ムーヴはダイハツのワゴン型軽自動車。ムーヴカスタムはそのスポーティーモデルである。本稿では4代目L175SおよびL185S系の2008年12月マイナーチェンジ~2010年11月までを後期としこれを扱う。
概要
2006年10月に4代目へフルモデルチェンジしたムーヴ。
4代目の大きな特徴は挑戦的ともいえるタマゴ型のワンモーションフォルムの採用だ。それまで(3代目まで)のミラの全高をアップさせたようなボディ形状を完全にやめて、ボンネットからフロントガラス、ルーフに至るまで緩やかな曲線を描いたボディ形状となった。
さらにホイールベースが先代よりも100mmアップし室内空間さらに広くなった。
エンジンは新開発となるKF型エンジンを採用。グレードの一部ではCVTの採用も行い全グレードで燃費がアップ。
安全装備としては横滑り防止装置のVSCやインテリジェントドライビングアシストがカスタムRSのFFモデルに設定。内装ではこの代からタントのようにセンターメーターを採用。
4代目ムーヴでは内外装で大きくイメージチェンジを果たしたフルモデルチェンジとなっている。
4代目標準ムーヴとムーヴカスタムとの違い
そのカスタムモデルである「ムーヴカスタム」は、先代と同じくノーマルモデルと同時設定。
ノーマルに対し専用ヘッドライトやグリル、エアロパーツにアルミホイールなどでスポーティー感や上級感を高めたモデルである。
4代目では「上質・快適移動体(ムーヴィング・アメニティ)」をコンセプトにそれまでのイメージを一新。アイデンティティーだった「丸目ヘッドライト」を継承しつつもヘッドライト外形を直線基調の囲いに変更した。
ほかにもノーマルムーヴに対しボンネットにエッジを設けることで先代のイメージも残したデザインとし、従来のイメージを引き継ぎながらも新しいフロントデザインでスポーティなイメージに加えスタイリッシュ感をアップさせてるのが特徴だ。
4代目ムーヴカスタム・後期型の改良点と前期との違い
そして4代目デビューのおよそ2年後となる2008年12月にフロントデザインの大幅変更を伴うビッグマイナーチェンジで4代目ムーヴカスタムは後期型となった。
後期型では内外装の変更や快適装備の追加で、より魅力をアップさせたマイナーチェンジとなった。
エクステリアではそれまでのフロントデザインを一新する大型メッキグリル(ダーククリアorメッキモール)の採用で印象を大きく変更したほか、全グレードにプロジェクター式ディスチャージヘッドランプを標準装備。
また、アルミホイールのデザインも変更された。
テールランプも通常のコンビランプから変更し、クリアーテール化。
内装もオーディオパネル部分にはオプション設定でブラックメタリック塗装とし、
シート表皮も変更。より上質な雰囲気を与えた。さらに自発光式メーターの全グレード標準装備化などより魅力的に。
快適装備ではトップシェイドガラスとキーフリーシステムをSグレード以外に標準装備。ルーフアンテナは全グレードに標準装備化。一方でドリンクホルダー照明とシフトパネル照明、パワーウィンドウスイッチ照明が廃止された。
ボディカラーには新色の「「ブロンズクリスタルメタリクオーパール」を追加。入れ替えで「ルージュレッドクリスタルメタリック」を廃止。
後期モデルでは内外装でスポーティな印象を高めたマイナーチェンジであった。
後期型・4代目ムーヴカスタム(L175S/L185S)のグレード カスタムS、カスタムX、カスタムXリミテッド、カスタムR、カスタムRS、VSの違いなど
4代目後期ムーヴカスタムのグレード展開は、「カスタムL」、「カスタムX」、「カスタムR」「カスタムXリミテッド」、「カスタムRS」の5種類。
なお、前期モデルに設定の廉価グレード「カスタムL」は廃止され、新設の「カスタムS」に移行した。
このほか特別仕様車に「カスタムR VS」が設定されていた。
カスタムS
4代目後期ムーヴカスタムの自然吸気エンジン・エントリーグレード。カスタムの中でも一番装備が簡素で、価格を抑えたグレード。トランスミッションも後期ムーヴカスタムで唯一の4ATを採用する。
エクステリアではLEDサイドターンランプ付きドアミラーとフォグランプが付くものの、サイドストーンガード非装備。後期ではディスチャージヘッドランプが標準装備となった。
このほか足元は14インチアルミホイールとなる。
インパネではカスタムLで省略されていたインパネの加飾(シルバーセンタークラスター、メッキインナーハンドル、メッキエアコンレジスターノブ)で質感が高くなる。後期モデルでは自発光式メーター+マルチインフォメーションディスプレイが標準装備となった。
オーバーヘッドコンソールやバニティミラーの照明は非装備。
快適装備はマニュアル式エアコンで、電波式キーレスを標準装備。プッシュエンジンスタートが非装備。
オプション設定で運転席シートリフター、チルトステアリング、アジャスタブルショルダーベルトアンカーをセットにした「アジャスタブルパック」が選択可能。
カスタムX
4代目前期ムーヴカスタムの自然吸気エンジン・上級グレード。カスタムSよりも内外装や快適装備がグレードアップする。トランスミッションにもCVTを採用し、燃費が良い。
エクステリアでは14インチアルミホイールを標準装備。快適装備はフルオートエアコンにキーフリーシステムを標準装備。
