ジムニーはスズキのSUV型軽自動車。本稿では4代目のJB64W型を扱う。
出典:ガリバー
4代目 スズキ・ジムニーとは?
2018年7月にフルモデルチェンジし、4代目となったスズキ・ジムニー。
約20年ぶりとなった今回のフルモデルチェンジではひと目でジムニーとわかるデザインに伝統のラダーフレームを踏襲しつつよりパワーアップ。
新型エンジンに広くなった室内空間、自動ブレーキの採用など新世代にふさわしいフルモデルチェンジとなった。
エクステリアは2代目のイメージに近いスクエアボディを採用。ジムニーらしい硬派なクロカンスタイルとなった。
また、2代目丸目ヘッドライトを採用しつつもグリルは3代目の穴あきデザインとするなど最近のスズキに見られる歴代モデルの融合を取り入れている。
インテリアは機能性を追求。悪路での車両の姿勢や状況を把握しやすいようデザインを水平基調とし、これに骨格のようなデザインを用いることでSUVらしい力強さを表現した。
パッケージングはヒップポイントを30mm後方に下げつつ、前後乗員間距離を40mm拡大して居住性を向上させた。
エンジンは数年前からスズキ車に採用されてきたR06Aターボエンジンをジムニー用に専用チューニング。先代のK6Aよりも動力性能を向上させた。
ボディカラーは先代まで特別仕様車のみだったツートンカラーをグレード別に標準設定。ルーフ部分を塗り分けたツートンカラーとなり、全13パターンとした。
さらにそれまでになかった鮮やかな「キネティックイエロー」や「シフォンアイボリーメタリック」などよりポップなカラーリング設定も4代目の特徴だ。
4WD性能としては伝統のラダーフレームを強化したものに3リンクリジットアスクル式サスペンションを採用。加えてジムニー史上初となる電子制御のブレーキLSDトラクションコントロールを全車に標準装備とした。
これによりノーマル状態でも悪路からの脱出を容易としている。また、切替式の4WDは先代後期モデルのインパネ部スイッチ式からレバー式へ先祖返り。
さらにヒルホールドコントロール、ヒルディセントコントロールも標準装備とした。悪路走行時のためのステアリングへのキックバックを低減、高速走行時の振動を減少させるステアリングダンパーを新採用した。
自動ブレーキでは予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」を採用し、安全装備を充実。単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせたデュアルセンサーブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警告機能、ハイビームアシスト、先行車発進お知らせ機能を搭載。
さらに「標識認識機能」を採用。メーター内に道路上の最高速度や車両進入禁止の標識を判別し表示するようにした。
4代目ジムニー(JB64W)のグレード XC、XL、XGの違いなど
4代目ジムニーのグレードは3つ。廉価グレードの「XG」、ミドルグレードの「XL」。上級グレードの「XC」を設定。
いずれのグレードにも5MTと4ATの2種類が設定され、全グレードでパートタイム4WDのみの設定。
XGグレード
4代目ジムニーの廉価グレード。他のグレードよりも装備が簡略化され、シンプルな構成となる。
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エクステリアには
- 16インチスチールホイール(ブラック塗装)
- フロントスタビライザー
- 手動式ドアミラー
- 無塗装アウタードアハンドル
- ハロゲンヘッドランプ
が標準装備となるが、アルミホイールが非装備で、ドアミラーも樹脂タイプ&手動式となるなど、軽バンのような簡素な外観となる。
ボディカラーも選択肢が少なく、
- 黒系「ブルーイッシュブラックパール3」
- 白系「ホワイト」
- オリーブ系「ジャングルグリーン」
- 銀系「シルキーシルバーメタリック」
のモノトーン4色のみの設定。
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内装ではマニュアル式エアコンにシートはファブリックシート表皮を採用。リアシートはヘッドレスト無しの一体可倒式シートで左右分割ができないタイプを採用。
安全装備は「エマージェンシーストップシグナル」、「横滑り防止装置のESP」、「ブレーキLSDトラクションコントロール」、「ヒルホールドコントロール」が標準装備となる。
XLグレード
4代目ジムニーのミドルグレード。XGよりも装備が少し豪華になる。
エクステリアにはハロゲンのフォグランプを標準装備。ミラーはヒーテッド電動格納式ミラーに変更され、アウタードアハンドルはボディ色に塗装。
ボディカラーはXGに加えて
- 黄系「キネティックイエロー」
- ベージュ系「シフォンアイボリーメタリック」
- 青系「ブリスクブルーメタリック」
- グレー系「ミディアムグレー」
の4色が追加される。
内装では
- 運転席シートヒーター
- 助手席バニティミラー
- 5MTではシフトノブがメッキタイプ
- 4ATではサテンメッキ調加飾
となる。
リアシートも「左右分割式シート」を採用、リクライニング機能とヘッドレストが付加。
機能装備としてエアコンがフルオートエアコンとなり、ラゲッジボードは防汚生地を採用。
安全装備としてはシートベルト警告灯&リマインダー、キーレスプッシュスタートシステムも標準装備となり、快適装備や見た目がそこそこ豪華になる。
XCグレード
