ekアクティブはクロスオーバーSUV型の軽自動車。初代ekワゴンの派生モデルである。
三菱・eKアクティブとは?
2004年5月に初代eKワゴンの派生・第4弾として登場した「eKアクティブ」。
それまでのeKシリーズはオーソドックスかつノーマルの「eKワゴン」。スポーツモデルの「eKスポーツ」、クラシック風の外観でシック&モダンな雰囲気を与えた「eKクラッシィ」があったが、第4弾では名前の通りSUVテイストのモデルとして誕生した。
初代eKアクティブ(H81W)の特徴と初代eKワゴンとの違い
eKアクティブはスポーツモデルのeKスポーツをベースに、全高を10mmアップの165mmとし、14インチ(ノーマルでは13インチ)の大径タイヤを装着させることでライトな悪路や街中の段差などでの走破性を高めた。
さらに全高が少し高くなったことで乗り降りのし易さと運転視点がアップ。eKワゴンよりも楽な運転を実現した。
これはスズキのアルトとKeiの関係ににており、パジェロミニのような本格的な4WDシステムの搭載は無いものの、少し高めの最低地上高とディパーチャーアングルで雪国などでの街乗りの4WDとしての需要と、それ以外では乗りやすさやクロスオーバーSUVモデルとしての需要を発掘するものであった。
エンジンはeKスポーツと同じく自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定。足回りは「eKスポーツ」の軽快かつ安定した走りに「eKクラッシィ」の上質な乗り心地を両立させるべく細部にわたって専用チューニングを実施。クロスオーバーSUVらしい乗り心地とした。
また、この時代の軽乗用車としては珍しく全グレードでブレーキアシスト&EBD付きABSを標準装備。特に雪国で発生する凍結路面などでのブレーキ安定性を高めている。
eKアクティブのエクステリア(外装)
フロントデザイン。初代eKワゴンの後期型と形状は同じもののインナーシルバー化されかつウィンカーやポジション球の位置が異なるタイプを採用。
この他アクティブ専用グリル、専用大型カラーバンパーが組み合わされ、SUV風の力強さと機能美を追求した顔つきになっている。
さらにバンパー下部にはSUVモデルでよく見られる「アンダーバンパーガード」も標準装備としごつい感じを表現した。ちょうど同年代の「デリカ」を小さくして軽乗用車サイズにしたデザインに見えなくもなく、eKワゴンの派生でありながら独特のキャラクターを併せ持つ。
ヘッドライトはディスチャージヘッドライトがオプション設定される。ヘッドライト内部は右上がポジション球。右下がウィンカー球。残りがヘッドライト本体となる。
ベースのeKワゴンでは右外側がウィンカー球。内側左下がポジション球だったため、内部のデザインがデフォルメされている。
サイドから。ベースより10mmアップの165mmの最低地上高で若干の悪路に対応した。このあたりはスズキのKeiとコンセプトが似ている。
ただしジムニーのように本格的な4WDの機能は搭載せず、あくまで生活四駆に車高が上がった程度の装備だ。また、Keiと同じく全高が少しアップしたこで乗り降りのし易さも向上。eKワゴンはもとよりセダンタイプの「ミニカ」と比べると格段に乗りやすいモデルとなっている。
ボディカラーはすべてツートンカラー仕様となり、eKワゴンとは完全差別化。加えて2014年12月マイナーチェンジでは特別仕様車の「スペシャルカラーエディション」を廃止。
同時に「スペシャルカラーエディション」のみに設定されていた「ブラックマイカ/ミディアムシルバーメタリック2トーン」と「レッドソリッド/ミディアムシルバーメタリック2トーン」の2色をノーマルグレードにも追加設定した。
この色は同社の2代目パジェロミニでも(ほぼ同じものが)用いられている特徴的なツートンカラーであり、SUVのイメージを高めるカラーリングとなっている。
リア。コンビランプはeKアクティブ用に新設計されたマルチリフレクタータイプを採用。派生元の初代・前期型eKワゴンよりもスタイリッシュになっている。
加えてバックドアもリアガラス部分が凸形状になった専用品。スリーダイヤエンブレムを大型化し、左下に「eK-ACTIVE」エンブレムを追加している。
さらにリアバンパーも専用部品でボディカラーとは色違いのとし、リアバンパーガードも装着しSUV風としている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3G83型3気筒自然吸気エンジンとインタークーラー月ターボエンジンの2種類。自然吸気エンジンは最高出力50ps(37kW)/6500rpm、最大トルク6.3kg・m(62N・m)/4000rpmを発生。
ターボエンジンはeKスポーツと同じもので最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.5kg・m(93N・m)/3500rpmを発生する。
トランスミッションは4ATのみで駆動方式はFFまたは4WDとなる。この他ブレーキアシスト&EBD付きABSを全グレードで標準装備する。
なお、昨今のハスラーやキャストアクティバに代表されるクロスオーバーSUVでは、見た目だけでなくSUV機能を強化するメカニズムとしてスタック時の脱出を容易にする
「ブレーキコントロール(グリップサポート制御)」や、凍結路面での下り坂でも安心して走行可能な「ダウンヒルアシストコントロール」
などが付くが、このeKアクティブではそれが一切なく、Keiと同じく見た目だけのSUVとなっている。この点は注意されたい。
eKアクティブのインテリア(内装)
インパネ。ベースとほぼ共通だがステアリング奥の車名部分はeKACTIVEとなっている。
スピードメーター。eKスポーツと同じタコメーターがアナログ。スピードメーターがデジタルのハイブリッドタイプ。
フロントシートはセパレートタイプ。
リア。シリーズ共通で足元は若干狭め。スライド機構は非装備。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒してもフルフラットにならない点はベースと同じだ。
eKアクティブの評価
eKアクティブはekスポーツ(ワゴン)がベースであるが少し上がった車高と、ちょっと大きめのタイヤにより全体的にSUV風のデザインが特徴の軽乗用車である。
デリカを小さくした「チビデリカ」ともいえるキャラクターで、実際のところノーマルのekワゴンよりも車高とタイヤにより悪路の走破性が若干向上している。
特に全高の高いパジェロ・ミニ、全高の低いミニカよりも乗り降りがしやすく、4人乗っても窮屈でないし後部座席を倒せばかなりの荷物を載せることが出来るなど利便性や乗降性はかなり高い点は評価できるポイントだ。
ただ、ジムニーやパジェロミニなどと比べるとそこまで走破性は高くない点に注意。この部分はスズキのKeiと性格が似ている。他人とは違う軽自動車を探している人、そこまで悪路の走破性は要らないけどSUV風の車(スズキKeiとその後継のハスラー、ライバルのダイハツ・タフトのような)がほしい人は検討してみると良いだろう。

