N-WGNはホンダのワゴン型軽乗用車。本稿では初代JH1およびJH2系の2016年6月マイナーチェンジ~を後期型とし、これを扱う。
ホンダ 初代・N-WGNとは?
N-BOX、N-ONEに続くNシリーズとして2013年11月にデビューしたN-WGN(エヌワゴン)。
Nシリーズ最後発のこのモデルは、かつて販売されていたゼストとライフの後継モデルとして、売れ筋であるムーヴやワゴンRのライバル車種として投入された。
ライバルと似たような売れ筋のボディフォルムにホンダらしい直線基調のフロントデザインを与えたことでノーマルモデルでもベーシックでありながら非ファニー(可愛らしい)系の万人向けするデザインとなっている。
モデル構成は他社と同様にノーマルモデルのN-WGN、カスタムモデルのN-WGNカスタムの2種類を設定。
スズキやダイハツと違うのはデビュー当初からノーマルモデルでもターボエンジンモデルを設定する点で、ターボモデルにありがちな極端な価格上昇を抑えている点は良心的だ。
エンジンはN-BOXやN-ONEと同じS07A型を採用。これにCVTを組み合わせ、ゼスト時代の4ATは完全廃止された。
S07A型はナトリウム封入バルブやツインインジェクションシステムの採用で優れた低燃費と高出力&高トルクを両立させた。エンジン技術に定評のあるホンダらしいエンジンである。
安全技術としてはN-BOXやN-ONEと同じていたエマージェンシーストップシグナル、VSA、ヒルスタートアシスト機能を全グレードで標準装備。
自動ブレーキのシティブレーキアクティブシステムはサイドカーテンエアバッグシステム・前席用i-サイドエアバッグシステムをセットにした「あんしんパッケージ」としてグレード別にオプション設定または標準装備となる。
初代・後期型N-WGNの改良点と前期との違い
そのN-WGNは、N-WGNカスタムと同様に2016年6月マイナーチェンジで、フロントデザインの変更を伴い後期型となった。
後期型のN-WGNではボディカラーと同色かつ新デザイン&メッキ仕上げのグリルを採用し前期よりも精悍さをアップさせたほか、廉価グレードを除いてアウタードアハンドルをクロームメッキ化。
また、コンビランプのブレーキランプ部分を全グレードで赤色塗装としカスタムと差別化を行なった。
内装ではブラウン✕ベージュとブラック内装の2色を設定。
ボディカラーもタフタホワイトII、ルナシルバー・メタリック、シャイニンググレー・メタリック、クリスタルブラック・パール、ブリティッシュグリーン・パールの新色5種類が追加。
便利機能としては360°スーパーUV・IRカット パッケージとETC車載器、充電用USBジャック(急速充電対応)搭載のナビ装着用スペシャルパッケージをタイプ別で設定するなど、内外装のリフレッシュと便利機能を追加させたマイナーチェンジとなっている。
後期型・初代N-WGNのグレード C、G、G・Lパッケージ、G・ターボパッケージ、SSパッケージ、SSパッケージⅡの違い
初代・後期N-WGNのグレード構成は「C」、「G」、「G・Lパッケージ」、「G・ターボパッケージ」の4種類。
これ以外に特別仕様車で「G特別仕様車 SSパッケージ」と、「G特別仕様車 SSパッケージⅡ」がある。
カスタム仕様のN-WGNカスタムはこちらから。
Cグレード
初代N-WGNの廉価グレード。
デビュー当初は無かったが、2015年7月に追加設定された。装備を厳選し、価格を抑えたグレード。
一番安いグレードながら、VSA(車両挙動安定化制御システム)、エマージェンシーストップシグナル、ヒルスタートアシスト機能、フルオート・エアコンディショナー、電波式キーレスエントリーシステム(キー2個付)を標準装備。
Gグレードと比較して、プッシュ式エンジンスタート、チルトステアリング、スマートキーが非装備で簡略化されているものの、同年代のワゴンR・FAなどと比較してもお買い得なグレードであった。
Gグレード
初代・N-WGNのエントリーグレード。Cグレードが登場するまでは一番安いグレードだった。
装備面はプッシュ式エンジンスタート、チルトステアリング、スマートキー、VSA(車両挙動安定化制御システム)、エマージェンシーストップシグナル、ヒルスタートアシスト機能、フルオート・エアコンディショナーなどが標準装備。