オプション設定でSRSサイドエアバッグ&SRSカーテンシールドエアバッグ、SRSニーエアバッグ、ダブルプリテンショナー、フォースリミッター機構付き3点ELRシートベルト(運転席)などが選択可能だった。
カスタムXリミテッド
カスタムXにワンポイントの上級装備をプラスした自然吸気エンジン仕様の最上級グレード。
カスタムXの装備に追加でエクステリアではサイドストーンガードが標準装備となり、
インテリアでは本革巻きステアリング、グローブボックスランプ、フロントアームレスト、オーバーヘッドコンソール、照明付きバニティミラーを標準装備。
快適装備ではアジャスタブルパック(運転席シートリフター、チルトステアリング、アジャスタブルショルダーベルトアンカー)を標準装備。
トランスミッションにはCVTを採用するグレード。
カスタムR
ターボエンジンを搭載したエントリー(廉価)ターボグレード。
Xグレードの装備に加えてターボエンジン仕様となるが、ステアリングがウレタンステアリングなど、RSに比べると簡略化された装備もあった。
一方で後期モデルではグローブボックスランプ、フロアイルミネーション、ローダウンサスペンション、スタビライザー、16cmフロントスピーカーを標準装備し、アルミホイールが15インチ化するなど、前期モデルよりも装備がかなり拡充。
カスタムR以上でオーディパネルにはオプション設定でブラックメタリックが選択可となる。
カスタムRS
4代目ムーヴカスタムの上級ターボ仕様。カスタムRよりも内外装の装備が豪華で一番新車価格が高かった最上級グレード。
カスタムRSではXの装備に加えて専用16インチアルミホイール、MOMO(モモ)社製本革巻きステアリング、イルミネーション付きオーバーヘッドコンソールなどでスポーティな内外装が与えられる。
快適装備ではアジャスタブルパック(運転席シートリフター、チルトステアリング、アジャスタブルショルダーベルトアンカー)を標準装備。
安全装備ではRSのみ横滑り防止装置のVSCとレーダークルーズコントロール、プリクラッシュセーフティシステム、車線逸脱警報機能をオプション設定する。
なお、先代までRSに搭載の4気筒ターボエンジンはこの4代目から廃止。3気筒ターボに置換された。
特別仕様車 カスタムR VS
2009年4月設定の特別仕様車。ターボエントリーグレードのRをベースに魅力的なシルバー塗装グリルなど内外装や快適装備を与えつつ、お買い得とした特別モデル。
エクステリアではVS専用シルバー塗装コンビネーショングリル、シルバー塗装アウタードアハンドル、14インチアルミホイール、ディスチャージヘッドランプを。
インテリアでは本革巻きステアリングに専用シート表皮、マルチインフォメーションディスプレイ、自発光式メーターを。
快適装備ではキーフリーシステム。安全装備にABSとデュアルSRSエアバッグを標準装備としていた。
この充実装備でベースモデルよりも10万円ほど安く、お買い得なモデルだった。
エクステリア
フロント
前述のとおり大きな変更点はフロントフェイス。はめ込み式の大型グリルを装着し、それに続くヘッドライトもより直線を意識したデザインとなった。
一方で前期型の大きなディスチャージヘッドランプは継承され3代目の丸目のデザインも少し残る感じだ。これ以外にバンパーのデザインも変更され、フォグランプとウィンカー球の位置が左右から上下配置になった。これ以外に後期ではトップシェイドガラスが標準装備に。
こちらは前期型。グリルは小さく、ヘッドライトも斜め方向への切り込みが目立つ。こちらはインナーブラックだった。
もどって写真は後期型。特別仕様車のVSグレードではスタイリッシュなシルバー塗装グリルを採用する。
サイド
横からのシルエット。後期型ではアルミホイールのデザインが刷新された。
LEDサイドターンランプ付きドアミラーは全グレード標準装備で、ヒーテッドドアミラーは4WDにオプション設定。リバース連動ドアミラーはX、Xリミテッド、RSにオプション設定。
RS専用16インチアルミホイール
さらに従来通りターボ仕様のRとRSではスタビライザー(4WD仕様はフロントのみ)を標準装備とし、ロール感が抑えられた走りを実現する。
足元はRSが16インチアルミホイール(タイヤサイズは165/50R16)。
15インチ、14インチアルミホイールとタイヤサイズ
Rが15インチ(タイヤサイズ:165/55R15)、XとSでは14インチアルミホイール(タイヤサイズ:155/65R14)となる。
リア
リアのコンビランプはクリアータイプへ変更されている。「ビームサーベル」をイメージしたような縦長のデザインとなっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは引き続き前期と同じく新開発のKF型3気筒のNAとターボの2種類。エッセのデビュー時に初搭載されたエンジンで、自然吸気は最高出力58ps(43kW)/7200rpm、最大トルク6.6kg・m(64N・m)/4000rpm。
ターボ仕様ではインタークーラー付きで最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.5kg・m(103N・m)/3000rpm。