残念なことに、eKアクティブは三菱のリコールが問題となった時期に発表され、あまり日を浴びること無く静かに生産が終了した不運モデルである。よって街なかでも見かけることは稀で、希少車であると言えるだろう。
皮肉にも同じコンセプトのKeiは長きに渡り生産され続け、その後継となるハスラーが大ヒット。ダイハツもテリオスキッドの後継としてキャストアクティバを投入。2016年現在では軽クロスオーバーSUVも注目を浴びるタイプとなっている。
2023年現在の中古市場では全国でも10台程度しか販売されておらず、超希少車となっている。
実質的な後継車、eKクロス
その後2019年3月には4代目eKワゴンのフルモデルチェンジ時に、4代目のカスタムモデルとして「eKクロス」が誕生。eKアクティブと同じ路線の後継モデルとして再登場した。

eKクロスではeKアクティブ時代になかったグリップコントロールを標準装備し、より悪路走破性を高めたクロスオーバーSUVとして誕生したものの、最低地上高がノーマルと同じ155mmなため特に雪国などで除雪が行き届いてない道路などでスタックしやすいなど少々残念な部分もある。
もちろん見た目は完全にSUVなので、そういった需要はあると思うが。
軽クロスオーバーSUVの思想はeKクロス スペースやデリカミニへ継承
軽自動車としては中途半端で大ヒットはならなかったeKアクティブ。しかしながら軽自動車にSUVテイストを組み合わせるという思想はeKクロスのほかに電動スライドドア付きのスーパーハイトワゴン、eKスペースにも継承されることとなり、2020年3月には「eKクロス スペース」が誕生。

その後のマイナーチェンジではミニバン&SUVの唯一無二な「デリカ」の名前を与えた「デリカミニ」に発展しこちらは大ヒットとなった。
eKアクティブでは大成功とはならなかったが、三菱らしいSUVテイストの軽スーパーハイトワゴンではかつての失敗が糧となり、愛嬌のあるデザイン性やブランド力と時代やニーズが後押ししたのかもしれない。

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