4代目ジムニーの最上級グレード。XLよりもさらに装備が豪華になる。
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エクステリアでは
- 16インチアルミホイール
- ヘッドライトはLEDタイプ(ヘッドライトウォッシャー付き)
- ドアミラーもLEDターンランプ付きヒーテッド電動格納ミラー
を採用。ボディカラーもXGやXLには未設定の「2トーンカラー」が選択可となる。
内装では
- 本革巻きステアリング
- インナードアハンドル
- エアコンルーバーリングがメッキタイプ
に変更。
さらに自動ブレーキでは予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」が標準装備。
クルーズコントロールなども標準装備となり、最上級らしい装備となる。
4代目ジムニー(JB64W)・2型、3型、4型の改良点と違いなど
2型改良
2021年9月に一部仕様変更(2型改良)を実施。
オートライトシステムとライト自動消灯システムがそれまでは自動ブレーキをセットにした「スズキセーフティーサポート」内のオプション扱いだったが、これから切り離され全グレードで標準装備化。
また、4AT車には停止中に自動作動するアイドリングストップシステムを搭載し燃費向上。
また、全グレードでスペアタイヤロアカバーも標準装備化された。
3型改良
2022年6月の一部仕様変更(3型改良)では停車時アイドリンストップシステムを5MTにも拡大採用。標準装備化された。
これ以外にも「XG」と「XC」にオプション設定だった「スズキ セーフティサポート」が標準装備化となった。
4型改良
法規対応に伴ってパーキングセンサーがリアバンパー内のコンビネーションランプの下に追加装備となった。
これ以外では車両本体価格や一部のメーカーオプション価格を改定。車両本体価格はグレードやトランスミッションの種類を問わず一律99,000円(10%の消費税込)値上げ。これは原材料の高騰や仕様変更の影響によるためである。
メーカーオプションに関しての値上げは上級「XC」グレードに設定の
- ピュアホワイトパール
- ブラック2トーンルーフ
はそれぞれ5,500円の値上げ。
おなじく「XC」グレードに設定の
- ブラックトップ2トーンルーフ
は11,000円(いずれも10%の消費税込)の値上げとなった。
4代目ジムニーのエクステリア(外装)
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フロントデザイン。4代目ジムニーは初代や2代目を彷彿とさせる、ジムニーのアイデンティティともいえる丸目ヘッドライトを採用。
グリルには3代目の前期ごろまで採用されていた穴あきグリルを採用し、歴代モデルの融合を果たしたデザインとなっている。
懐かしさの中に個性もあり、とても魅力的な顔つきとなっている。なお、ヘッドライトは廉価グレードのXGとミドルのXLがマルチリフレクターヘッドライト。
最上級のXCがLEDプロジェクターヘッドライトにヘッドライトウォッシャーが備わる。
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サイド。4代目ジムニーはカクカクしたデザインが特徴的だが、サイドビューではそれが際立つ。先代の3代目で丸みお帯びていたものからのかなりのイメージチェンジで、雰囲気は2代目に近い。
昨今の軽自動車はスペース優先のためボンネットが短いものが多いが4代目ジムニーはその真逆。軽自動車でありながら軽自動車っぽく見えないデザインも優秀である。
なお、このエッジの立ったボンネットのおかげで運転席からの見切りもよく、運転乗車位置と相まって運転しやすい。
さらにサイドのガラス面の角度はかなり立っている。これは雪が溜まりにくくなるように設計されており、雪国では嬉しい仕様である。
またホイールアーチは台形状に大きく取られている。これはタイヤ交換などを想定した設計で整備性を向上させている。足元は16インチ。
最廉価のXGとミドルグレードのXLがスチールホイール。
最上級のXCグレードのみアルミホイールとなる。タイヤサイズは3代目と同じく175/80/R16。
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リア。後部まわりもカクカクしており力強いSUVのイメージを表現している。テールランプは先代のリアゲート横から2代目のバンバー部へ原点回帰した。
これにより開口部が拡大し荷物の積み下ろしが容易になっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみ。
最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.8kg・m(96N・m)/3500rpm。
トランスミッションは5MTまたは4ATで駆動方式はパートタイム4WDのみとなる。
4WDの機能としてはブレーキLSDを全グレードに標準装備。
ハスラーではグリップコントロールとも呼ばれるブレーキを用いた電子的なLSDで、対角上のタイヤがスリップした際、電子制御で自動的にブレーキをかけて駆動力をかけるもの。
これにより機械式LSDを後付することなくノーマル状態でも悪路からの脱出を容易とした。雪国では春の雪解けシーズンで、急速な暖気で市街地にぬかるみが多発した場合、頼りになる存在だ。
さらに横滑り防止装置のESP、登り坂での発進をサポートするヒルディセントコントロール、下り坂でも安心して下れるヒルディセントコントロールを全車標準装備。こちらも雪では嬉しい装備である。