先代まであったJB型の4気筒ターボは廃止されラインナップから消えている。グレード別にはカスタムSとカスタムXが自然吸気エンジン。
カスタムRとカスタムRSがターボエンジンとなっている。トランスミッションは廉価グレードのカスタムSのみ4AT、これ以上はCVTで計2種類。駆動方式はFFまたは4WD。
なお、前期型のターボモデルの「カスタムR」は4ATの設定だったが、後期でカスタムRもCVT化されターボモデルはずべてCVTとなった。
安全装備ではSRSエアバッグ、EDB付きABSを全グレードに標準装備する。
4代目ムーヴカスタム L175SとL185S型との違い
4代目ムーヴカスタムのL175SとL185S型との違いは駆動方式。L175Sは前輪を駆動するFFモデルの4代目ムーヴカスタム。
L185SはL175Sをベースに全部のタイヤを駆動する4WDモデルの4代目ムーヴカスタム。
なお、4WDシステムにはビスカスカップリングを用いた生活4駆と呼ばれる4WDシステムが採用される。
これはジムニーやパジェロミニなどの本格軽SUVとは異なり、基本はFFで、前後の回転差が生じた時(滑った時など)に4WDとなるたパッシブタイプのオンデマンド4WD方式。
パートタイム4WDのようなタイトブレーキング現象が発生せず街乗りでは扱いやすいが、その分本格的な悪路走行には向いていないのでその点は十分注意されたい。
4代目ムーヴカスタム(L175SとL185S型)ターボ車とターボ無し(自然吸気エンジン・NA)の見分け方
4代目ムーヴカスタム(L175S/L185S)でターボ付きかそうでないかを見分ける場合は、外装はアルミホイールがポイント。
ターボ仕様のRSとRグレードではそれぞれ16インチアルミホイールと15インチアルミホイールを標準装備し、特にRSグレードでは専用デザインとなるため、見分けやすい。
自然吸気エンジングレードでは14インチアルミホイールのため、16インチと15インチであればターボ。14インチであればターボ無しで判断ができる。
なお、ターボ付きRグレードの15インチアルミホイールと自然吸気エンジンX、Sグレードの14アルミホイールはデザインが同じなので、タイヤサイズで判断するように。
外装はターボ付きもターボ無しもほぼおなじなためアルミホイールがポイント(※純正状態に限る)
内装ではターボ付きのRグレード以上とXリミテッドで後期モデルからルーフ部分のグローブボックスランプが標準装備化するため、標準状態でグローブボックスランプが付いているとターボ付きの可能性が高くなる。
またRSグレードにはMOMOステアリングも標準装備になるため、内装ではグローブボックスとMOMOステが見分けるポイント。
※ただしモモステは後期モデルで全グレードにオプション設定となったため、前ユーザーが購入時にオプション追加していたり、中古品を後付している場合もあり
インテリア
インパネ
メーターはセンターパネル。ダイハツおなじみのモモステは最上級のカスタムRSのみとなる。
スピードメーター
後期型ではメーターパネルがブルー系に変更され、自発光式メーターを全グレード標準装備とした。
RS専用モモステアリング
RSではモモ製本革巻きステアリング。なお、後期モデルではRS以外の全グレードにオプション設定され、いずれのグレードでもモモステが選択可能だった。
本革巻きステアリング
特別仕様車のVSとXリミテッドのみ本革巻きステアリング。SやX、Xリミテッド、Rではウレタンステアリングとなる。
フルオートエアコン
カスタムでは全グレードでフルオートエアコンとなる。
オーバーヘッドコンソール(ルーフイリミネーション付き)
RSとXリミテッドにはイルミネーション付きオーバーヘッドコンソールも標準装備となる。後期モデルでは新たにRS標準装備となった。
フロントシート
シートはベンチシート。後期ではシート表皮が刷新された。
リアシート
リアシートの足元はかなり広め。スライド機構(255mmのロングスライド)を備える。
ラゲッジスペース
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
4代目後期ムーヴカスタムの総評&中古価格が安くオススメ
4代目ムーブカスタムの後期モデルは、フロントデザインの大幅変更でかなり印象が変わったマイナーチェンジとなった。
ライバルのワゴンR スティングレーを意識したデザインで、直線基調が印象的だ。室内空間も先代より拡大し居住性がアップしている点も見逃せない。
一方で横からのデザインがまるで卵のようで、普通車から見ると車っぽく感じない人も居るだろう。5代目後期ではこのデザインが改善され、ライバルのワゴンRに近くなった。
また燃費も5代目後期に劣ってしまうためガソリン高を考慮すると4代目は不利な点が多い。もしデザインが気に入れば購入の候補になるだろう。
中古市場では年数経過や人気薄とあって比較的買いやすい価格帯となっている。
ボディスタイルこそ独特でとっつきづらい部分もあるが、その分歴代ムーヴの中でも室内空間が広く、カスタムであえば内外装もスタイリッシュ。比較的手頃に買えるスタイリッシュな軽自動車としての魅力は十分にある。
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