スペーシアはスズキのトールワゴン型軽自動車。「スペーシアカスタム」はそのカスタムモデルである。本稿では2015年5月マイナーチェンジ以降を後期型と定義し、これを扱う。
出典:スズキ認定中古車
初代 スズキ・スペーシアカスタムとは?
2013年6月にパレットSWの後継モデルとして登場したスペーシアカスタム。
ロングホイールベースに新プラットフォームに採用で、クラストップレベルの室内長と驚異的な軽量ボディによる低燃費と軽快な走りが大きな特徴だ。
エクステリアではパレット時代から大きく変更し、オーソドックスかつ親しみやすい顔つきにピラーを立てたボクシースタイルとした。
また、すべてのピラーをブラックアウト化し、かつてのレガシィワゴンのようにガラスを連続させることで開放感を演出した。
インテリアでは使い勝手を考慮した2段タイプとし、かつ上部をブラウンカラー、下部をベージュカラーとした2トーンカラーを採用。さらに質感をアップさせた。
メカニズムではパレットに比べて最大で90kgの軽量化を実現。そうのうえで軽くて高剛性な新型軽量衝突吸収ボディのテクト採用で低燃費と高剛性を両立しつつ、広い室内空間も実現した。
エンジンは改良型R06A型を採用。副変速機付きCVTも同時に改良し低燃費と優れた加速性能を実現した。さらに走行抵抗の低減や消音材、振り子式エンジンマウントの採用などで静粛性もアップさせている。
先進技術としてはエネチャージ、新アイドリングストップシステム、エコクールの3つを採用。
快適装備としては後席両側スライドドアに加え、後席左側には軽自動車初となるワンアクションパワースライドドアを採用。
多彩なシートアレンジや170mmスライド可能な左右独立リアシート、最大開口幅1,130mmと、開口高1,110mmの大きな荷室開口部、多彩な収納スペース、ロールサンシェード、キーレスプッシュスタートシステム&カテキン・エアフィルター付のオートエアコンの全グレード標準装備化、リモコンキー連動のリモート格納ミラーを一部グレードに採用するなどパレット時代よりもさらに利便性をアップさせている。
安全装備としてはデビュー当初は設定が無かったが、2013年8月に「レーダーブレーキサポート」などを装着し、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPの4つを採用した。
初代・後期型スペーシアカスタムの(MK42S)のグレード、GS、GSターボ、XS、XSターボの違い
初代・後期型スペーシアカスタムでは下から順番にエントリーグレードのGS、XS、GSターボ、XSターボの4種類が設定された。
自動ブレーキは各グレードの「デュアルカメラブレーキサポート装着車」に標準装備となる。そのため中古車では自動ブレーキが付いた個体と、そうでない個体がある。
また、前期モデルには特別仕様車が2種類あったが、後期モデルは設定がされなかった。その一方で派生モデルの「カスタムZ」を追加。より個性を極めたモデルとしていた。
GSグレード
後期・初代スペーシアカスタムのエントリーグレード。GSグレードは前期型同様、後部座席のロールサンシェードがオプションで、ステアリングがウレタンステアリングとなるなど一部装備が簡略化される。
ただし前期では後席右側ワンアクションパワースライドドア等が非設定だったが、後期モデルではチルトステアリング、運転席シートリフター、フロントアームレストボックス等とセットで標準装備化された。
このほか14インチアルミホイール、LEDイルミネーションはホワイト色でグリルのみ。
スピーカーは2スピーカー、全方位モニターやナビは選択不可。
GSターボ
GSターボはGSをベースにターボ仕様としたグレード。XSターボよりもお買い得な価格設定。
XSグレード
初代・後期スペーシアカスタム、自然吸気エンジンの上級グレード。
XSとXSターボは前期のXS、TSに相当する(※TSグレードは後期で廃止しGSターボとXSターボに分岐)。
エクステリアにはメッキドアハンドル、LEDフォグランプ、LEDイルミネーションはフロントバンパーに加え、ブルー色がフロントグリルにも標準装備となる。アルミホイールは15インチ化の切削加工タイプを標準装備。
インテリアでは運転席&助手席バニティミラーが照明付きとなり、本革巻きステアリング、フロントオーバーヘッドコンソール、を標準装備。
快適装備では後席両側ワンアクションパワースライドドアを標準装備。6スピーカーシステム、ロールサンシェード、ナノイー搭載フルオートエアコンの標準装備に、全方位モニターがオプション選択可となる。
