キャロルはマツダのハッチバック型軽自動車。スズキ・アルトのOEMモデルである。本稿では8代目のHB37S型を扱う。
8代目 マツダ・キャロルとは?
2021年12月にフルモデルチェンジし、8代目となったマツダ・キャロル。キャロルはスズキ自動車からアルトのOEM供給を受けて販売される軽自動車で、マツダの軽自動車の中でも一番歴史あるモデルである。
8代目キャロルではベースの9代目アルトと同じく先代よりも親しみやすく愛着のわくデザインを採用し、内外装を一新。
安全面ではガラスエリアを拡大し視界を向上。夜間の歩行者も検知するデュアルカメラブレーキサポートなど衝突時の被害軽減に貢献する安全装備を全グレードに標準装備するなど安全装備を強化した。
パッケージングは全高・室内高・室内幅の拡大により、広い室内空間を実現。さらに8代目ではキャロル初となる「マイルドハイブリッドシステム搭載車」をラインナップに追加し燃費や運動性能の向上を図った。
①エクステリアの特徴
エクステリアは「気軽」「安心」「愛着」をコンセプトに、ベーシックなスタイルによって、世代を超えて誰もが気軽に安心して乗れる親しみやすいデザインを採用。
丸みを帯びた柔らかなフォルムの中に楕円形のモチーフを取り入れ、小さな車体でも安心感のある立体的な造形を採用し、質感も高めた。
ボディーカラーは、新色「ダスクブルーメタリック」と「ソフトベージュメタリック」をモノトーンカラーとして加え、「ダスクブルーメタリック2トーン(ホワイトルーフ)」を2トーンカラーとして追加した。
②インテリアの特徴
エクステリアと同様に「気軽」「安心」「愛着」をコンセプトとし、抑揚のある面や線で厚みと立体感を表現した毎日乗っても飽きのこないインテリアを採用。
インパネとドアトリムに落ち着きのあるネイビーカラーを採用し、上質感や居心地のよさを表現。
シート表皮はジーンズのようなデニム調表皮を採用。シート背面はブラウンとし、シート全体で親しみやすさを演出した。
③パッケージング、利便性の向上
全高を50mm、室内高を45mm、室内幅を25mm現行車より拡大し、前席・後席ともに広い視界とヘッドクリアランス、ゆとりあるショルダールームとすることで広い室内空間を実現。
フロントドア開口部の高さ方向を20mm現行車より拡大して前席の乗降性を向上。
インパネトレー(助手席)やフロアコンソールトレー、インパネドリンクホルダー(運転席、助手席)をはじめ、大型のスマートフォンも収納できるインパネセンターポケットなど、ドライバーから手の届く位置に豊富な収納スペースを設置。
④軽量・高剛性、静粛性の高いボディ構造
剛性、衝突性能、走行性能などに優れた軽量・高剛性のプラットフォーム。
バックドア、センターピラー、サイドドアでそれぞれ環状構造を形成する「環状骨格構造」とすることで、ボディ全体の剛性を向上。
ルーフパネルとメンバーの接合部に高減衰マスチックシーラーを採用し、こもり音や雨音を低減。
⑤運転支援機能の拡充
夜間の歩行者も検知するステレオカメラ方式の衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」をはじめ
- 誤発進抑制機能
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
- ハイビームアシスト
- 後退時ブレーキサポート
- 後方誤発進抑制機能
を全グレードに標準装備。
8代目キャロルでは6エアバッグ(運転席・助手席SRSエアバッグ、フロントシートSRSサイドエアバッグ、SRSカーテンエアバッグ)を全グレードに標準装備とした。
⑥軽自動車トップクラスの燃費性能
低速から中高速までの実用速度域で優れた燃費性能と軽快な走りを実現するR06D型エンジンとISG(モーター機能付発電機)と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを搭載。 ※GLグレードを除く
「HYBRID GS」と「HYBRID GX」の2WD車ではWLTCモード燃費では軽自動車トップクラスの27.7km/Lを達成し、2030年度燃費基準95%達成でエコカー減税(重量税)免税とした。
