アルトはスズキのハッチバック型軽乗用車。本稿では7代目のHA25S系について扱う。
出典:スズキ認定中古車
7代目 スズキ・アルトとは?
2009年10月にフルモデルチェンジし、7代目となったスズキ・アルト。
7代目の大きな特徴は愛嬌たっぷりのデザインと低燃費化が大きなテーマである。
それまでのアルトとえいば歴代のミラと同じくどこか保守的かつベーシックなデザインが与えられていたが、この7代目ではヨーロッパ車を連想させるような顔つきに曲線を意識したボディラインが与えられた。
7代目のアルトでは高張力鋼板の採用や、ボディー鋼板の板厚の見直しなどにより剛性をたかめつつ軽量化を実施。
さらに先代では直線ラインが多く空気抵抗も大きいものだったが、7代目では風洞実験とコンピューター解析により、空力性能を配慮したボディーを採用した。
エンジンは先代と同じK6A型を引き続き採用したが、VVT機構を全グレードで採用し燃焼効率をアップ。これに上級グレードでは副変速機付きCVTを採用したことでFFのCVTモデルで24.0km/リットル(10.5モード)を実現。
また、CVT以外のAT仕様車では全グレードで4ATを採用。加えてロックアップ領域を拡大させることでATのFFでも22.5km/L(10.5モード)の燃費を達成した。
インテリアは親しみやすさをテーマに丸みとやわかなフォルムを与え、横基調のデザインとすることで室内の広さを表現。
収納スペースも
- インパネトレー
- 大型グローブボックス
- ショッピングフック
- 前席3個+後席2個のドリンクホルダー
- インパネアンダートレー
- フロントドアポケット
など日常の街乗りなどを考慮し豊富に設定した。
この他便利&安心機能として上級グレード(Xグレード)にはキーレスプッシュスタートシステムとイモビライザーを。
Eグレードを除くほぼ全グレードでセキュリティーアラームを標準装備。安全装備としては衝突安全ボディのTECT(テクト)を採用した。
7代目アルト(HA25A) 2型、3型、4型・一部改良やマイナーチェンジなど
2011年11月 アルトエコ追加
2011年11月にHA25Sベースとした低燃費仕様のアルトエコ(HA35S)を追加。アルトエコについてはこちらから。
2012年6月・2型改良
2012年6月の一部改良(2型改良)ではシートベルトに関する保安基準改正に伴い貨物グレード(アルトバン)を除いた全グレードで後席にISOFIX対応チャイルドシート固定用アンカーを追加。
フロントシートのヘッドレストを大型化し、「G4」と「X」グレードはヘッドレストの形状そのものを変更。
アルトバンはフロントシートをヘッドレスト一体型ハイバックシートに変更。エコドライブインジゲーターを5MT仕様以外の全グレードに適用。Fグレードの4WDはそれまでのATからCVTに変更となった。
2013年2月・3型改良
2013年2月の3型改良ではさらなる軽量化や改良型CVTの採用でCVT仕様車の燃費を向上。
ボディカラーの入れ替えが行われ、「マルーンブラウンパール」を廃止して「アーバンブラウンパールメタリック」を新設定とした。
同時にアルトエコがマイナーチェンジし、フロントグリルのシルバー塗装で差別化。カラードドアハンドルとカラードドアミラーがシルバー塗装となった。
他にもスピードメーターが3眼式に変更となり、エコドライブアシスト照明とエコスコアを採用。
5代目ワゴンRの次世代環境技術「スズキグリーンテクノロジー」を導入してさらなる燃費向上をはかったほか、「ECO-L」グレードでは電波式キーレスエントリーを標準装備化。
そのほか快適装備としてアルトエコの「ECO-S」にLEDサイドターンランプ付ドアミラー、キーレスプッシュスタートシステム、イモビライザーのセットオプションを追加とした。
2013年11月・4型改良
2013年11月には4型改良を実施。エンジンの圧縮比向上、ピストン丁面の形状を変更などでフリクションを低減。パワートレイン制御の最適化などもあわせてさらなる燃費向上を実現。
