eKスポーツは三菱のワゴン型軽自動車。ekワゴンのスポーツモデルである。本稿では初代H81Wのデビュー当初の2002年9月~2004年11月までを前期型とし、これを扱う。
概要
2001年10月にデビューした三菱・初代eKワゴン。当時の売れ筋となっていたスズキ・ワゴンRとダイハツ・ムーヴに対向する形での市場投入となったモデルである。
商品コンセプトは「ジャストバリュー・ワゴン」。ボディスタイルはワゴンRとアルトの中間程度の車高を持つ「セミトール・パッケージング」を採用し同社のトッポBJよりも背が低く、セダンタイプであるミニカよりもわずかに高く設定されていた。
設計時点では「ヒップポイントと頭上のスペース、室内側のパッケージングから割り出された数値」となっていたが、結果的にワゴンRやムーヴでは不可能な立体駐車場に入る高さの1550mm以下に抑えられ、ムーヴやワゴンRとは差別化がなされていた部分である。
それ以外にもeKワゴンは乗降と運転視界を両立させた調度良い高さで、ムーヴやワゴンRなどの他社には見られない最適なパッケージング、シンプルでベーシックなデザインが特徴のモデルである。
eKワゴンでは軽乗用車としては初となるセンターメーターを採用し、インパネには豊富な収納スペースを設けるなど新時代にふさわしいデザインを与えた。
それでいて新車価格は91万円からとするなど価格面でもかなり良心的なモデルで、eKワゴンのeKはお客様の目線に立ち一過性の流行(はやり)ものでなく、ながく愛される真に「いい軽」(excellent K-car)を創ろうという思いを込めて昨年1月に発足した「eK(いい軽)プロジェクト」から命名されている。
この他エンジンは先にデビューしていた8代目ミニカの3G83型・SOHC自然吸気エンジンを流用。
ただし、エンジンの改良により平成12年基準排出ガス規制値よりさらに50%低減した、「優-低排出ガス」に適合させている。
また、トランスミッション等も8代目ミニカから流用し基本メカニズムを新規設計とせず、ドアミラーやルームライトに至っては他社であるダイハツ・3代目ムーヴの部品をそのまま流用するなどして開発コストや部品コストを下げ、安価な価格設定を実現していた。
初代eKスポーツの特徴とノーマルeKワゴンとの違い
そのスポーツモデルとして2002年9月に追加となったが「eKスポーツ」である。
eKスポーツはeKワゴンをベースにスポーティーな外観とインタークーラー付きターボエンジンでカスタムしたモデルで、ベースモデルの登場からおよそ1年後に追加設定された。
8代目ミニカのフルモデルチェンジ以降、三菱の乗用モデルではタウンボックスを除いてスポーティーなターボモデルの設定が無かったが、eKスポーツは久しぶりのスポーツモデルの登場となった。
eKスポーツでは専用グリルに専用ヘッドライト(ディスチャージタイプ)、専用バンパーにアルミホイール、専用フロントフェンダー、専用サイドエアダム(サイドアンダースポイラー)、
リアスポイラー(LEDハイマウントストップランプ付き)、テールゲートガーニッシュを採用し、ノーマルとは180度異なる個性的でかつスポーティーな外観に。
内装でもブラックを基調としアナログとデジタルのハイブリッドメーターや革巻きステアリングホイール、スポーツシートの採用でノーマルのeKワゴンとはスポーティーに差別化がなされている。
エンジンはノーマルの3G83型をターボ化した3気筒ECI-MULTIインタークーラーターボエンジンを採用。トランスミッションもトッポBJ用の4ATを専用チューニングし、静粛性の向上と発進加速、低燃費化を両立させた。
サスペンションもeKスポーツ用に専用チューニング。ボディもスポーツサスペンションに合わせて取付部を補強。騒音対策として、制振・遮音材を配することで高い静粛性を実現。
ブレーキもスポーツ走行を想定しフロントに14インチベンチレーテッドディスクブレーキを採用。
ブレーキアシスト&EBD(電子制御制動力配分装置)付きABSをターボグレードで標準装備として剛性感と安心感あふれるブレーキフィーリングとするなど、
内外装に加えてメカニズムもスポーツ寄りの追加装備を与えることでホットなスポーツモデルとなっている。
エクステリア(外装)
フロントはベースモデルの原型をとどめているものの、かなりスポーティーに仕上がっている。
ヘッドライトから続く直線基調のグリルはインタークーラーを冷却するためのエアインテークで開口部が絞られ、6代目ミニカの前期ダンガンを思わせるようなデザインになっている。
バンパーもスポーツ専用で、アンダーには大迫力のフロントフェンダー付き。