後期型ではGグレード専用にブラウン×ベージュ内装が採用され、Cグレードよりも上質な雰囲気となった。
G・Lパッケージ
2015年4月のマイナーチェンジで「G・Aパッケージ」から改名した上級グレード。
Gグレードに追加で安全装備に自動ブレーキ+サイドカーテンエアバッグの「あんしんパッケージ」、「後席シートベルト締め忘れ警告灯」を標準装備
快適装備には「プラズマクラスター搭載フルオートエアコン」と「ナビ装着用スペシャルパッケージ+充電用USBジャック」、「ハーフシェイド・フロントウインドウ」、「360° スーパーUV・IRカット パッケージ」、「運転席ハイトアジャスター」を標準装備。
内装ではピアノブラック超センターパネル&メーターパネルをオプション設定。
標準のブラウン×ベージュ内装に加え、ブラック内装の2種類が選択可能。外装ではオートリトラミラーも標準装備。安全装備や快適性能をプラスしたグレードである。
なお、前期のG・Lパッケージにはディスチャージヘッドランプが標準装備だったが、後期モデルでは非設定となり、ターボ仕様のみにオプション設定となった。
G・ターボパッケージ
初代・N-WGNの上級ターボグレード。G・Lパッケージをベースにターボエンジンを搭載した最上級グレードで、G・Lパッケージの装備に加えて14インチアルミホイールが標準装備となる。
さらにディスチャージヘッドライトがオプション設定で選択可能となる。
特別仕様車 SSパッケージ
2016年6月設定の特別仕様車。
「G・Lパッケージ」をベースに特別装備としてシティブレーキアクティブシステム、前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステムをセットにした「あんしんパッケージ」を標準装備。
内装ではレイヤードクリアパネル:ホワイト仕様の専用インパネガーニッシュを与え安全性とプラスアルファの特別感を演出したモデルとなっている。
後期SSパッケージについてはこちらから。
特別仕様車 SSパッケージⅡ
2017年7月に軽自動車初の新・安全総合評価「ファイブスター賞」受賞を記念し設定された特別仕様車。上記SSパッケージのアップグレード版。
「G・Lパッケージ」をベースに特別装備としてシティブレーキアクティブシステム、前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステムをセットにした「あんしんパッケージ」を標準装備。
ボディカラーには専用色となる「モーニングミストブルー・メタリック」を設定。
内装ではレイヤードクリアパネルにブラウン×ベージュ内装選択時はホワイト仕様の専用インパネガーニッシュを。ブラック内装選択時にはブラックのインパネガーニッシュを与え、クロームメッキ・エアコンアウトレットリングも特別装備とした。
このほか標準モデルでは非設定のディスチャージヘッドライトをオプション設定とし、前モデルの「SSパッケージ」よりもバージョンアップさせ安全性とプラスアルファの特別感を演出しつつお買い得としたモデルとなっている。
SSパッケージⅡについてはこちらから。
初代・後期型N-WGNのエクステリア(外装)
フロントデザイン。前期型ではカスタムとは異なる台形状の大きなグリルが付いていたが、後期型ではこれを廃止。変わってカスタムのに似た階段状の開口部を持つデザインとメッキのラインが組み合わされた。
前期型では非常にベーシックな顔つきとなっていたが、後期型ではノーマルでもスタイリッシュ感が格段にアップ。性別や年齢を問わず誰もが受け入れやすいフロントデザインに変更された。
なお、これ以外ではバンパーのデザインも小変更され、開口部の溝が2本から1本へ変更。中央にはアクセントとしてメッキラインが加わった。
ヘッドライトはG・LパッケージグレードとG・ターボパッケージでディスチャージヘッドライトがオプション設定される。
このオプションを選択すると、ノーマルではハイロー切り替え式の一般的なヘッドライトが、ハイロー独立タイプ(4灯式)のヘッドライトに変更される(※一番上がポジション球、上部がロービームでディスチャージ、下部がハロゲンのハイビーム)。
