アルトエコはスズキのハッチバック型軽自動車。7代目アルトに設定されていた低燃費特化モデルである。本稿ではデビューの2011年~フロントグリルを変更する前までの2013年2月までを前期型と定義し、記述することにする。
出典:スズキ認定中古車
スズキ・アルトエコとは?
2011年11月に登場したアルトエコ。
2009年12月にフルモデルチェンジし7代目となったアルトをベースに7代目アルトとは異なるR06A型の新型エンジン、CVTの高効率化、アイドリングストップ機能、LEDストップランプによる省電力化、各種部品の軽量化、空力性能の向上、タイヤの変更などによりベースモデルよりも低燃費性能を高めたエコカーとして生まれた。
アルトエコが登場した当時はライバルの「ダイハツ・ミライース」がデビューした時で、激しい燃費競争の真っ最中であった。
これに対抗する形なのかこの7代目アルトのみ「アルトエコ」という派生モデルが設定され、エコや低燃費を真正面に掲げた第3のエコカー的なキャラクターとなっていた。
アルトエコの特徴、アルトとの違い
アルトエコではそれまでのK6A型エンジンから新世代のR06A型に置換。トランスミッションも従来の副変速機内蔵CVTのフリクションを低減し、効率を高めた。
また、時速9km以下でエンジンを自動停止する停車前アイドリングストップ機能を搭載。それまでよりもアイドリングストップの頻度を高めて低燃費化に貢献させた。
リアコンビネーションランプもハイマウントランプとあわせてLEDに変更。消費電力を削減しエンジンに対するオルタネーターの負荷を削減した。
ボディに対しても軽量化がなされ、コンパクトなR06Aエンジンとエンジン周りの骨格の新設計で軽量化を実施。サスペンション部品、ドライブシャフト、フルホイールキャップも見直して軽量化を徹底した。
他に軽量フロントバンパー、内装のシートクッションのパッド、リヤシートバックの構造変更、トランクボードの材質変更など細かな軽量化も行った。
空力性能に対してもアプローチし、ベースモデルよりも-15mmローダウン。専用のエロバンパーにより車体下部の空気抵抗を低減させ全体の空力性能を向上させた。
さらに転がり抵抗の低いタイヤの採用やハブ一体構造車軸ベアリングの採用などにより回転抵抗も低減。走行中の引きずり抵抗を低減したフロントブレーキパッドの採用した。
これら徹底した軽量化によりデビュー時、FFのCVTで22.6km/L(JC08モード)だった燃費は30.2km/L(JC08モード)まで向上。約30%以上の燃費向上を果たした。
また、それと当時に新車価格は89万5千円。上級グレードでも99万5千円からと低燃費と低価格を両立させたモデルとなっていた。
前期アルトエコのグレード構成 ECO-S(エコS)とECO-L(エコL)、エコブルーパッケージの違い
前期型アルトエコのグレードは廉価グレードの「ECO-L」と上級グレードの「ECO-S」の2種類。前期は4WDモデルの設定が無く、2WDモデル(FF)のみだった。
特別仕様車には「ECO-S エコブルーパッケージ」が設定されていた。
7代目アルトについてはこちらから。
ECO-L(エコL)グレード
アルトエコの廉価グレード。
エクステリアでは樹脂タイプ(非塗装)の手動式ドアミラーに樹脂タイプ(非塗装)のアウタードアハンドル、リアガラスとリアゲートガラスはプライバシーガラス(スモークガラス)が非装備。
内装ではほぼ同じだが、リアシートのヘッドレストが非装備。
快適装備ではプッシュエンジンスタートとスマートキーが非装備(従来タイプの電波式キーレス・施錠解除一体式)となる。
ECO-S(エコS)グレード
アルトエコの上級グレード。装備が少し豪華になる。
エクステリアでは電動格納ミラーを標準装備し、LEDターンランプ付きはオプション設定。リアのプライバシーガラスは標準装備となる。
内装はリアシートのヘッドレストを標準装備。快適装備ではプッシュエンジンスタートとスマートキーが標準装備となる。
特別仕様車 ECO-S エコブルーパッケージ
2011年11月設定の特別仕様車。
エコブルーパッケージではボディカラーに「スペリアホワイト」のみを採用。エコをイメージしたブルーのアクセントを与え、特別感を演出したモデル。
エコブルーパッケージは上級の「ECO-S」をベースに
外装では
- 専用の水色塗装カラードドアミラー
- アウトサイドドアハンドル
を採用。
内装では
- 水色塗装のオーディオパネル
- ブルー色のシート表皮
- ブルー塗装のドアアームレスト
- ブルー塗装のインサイドドアハンドル
- ブルー塗装のエアコンサイドルーバー
などを採用。