他にもアルトエコ「ECO-S」のFF仕様車では運転席シートヒーターとヒーテッドドアミラーのセットオプションを追加。
運転席シートヒーターは「ECO-L」にも拡大適応し、ECO-Lの4WD仕様に標準装備。前輪駆動車に新たにオプション設定とした。さらにヒーターそのものも改良しより短時間で温風が出るようにした。
ボディカラーも再度入れ替えが行われ、「ミルクティーベージュメタリック」と「ブルーイッシュブラックパール3」をアルトエコから廃止「フェニックスレッドパール」と「シャンパンピンクパールメタリック」をアルトエコに追加した。
7代目アルト(HA25S) グレード一覧 VP(軽貨物),E,F,G,X,アルトエコの違い
7代目アルトのグレード展開は下から順番に4ナンバー軽貨物の「VP」、廉価グレード「E」、エントリー「F」、ミドル「G」、上級「X」、ミドル4WD仕様「G4」。
モデル途中には燃費性能を高めた派生グレード、「アルトエコ」も追加している。
VP
7代目アルトの4ナンバー・軽貨物仕様車。通称「軽バン」、「アルトバン」。
装備が乗用Eグレードと同じく簡素で、かつ後部座席が直角シート&狭くその一方でラゲッジスペースはかなり広い実質2シーターの実用的な軽自動車。
7代目アルトバンはエクステリアがスチールホイール、手動ドアミラーに樹脂タイプのアウタードアハンドル、プライバシーガラスが非装備で簡素な外観。
快適装備はパワステ、マニュアル式エアコン、キーレスエントリーを標準装備するが、パワーウィンドウは非装備で手動式。
ボディカラーはスペリアホワイト1色のみの設定。車重はかなり軽量で710kg。
トランスミッションは4ATと5MTの2種類。
E
7代目アルト、乗用グレードの廉価グレード。装備が簡略化されその分価格が安いグレード。
バンのVPの装備に近いが、乗用グレードゆえに後部座席は広く、きちんと4名乗車可能な廉価グレード。
エクステリアではホイールキャップを標準装備。
快適装備ではパワステとマニュアル式エアコンを標準装備するが、キーレスエントリーは非装備。パワーウィンドウも非装備で手動式。
ボディカラーはVPより多く、スペリアホワイト(白)にシルキーシルバーメタリック(銀)を追加した2色設定。
トランスミッションは4ATと5MTの2種類。
F
7代目アルトのエントリーグレード。Eグレードよりも快適装備が拡充され、乗用車らしい装備が増える。
エクステリアではホイールキャップを標準装備。
快適装備ではパワステ、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーを標準装備。
ボディカラーも青(エアブルーメタリック)、緑(シャイニーグリーンメタリック)、茶(マルーンブラウンパール)を含めた全7色を設定。
トランスミッションは4ATと5MTの2種類。
G
7代目アルトのミドルグレード。Fグレードよりもさらに快適装備が拡充する。
エクステリアではFの装備に加えてボディ同色電動格納ミラー、ボディ同色アウタードアハンドル、プライバシーガラスを標準装備。
快適装備ではパワステとエアコンに加え、パワーウィンドウ、キーレスエントリーに加え、UVカットガラスがFグレードに追加装備となる。
トランスミッションはCVTのみ。
X
7代目アルトの上級グレード。Gよりも豪華な快適装備が標準装備となる。
エクステリアでは電動格納ミラーにLEDサイドターンランプ付きを標準装備。ただしXグレードでもアルミホイールは非設定。
快適装備ではGの装備に加え、
- キーフリーシステム
- イモビライザー
- プッシュエンジンスタート
を標準装備。リアシートにはヘッドレストも追加され一体可倒式シートから分割可倒式シートに変更される。
トランスミッションはCVTのみ。
G4
2010年5月に追加設定した4WD専用グレード。それまでのGとXに設定していた上級4WD仕様を分離。統合してG4グレードとした。
Gの装備に加えて快適装備ではキーレスプッシュスタートシステム、リアシートにヘッドレストを標準装備。
GグレードにXの快適装備を与えた上級4WD仕様。
G4についてはこちらから。