XSターボ
ターボエンジン搭載の最上級グレード。XSにターボエンジンを搭載したモデル。
XSターボでは専用デザインの15インチアルミホイールが標準装備となり、7速マニュアルモード付きパドルシフトとクルーズコントロールも備わる。
派生モデル カスタムZ
個性的なグリルを標準装備したカスタムの派生グレード。2016年12月に追加。
出典:スズキ認定中古車
カスタムZ専用大型メッキグリルや新設計の専用ボンネット、内装でもブラック基調とチタンシルバーの加飾などより個性を強調させ、最上級グレードとした。
スペーシアカスタムZについてはこちらから。
初代・後期型スペーシアの改良点と前期との違い
そのスペーシアカスタムは2015年4月にS-エネチャージによるマイルドハイブリッドを搭載。かつフロントデザインの変更を行い後期型となった。
出典:ホンダ認定中古車
出典:スズキ認定中古車
後期型ではメッキグリルを追加しより迫力あるフロントデザインとしたほか、スペーシア同様にマイルドハイブリッドのS-エネチャージを全グレードで標準搭載。
FFモデルで軽トールワゴンとしては驚異的な30.6km/lを達成。
また、2015年8月の一部改良ではターボモデルもマイナーチェンジが実施され、それまでのTSグレードに置き換わり、GSターボとXSターボの2種類が追加設定。
ターボではクルーズコントロールシステムと7速マニュアルモード付パドルシフトも標準装備とした。
内装でも後期型ではシート表皮に赤色のアクセントカラーをちりばめ質感を向上。
快適装備としては改良型ヒーターとリアヒーターダクト(CVT温水カットバルブ付き)を標準装備。シートヒーターもFFモデルは運転席に。
4WDでは運転席&助手席に標準装備とし、オートエアコンにはナノイーを搭載。さらに防音、防振材の追加もおこなった。
カスタムXSのナビゲーションシステム(※メーカーオプション)も改良し画面を7インチに拡大。カメラも車両前後左右4箇所とし、上から見下ろしたような俯瞰映像をナビゲーション画面に表示するようにした。
カスタムGSでは後席両側スライドドアクローザー、後席左側(助手席側)ワンアクションパワースライドドア(挟み込み防止機構付)、チルトステアリング、運転席シートリフター、フロントアームレストボックスが標準装備。
カスタムXSでも前期でメーカーオプションの後席右側(運転席側)ワンアクションパワースライドドア(挟み込み防止機構付)を標準装備化し、フォグランプをLEDタイプに変更。
ボディカラーも後期では「パールホワイト」から「クリスタルパールホワイト」に変更。
「ミステリアスバイオレットパール」も「ムーンライトバイオレットパールメタリック」に入れ替え。
「アーバンブラウンパールメタリック」を新規追加した。
このほかステレオカメラによる自動ブレーキシステムの「デュアルカメラブレーキサポート」をオプション設定とするなど、安全技術でも他社の一歩先を行くマイナーチェンジとなっている。
MK32S型とMK42S型 初代・スペーシアカスタムの違い
型式MK32S型のスペーシアカスタムとMK42S型との違いは「エネチャージかS-エネチャージ」、「グリル周りのデザイン」、自動ブレーキを選択時は「レーダーブレーキサポートかデュアルカメラブレーキサポート」の違いなどがある。
MK32S型は2015年4月以前の初代スペーシアでこれを前期型と称することが多い。
一方、MK42S型は2015年5月以降のマイナーチェンジ~のモデルで後期型と呼ばれる(※スペーシアカスタムのターボは少し遅れて2015年8月以降)。
「S-エネチャージ」は2代目スペーシアや2代目ハスラーなどでも採用される「マイルドハイブリッド」の一つ前のシステム。
それまでのエネチャージと比べて発電と駆動補助を兼用する「発電機能付きオルタネーター」の採用でエンジンを簡易的にアシストし、ターボ無しモデルでも力強い加速を(一定時間)行えるのが大きな特徴だ。
特に街乗りでの発進加速、登り坂、追い越し加速において効果を発揮しそれ以前のモデルよりも格段に乗りやすくなっている。
自動ブレーキの「デュアルカメラブレーキサポート」はそれまでの「レーダーブレーキサポート」と比べて2つのカメラを用いることにより動作範囲と作動対象物が大幅アップデート。
動作範囲は対車でレーダーブレーキサポートが自車速度約5km/h~約30km/hで走行中対象との速度差が時速15km以下に対し、デュアルカメラブレーキサポートは自車速度約5km/h~約100km/hで走行中対象との速度差が時速50km以下へアップデート。
