スペーシアはスズキのトールワゴン型軽自動車。本稿ではデビューの2013年3月からマイルドハイブリッド搭載前の2015年4月までを前期型と定義し、これを扱う。
出典:ホンダ認定中古車
概要
2013年3月登場のスズキ・スペーシア。先代パレットの後継モデルとして名称変更し、それまでのイメージを刷新させてのフルモデルチェンジとなった。
新型スペーシアではパレット時代の両側パワースライドドアやCVT(副変速機付き)を引き継ぎ、5代目ワゴンRのスズキグリーンテクノロジーを導入。
高張力鋼板の積極採用でボディも軽量化するなどこの手の軽自動車では最軽量の840kg(FFモデル)を誇り、自然吸気エンジンながらキビキビとした走りが特徴である。
エンジンはアルトエコなどのR06A型エンジンを採用。ワイドな変速比幅のCVTに副変速機を内蔵し自然吸気エンジンでも優れた加速と低燃費を実現。薄型の新開発ラジエーターの採用で軽量化と小型化を両立。
出典:スズキ認定中古車
デザインは先代のパレットから大きく路線変更。親しみやすいフロントデザインにボクシーなロングルーフデザイン、ピラーは全てブラックアウトとし連続したガラスエリアで開放感を演出。
インテリアでは上下2段構成とし使い勝手も考慮したデザインとし、インパネはツートーンカラーで塗り分けた。
機能面ではシートリフターとチルトステアリングをグレード別に装備。後席両側スライドドアは当時の軽自動車としては初となるワンアクションパワースライドドアを採用しさらにスライドドアクローザーも設けた。
また、リアゲートの開口部は幅1130mm、高さ1110mmで27インチ自転車もそのまま積載可能とした。
また収納スペースも豊富に設け、グローブボックス内にはボックスティッシュ専用のスペースを新設計。このほかインパネアッパーボックス、助手席シートアンダーボックス、インパアンダーボックスなど前席や後席に豊富に設置した。
出典:スズキ認定中古車
快適装備としてはロールサンシェードを当時の軽自動車としては初めて採用。また、キーレスプッシュスタートシステム&カテキン・エアコンフィルター付きのオートエアコンを標準装備。
上級グレードではリモート格納ミラーも採用した。吸音タイプの成形天井の採用することで防音機能も高めた。
そしてライバルとなるタントとは異なり、デビュー当初からノーマルモデルにもターボ付きグレードを設定するなど、先代のパレット同様のグレード展開を行なっていた。
初代スペーシアMK32S型 G、X、Tグレードの違いと特別仕様車
初代前期型スペーシアのグレード構成はエントリーグレードのG、上級グレードのX、上級ターボ仕様のTグレードの3つ。
Gグレード
スペーシアの廉価グレード。
Gグレードでは一番装備が簡略化され、
- 後部座席のロールサンシェード
- リクエストスイッチ対応型リモコンドアミラー
- フロントスタビライザー(※2013年9月のマイナーチェンジ時以降はGグレードでもオプション選択可)
- フロントオーバーヘッドコンソール
- 後席パワースライドドア
などが非装備(両方とも手動スライドドアタイプ。ただしスライドドアイージークローザーはオプション設定)。
また、ツートンカラーやディスチャージヘッドランプも未設定。
快適装備はキーレスプッシュエンジンスタート、カテキン搭載フルオートエアコンを標準装備。
低燃費技術の「エネチャージ」、「新アイドリングストップ」、「エコクール」は標準装備する。
Xグレード
スペーシアの上級グレード。Gグレードで簡略化された部分が標準装備となり、快適装備が豪華になる。
エクステリアでは後席左側パワースライドドア(携帯リモコンで操作可能&ワンアクションタイプ)を標準装備(※後席右側はオプション設定)。スライドドアイージークローザーも標準装備となる。
電動格納ミラーがリモート格納タイプとなり、ボディカラーも2トーンルーフ仕様がオプション設定可能となり、ディスチャージヘッドランプもオプション設定される。
インテリアではオーバーヘッドコンソールが標準装備となり、ロールサンシェードも標準装備。
Tグレード
Xグレードにターボエンジンを搭載した最上級グレード。
エクステリアではリモート格納電動ミラーがLEDターンランプ付きとなる。
基本的にはXグレードとTグレードとでは自然吸気エンジンか、ターボエンジンかの違い程度。
特別仕様車 Xリミテッド
2014年6月設定の特別仕様車。Xグレード(レーダーブレーキサポート装着車)がベース。
出典:スズキ認定中古車
Xリミテッドではフロントメッキグリル、リアメッキガーニッシュ、フロントアンダースポイラー、サイドアンダースポイラー、リアアンダースポイラー、リアスポイラーのフルエアロ仕様、専用14インチアルミホイールを。
インテリアではブラック内装にグレーの専用ファブリックシート表皮、グレーの専用ドアトリムクロス、シルバードアアームレスト、シルバーインサイドドアハンドル、シルバーオーディオガーニッシュ、メッキシフトノブボタン、カスタム用自発光式3眼メーターを。
機能装備としてはディスチャージヘッドライトにオートライトシステム、助手席バニティミラーを標準装備とし、ノーマルとは事なるスタイリッシュな内外装と機能装備で上級に仕立てた特別仕様車。
Xリミテッドについてはこちらから。

初代・前期スペーシアのエクステリア(外装)
出典:ホンダ認定中古車
フロントデザイン。ヘッドライトはパレット時代と比べて下部を直線とし、スクエア部分を大きくすることでベーシック感を強調した。それまでの気味が悪いデザインからより万人受けしやすいデザインへと変更された。
