シフォンはスバルのスーパーハイトワゴン型軽乗用車。ダイハツ・タントのOEMモデルである。本稿では2代目のLA650FとLA660F型の2019年7月~2022年9月まで前期型とし、これを扱う。
2代目 スバル・シフォンとは?
2代目シフォンの概要
2019年7月にフルモデルチェンジし、2代目となったスバル・シフォン。
先代はダイハツの3代目タントのOEMモデルとして登場。2代目はタントのフルモデルチェンジに伴い、全面改良となった。
シフォンはかつてルクラ(タントエグゼのOEM)として販売されていたスーパーハイト軽ワゴンの後継モデル。ルクラ時代とは異なりパワースライドドアを備える売れ筋モデルなのがポイントである。
スズキがスペーシアを「フレアワゴン」としてマツダにOEM供給しているが、シフォンはこの関係に近い。
2代目シフォンでは日常の使い勝手と安全性能を追求。開放感のある室内に「ミラクルオープンドア」などの機能装備を採用しつつ、先進安全システムの「スマートアシスト」を全グレードに標準装備化し、「安心と愉しさ」を高めたモデルとなっている。
そのスマートアシストもそれまでの機能に加え
- 車線逸脱抑制制御機能
- アダプティブドライビングビーム
- 標識認識機能
- ブレーキ制御付き誤発進抑制機能
が追加された。
さらにオプションで
- 全車速度追従機能付きアダプティブクルーズコントロール
- レーンキープコントロール
- CTA(コーナリングトレースアシスト)
- スマートパノラマパーキングアシスト
- ETCユニット
- スマートクルーズ専用ディスプレイ/ステアリングスイッチ
- ドライブアシストイルミネーション(※Gのみ カスタムは既装備)
などがセットになった「スマートクルーズパック」を追加できるようになった。そして2代目では標準モデルでもターボ仕様を設定するなど、標準モデルのグレード展開が少し拡大した。
①広い室内空間とミラクルウォークスルーパッケージ
2代目シフォンで新たに導入された「ミラクルウォークスルーパッケージ」は既存のミラクルオープンドアに
・「運転席のロングスライドシート機能」
・「助手席イージークローザー」
・「タッチアンドゴーロック機能」
・「ウェルカムオープン機能」
をプラスしたもので運転席から座ったまま後部座席の子供の世話をしたり荷物を取ったりなど利便性が大幅に向上した。
このほか16mmの低床化、メーターレイアウトの変更、Aピラーの細化、ホールド性とフィット感を高めた新形状のシート、助手席を含めたシートアレンジの拡大。
ラクスマグリップ&ミラクルオープンステップ(※オプション設定)、格納式シートバックテーブル、USBソケット端子などを新たに追加し他社の追従を許さない豪華なパッケージングとなっている。
②予防安全性能の向上
予防安全装備は従来のスマートアシストに加えて「アダプティブドライビングビーム」、「標識認識機能」、「ブレーキ制御付き誤発進抑制機能」を追加。
アダプティブドライビングビームはハイビームで走行中に対向車を検知すると自動的に対向車の部分を遮光する(カスタムのみに標準装備でノーマルはオプション設定無し)。
標識認識機能は進入禁止の標識をステレオカメラが検知するとマルチインフォメーションディスプレイ内に表示してお知らせする。
ブレーキ制御付き誤発進抑制機能は誤発進抑制装置にブレーキ機能を加えたものでエンジン性能のほか自動的にブレーキを付加して急発進を抑制する。
さらにオプションで全車速度追従機能付きアダプティブクルーズコントロール、レーンキープコントロールを上級Gグレードに設定。
スマートパノラマパーキングアシストはLグレードを除いてオプション設定。サイドビューランプはほぼ全グレードで標準装備とした。
③衝突安全性能と走行性能の向上
2代目シフォンは新開発のプラットフォームを採用。ダイハツの親会社であるトヨタ「TNGA」をダイハツ版に落とし込んだDNGAをベースに新設計。
乗り心地や操縦安定性を最優先にボディ骨格を最適配置し衝突安全性やボディ強度も大幅向上させた。また、曲げ剛性を30%向上させせつつハイテン材や構造合理化により約40kgの軽量化を実現した。
また、エンジンは従来のKF型を大幅改良。日本初となる複数点火(マルチスパーク)の採用や燃料噴射方法の改良で燃費を向上させた。
さらにCVTも世界初のスプリットギヤ(遊星ギア)の採用でベルトとギヤのダブル駆動を実現。
これにより伝達効率が約8%上昇し、かつよりワイドなギア比となり加速と低燃費をアップし、サスペンションジオメトリも最適化した足回りを採用。
ハイトワゴンでもイメージ通りの動作と乗り心地を両立させつつハイテン材等の採用で足回り全体で約10kgの軽量化も実現した。