さらに時速30km以下であれば対歩行者でも機能するようになりかなり実用的な自動ブレーキとなった。
そのため初代スペーシアカスタムを購入する場合は、加速性能や燃費、自動ブレーキなどの面からも後期型のMK42S型がオススメである。
初代・後期型スペーシアカスタムのエクステリア(外装)
フロント
フロントデザイン。後期型では前期のスケルトンメッキグリルに加えて、2本の太いメッキグリルを追加。より押しの強い精悍なデザインとなった。
また、バンパーもデザインが変更され、フォグランプまわりでエアロダイナミックなデザインとなっている。
全体的には前期ではパレットSWのイメージが強かったが後期ではメッキグリルが追加されたことでライバルのように豪華なフロントデザインとなった。
これ以外に前期同様、上級グレード(XSおよびターボ仕様では)フロントバンパーとフロントグリルにLEDイルミネーション、LEDフォグランプが備わり、フロント、フロントクォーター、フロントドアには熱線吸収グリーンガラスおよびトップシェード付フロントガラスが。これ以外の窓ではUVカット機能付ガラスも備わる。
出典:スズキ認定中古車
なお、上級グレードのXSおよびXSターボではスケルトングリル上部にもうひとつメッキグリルが追加され、より迫力が増したデザインとなる。
サイド
出典:スズキ認定中古車
サイドから。スペーシアカスタムでは全グレードでLEDターンランプ付きドアミラーを標準装備。
リヤドア、リヤクォーター、バックドアはスモークガラス仕様。廉価グレードのGSではスライドドアの両側にスライドドアクローザーを標準装備。
かつ後部左側にはワンアクションパワースライドドア(挟み込み防止機構付き)も搭載した。上級グレードのXSではそれまでメーカオプションだった右側後部スライドドアにワンアクションパワースライドドア(挟み込み防止機構付き)を標準装備。
スペーシアカスタムのタイヤサイズ
出典:スズキ認定中古車
足元は専用アルミホイールを装着。上級グレード(XS、XSターボ)では15インチアルミホイール。
出典:スズキ認定中古車
廉価版のGSグレードでは別デザインの14インチアルミホイールとなる。カスタムらしく引き締まったイメージを与える。
リア
出典:スズキ認定中古車
リア。このあたりは特に変更点はなく、前期同様クリアータイプのコンビランプを装着。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジン・トランスミッション・駆動方式
出典:スズキ認定中古車
エンジンは3気筒のR06A型DOHC自然吸気エンジンとターボ仕様の2種類。
自然吸気エンジンの最高出力は52ps(38kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
ターボ仕様は最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。
これにモーター機能付発電機(ISG)と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様となる。トランスミッションは全グレードでCVT(副変速機付き。
ただし軽トラのような切り替えはできず内部で自動に切り替わる)。駆動方式はFFまたは4WDの2種類。S-エネチャージを導入したことでこの手の軽自動車としは初のリッター30を越え、カタログ燃費は自然吸気エンジンのFFモデルで30.6km/lを達成。
同4WD仕様でも29.0km/lと、当時、同年式のライバル(タントカスタム、N-BOXカスタム等)大きく引き離した。
安全装備・自動ブレーキなど
安全装備としては前期でオプションまたは一部グレード別設定だった「レーダーブレーキサポート」を進化させ、ステレオカメラによる自動ブレーキシステムの「デュアルカメラブレーキサポート」をオプション設定。
それまでのレーダーを用いたシステムからスバルのアイサイトと同様の2台のステレオカメラ(デュアルカメラ)を用いたシステムに進化。
約5km/hから約100km/hの速度域で車両や歩行者を検知し、警報や自動ブレーキで衝突の回避、または衝突時の被害軽減を図るシステムで、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能などがセットで備わる。
特に前方衝突警報機能は軽自動車としては異例の100km/h程度でも動作。2016年5月現在、ライバルであるダイハツのスマートアシスト2は約4km/h~50km/hが作動速度域なためスズキがかなりリードしている。
