N-WGNはホンダのワゴン型軽自動車。本稿では初代JH1およびJH2のデビュー(2013年11月)~2015年11月までを前期型と定義し、これを扱う。
出典:ホンダ認定中古車
初代 ホンダ・N-WGNとは?
N-BOX、N-ONEに続くNシリーズとして2013年11月にデビューしたN-WGN(エヌワゴン)。
Nシリーズ最後発のこのモデルは、かつて販売されていたゼストとライフの後継モデルとして、売れ筋であるムーヴやワゴンRのライバル車種として投入された。
ライバルと似たような売れ筋のボディフォルムにホンダらしい直線基調のフロントデザインを与えたことでノーマルモデルでもベーシックでありながら非ファニー(可愛らしい)系の万人向けするデザインとなっている。
モデル構成は他社と同様にノーマルモデルのN-WGN、カスタムモデルのN-WGNカスタムの2種類を設定。
スズキやダイハツと違うのはデビュー当初からノーマルモデルでもターボエンジンモデルを設定する点で、ターボモデルにありがちな極端な価格上昇を抑えている点は良心的だ。
出典:ホンダ認定中古車
エンジンはN-BOXやN-ONEと同じS07A型を採用。これにCVTを組み合わせ、ゼスト時代の4ATは完全廃止された。
S07A型はナトリウム封入バルブやツインインジェクションシステムの採用で優れた低燃費と高出力&高トルクを両立させた。エンジン技術に定評のあるホンダらしいエンジンである。
安全技術としてはN-BOXやN-ONEと同じていたエマージェンシーストップシグナル、VSA、ヒルスタートアシスト機能を全グレードで標準装備。
自動ブレーキのシティブレーキアクティブシステムはサイドカーテンエアバッグシステム・前席用i-サイドエアバッグシステムをセットにした「あんしんパッケージ」としてグレード別にオプション設定または標準装備となる。
初代・前期N-WGNのグレード C、G、G・Aパッケージ、G・Lパッケージ、G・スタイルパッケージ、G・ターボパッケージ、SSコンフォートパッケージの違い
初代・前期N-WGNのグレード構成は「C」、「G」、「G・Aパッケージ」、「G・Lパッケージ」、「G・スタイリッシュパッケージ」、「G・ターボパッケージ」の6種類。
これ以外に特別仕様車で「G特別仕様車コンフォートパッケージ」と、「G特別仕様車 SSコンフォートパッケージ」がある。
カスタムモデルの「N-WGNカスタム」についてはこちらから。
Cグレード
初代N-WGNの廉価グレード。
デビュー当初は無かったが、2015年7月に追加設定された。装備を厳選し、価格を抑えたグレード。
一番安いグレードながら、
- VSA(車両挙動安定化制御システム)
- エマージェンシーストップシグナル
- ヒルスタートアシスト機能
- フルオート・エアコンディショナー
- 電波式キーレスエントリーシステム(キー2個付)
を標準装備。
Gグレードと比較して、プッシュ式エンジンスタート、チルトステアリング、スマートキーが非装備で簡略化されているものの、同年代のワゴンR・FAなどと比較してもお買い得なグレードであった。
Gグレード
初代・N-WGNのエントリーグレード。Cグレードが登場するまでは一番安いグレードだった。
装備面は
- プッシュ式エンジンスタート
- チルトステアリング
- スマートキー
- VSA(車両挙動安定化制御システム)
- エマージェンシーストップシグナル
- ヒルスタートアシスト機能
- フルオート・エアコンディショナー
などが標準装備。
G・Aパッケージ
初代・N-WGNの上級グレード。
Gグレードに追加で自動ブレーキ+サイドカーテンエアバッグの「あんしんパッケージ」、「ハーフシェイド・フロントウインドウ」、「ディスチャージヘッドランプ」、「後席シートベルト締め忘れ警告灯」、「運転席ハイトアジャスター」など安全装備や快適性能をプラスしたグレード。
G・ターボパッケージ
初代・N-WGNの上級ターボグレード。
G・Aパッケージをベースにターボエンジンを搭載した最上級グレードで、G・Aパッケージの装備に加えて14インチアルミホイールが標準装備となる。
G・Lパッケージ
2015年4月のマイナーチェンジで「G・Aパッケージ」から改名した上級グレード。
G・Lパッケージでは新たに「プラズマクラスター搭載フルオートエアコン」と「ナビ装着用スペシャルパッケージ」を標準装備し、ピアノブラック超センターパネル&メーターパネルをオプション設定。
外装ではオートリトラミラーも標準装備する。
G・スタイリッシュパッケージ