アルトエコ
2011年12月に追加設定された派生グレード。燃費性能を高めた当時の「ミライース」対抗グレード。
出典:スズキ認定中古車
新型ロングストローク・低燃費エンジン(R06A型)の採用や徹底した軽量化、エアロパーツの装着(空力特化)、エコタイヤ、低電力化、エネチャージの採用などでアルト史上最高の燃費性能(JC08モード燃費で30.2km/L)を達成しつつ、買い求めやすい価格設定としたグレード。
特に後期モデルではシルバー塗装のアルトエコ専用グリルを装備し、タコメーター付き3眼式メーターの採用などで7代目アルトと差別化され上級感がアップ。
中古車としても燃費が良い割にかなり安価で、お買い得な1台。
アルトエコについてはこちらから。

エクステリア
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。7代目アルトは特徴的な紡錘形のヘッドライトに親しみやすいバンパーなどそれまでのアルトとは異なるスタイリッシュな外観が特徴だ。
出典:スズキ認定中古車
サイドから。ホイールベースは先代の2360mmから40mm拡大し、2400mmに。室内の広さは先代(6代目)と室内長以外は同じの1835✕1260✕1240mmを確保。
室内長はわずかに5mm短くなったが、背の低いハッチバック型にしては広い部類で、その前の5代目と比較しても1700×1220×1200mmと、室内長は十分な広さとなっている。
フロントからルーフにかけてのボディラインも空力を意識した流れるようなラインを描いていおり、この点も先代とは大きく異る点である。
キーレスエントリーは上級グレードのXで標準装備。セキュリティーアラームは最廉価のEを除く全グレードで標準装備。
足元はFグレード以上で13インチフルホイールキャップ。タイヤサイズは145/80R13。バンのVPやEグレードはスチールホイール。
出典:スズキ認定中古車
リア。コンビランプは先代と同じ位置だが、ボディスタイルにあわせてスタイリッシュな異型台形となっている。ダイハツのミラとは異なり、バックゲート右側の「ALTO」はエンブレムタイプを採用する。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはVVT付きのK6A型直線3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。
トランスミッションは4AT、5MT、CVT(副変速機内蔵)の3種類で駆動方式はFFまたは4WDのみとなる。廉価グレードのEでは5MTまたは4AT。
一つ上のFでも同じで、真ん中のGでは4ATまたはCVT、最上級のXではCVTのみとなる。安全装備のABSはXとFグレードで標準装備。Gでオプション設定。Eでは未設定となる。
7代目アルト・HA25SとHA25Vとの違い
HA25SとHA25Vとの違いは乗用モデルか貨物仕様かの違い。HA25Sは乗用モデルの7代目アルト。HA25Vは貨物モデルの7代目アルト。
HA25Vは貨物仕様のため後部座席が非常に狭く、かつ垂直の簡易的なシートのため長時間乗車はかなり辛い。基本的にリアは荷室として使うのを前提としたモデル。
また、フロントシートも乗用モデルに比べると質素なデザイン&シート表皮で、その他の快適装備も(電動格納式ドアミラーが非装備など)簡略化されている。その分1年間の税金も安いがより軽量となっている。
インテリア
出典:スズキ認定中古車
インパネ。アルトは先代の6代目からインパネのデザインが良くなったが、7代目では丸みと直線を組み合わせ親しみやさと室内の広さを表現した。
収納スペースもインパネトレー、大型グローブボックス、
ショッピングフック、
前席3個、後席2個のドリンクホルダー、インパネアンダートレー、フロントドアポケットなどを設定。利便性を高めている。
スピードメーター。シンプルにタコメーター無しの1眼タイプ。この代から瞬間燃費計がプラスされた。
4ATのシフトノブ。7代目までATモデルではフロアシフトを採用していた。
5MTのシフトノブ。
出典:スズキ認定中古車
CVTのシフトノブ。こちらも4ATと同じくフロアシフト。
エアコンパネル。全グレードでマニュアル式エアコン。
出典:スズキ認定中古車
フロントシートはセパレートタイプ。VPグレードでは乗用モデルと異なるヘッドレスト一体型のシートを採用する。
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構は無し。VPグレードでは軽貨物仕様のため足元が極端に狭く、垂直タイプの簡易的なシートを採用し、居住性がかなり悪くなる。これは基本的にリアシートを倒して荷物運搬用として使うことを想定するため。
出典:スズキ認定中古車
最上級のXグレードやG4グレードでは左右分割式&ヘッドレストが備わる。
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
上級グレードのラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。
まとめ
7代目のアルトはそれまでの保守的なデザインから一転、欧州車のように丸みを帯びたデザインとヘッドランプを与えられた。その丸みは空力抵抗にも寄与しており、軽量化とも相まって燃費に貢献している。
車重も700kg台で、同年代のワゴンタイプより100kg程度(人1人~2人分)軽い。この7代目からはデザインとも相まって上質さが向上したような感じだ。
それは軽らしくないというか、割り切りの中でも安っぽさが幾分薄れたような印象を受ける。
この後の8代目がこの7代目よりも個性的なデザインとなるため、どうも受け入れづらい人にとっては7代目は魅力的なモデルとなるだろう。

また、燃費を追求した派生モデルの「アルトエコ」では名前の通りの低燃費と後期型では差別化されたフロントグリルなど安いながらスタイリッシュな外観も与えられているため、7代目アルトを検討している人はあわせて「アルトエコ」もチェックしてみてほしい。

中古市場では年数経過もあり7代目アルトは安価なモデルとなっている。同年代のスーパーハイトワゴンに比べると室内空間の広さは劣るものの、車重が軽い分燃費や加速が良く価格帯も安いので普段のアシとして魅力はかなり高い。タマ数は少ないがグレードによっては5MTの設定もあり、意外と運転も楽しめる。
7代目アルトの中古市場とOEMモデル マツダ6代目キャロル
中古市場では年数経過あって、売れ筋の背の高いモデルに比べれば安価となっており、街乗りなどで活躍しような1台。旧来の背の低い軽乗用車としてまだまだ魅力は健在だ。

ちなみに7代目アルトはフルモデルチェンジの同日にマツダへ6代目キャロルとしてOEM供給された。
6代目キャロルでは控えめながらフロントグリルとバンパーデザインがマツダ仕様に変更され、マツダエンブレムとも相まって若干雰囲気の異なるOEMモデルとなっている。
また、アルトエコのOEMモデル、キャロルエコも設定され、低価格なエコカーとしても魅力的だ。

特に販売台数の多いアルトと違いマツダ版はマイナーなモデルとなるため、他人と被るのが嫌な人やベーシックな足車でも個性が欲しい人には6代目キャロルもオススメである。
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