サイド。ハーフシェイド・フロントウインドウはCとGグレードでオプション設定。これ以外は標準装備となる。
このあたりはデザイン上同じだが、後期型マイナーチェンジではG・LパッケージグレードとG・ターボパッケージで「360°スーパーUV・IRカット パッケージ」を標準装備。
ボディカラーは新色として「タフタホワイトII」、「ルナシルバー・メタリック」、「シャイニンググレー・メタリック」、「クリスタルブラック・パール」、「ブリティッシュグリーン・パール」の計5色が追加。全12種類となった。
LEDターンランプ付きドアミラー(オートリトラミラー仕様)は全グレード標準装備。ワンタッチでキーを解除する「Hondaスマートシステム」は最廉価のCを除き標準装備。
ドアミラーは全グレードでLEDターンランプ付き。G・LパッケージとG・ターボパッケージでは「オートリトラミラー」(ドアロックに連動しドアミラーを自動格納)をオプション設定。
足元は14インチスチールホイール+フルホイールキャップ。タイヤサイズは155/65R14。
ターボグレードのみカスタムと同じ14インチアルミホイール(切削クリア塗装+ピューターグレー塗装)となる。
リア。後期型ではコンビランプのブレーキランプ部が赤色に着色された。前期型ではパット見カスタムと同じデザイン(ブレーキランプ部分もクリアータイプ)で、差別化がなくデザイン的にも派手な感じがあった。
が、ブレーキランプを赤色に変更することでハデハデ感が少し和らぎ、同時にリアビューのスタイリッシュ感アップにもつながっている。
なお、前期同様にブレーキランプはLED仕様で、エマージェンシーストップシグナルを全グレード標準装備する。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはS07A型3気筒のNAとターボの2種類を設定。ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.6kg・m(104N・m)/2600rpmを発生する。
自然吸気エンジンでも最高出力は58ps(43kW)/7300rpm、最大トルクは6.6kg・m(65N・m)/4700rpmと軽自動車のエンジンにしてはかなりの高出力。
これはツインインジェクションシステムとナトリウム封入排気バルブを採用したためで、スズキの「デュアルジェットエンジン」のような直噴エンジン並の燃焼効率が得られている。圧縮比も11.8とかなり高め。トランスミッションは全グレードCVTのみで、駆動方式はFFと4WDが用意される。
この他アイドリングストップ機構を備え、安全装備としてはVSA(ABS+TCS+横すべり抑制)とヒルスタートアシスト機能が全グレードで標準装備。
約30km/h以下での前方車両との衝突の回避・被害軽減をサポートする「City-Brake Active System(シティブレーキアクティブシステム)は「あんしんパッケージ」として全グレードにオプション設定。クルーズコントロールやパドルシフトの設定はなし。
ホンダ・N-WGN JH1とJH2との違い
N-WGNのJH1とJH2との違いは駆動方式。JH1はフロントエンジン、フロントドライブのFF方式のN-WGN。JH2はJH1をベースに前輪を駆動する4WDモデル。
また、FFのJH1と4WDのJH2では全高と重量が若干異なり、4WDのJH2の方が20mm全高が高く、約50kg重たい。さらに最小回転半径もJH2の方が0.2m大きくなる。
JH1/JH2型初代N-WGNのリコール 2022年6月2日届け出・低圧燃料ポンプの不具合
2022年6月2日にホンダから国交省へN-WGNのリコールが届け出られた。
対象となるのはJH1型とJH2型N-WGNカスタムで、対象となるのは2018年3月から2018年12月製造の車体。
内容は燃料ポンプの不具合。燃料ポンプ内のガソリンを吸い上げる樹脂製の羽根車に不具合があり、使用し続けるこの歯車が変形しガソリンをエンジンに送れなくなる。