2015年4月のマイナーチェンジで新規追加された自然吸気エンジン最上級グレード。
自然吸気エンジンながらクルーズコントロールを標準装備するのが最大の特徴で、これ以外にG・Lパッケージに追加でN-WGNカスタムと同じ雰囲気のブラックカラー内装(スタイリッシュインテリア)、ピアノブラック調ガーニッシュ付き本革巻きステアリング、ピアノブラック調センターパネル&メーターパネルを標準装備。
外装ではLEDターンランプ付きドアミラーを標準装備する。
特別仕様車 コンフォートパッケージ
G・Aパッケージをベースに専用インテリアとプラズマクラスター搭載フルオートエアコン、シートヒーター、ピアノブラック調センターパネル、紫外線カットガラスを標準装備しつつ、お買い得としたグレード。
コンフォートパッケージについてはこちらから。
特別仕様車 SSコンフォートパッケージ
Gグレードをベースにボディ同色専用グリル、日焼け対策の快適装備と専用ブラウンシート表皮を与えた特別仕様車。上記「コンフォートパッケージ」のアップグレード版。
出典:ホンダ認定中古車
無印コンフォートパッケージでは外装の変更が無かったが、SSコンフォートパッケージでは新たにボディ同色グリルを装着したことで、特別仕様車らしいスタイリッシュな外観となった。
SSコンフォートパッケージについてはこちらから。
初代N-WGN JH1とJH2との違い
N-WGNのJH1とJH2との違いは駆動方式。
JH1はフロントエンジン、フロントドライブのFF方式のN-WGN。JH2はJH1をベースに前輪を駆動する4WDモデル。
また、FFのJH1と4WDのJH2では全高と重量が若干異なり、4WDのJH2の方が20mm全高が高く、約50kg重たい。さらに最小回転半径もJH2の方が0.2m大きくなる。
エクステリア(外装)
出典:ホンダ認定中古車
フロントのデザイン。ホンダらしい同社のミニバンである「ステップワゴン」を彷彿とさせるデザインだ。直線を基調としたヘッドライトにグリルレスとし、代わりにメッキパーツを台形状に配置。
ノーマルモデルでも特有の顔つきとなり、カワイイ顔が多い軽自動車とは少し違ったキャラクター感が出ている。
出典:ホンダ認定中古車
なお、ターボ仕様ではわかりづらいがグリル左右に小さな開口部が付く。
出典:ホンダ認定中古車
サイド。N-BOXと比較するとボンネットの面積が多く全高も低く抑えられている。デザイン的にも軽ワゴンっぽくバランスが取れている。
最近のこの手の軽自動車は、ボンネット周りのエッジを効かせ運転席からの見切りを良くするデザインが主流。ワゴンRもムーブも同じようにボンネットの角が高くなっている。足元は標準でフルホイールキャップ。
出典:ホンダ認定中古車
ターボ仕様では専用の14インチアルミホイールとなる。
出典:ホンダ認定中古車
リア周りは後部座席後方、窓ガラス付近のデザインが少し変わっている。ブレーキランプはLED仕様。エマージェンシーストップシグナルは全グレードで標準装備。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:ホンダ認定中古車
エンジンはS07A型3気筒のNAとターボの2種類を設定。ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.6kg・m(104N・m)/2600rpmを発生する。
N-ONEと同じく、ノーマルモデルにもターボエンジンを設定している点がミソで、ターボが付いていても130万ぐらいから購入可能だ。
また、自然吸気エンジンでも最高出力は58ps(43kW)/7300rpm、最大トルクは6.6kg・m(65N・m)/4700rpmと軽自動車のエンジンにしてはかなりの高出力。
これはツインインジェクションシステムとナトリウム封入排気バルブを採用したためで、スズキの「デュアルジェットエンジン」のような直噴エンジン並の燃焼効率が得られている。圧縮比も11.8とかなり高め。トランスミッションは全グレードCVTのみで、駆動方式はFFと4WDが用意される。
この他にアイドリングストップシステムを備え、安全装備としてはVSA(ABS+TCS+横すべり抑制)とヒルスタートアシスト機能が全グレードで標準装備。
約30km/h以下での前方車両との衝突の回避・被害軽減をサポートする「City-Brake Active System(シティブレーキアクティブシステム)はG・AパッケージとG・ターボパッケージで標準装備とし、それ以外では「あんしんパッケージ」としてオプション設定される。