GLグレードでは—低燃費と力強い走りを両立するR06A型エンジンと、減速時のエネルギーで発電・充電し、無駄な燃料消費を抑える「エネチャージ」を採用。発電によるガソリン消費を最小限に抑えるとともに、エンジンへの負担を軽減して軽快な走りにも貢献する。
8代目キャロル(HB37S)と9代目アルト(HS37S)の違い
8代目キャロルと9代目アルトとの違いはエンブレム程度で、基本的な内外装は同じ。そのためエンブレム違いの兄弟モデルとなる。
ただしグレード展開が一部異なり、アルトに設定の廉価グレード(アルトバン後継グレード)「A」が非設定。名称も若干異なりアルトのグレードにGの文字を足したグレード名となる(GL、ハイブリッドGX、ハイブリッドGSなど)
ボディカラーも一部非設定で、GLグレードでは
- ブルーイッシュブラックパール3
- ピュアホワイトパール
ハイブリッドGXグレードでは
- 「フェニックスレッドパール
- ブルーイッシュブラックパール3
- アーバンブラウンパールメタリックホワイト2トーンルーフ
- フェニックスレッドパールホワイト2トーンルーフ
- ソフトベージュメタリックホワイト2トーンルーフ
が非設定。「ピュアホワイトパール」はマイルドハイブリッド専用ボディカラーとなる。
ディスプレイオーディオや全方位モニター用カメラはキャロルでは未設定。
ボディカラー以外のメーカーオプションは「GL」専用の「アップグレードパッケージ」のみとなり、スズキ版の「LEDヘッドランプ装着車」、「バックアイカメラ付ディスプレイオーディオ装着車」、「アップグレードパッケージ装着車」などは非設定。
※ただしGLに設定の「アップグレードパッケージ」を選択するとボディカラーがピュアホワイトパールが選択可能となる。
8代目キャロル(HB37S)のグレード一覧 GL、ハイブリッドGX、ハイブリッドGSの違いなど
8代目キャロルのグレード展開はエントリー「GL」、ミドルグレード「ハイブリッドGX」、上級「ハイブリッドGS」の3種類。GLグレード以外はマイルドハイブリッドを搭載する。
GLグレードのみ内外装の装備を良くした「アップグレードパッケージ」が設定される。
7代目まで設定のあった「GF」グレードは8代目キャロルでは非設定となった。このほかアルトバン後継の「A」グレードに相当するグレードもキャロルには非設定。
GL
8代目キャロルのエントリーグレード。アルト「L」のOEMグレード。
マイルドハイブリッド非搭載グレードとしては上級グレードの位置づけ。
出典:スズキ認定中古車
エクステリアではホイールキャップ、電動格納式ドアミラー(※塗装無しの樹脂タイプ)、カラードアウタードアハンドルを標準装備。スモークガラスは非装備。
ボディカラーは全5色を設定。アルト「L」の「ブルーイッシュブラックパール3」や「フェニックスレッドパール」、「ピュアホワイトパール」が非設定。さらに2トーンカラーも非設定。
快適装備はパワーウィンドウがフロント&リアに標準装備となり、4WD車ではヒーテッドドアミラーが標準装備となる。UVカットガラスはフロントドアのみ。
燃費技術としてエネチャージを標準装備する。
GL アップグレードパッケージ
GLグレードにオプションの「アップグレードパッケージ」を装着したオプション適用車。アルト「L アップグレードパッケージ装着車」のOEM。
ボディカラーにGLグレードで非設定の「ピュアホワイトパール」が選択可能となり、以下の快適装備がプラスされる。
- フルオートエアコン[エアフィルター付]
- リヤシートヘッドレスト
- LEDヘッドランプ[ハイ/ロービーム、マニュアルレベリング機能付]
- ダークティンテッドガラス(リヤドア、バックドア)
- 助手席シートヒーター(2WD車)※4WD車は標準装備、
- UVカット機能付ガラス(全面)
- 運転席シートリフター
- バニティミラー(運転席)
なお、アルトL アップグレードパッケージ装着車と比べると「2トーンカラー」が選択できない、モノトーンボディカラーの選択肢が「ピュアホワイトパールがホワイトとの差し替えのみ」など、ボディカラーの設定が一部異なる。
ハイブリッドGX