足回り以外でも静粛性をあげるためボディ形状を工夫。隙間や段差軽減によりボディそのもので風切り音を低減した。
④洗練されたデザインと福祉対応
2代目シフォンはデザインにもこだわり、シンプルさを追求しつつも愛着がもてるようなフロントフェイスに連続したシームレス面で洗練された塊を表現。ただの箱にみえないデザイン性が与えられている。
さらに全グレードでフルLEDヘッドライトを標準装備とするなど順当なアップグレードが施された。
またインテリアでは視界の良さを確保すると同時にそれまでのアイデンティティーだったセンターメーターにテコ入れを行い、右寄りのセンターメーターに変更することで視界移動の少ない配置とした。
ボディカラーには新色のマスタードイエローマイカメタリックを含めた全7色を設定(※タントのアイスグリーンとホワイトは非設定)。
加えてオプションで外装パーツを追加変更できるエアロスタイリッシュとカジュアルパッケージを設定した。
2代目シフォンと4代目タントとの違い
2代目シフォンと4代目タントの違いはエンブレム程度で、基本的な内外装は同じ。
ただしボディカラーや装備内容、グレード名称が一部異なる。
タントに設定の「ホワイト」と「アイスグリーン」がシフォンには非設定で、全7色展開となる。
さらにグレード名も一部異なり上級グレードはタントが「X」グレードだが、スバル・シフォンでは「G」グレードとなる。
さらにLグレードのスマートアシスト非装着車や「コンフォータブルパック」が付いた「セレクション」も非設定。
装備内容も機能装備が豊富で、Xグレードには
- 360°スーパーUV&IRカット機能付ガラス
(フロントクォーター/フロントドア/リアドア/リアクォーター/リアゲート) - チルトステアリング
- 運転席シートリフター
- 格納式シートバックテーブル(運転席・助手席)
- シートバックポケット(運転席)
が標準装備(※タントのXではオプション扱い)。プラスして2WD車には運転席&助手席シートヒーターも付く。
標準シフォンの最上級「GS スマートアシスト」は右側(運転席側)パワースライドドアも標準装備となる。
なお後期モデルではタントのXグレードでも360°スーパーUV&IRカット機能付ガラスや運転席シートリフターやチルトステアリングが標準装備化された。

2代目前期シフォンの一部改良など
2020年12月・一部改良
2020年12月の一部改良では自動ブレーキのスマートアシストに新たに「夜間歩行者検知機能」、「路側逸脱警報機能」、「ふらつき警報機能」を追加。
標識認識機能は新たに「最高速度」と「一時停止」も検知可能となった。
このほか内装色が一部変更となり、インパネやドアトリムのカラーがグレーから黒に変更となった。
ボディカラーは2トーンカラーを「G スマートアシスト」、「GS スマートアシスト」にも追加設定。ホワイトと組み合わせた
- 「ブルーミングピンク・メタリック」
- 「レーザーブルークリスタルシャイン」
- 「ファイアークォーツレッド・メタリック」
の3種を追加設定した。
2021年9月・一部改良
2021年9月の一部改良では「GS スマートアシスト」、「R Limited スマートアシスト」、「RS スマートアシスト」・「RS Limited スマートアシスト」のパーキングブレーキを電動化。オートブレーキホールド機能とコーナリングトレースアシスト(CTA)を標準装備とした。
一旦セットパックオプションからカタログ落ちしていた「スマートクルーズパック」をGグレードに再設定。
Gグレードにはドライブアシストイルミネーション(エコドライブアシスト照明)を追加。
ボディカラーも一部変更となり、標準シフォンに「プラムブラウンクリスタル・マイカ」が追加された。
2代目シフォンのグレード一覧 L スマートアシスト、G スマートアシスト、GS スマートアシストの違いなど
2代目シフォンのグレード展開はエントリー「L スマートアシスト」、上級「G スマートアシスト」、上級ターボ搭載「GS スマートアシスト」の3種類。
カスタムモデルは上級「カスタムR」、上級ターボ仕様「カスタムRS」の2種類。
ダイハツでは自動ブレーキ非搭載とし価格を抑えたレス仕様モデル(スマートアシスト非装着車)があるが、スバルには非設定で全グレードにスマートアシストが付く。
2022年10月の後期モデルではグレード名称が簡略化され、「スマートアシスト」の表記が無くなった。
特別仕様車は非設定。
カスタムモデルのシフォンカスタムはこちらから。

L スマートアシスト
2代目前期シフォンのエントリーグレード。タント「L」グレードのOEM。
他グレードよりも装備が簡略化され、価格が抑えられていた。
