ekワゴンは三菱のワゴン型軽自動車。本稿では初代のH81W型の2004年12月マイナーチェンジ~2006年8月までを後期型とし、これを扱う。
概要
2001年10月にデビューした三菱・初代eKワゴン。当時の売れ筋となっていたスズキ・ワゴンRとダイハツ・ムーヴに対向する形での市場投入となったモデルである。
商品コンセプトは「ジャストバリュー・ワゴン」。ボディスタイルはワゴンRとアルトの中間程度の車高を持つ「セミトール・パッケージング」を採用し同社のトッポBJよりも背が低く、セダンタイプであるミニカよりもわずかに高く設定されていた。
設計時点では「ヒップポイントと頭上のスペース、室内側のパッケージングから割り出された数値」となっていたが、結果的にワゴンRやムーヴでは不可能な立体駐車場に入る高さの1550mm以下に抑えられ、ムーヴやワゴンRとは差別化がなされていた部分である。
それ以外にもeKワゴンは乗降と運転視界を両立させた調度良い高さで、ムーヴやワゴンRなどの他社には見られない最適なパッケージング、シンプルでベーシックなデザインが特徴のモデルである。
eKワゴンでは軽乗用車としては初となるセンターメーターを採用し、インパネには豊富な収納スペースを設けるなど新時代にふさわしいデザインを与えた。
それでいて新車価格は91万円からとするなど価格面でもかなり良心的なモデルで、eKワゴンのeKはお客様の目線に立ち一過性の流行(はやり)ものでなく、ながく愛される真に「いい軽」(excellent K-car)を創ろうという思いを込めて昨年1月に発足した「eK(いい軽)プロジェクト」から命名されている。
この他エンジンは先にデビューしていた8代目ミニカの3G83型・SOHC自然吸気エンジンを流用。
ただし、エンジンの改良により平成12年基準排出ガス規制値よりさらに50%低減した、「優-低排出ガス」に適合させている。
また、トランスミッション等も8代目ミニカから流用し基本メカニズムを新規設計とせず、ドアミラーやルームライトに至っては他社であるダイハツ・3代目ムーヴの部品をそのまま流用するなどして開発コストや部品コストを下げ、安価な価格設定を実現していた。
初代・後期型eKワゴンの改良点と前期型との違い
その初代eKワゴンは2004年12月のマイナーチェンジで内外装の変更を伴い後期型となった。
後期型ではフロントバンパーとフロントグリル、ヘッドランプのデザインを変更した他、eKアクティブと同じマルチリフレクタータイプのコンビランプとリアゲートを採用しスタイリッシュ感をアップさせた。
また、ボディカラーはライトイエローソリッド、ライトグリーンマイカ、クールシルバーメタリック、レッドソリッドの4色を追加し計10色に。
内装ではインパネカラーを変更しベースとブラウンの2色を新規採用。シート生地やドアトリム生地もモダンな織柄のニット調とすることで上質感をアップさせた。
この他後期型ではそれまで設定のなかった5MTをベーシックグレードのMに新規設定したほか、それまで未設定だったリモコンドアミラーをMグレードに標準装備。
後期型で新たに設定となった上級グレードのGグレードではそれまでオプション設定だったABSを標準装備としたほか、4WD仕様車ではヒーテッドドアミラーも標準装備とし、内外装の質感向上と便利機能を充実させたマイナーチェンジとなっている。
エクステリア
フロントデザイン。後期型ではヘッドランプ、フロントグリル、フロントバンパーを新デザインとした。
前期型のフロントグリルはヘッドライトに合わせて直線基調が強くベーシックなものだったが、後期型ではこれを変更。形状を逆台形に丸みを与えたものとしスタイリッシュ感を与えた。
合わせてヘッドライトの内部も形状変更しヘッドライトのメイン部分を大きくすることで可愛らしく親しみやすい顔に変化した。
また、バンパーも後期型では新デザインとなり、それまでのグリルと同じデザインからシンプルな3段形状の開口部に変更された。後期型ではパット見は同じように見えるがよく見ると前期型よりも可愛らしいデザインに変更されており、ファニーフェイス好きな女性にも好まれるような顔に変化した。
サイド。このあたりは前期型と同じ。後期型ではMグレードで電動開閉式ドアミラーが標準装備となったほか、新設定のGグレードではヒーテッドドアミラーを標準装備とした。
足元は引き続き13インチフルホイールキャップ。タイヤサイズは155/65R13。
13インチアルミホイールはオプション設定。