8代目キャロルのミドルグレード。アルトの「ハイブリッドS」OEM。
キャロル初のマイルドハイブリッドを搭載し、内外装や装備も良くなる。
エクステリアにはカラード電動格納式ドアミラーを標準装備するが、スモークガラスは非装備。
ボディカラーは2トーンカラーを含めた全6色を設定。アルトよりもボディカラーがかなり少ない。
インテリアでは自発光式メーターがシルバー加飾、エアコンサイドルーバーリング、エアコンサイドルーバー、オーディオガーニッシュの一部がサテンメッキ調加飾。インサイドドアハンドルはシルバー塗装となる。
快適装備はエコクールを標準装備する。
ハイブリッドGS
8代目キャロルの上級グレード。アルト「X」のOEMグレード。
GXグレードの装備に追加でLEDヘッドライトとメッキグリル、14インチアルミホイール、スモークガラス、リモート格納・電動格納式ミラーを標準装備。
快適装備はキーフリーシステム、プッシュエンジンスタート、熱線吸収ガラスをフロントとフロントドアに。UVカットガラスは全ガラスに採用。
運転席&助手席バニティミラーにフルオートエアコンを採用し内外装や装備が豪華となる。
エクステリア(外観)
出典:ガリバー
フロントデザイン。8代目キャロルは先代までイメージをもたせつつ、親しみやすさを強調。個性的だったデザインは薄れ、誰からでも受け入れやすいベーシックなデザインに回帰した。
7代目のアイデンティティだったメガネガーニッシュも廃止され、6代目キャロルや4代目など、かつての平成時代キャロルのイメージが強くなった。
なお、上級のハイブリッドGSグレードではLEDヘッドライトとメッキグリルを標準装備する。
マツダ仕様としては特に変更点はなく、スズキマークがマツダマークに変更となる程度。
出典:ガリバー
サイド。横からのスタイリングも先代とはかなり変更され、従来どおりのセダンタイプらしいオーソドックススタイルに回帰した。
フロントからルーフにかけてはAピラーの角度がきつくなり、より箱型デザインに近くなった。
マイルドハイブリッド仕様ではフェンダー部に専用エンブレムが付く。
出典:スズキ認定中古車
特にリアクォーターやリアガラス付近が8代目では特徴的だったのに対し、9代目はかなりベーシックなデザインとなっている。
室内空間も9代目ではわずかにアップし、さらに快適としている。
出典:スズキ認定中古車
足元はGLグレードとハイブリッドGXがホイールキャップ。タイヤサイズは155/65R14。
出典:ガリバー
上級ハイブリッドGSのみ純正で14インチアルミホイールを採用。
出典:ガリバー
リア。7代目キャロルで特徴的だったバンパー埋込式テールランプが廃止され、8代目では従来どおりのリアゲート左右に配置する往年スタイルに回帰した。
軽貨物のアルトバンが廃止され開口部をそこまで広くとる必要が無くなったことも大きい。
マツダ仕様としてはリアゲートのエンブレムがマツダマークになるのと、「CAROL」エンブレムに変更になる程度で、あとはアルトと同じ。エンブレム違いのOEMモデルとなる。
エンジン・機能装備・快適装備など
エンジン・モーター・トランスミッション・駆動方式など
出典:スズキ認定中古車
エンジンはR06AとR06D型の直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。
GLグレードにはR06A型を採用。最高出力46ps(34kW)/6500rpm、最大トルク5.6kg・m(55N・m)/4000rpmを発生。
マイルドハイブリッド仕様のハイブリッドGXとハイブリッドGSにはR06D型を採用し、吸排気可変バルブタイミング機構(VVT)を搭載。
最高出力49ps(36kW)/6500rpm、最大トルク5.9g・m(58N・m)/5000rpmを発生。
ISG(モーター機能付き発電機)はWA04C型直流同期電動機を採用。
最高出力2.6ps(1.9kW)/1500rpm、最大トルク4.1kg・m(40N・m)/100rpmを発生。
トランスミッションはCVTのみで駆動方式はFFまたは4WDを設定する。
