eKワゴンは三菱のワゴン型軽自動車。本稿では2代目、デビュー当初の2006年9月~2008年7月までを前期型としこれを扱う。
出典:三菱認定中古車
2代目 三菱・eKワゴンとは?
2006年9月にフルモデルチェンジし、2代目となった三菱・eKワゴン。
2代目のフルモデルチェンジでは軽自動車史上の中でも異例で、キーコンセプトを踏襲し初代とほぼ同じボディスタイルとなった(ただし、ボディは流用ではなくルーフ以外は新設計)。
その中でも大きく変更されたのは外装ではヘッドライトとグリル、バンパー、リアコンビランプを刷新。特にリアコンビランプでは軽自動車初となるLEDストップランプを純正で全グレード標準搭載。
内装ではそれまでのコラムシフトからインパネシフトに変更し、新スピードメーターや新シートを採用。
出典:三菱認定中古車
また、乗用タイプの軽自動車としてはこれまた初となる電動パワースライドドアを一部グレードで採用(あわせてスライドドアイージークローザーも採用)し、初代のイメージはそのままに使い勝手を大きく向上させた。
さらに使い勝手も向上させ、新発想の「マルチポジションユーティリティ」のもと、同じ規格の取付部をインパネや助手席シートバック背面などに全車標準装備。
取付部に様々なユーティリティアイテムを自由に取り付け・移動・交換できるようにした。
これにより利便性や機能性を図るとともに、ユーザー自身の室内カスタムにも柔軟に対応させた。
2代目ではオーディオにもこだわり、6ポジションの8スピーカーシステムの「ハイグレードサウンドシステム」や、 HDD搭載のナビ付きオーディオ、「三菱マルチエンターテイメントシステム(MMES)」を新たにメーカーオプションとして設定。
エンジンは初代からのキャリーオーバーとなるが、触媒の改良などにより初代よりも排出ガスを低減。また、4AT(※FFのみ)に直結機構付きのトルクコンバーターを採用することで燃費向上も図った。
安全面では頚部衝撃低減フロントシートの採用、ボンネットの形状変更で歩行者保護に対応、衝撃吸収構造ステアリングコラム、衝突時のブレーキペダル後退抑制構造などを採用した。
2代目・前期型eKワゴン(H82W)のグレード M、MX、MS、G、GS、マーブルエディションの違いなど
2代目前期型eKワゴンのグレード展開はエントリーグレード「M」、エントリー・スライドドア搭載「MS」上級「G」、上級スライドドア搭載「GS」グレードの全4種類。
これに子育て主婦向けの装備を充実させた特別仕様車「マーブルエディション」や女性向けの装備を充実させた「ブルームエディション」が設定されていた。
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M
2代目後期eKワゴンの廉価グレード。他のグレードよりも装備が若干簡略化され価格を抑えたグレード。
エクステリアではホイールキャップ、プライバシーガラスを標準装備。
快適装備はマニュアル式エアコン、パワステ、パワーウィンドウ、1DINタイプのAM/FMラジオ付きCDプレイヤー、電波式キーレスエントリーなどひととおり標準装備する。
トランスミッションは3ATと5MT。
安全装備は運転席&助手席エアバッグは標準装備だが、ABSがオプション設定となる。
MS
Mグレードをベースに助手席後方電動スライドドアを標準装備したグレード。
電動スライドドアにより使い勝手が大幅向上する。
G
2代目eKワゴンの最上級グレード。
外観はM系グレードと同じだが、MXと同じく電子制御式4ATを採用し、安全装備にはABSも標準装備する。
また、オプション設定でブラック内装(ブラックインテリア+本革巻きステアリング)が選択可能だった。アルミホイールもオプションで選択可。
GS
Gグレードに助手席後方電動スライドドアを標準装備したグレード。
電動スライドドアにより使い勝手が大幅向上する。
特別仕様車 マーブルエディション
子育てママ向けに様々な装備を施した特装車。電動パワースライドドア搭載の「MS」と「GS」グレードがベース。