エクステリアではボディ同色グリルと14インチホイールキャップ仕様でベーシックな外観が特徴。
インテリアではセパレートシートを採用し、アームレストが非装備。ステアリングのメッキオーナメントがオプション設定。
スピードメーターのTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイも非装備となる。
安全装備ではスマートアシストの機能から「標識検知機能」が省略される。
快適装備はプッシュエンジンスタートやキーフリーシステム、フルオートエアコンが非装備で、従来タイプの電波式キーレスエントリーにマニュアル式エアコン、ショッピングフックなどを標準装備。
運転席ロングスライドシート(540mm)とリアの左右分割ロングスライド(240mm)はLグレードでは非装備。
助手席のスライドドアイージークローザーをオプション設定。スライドドアは手動タイプとなる。
G スマートアシスト
2代目シフォンの上級グレード。タント「X」グレードのOEM。Lグレードよりも装備が良くなる。
エクステリアでは
- ブラックカラーのフロントグリル&ガーニッシュ
- 後席左側パワースライドドア
(ワンタッチオーン機能/ウェルカムオープン機能/タッチ&ゴーロック機能付)
を標準装備。Lグレードとは差別化がなされ、スタイリッシュな外観となる。
このほかスライドドアイージークローザー(左右)も標準装備する。
さらにタントにはオプション設定の「360°スーパーUV&IRカットガラス(フロントクォーター/フロントドア/リヤドア/リヤクォーター/バックドアウインドゥ)」がシフォンでは標準装備。
インテリアではベンチシートを採用。ステアリングはメッキオーナメント付きのウレタンステアリングとなる。。
スピードメーターにはTFTマルチインフォメーションディスプレイが付き、インパネスイッチ照明がホワイトに変更。
安全装備ではスマートアシストⅢの機能に「標識検知機能」が追加される。
快適装備は
- プッシュエンジンスタート
- キーフリーシステム
- フルオートエアコン
- D assist切り替えステアリングスイッチ
- USB電源ソケット
- チルトステアリング
- 運転席シートリフター
- 格納式シートバックテーブル(運転席・助手席)
- シートバックポケット(運転席)
を標準装備。
運転席ロングスライドシート(540mm)とリアの左右分割ロングスライド(240mm)も標準装備する。
GS スマートアシスト
Gグレードにターボエンジンを搭載した上級ターボ仕様。タント「Xターボ」のOEMグレード。走りや加速など走行性能が向上する。
このほかGグレードに追加でインパネシフトにはメッキボタンが付き、GS スマートアシストでは「右側パワースライドドア」も標準装備となる。
エクステリア
フロントデザイン。2代目の顔つきは初代までのイメージを残しつつ、より精悍さをアップさせた顔つきとなった。
スバル版の変更としては中央のダイハツマークが六連星に変更となる程度で、基本的には同じ。ただしLグレードだとボディ同色グリルのため六連星がより主張された雰囲気となる。
GとGSグレードではブラックタイプの専用グリルが付く。
ヘッドライトは全グレードでハイロー独立式のLEDヘッドライトを標準装備。ポジションランプも全グレードでヘッドライトのまわりを覆うタイプのLEDとなる。
フォグランプはダイハツと同じく「LEDフォグランプキット」でのオプション設定。
サイド。横からの見た目は先代とほぼ同じように見えるがボンネット先端の角が初代より立って四角くなったのと、リアのクォーターガラスが2代目では少し小さくなった点が異なる。
助手席側のドアは「ミラクルオープンドア」を引き続き採用。4代目ではこれをさらに発展させた「ミラクルウォークスルーパッケージ」を新たに採用。
具体的には運転席のスライド量を最大540mmにし、かつ助手席のスライドレールを床に内蔵しスライド量を前方向に大幅に拡大。
床をフラットにしたことで運転席から一旦外に降りること無くそのまま後部座席に移動したり、助手席側のドアから乗り降りできるようにした。
これにより子育で中のママが後部座席の子供の世話を座ったまましやすくしたり、後部座席の荷物をとりやすくした。
足元は全グレードで共通の14インチホイールキャップとなり、アルミホイールの設定はなし。タイヤサイズは155/65R14。
リア。テールランプは縦方向に少し大きくすることで視認性アップと存在感を大きくさせている。なお、先代同様にブレーキランプはLEDとなる。