初代・前期N-WGNの持病 CVTの不具合について、ガラガラ、ギー、ゴーなど変なうなり音がする原因など
NシリーズのCVT不具合の内容と原因
初代の前期型N-WGNのCVTは、走行距離が増えるとミッション内部の加工片が偶発的にドリブンプーリーベアリング内部に噛み込み、ベアリング内部の軌道面が剥離して異音が発生するケースがある。
これに関してはホンダからCVTの延長保証が出ており、不具合が発生しやすいようだ。
特にCVTフィールドを定期的に交換していないと異音が発生しやすく、一度も交換していないようなN-WGNは発生の可能性が高くなる(N-WGNのCVTフィールドは4万キロごとが交換推奨時期)。
※ただし定期的な交換をしている場合でも走行距離によっては異音が発生するケースもあり
そのまま放置し続けると加速不良から走行不能にまで発展するため、乗り続ける場合はかならず対処が必要となる。
なお、N-WGN以外に同年代のN-BOXやN-BOXスラッシュ、N-ONEなどNシリーズとS660の前期モデルの一部で同様の不具合が発生している。
保証期間
①初度登録日から経過、6年未満の車両
5年または10万km以内 ⇒ 7年または10万km以内
②初度登録日から経過、6年以上の車両
5年または10万km以内 ⇒ 保証期間延長開始後から1年または10万km以内
CVT不具合に対する修理費用について
万が一この現象が出ているモデルで保証期間がすぎると自己負担による有償修理(ミッション載せ替え)が必要。不具合の部品だけの交換は難しく、トランスミッション丸ごと(ASSY)交換となる。
新車登録年以外に10万キロ以上の車では保証外なため、8年落ち以上の個体や10万キロ超過の過走行車を買う場合は要注意。
購入後に不具合が発覚しても保証外なため自腹修理となり、ミッション本体と工賃をあわせると約30万円ぐらいの高額修理になる場合がある。
そのため中古で初期モデルのN-WGNを買う場合はこの不具合が出ていないか、あるいは対策済みなどかを確認してから購入することを強くオススメする。
インテリア(内装)
出典:ホンダ認定中古車
インパネ。廉価グレードのCやGグレードではステアリングがモノトーンで、エンジンスタートも従来タイプだが
出典:ホンダ認定中古車
上級グレードのG・ターボパッケージやG・Lパッケージではステアリングにシルバー塗装パーツやオーディオコントロールが備わり、エンジンスタートもプッシュスタート式でイモビライザーとセキュリティアラーム付きとなる。
出典:ホンダ認定中古車
ステアリングはウレタンステアリング。ステアリングテレスコピック機能付き。
出典:ホンダ認定中古車
エアコンは全グレードでフルオートエアコン。
出典:ホンダ認定中古車
スピードメーター。全グレード(ターボ付きを含む)でタコメーター無しのシンプルなタイプ。
エコインジケーター搭載で、エコ運転時には緑色で表示。
出典:ホンダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。
出典:ホンダ認定中古車
リアシート。スライド機構(スライド幅200mm)付きで足元の広さを調節可能だ。
出典:ホンダ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:ホンダ認定中古車
リアシートを倒した状態。
まとめ&初期モデルのN-WGNは安価な価格帯に遷移
N-WGNはNシリーズの第4弾として投入され、ホンダらしいエクステリアに自然吸気エンジンでも高トルクなエンジンを搭載する軽ワゴンである。
エクステリアはカスタムでなくともベーシックかつ精悍な部分も併せ持っておりワゴンRやムーヴとはまた違った外観となっている。加えて高トルクなエンジンとCVTのファイナルギアのハイギヤード化により自然吸気エンジンでの実燃費は比較的高いのも特徴だ。
この手のジャンルの軽は似たり寄ったりな部分が多いがホンダのN-WGNでは個性的なエクステリアと高い実燃費で差別化がなされている。
この後の後期型ではフロントグリルが変更されたり、360°スーパーUV・IRカット パッケージの設定、新ボディカラーなどより魅力がアップする。ただし中古車的には10年落ちに近いこともあり前期型が割りと安価なタマになってきた。
ライフほどではないが、新世代Nシリーズでベーシックなワゴンタイプが欲しい場合は、初代前期型のJH1やJH2がオススメである。
ただしN-BOXなどと同じく初期モデルはCVTの不具合があるため、購入の際は試乗したり記録簿で整備状況を確認するなど故障のリスクが少ない個体を選ぶことをオススメする。
コメント