内外装でブルーのアクセントカラーによりベースと差別化を図った特別仕様車
前期型アルトエコのエクステリア(外装)
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。ぱっとみベースから変更な無いのだが、2012年6月のマイナーチェンジでエンブレムの色がエコロジーなイメージのブルー系へ変更されている。
それ以外はヨーロピアンの雰囲気漂う7代目アルトそのままといった感じだ。
出典:スズキ認定中古車
サイドから。この点も特に変更はない。ハッチバック型特有の車高の低さが空気抵抗に影響し、しいては燃費に影響する。またワゴン型やハイト系と違って、ボディの面積も少なくて済むことから車重も軽減できる。
出典:スズキ認定中古車
リア。こちらもぱっと見変更点はないように見えるが、アルトエンブレムの下に「ECO」という専用エンブレムが付いている。
また、コンビランプのブレーキランプ部分とハイマウントストップランプを標準でLEDとし、省電力を意識した装備となっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3代目MRワゴンで初採用となった新開発のR06A型エンジンを搭載。ターボモデルは無く自然吸気のみとなる。
最高出力は52ps(38kW)/6000rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
これにトランスミッションは副変速機付きCVTを設定。駆動方式はFFのみとなる(ただし、後期モデルでは4WDも追加される)。
前期型アルトエコのインテリア(内装)
出典:スズキ認定中古車
インパネ。
出典:スズキ認定中古車
スピードメーター。アルトエコではエコドライブインジケーターを搭載。白背景がグリーンやブルーに光ることでエコドライブ状態をドライバーに視覚的に明示しエコドライブをサポートする。
出典:スズキ認定中古車
フロントはセパレートタイプ。
出典:スズキ認定中古車
リア。ベーシックなグレードと一つ上のグレードのいずれでもヘッドレストは付かない。
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。このへんの使い勝手はベースと同じだ。
前期型アルトエコの評価
前期型アルトエコの総評
出典:ホンダ認定中古車
アルトエコは7代目アルトをベースに低燃費を追求したエコカーである。普段の生活の足として使うこの手の軽自動車の燃費性能を追求することは、経済性という観点からもかなり理にかなったモデルで軽自動車本来のあるべき姿なのかもしれない。
ただし、ライバルを意識したのかカタログ燃費で上を行くために、燃料タンクの容量を従来の30Lから20Lへと変更されている点は注意である。
もちろん低燃費なのでそれ以外の車と比べると減りは遅いが、冬季など特に雪国ではエンジン始動時のアイドリング回転数が高くなる傾向にありそうなるとアルトエコの低燃費は関係なく燃料は減ってしまうのでこまめな給油が必要になってくる。
雪国で冬季の冷え込みが厳しい地方に住むユーザーは要注意である。
それ以外は素直に低燃費ということでお財布に優しい軽自動車。価格的にも軽自動車の人気はこのハッチバック型でなくワゴン型やハイト系に集中していることもあって中古価格は手頃な個体が多い。
もちろん現行の8代目の方がエコを謳い文句にせずとも燃費性能は上なのだが、エクステリアが特徴的すぎて7代目アルトの方が好みだというひとも中にはいるはず。
アルトエコはミラ・イースでもなく、8代目アルトのデザインが好みでない人にオススメな1台である。
この後の後期型マイナーチェンジではエコ専用デザインのシルバー塗装グリル、タコメーター付き3眼式スピードメーター、アウタードアハンドルのシルバー塗装など質感がアップ。最終の4型ではさらに燃費がアップするなど順当なアップデートが施される。
前期の見た目で満足できない人は後期型のアルトエコがオススメ。
兄弟モデル・マツダ キャロルエコ
なお、マツダ自動車にはアルトエコもキャロルエコとしてOEM供給された。
キャロルエコではキャロル用グリルが与えられ、アルトエコとは差別化されるが、ベースモデルのキャロルとはほぼ同じ外観が特徴。
特に後期モデルのアルトエコでは専用シルバー塗装グリルが与えられるが、キャロルエコではこれが適用されず、前期も後期も同じデザインだった。このあたりは好き好きが別れるがマツダブランド好きであればキャロルエコという選択肢も十分アリだ。
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