スバル仕様としてはリアゲードのDマークが六連星に。右側に車名エンブレムが付く程度で、こちらもタントとほぼ同じ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは大幅改良型のKF型直列3気筒自然吸気エンジンまたは同ターボエンジンの2種類(※先代では途中からノーマルタントにターボグレードが追加設定されたが、4代目ではデビューと同時に標準設定された)。
3代目タントに搭載されていたKF型をベースに(※発表時)日本初となるマルチスパークの採用やフワール噴霧を採用したことで燃焼効率を大幅に向上。
自然吸気エンジンは最高出力52ps(38kW)/6900rpm、最大トルク6.1kg・m(60N・m)/3600rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6400rpm、最大トルク10.2kg・m(100N・m)/3600rpm。
これに新開発のスプリットギヤ(遊星ギア)を採用したD-CVTの採用でFFのJOC08モード燃費は27.2kmを達成した。
また「ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ」、略してDNGAの第1段として設計され軽量化もさることながらサスペンション性能を追求。乗り心地と運動性能を高次元で両立させた。
さらに静粛性もボディのエアロ加工による風切り音の低減と防音材の最適配置等で向上させている。
2代目シフォンLA650FとLA660F型との違い、LA650SとLA660Sとの違い
2代目シフォンのLA650FとLA660Fとの違いは駆動方式。
LA650Fは前輪を駆動するFFの2代目シフォン。LA660FはLA650Fをベースに全部のタイヤを駆動する4WDの2代目シフォン。
ただし4WDに関してはジムニーやパジェロミニなどの本格軽SUVとは異なり、基本はFFで、前後の回転差が生じた時(滑った時など)に4WDとなるビスカスカップリングを用いたパッシブタイプのオンデマンド4WD方式。
本格4WDよりは簡略化され街乗りで扱いやすいタイプとなる。ただし過走行な4WDのシフォンではビスカスカップリングが摩耗し寿命となっている場合もあるので、カーブなどで後方から異音がしないか確認することをオススメする。
なおダイハツ・タントの型式の関係は末尾Sが富士重工を示すFに置換され、2WDモデルはLA650SがLA650Fに。4WDはLA660SがLA660Fに対応する。
インテリア
インパネ。 メーターはタント伝統のセンターメーターを引き続き採用しているが運転席寄りのセンターメーターに変更となった。
スバル仕様としてはステアリングのオーナメントが六連星になる程度で後は同じ。
スピードメーターもデジタル表示でぱっと見での見やすさが向上した。
左側には最廉価のLグレードを除きマルチインフォメーションディスプレイが標準装備となり、タコメーター、エコドライブ、オートエアコンステータス、時計などを切り替えられるようになっている。
ステアリングはウレタンステアリング。エアコンはLグレードがマニュアル式エアコンで、GとGSではフルオートエアコンを採用する。
さらに最左部にはドライブアシストイルミネーションが備わる(※Lグレードを除く)。
フロントシートはベンチシートタイプ。
リアシート。サンシェードは格納式で、Lグレードを除いて全グレードに標準装備となる。
シートバッグテーブルはGとGSに標準装備。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
4代目タントのフルモデルチェンジと同時期にデビューとなった2代目シフォン。
2代目ではノーマルでもかなり精悍になり、インテリアでもセンターメーターが右寄りになったりエンジンやCVTの改良、プラットホームの一新で走りが良くなったりと4代目タントのフルモデルチェンジが反映され初代よりも魅力がさらにアップした。
3代目まではOEM供給が無くダイハツ単独モデルだったが、3代目後期から初代シフォンとして。2代目でもフルモデルチェンジと同時期に設定する背景には競争の激しいスーパーハイトワゴン界(スズキ・スペーシア、ホンダ・N-BOX、日産・ルークス、三菱・eKスペース)の熾烈な戦いがある。
スズキはスペーシアをマツダにフレアワゴンとしてOEM供給しているが、ダイハツも同じグループのスバルへOEM供給することで、少しでも販売台数や生産台数を増やして効率化する狙いがある。
購入する場合も圧倒的に多いタントに比べるとシフォンは販売台数が少ないため他人と被りづらい特徴がある。エンブレム違いでも若干印象が異なって見えるので、あえてシフォンを選んでも悪くないかも。
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