なお、前期型と後期型とではフロントデザインが若干異なり、後期型ではバンパー中央右側にもうひとつエアインテークダクトが設けられる。
ヘッドライトはインナーブラック化され、外から見えるプロジェクターレンズが存在感を強くしている。3代目・ムーヴカスタム以降のようにハイローが独立した4灯タイプで、ロービームはディスチャージヘッドライトがオプション設定される。
ちなみこちらがノーマルのeKワゴン。
サイドから。専用のサイドエアダム(サイドスカート)でエアロ化されてスポーティーな印象。シンボルマークも入っている。サスペンションも専用のものが付いてスポーティーな乗り心地を実現。
足元はターボ仕様では14インチアルミホイール。自然吸気エンジンでは13インチアルミホイールとなる。
リア周り。コンビランプはeKスポーツ専用のマルチリフレクターコンビランプでクリアータイプになっている。
その他に専用スポイラー(ハイマウントストップランプ付き)と専用バンパーを装備しリアビューもかなりスポーティとなっている。
エンジン・機能
エンジンは3G83型3気筒DOHC自然吸気エンジンと同ECI-MULTIインタークーラーターボエンジンの2種類。
先代ダンガンで有名なツインスクロールターボの4気筒エンジンは排ガス規制に引っかかったため採用されていない。
自然吸気エンジンはノーマルeKワゴンと同じく最高出力は50ps(37kW)/6500rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpmを発生。
ターボエンジンは最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.5kg・m(93N・m)/3500rpmを発生する。
トランスミッションは自然吸気エンジンが3AT。ターボエンジンが4ATとなり、駆動方式はFFまたは4WD。ブレーキアシスト&EBD(電子制御制動力配分装置)付きABSをターボエンジングレードで標準装備。
eKスポーツ H81WとH82W型との違い
eKスポーツH81WとH82Wとの違いは初代eKスポーツか2代目eKスポーツかの違い。
eKスポーツのH81W型は2004年12月マイナーチェンジ~2006年8月までのモデルで、初代eKワゴンがベース。
H82W型は2006年9月~2013年2月までのモデルで、2代目eKワゴンがベース。ボディスタイルこそほぼ同じだが、ヘッドライトやバンパー、リアコンビランプ、内装が異なりそれぞれに互換性は無い。
インテリア(内装)
インパネ。センターメーターなどデザインこそeKワゴンと同じだがインパネカラーがブラック基調となりスポーティな印象とした。
シフトはコラムシフト。
ステアリングは本革巻ステアリングホイール。
スピードメーター。タコメーターがアナログでスピードメーターがデジタルのハイブリッドタイプとなる。
フロントシート。ベンチシートだがeKスポーツ用に心地よいホールド性を実現するスポーツシートを採用。ハイトアジャスター機能付き。
オプションでセミバケットタイプのレカロシートを設定。これを標準装備した「RS」グレードや特別仕様の「レカロエディション」なるものも存在し、セミバケットタイプであるがノーマルと比べると格段のホールド性と長距離乗車時に効果を発揮する。
リアシート。フロントシートと同じ生地でノーマルよりも上質なタイプ。ただしリアシートのスライド機構は非装備。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒すと結構広い。ただし高さはあまりないのでタントのような積載量は無い。
まとめ
初代・eKスポーツの前期型はeKワゴンをベースにスポーツに仕立てた1台で、それまでの女性向けなeKワゴンから一転。男性向けのモデルとして登場した。
同年代ライバル(ワゴンR、ムーブ)と比べると車高が少し低く、数十キロ車重が軽く、かつSOHCのターボによる低速トルクの厚みから街乗りであればこちらのほうがよりスポーティな走りを楽しめるモデルである。
室内空間を維持しつつ、立体駐車場に入る高さでありながら適度にスポーティーということで非常にバランスの良いパッケージングでもある。
旧規格のミニカ・ダンガンのような過激さは無いのだが、新規格の軽スポーツとして充分な性能を持っている1台だ。
中古市場では現行モデルから3世代前ということと年式が20年を経過しつつあるので、低走行でも比較的安価で購入可能。経年劣化や過走行による摩耗など考慮すべき点はあるが、手頃なATスポーツモデルとしての魅力がある。
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