出典:ホンダ認定中古車
サイドから。パレットと同様に両側パワースライドドアとし、後部左側のパワースライドドアはリモコンスイッチで開閉可能(挟み込み防止機能付)とした。デザイン的にはリア側が直角デザインとなり、フロントはピラーを立ててルーフ幅を拡大したロングルーフデザインとなっている。
出典:ホンダ認定中古車
足元は14インチスチールホイール+ホイールキャップ。
出典:スズキ認定中古車
リアのコンビランプのデザインは左右L字、逆L字でよりスタイリッシュに。反射板はバンパー埋込式を採用。ブレーキランプはLED仕様だ。
エンジン・機能装備・安全装備など
搭載されたエンジンは3気筒のNAとターボの2種類。後出しでスポーティーモデル(スペーシアカスタム)が追加されるが、スペーシアはベースモデルでもターボ仕様を用意する。
自然吸気エンジンの最高出力は52ps(38kW)/6000rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
ターボエンジンはエンジン最高出力が64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(65N・m)/3000rpm。
全モデルにエネチャージシステムと新アイドリングシステムを搭載。トランスミッションはスズキではお馴染みになった副変速機付きCVT、駆動方式はFFと4WD。ABSは全グレードに標準装備。
燃費向上技術としてエネチャージ、新アイドリングストップ、エコクールを搭載。スペーシアは燃費の面でも当時の同年代のライバルに勝っており、これはデビュー当時の新型ワゴンRで搭載されたエネチャージシステムによるものだ。2WDのNAでカタログ値、29km/L、同2WDのターボでも26km/Lとかなり優秀な数値であった。
自動ブレーキ技術としてはデビュー当初は設定がなかったがその後すぐの2013年9月のマイナーチェンジ時に「レーダーブレーキサポート」をメーカーオプションとして設定。「衝突被害軽減ブレーキ」と「誤発進抑制機能」、エマージェンシーストップシグナル、ESP(横滑り防止装置)がスペーシアに備わる。
ベーシックグレードのGでオプション選択した時はタイヤサイズが145/80 R13から155/65 R14に変わり、フロントスタビライザーが追加される。また、外観上でも変更があり専用のメッキグリルが追加される。
参考までにターボの加速動画。意外と速い。
初代・前期スペーシアのインテリア(内装)
出典:ホンダ認定中古車
インパネ。スピードメーターは全グレードでタコメーター付き。スペーシアでは先代パレットの2トーンカラーの配色のイメージをそのままに、インパネセンター部にくぼみを持たせてドリンクホルダーや収納スペースを設けてた。
出典:ホンダ認定中古車
ステアリングはウレタンステアリング。
スピードメーターは全グレードでスポーティーな3眼式。左がタコメーター、真ん中にスピードメーター、右側に燃料計、中央下にはマルチインフォメーションディスプレイ。
デザインはパレットに似ているが、スペーシアではエコドライブインジケーターも標準装備し、背景色でエコ・ドライブ状態を表示する。
出典:スズキ認定中古車
エアコンは全グレードでフルオートエアコン。ATのシフトはインパネシフトを採用。
出典:日産認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。標準スペーシアではベージュのシート表皮を採用し、明るいイメージに。ドアパネルはインパネと同じグレーとベージュの2トーンカラーでインパネから流れるようなデザインとした。
シート形状もパレットより改善し、包み込むようにサイトサポート部のボリュームがアップした。
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構付き。
リア側の窓ガラスには強い日差しを「ロールサンシェード」を標準装備(TとXグレード)。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
初代・前期スペーシアのまとめ
出典:スズキ認定中古車
スペーシアは先代と比べるとかなり顔つきが普通になり、タントと比べても見劣りしなくなった。
燃費もこちらが上で、当時としては両側スライドドアのアドバンテージもあった(後の3代目タントでは両側パワースライドドアとなる)。
2015年5月にはマイナーチェンジでエネチャージを発展させたS-エネチャージを導入しマイルドハイブリッド仕様に。
外観も新デザインのメッキグリルが全グレードで標準装備となりメーカオプションではあるがレーダーブレーキサポートよりも強力な「デュアルカメラサポート」を導入。前期よりも魅力的なモデルとなった。
後期型ではS-エネチャージ(マイルドハイブリッド)の導入で加速や燃費が良くなるが、中古価格的には初代の前期モデルがスーパーハイトワゴンにしてはかなりお手頃価格に落ちてきている。
初代パレットはさらに安いが、全体的なデキはこのスペーシアのほうがうえなので、予算に余裕がある場合は中古のパレットよりも初代前期のスペーシアをオススメする。
2023年11月にはスペーシアは3世代モデルへと正常進化。2024年5月にはライバルのN-BOXを抑えて軽自動車販売台数のトップになるなど、スズキ・スペーシアの人気が出てきている。


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