マーブルエディションでは授乳時に気になる視線から守る「カーテン」や、「ベビーカーホールドアタッチメント」、「ISO FIX対応チャイルドシート固定用アンカー」、「キーリングイルミネーション」や、「ラゲッジルームランプ」などが標準装備。
「赤ちゃん見るミラー」や「キッズピロー」が「マーブル エディション」、「キッズ用テーブル」を専用オプションとして設定。
フロントシートはあえてセパレートシートを採用し、後席の子供とのコミュニケーションをとりやすくした特別仕様車。
特別仕様車 ブルームエディション
2007年12月設定の特別仕様車。「サクラピンクメタリック」を専用色として新たに採用。
撥水機能付UV&ヒートプロテクトガラスや、親水機能付リモコンドアミラー、クリアターンシグナルランプ、ブレーキアシスト付きABSを標準装備した特別仕様車。
ブルームエディションではスライドドア搭載のMSグレードおよびヒンジドア(非スライドドア)のMグレードをベースに可愛らしいピンクのボディ色と機能性の高い装備(UVガラス)などでより女性向けに特化させた特別仕様車となっていた。
2代目eKワゴン(H82W)と初代eKワゴン(H81W)との違い
2代目eKワゴン(H82W)と初代eKワゴン(H81W)は内外装で驚くほど似ているが、両者は型式がきちんと異なる別物。
ただしエンジンや足回り、トランスミッションなどは初代と同じものが引き継がれている。
2代目前期・eKワゴンのエクステリア(外装)
出典:三菱認定中古車
フロントデザイン。ヘッドライトは先代と似ているが内側に切り込みが入り普通だったイメージがちょっと上質な感じに。
グリルも中央部にラインが入っていて普通だったデザインからちょっと抜けた感じだ。なおこれは前期型で後期型になるとさらに上質となる。
なお「Mリミッド」という特別モデルではH82W・後期型eKスポーツと同じようなメッキグリルが付いている。
サイドにかけて先代とほぼ同じ。横から見ると見分けがつきづらい。
2代目eKワゴンでは一部グレード(MSとGSグレード)で電動パワースライドドアを採用した。立体駐車場に入るパワースライドドア付きの軽自動車としては非常に貴重な存在だ。
足元は初代と同じく13インチフルホイールキャップ。ホイールキャップのデザインは2代目で刷新されよりシンプルな新デザインとなっている。タイヤサイズは155/65R13。
出典:三菱認定中古車
リア。コンビランプは全グレードでメッキを使ったクリアータイプを採用。ストップランプはLEDとなる。先代では旧式の曇ったコンビランプだったからこれは新鮮だ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3G83型の3気筒SOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は50ps(37kW)/6500rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpmを発生。
トランスミッションは3AT、4ATに加え最廉価グレードに5MTが用意される。、駆動方式はFFまたは4WD。
スポーツモデルの「ekスポーツ」ではターボ仕様となるがこのベーシックなeKワゴンではその設定はない。燃費もオートマが昨今のCVTではないのでMTの方が上となっている。
ただしMTモデルでもタコメーターはつかない。駆動方式はFFまたは4WD。
安全装備として運転席&助手席エアバッグを全グレードに標準装備するが、ABSは上級のGグレード、GSグレードのみ標準装備。MグレードやMSでは引き続きオプション設定。
2代目eKワゴンの持病 4ATの不具合・トラブル・故障
H82型eKワゴンに搭載されたGグレードやGSグレードの4ATは不具合の事例が多く報告されている。
これはeKワゴンに限った話でなく、同年代の2代目パジェロミニ、タウンボックス、トッポBJ、eKスポーツの4ATでも同様の不具合が見られる。
内容はバルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。これが発病すると冷間時に1速から2速へシフトアップするときに、ムチウチのような大きな変速ショックが発生しする。