この他安全装備としてスズキ セーフティ サポートを最上級XCに標準搭載(XLとXGではメーカーオプション)とした。
これによりマニュアル車でも単眼カメラ&赤外線レーザーレーダーの「デュアルセンサーブレーキサポート」が搭載され、車線逸脱警報機能、誤発進抑制機能(※ATのみ)、ふらつき警告機能、ハイビームアシスト、先行車お知らせ機能が備わる。
さらに標識識別機能も搭載し、道路上の最高速度の数字や車両進入禁止を自動で判別。メーター内に表示させる機能が付く。
4代目ジムニーのインテリア(内装)
インパネ。ブラックを基調に水平方向に垂直なデザインとなっている。これは悪路などで水平間隔をつかみやすいよう設計されたもので、ここでも実用性を考慮したデザインとなっている。
また、助手席側のインパネには①の乗降グリップが備わり、乗り降りをサポート。②のドアグリップも大型化され握りやすくなっている。
③はセンタースイッチでパワーウィンドウやヒルホールドコントロール、横滑り防止装置のスイッチとなり手袋をした状態でも操作しやすくした。
⑥のエアコン操作パネルも手袋をした状態でも操作しやすいよう、丸型のオートエアコンとした(XGのみ3代目と似たような調節ダイヤル式にマニュアルエアコンとなる)。
ステアリングは廉価グレードのXGとミドルXLがウレタンステアリングホイール。最上級のXCでは本革巻ステアリングホイールとなる。
スピードメーター。昨今はデジタル式やパット見アナログだけど中身はデジタル化されるメーターが多い中、4代目ジムニーはアナログ式のタコメーターとスピードメーターを分けて2眼とし、中央部にマルチインフォメーションディスプレイを配置した。
無骨なSUVらしさの中に最新のテクノロジーを感じるデザインとなっており、こちらも内装の雰囲気アップに一役買っている。
5MTのシフトノブ。
4ATのシフトノブ。3代目後期型(5型)以降はゲート式ATだったが、4代目では再び非ゲート式のATに戻った
副変速機のシフトノブ。3代目後期(5型)からインパネ部のスイッチ式に変更されていたが、こちらも歴代の副変速機システムに戻った。
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フロントシートはセパレートタイプ。ブラック基調のファブリックシートで運転席と助手席の両方にシートヒーターが標準装備される。
なお、最廉価のXGとそれ以外(XL、XC)とでは表皮が異なり、XGでは通常のファブリック。XLとXCでは撥水加工のファブリックシートとなる。
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リアシート。足元は先代よりも40mm拡大している。XGではリアシートのヘッドレストが省略される。
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ラゲッジルーム。
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XGグレードのラゲッジスペース。左右一体式リアシートのため、シートアレンジは不可能。軽バンのような簡素タイプとなる。
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リアシートを倒した状態。4代目ジムニーのラゲッジルームはリアシートを倒すとフルフラットになるように変更された。
またXCグレードにはラゲッジルームとリアシート背面に滑り止めのような素材が用いられている。
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XGグレードでリアシートを倒した状態。この廉価グレードではラゲッジスペースとリアシートに段差が生じてフルフラットにならないため少し注意(フルフラット化には加工やDIYが必要)。
助手席を後ろ側に目一杯倒せば長物も積める。一人乗車であれば自転車も前タイヤを外せば積載可能。
車中泊も可能だ。
4代目ジムニーの評価
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4代目ジムニーはエクステリア、インテリア、機能面において20年ぶりというフルモデルチェンジに相応しいものとなった。
見た目はとにかくジムニーらしさが強調されているし、内装もより実用的にかつSUVらしく。4WDにおいてはブレーキLSDで標準状態でも悪路に強く、デュアルセンサーブレーキサポートの採用で安全面でも進化した。
ジムニーが好きな人なら迷わず選んでしまい、ジムニーに興味のなかった人もそれを魅せつける魅力を持ったフルモデルチェンジといえよう。
ちなみに発売から3年ほど経過しているが3代目ジムニー時代にあったランドベンチャーやワイルドウインド、クロスアドベンチャーなどの特別仕様車がまだ1回も登場していない。
これは4代目ジムニーの出来が良く、登場から3年経っても未だ新車購入で納車待ちとなるほどの人気ぶりが影響しているものと推測する。
先代のジムニーを例に取ればもうそろそろ出てきてもおかしくないのだが、それができないほどの生産待ち状態か。一般的に特別仕様車は販売促進や販路拡大を狙って投入されるものだが、その必要がない(あるいはその余裕がない)ということの現れである。
少なくとも4代目ジムニーの特別仕様車が発売されればそれ以上の人気モデルとなるはずだ。
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