これにより最悪エンジンが止まる恐れがある。ただし現状はそこまで重大な事故は発生しておらず、エンジンがかからないケースが68件報告されているとのこと。
なお、今回のリコールは2代目N-BOX・N-BOXカスタムの場合はFFモデルのみだったが、N-WGNの方はFFも4WDも両方が対象となる。
対象車種を使用している人は交換部品の準備ができ次第、リコール対応が実施される。
なお、今回のリコールでは2代目前期型N-BOX、N-BOXカスタム、初代W-WGNカスタム、N-VAN、初代N-ONE、N-BOXスラッシュ、S660も対象車種となっており、全部で21万9623台が対象となる大型リコールとなった。
初代・後期型N-WGNのインテリア(内装)
インパネ。後期型ではブラウン×ベージュおよびブラックの2色を採用。ブラック内装はG・LパッケージとG・ターボパッケージのみ設定。
ブラウン✕ベージュはGグレードで標準装備。G・LパッケージとG・ターボパッケージでは上述のブラック内装かブラウン✕ベージュ内装のいずれかを選択。
さらにG・LパッケージとG・ターボパッケージではセンターパネルとメーターパネルがカスタムと同じくピアノブラック調となる。
エアコンはCとGでオートエアコン。G・LパッケージとG・ターボパッケージではカスタムと同じくプラズマクラスター搭載のフルオートエアコンディショナーとなる。
最廉価のCグレードでは前期型と同じベージュ系内装となる(インパネ上部のみブラックカラー)。エンジンのプッシュスタートもCグレードでは非搭載。
ETC車載器(ナビゲーション連動)+充電用USBジャック(急速充電対応タイプ 2個付)をセットとした「ナビ装着用スペシャルパッケージ」はG・LパッケージとG・ターボパッケージで標準装備(※「ディスプレイオーディオ」選択時は非装備)、Gグレードでオプション設定。
スピードメーター。ターボグレードも共通でタコメーター無しのシンプルタイプ。
エコインジケーター搭載で、エコ運転時には緑色で表示。
フロントシートベンチシートタイプ。インパネカラーに合わせてブラックカラー(G・ターボパッケージまたはG・Lパッケージ)と
ブラウンカラー(GグレードまたはG・Lパッケージ)と
前期型と同じベージュカラー(Cグレード)の3種類がある。4WD仕様では運転席と助手席でシートヒーターを標準装備。
リアシート。こちらもフロントシートと同じくブラック、ブラウン、ベージュの3種類。スライド幅は200mm稼働。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
初代・N-WGNの後期型は前期型よりもスタイリッシュになった外観とブラウンやブラック内装など上質なインテリアが特徴のモデルである。
特に外観はカスタムにも負けないぐらいデザインがよくなり、それでいて新車価格は最廉価のCで109万円からとかなり良心的な価格設定となっている。
燃費性能や自動ブレーキではスズキやダイハツに勝てない部分もあるが、そこそこ燃費が良くてデザインも軽ワゴンとしては優秀なため、トータルで見るとワゴンRやムーヴに引けを取らないモデルといえよう。特に買いやすいノーマルモデルでもスタイリッシュな外観は、他社にはない魅力的なポイントである。
初代・後期型N-WGNは不人気ゆえに高年式でも中古が割安
初代・後期型N-WGNの中古市場では軽自動車の人気がN-BOXなどのスーパーハイトワゴンに集中し、かつての売れ筋だったトールワゴンは売れなくなった影響で中古車としての人気も薄く、N-WGNもあまり人気のないモデルとなっている。
そのため比較的高年式な初代・後期型モデルでもグレードによっては走行距離の割に安価なタマも多く、お買い得感がかなりある。もちろん前期モデルはさらに安くなるが、持病的な故障のリスクがあるため、注意が必要だ。
使い勝手はN-BOXのような圧倒的な室内空間が無いものの、それを求めないのであれば十分機能的だし、N-BOXよりも車重が軽く全高も低いため燃費や加速が良く、強風時でも風の影響を受けづらい。
タマ数もそこそこ豊富で探しやすい中古車となってる。
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