10分程度走ると不具合は消えるのだが、これを放置すると最悪ミッションが壊れて自走不可となる。
バルブボディまわりを交換や修理しすると治るケースがある(直らない場合はATのコンピュータ交換か、ミッション載せ替えが必要)。
可能であればミッションそのものが故障し、高額修理となる前に修理することをオススメする。
中古で購入する場合は、4AT搭載のeKワゴンでこれら変速ショックが無いか確認すること(※5MTはこのような故障の事例は無いのでできればマニュアル車をオススメする)。格安で購入しても修理に多額の費用がかかるとかなり痛い。
このバブルボブルに関するトラブルは三菱側からもリコールが出されており、対策品に交換済みの場合は少し安心だが、くれぐれもATトラブルにはご注意頂きたい。
2代目前期・eKワゴンのインテリア(内装)
出典:三菱認定中古車
インパネまわり。先代と同じくセンターメーターを継承。2代目eKワゴンのATモデルではそれまでのコラムシフトにかわり、インパネシフトが新たに採用された。
5MTモデル。こちらは従来通りでシフトブーツが軽トラのようなデザイン。ここは非常に残念なポイント。ミニカで使ってたミッションの流用品をeKワゴンにも適用している。
スピードメーター。シンプルな単眼式メーターを採用。eKスポーツではタコメター付きのデジタルメーターとなる。
出典:三菱認定中古車
エアコンはマニュアル式エアコンを採用。ATはインパネシフトを採用。
出典:三菱認定中古車
ステアリングはウレタンステアリング。
出典:三菱認定中古車
フロントシートは独立タイプだが中央部がつながっていてベンチシートに近い。5MTモデルのみセパレートタイプとなる。
出典:三菱認定中古車
リアの足元はちょっと狭め。リアシートのスライド機構は非搭載。
出典:三菱認定中古車
ラゲッジルームもそこそこの広さ。
出典:三菱認定中古車
座席を倒せば広くなるが、先代と同じくタントなどと比べると高さが無い点に注意。完全にはフラットにならない。
まとめ
2代目前期eKワゴンの総評
2代目eKワゴンは初代のイメージそのままに、ボディスタイルや内装もほとんど変わらない異例のフルモデルチェンジとなった。
よく言えば変わらない安心感。悪く言えば進化していないようにも見えるが、ベーシックで安くとっつきやすいモデルであることを考えると、あるいみこれも妥当な戦略だったと思う。
この後の3代目eKワゴンでは内外装やボディスタイルもがらりと変わっているので、この調度良いスタイリングが良いのなら安い2代目でも良いと思う。初代はさらに安いのだがメンテナンスを考えると高年式の方が出費が抑えられるので予算が許す限りは2代目を買ったほうが無難だ。
街乗りメインにパッケージングされたeKワゴンは普段使いの軽自動車として使い勝手が良く、通勤や買物、送り迎えなどで活躍しそう。安くて使い勝手の良い軽自動車を探している人にピッタリな1台である。
2代目eKワゴン(H82W)は中古市場で安価な価格が魅力
中古市場では現行から2世代前でかつ年数経過もあってかなり安価に買えるモデルである。2代目はこのボディスタイルながらスライドドアを搭載するMSやGSグレードも存在するため、子供や人の送迎にも嬉しい安価な中古車として魅力がある。
またエンジンは設計が古く燃費性能は良くないが、きちんとオイル交換などメンテナンスしてあれば20万キロぐらいまで持つケースもあり、安く買えて長く乗れる点もコスパが高い。
ただし4AT搭載のGやGSグレードなどでは持病的な故障事例があるので、くれぐれも試乗するなどして症状が出ていないか、対策品に交換済みかなどを確認されることを強くオススメする。
兄弟・OEMモデル 日産2代目オッティ
なお、初代に引き続きeKワゴンは日産へ「オッティ」としてOEM供給された。
専用デザインにより日産風にフロントデザインがアレンジされたり、リアがクリアーではないノーマルタイプのコンビランプを採用するため印象が若干異なっている。
2代目eKワゴンが気になった人はOEMモデルの2代目オッティも確認してみてほしい。
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