リア。後期型ではコンビランプとバックドアを変更。コンビランプは先にデビューしていた「eKアクティブ」用のマルチリフレクタータイプを採用し、スタイリッシュな外観とした。
さらにバックドアもeKアクティブと同じバックガラス中央が凸形状になったスタイリッシュなタイプを採用。スリーダイヤエンブレムも大型化することで全体的にリアビューもスタイリッシュに仕立てた。
他にも前期型ではリアガラスに付いていた車名デカールをバックドア左下に移動し、後期型では独立したエンブレムに変更した。さらに2005年12月マイナーチェンジではオプション設定となっていた「ハイマウントストップランプ」が全グレードで標準装備となった。
エンジン・機能
エンジンは前期型と同じく3G83型の3気筒のSOHC12バルブ自然吸気エンジンのみ。最高出力は50ps(37kW)/6500rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpmを発生。
トランスミッションはそれまでの3ATと4ATに加えMグレードに5MTが追加され3種類となった。駆動方式はFFまたは4WDとなっている。
初代eKワゴンはこの5MTの追加により、FFの5MTモデルで21.5km/L(10.5モード)の燃費を達成し、5MTの4WD車では19.8km/L(10.5モード)を実現。いずれも平成22年度燃費基準の+5%を達成した。
また、2WD車で平成17年排出ガス規制値の75%低減レベル(☆☆☆☆)、4WD車では同50%低減レベル(☆☆☆)を達成して、当時のグリーン税制に適合している。
また、3AT及び4ATの2WD車も、平成22年度燃費基準を達成し、平成17年排出ガス規制値の75%低減レベル(☆☆☆☆)も達成して、グリーン税制に適合した。
インパネ。センターメーターを引き続き採用。後期型ではインパネカラーをベージュとブラウンの2トーンカラーとし、雰囲気を一新させた。
なお、オプション設定のブラックインテリアパック(※5MTは非設定)ではスポーティーなブラックインテリアとなる。
2005年12月マイナーチェンジでは脱臭機能付きクリーンエアフィルターが全グレードで標準装備となった。
ブラックインテリアパックではステアリングが本革巻ステアリングホイールに変更される。
スピードメーター。後期型ではデザインが小変更され、背景が白一色のシンプルなデザインとなった。
オプション設定のブラックインテリアパックでは文字盤背景もブラックとなる。
ATのシフトは引き続きコラムシフト。
初代eKワゴンの後期モデルで追加となった5MT。ATとは異なりフロアシフトとなる。これはeKワゴン用に開発されたものではなく、同年代の8代目ミニカの5MTをそのまま流用したため。
スタイリッシュなインパネとは一線を画する(古臭い)デザインとなっている。ただし逆に味があって面白みはあるが。
フロントシートはベンチシートタイプ。後期型ではシート生地を変更し、モダンな織柄のニット調とすることで上質感をアップさせた。4WD仕様では引き続きシートヒーターを標準装備。
さらに2005年12月マイナーチェンジではGグレードでシート生地がスエード調に変更された。
なお、ブラックインテリアパックではこれがブラックシートとなる。
加えてドアトリムクロスもブラック化される。なお、初代からサイドドアにはドリンクホルダーが付いていた。
リアシート。
ブラックインテリアのリアシート。共にスライド機構は非装備。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
初代・eKワゴンの後期型はリフレッシュされスタイリッシュかつファニーよりになった外観と上質になった内装、5MTの追加などで従来のシンプルなイメージを引き継ぎつつもより女性に嬉しいマイナーチェンジとなった。
特にベーシック感が強かった外観が改善され、かつ内装も良くなっているので前期型よりも魅力がかなりアップした。加えて男性やMTを好む人に対してもMグレードのみとなるがマニュアルトランスミッションが追加されたことで選択肢の幅を広げている。
この後の2代目のフルモデルチェンジではよりファニー感が強くなるためこの初代の後期型はデザイン的に2代目・前期と初代・前期との中間に位置しており、人によっては一番無難なデザインといえるだろう。
なお、eKワゴンは2005年6月に日産へ「オッティ」としてOEM供給され兄弟モデルが誕生した。オッティではフロントグリルが日産専用のものへと変更され、外観がまた違った印象となっている。初代eKワゴンを検討している人はあわせてOEM版の「オッティ」もチェックしてみてほしい。
コメント