安全装備は運転席&助手席エアバッグなどを含めた6エアバッグにEBD付きABS、ヒルホールドコントロール、エマージェンシーストップシグナル、横滑り防止装置(ESP)を全グレードに標準装備。
9代目アルトのハイブリッドSまたはハイブリッドXではモータのアシストにより、発進加速や追い越し加速などが力強くなり、非搭載モデルよりも楽な運転が可能だ。
また、アイドリングストップによる再始動も独特のキュルキュル音がなくスムーズで、かなり快適。予算に余裕がある限りはマイルドハイブリッド仕様を強くオススメする。
8代目キャロルの自動ブレーキについて
8代目キャロルの全グレードに標準装備、自動ブレーキの「デュアルカメラブレーキサポート」では
- 夜間の歩行者検知も可能な「衝突軽減ブレーキ」
- 「後退時ブレーキサポート」
- 「誤発進抑制機能」
- 「車線逸脱警報機能」
- 「ふらつき警報機能」
- 「先行車発進お知らせ機能」
- 「ハイビームアシスト」
- 「後退時ブレーキサポート」
- 「後方誤発進抑制機能」
を備える。
なお、アルトにオプション設定の「標識認識機能」、「全方位モニター用カメラ」、「ヘッドアップディスプレイ」はキャロルには非設定となる。
インテリア(内装)
出典:ガリバー
インパネ。8代目キャロルでは楕円形のデザインをモチーフにインパネやインパネガーニッシュ、メーターパネルに取り入れて、立体感のある造形とした。先代よりもベーシック感が薄れ、質感の向上にも繋がった。
また、8代目キャロルではインパネトレー、フロアコンソールトレー、インパネドリンクホルダー、インパネセンターポケットなどを新規配置。使い勝手を大幅向上させた。
さらにセンター下部にはUSB電源ソケットも採用し、スマホ充電など使い勝手も向上させている。
マツダ仕様としてはステアリングのオーナメントがMマークに変更となる程度で、基本的にはアルトと同じ見た目となる。
出典:ガリバー
ステアリングは全グレードでウレタンステアリング。キャロルでは全グレードでステアリングのシルバーの加飾が付く。
8代目キャロルのスピードメーター。先代と同じく単眼式メーターに全グレードで大型マルチインフォメーションディスプレイを加えたタイプを採用。
文字盤が大型化かつよりシンプルとなり見やすさが向上している。
エアコンはGLとハイブリッドGSグレードがマニュアル式エアコン。
ハイブリッドGXとGLアップグレードパッケージでフルオートエアコンとなる。
出典:ガリバー
フロントシートはセパレートタイプ。先代と同じくヘッドレスト一体型シートを採用する。9代目ではシート表面がデニム調素材を採用。背面はブラウンとの組み合わせで先代よりも質感がアップした。
インナードアハンドルはハイブリッドXでシルバー塗装となる。
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構は非装備。ベーシックなアルトながら足元は十分広く、後部座席の快適性や実用性は高い。
リアヘッドレストはハイブリッドGSのみ標準装備で、他グレードではレス仕様。
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジスペース。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。左右一体可倒式シートのためシートアレンジはできないが、容量自体は広く、使い勝手は良い。
まとめ
8代目キャロルの総評
8代目キャロルはアルトと同じくより親しみやすさを強くしたエクステリアに質感や機能性が向上したインテリア。
強化された自動ブレーキにマイルドハイブリッドの搭載など、7年ぶりのフルモデルチェンジにふさわしい全面改良となった。
その一方で先代に設定の廉価グレードGFグレードが廃止されたり、アップグレードパッケージが1種類のみ。ボディカラーも厳選され設定が少ないなど、簡略化された部分もかなり多い。このあたりは他のOEMモデル(フレアクロスオーバー、フレアワゴン、フレア)などと同じ構成となっている。
モデル全体で見るとアルトと同じくデザインに加え中身も自動ブレーキもかなり良く、完成度はかなり高い。ただしアルトが売れていないのと同じくキャロルも全然売れておらず、これも時代の流れか。
コメント