筒DOHC自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類。自然吸気エンジンは最高出力52ps(38kW)/6000rpm、最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。
K6A型のターボエンジンとR06Aターボエンジンとでは最大トルクに差があり、K6Aでは3500回転で10.8kgを出してたが、R06Aでは3000回転で9.7kgの最大トルクに達成する。最大トルクそのものは少し下がったが500回転低くなったためより街乗りでは乗りやすいエンジンとなっている。
トランスミッションは副変速機付きのCVT。駆動方式はFFか4WDだ。この他MH34系ではエネチャージシステムと新アイドリングストップシステム、エコクールが全グレードで標準装備となる。
2013年7月マイナーチェンジではエンジンの摩擦抵抗の低減、空気抵抗の低減などにより燃費をさらにアップ。FFの自然吸気エンジンで30.0km/L(JC08モード)を達成した。
先代よりもボディを軽量化し、さらにエネチャージシステムによるエンジンのロスを軽減したことで、特にターボモデルの走りと燃費は先代以上に良い出来となっている。1.3Lクラスの普通車と同じかそれ以上と言ってもいいだろう。CVTにより100kmの回転数は2600rpmとこれも優秀だ。
自動ブレーキとしてはデビュー当初は設定がなかったが2013年7月マイナーチェンジ(2型)でレーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)や誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPをCVT車全機種にメーカーオプションで設定した。
ただしこの時点ではステレオカメラ式ではなく、赤外線を使った自動ブレーキだったため作動領域が最大約30km/hまでとライトな感じの自動ブレーキであった。
インテリア(内装)
インパネ。MH34S型のスティングレーでは先代のイメージを引き継ぎつつ、曲線を用いてより上質な雰囲気とした。使い勝手は歴代モデル同様、インパネアンダートレイなど収納スペースを多数設定し利便性は高い。
加えてスティングレーではメッキ加飾などを使うことで質感がアップした。また、メーターまわりも見やすく自発光式メーターの採用によりベーシックであるが洗練されたデザインとなった。
ターボグレードでは本革製のステアリングに7速マニュアルモード用のパドルシフトが備わる。
スピードメーター。ブルーやグリーンのイルミネーション表示でエコ・ドライブをアシストする。
フロントシートはセパレートタイプ。先代スティングレーあたりから上質感がアップしたが、この代ではさらにそれがアップ。ヘッドレストの形状が特に変更されている。
ドアトリムクロスもブラックカラーで、ドアパネルはピアノブラック加飾。インナードアハンドルもメッキタイプとなる。
リアの足元は先代同様、かなり広い。
リアシートのスライド機構ももちろん搭載。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。助手席も前に倒れるので、長物も積める。
前期・3代目ワゴンRスティングレーのまとめ
3代目・ワゴンRスティングレーの前期は先代よりもさらにワンクラス上のスタイルと性能を得た1台だ。特にターボモデルに至っては磨きがかかり、普通車からの乗り換えでも加速性能に何ら違和感は無いだろう。
見た目重視や街乗りだけならNAでも十分な性能はあるが、高速や郊外も使うことを考慮すればターボ付きをオススメしたい。軽自動車でありながら、1.3Lのコンパクトカーに引けを取らない性能があるため、価格以上の価値がつまっている。
なお、この後の2014年8月マイナーチェンジ(後期型)ではエネチャージを進化させた「S-エネチャージ」の採用によりマイルドハイブリッド仕様に進化する。S-エネチャージにより燃費は自然吸気エンジンのFFモデルで32.4km/L(JC08モード)を達成。
さらなる燃費アップを果たすこととなる。さらにモーターアシストにより自然吸気エンジンでは登坂能力がほんの少し向上するなど前期よりもさらに良くなるため、新車で購入を考えている人は後期型のチェックを忘れないように。
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