オプション価格として5万ほどアップとなるが、予算に余裕があるのなら是非とも付けたいオプションだ。
これ以外ではエマージェンシーストップシグナルとESP(車両走行安定補助システム)がメーカーオプション設定(デュアルカメラブレーキサポートオプションではこの2つが含まれる)。ヒルホールドコントロールは全グレード標準装備。
オプションとしてもうひとつホットなのが全方位モニター。フロント、両サイド、バックカメラの4箇所に設置されたカメラで真上から見たような映像を作り出し、駐車時をアシストする。
初代・後期型スペーシアカスタムのインテリア(内装)
インパネ
インパネ。上級のXSおよびXSターボではエアコンがナノイー仕様。
上級グレードのXSおよびXSターボでは本革巻きステアリングホイール。廉価のGSおよびGSターボではウレタンステアリングホイールとなる。XSターボではステアリングに7速マニュアルモードが備わる。
スペーシアカスタムのスピードメーター
スピードメーター。前期と同じくたこ付きの3眼式。後期型ではS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)搭載により右側メーターが燃料計からマルチインフォメーションディスプレイに変更。燃料残量やエネチャージ状態などを表示する。
スペーシアカスタムのエアコン
エアコンは全グレードでオートエアコン。後期モデルではナノイーが追加搭載された。
フロントシート
フロントシートはベンチシートタイプ。後期ではシート表皮中央部にアクセントカラー(赤)が施され上質感がアップした。
リアシート
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構を備える。後部窓ガラスに、XSとXSターボではロールサンシェードとプレミアムUV&IRカットガラスを装備。
ラゲッジスペース
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。
まとめ
初代・後期型スペーシアカスタムの総評
出典:スズキ認定中古車
スペーシアカスタムの後期型は迫力あるフロントデザインとマイルドハイブリッドのS-エネチャージ、ステレオカメラ方式の「デュアルカメラサポート」をオプションで設定するなど外観、燃費、安全性の3つをグレードアップさせたマイナーチェンジとなっている。
特にステレオカメラは2016年5月次点で軽自動車としてはトップクラスの動作性能をほこり、JNCAP予防安全性能アセスメントにおいて軽自動車クラスとしては最高得点となる46点満点中45.8点を獲得し、スズキ車でも初となる最高ランクの評価「先進安全車プラス(ASV+)」を獲得した。
(※後にハスラーにも同様のデュアルカメラブレーキを適用した後期型では、これを塗り替える46点満点を記録)
まさに燃費も安全技術も敵なしという仕上がりだ。デザイン的にも前期より精悍さとダイナミックな部分が出ていて、ワンランクレベルアップしている。
ベースモデルのスペーシア同様に個人的にはもう少し評価されても良いモデルだと思うのだが、さほど人気には結びついてないようで、N-BOXに勝てるほどの販売台数とはならなかった。
中古市場では割安でお買い得な個体も登場
中古市場では2世代前のモデルとなり、年式や走行距離によってはお手頃な個体も出てきた。
現行モデルに比べると燃費性能や自動ブレーキなど劣る部分はあるものの、デザインも含めてそこまで気にならないのなら十分魅力的なモデルでもある。
ただ、この後の2代目スペーシアカスタムではデザインがかなり変更されより個性的なエクステリアとなるため、パレットSW系統のデザインが好みであれば初代・後期モデルでも良いと思う。
初代でも後期モデルはSエネチャージや自動ブレーキ搭載でデキは良く、中古価格も人気のN-BOXカスタムよりも少し手頃なため、お買い得感はある。
OEMモデル マツダ・2代目フレアワゴン カスタムスタイル
スペーシアカスタムはマツダ自動車へ「フレアワゴン カスタムスタイル」としてOEM供給されている。
違いはエンブレム程度で、内外装は同じだがマツダブランドによりスペーシアカスタムとは若干雰囲気が異なるモデルでもある。特にスズキが苦手な人はマツダブランドを選んでみてほしい。
軽自動車としての完成度は高いので、中古でも高い初代N-BOXカスタムよりも価格以上の価値があると思う。
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