トッポBJは三菱のセミトールワゴン型軽自動車。本稿では前期と中期型のH42A/H47A型に設定されていたスポーツモデルの「R」グレードを扱う。
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三菱 トッポBJ Rとは?
1998年10月に登場したトッポBJ。
そのスポーツモデルである「R」グレードは先代まではアミスタターボと呼ばれていたもので、ホットな4気筒ターボのミニカ・ダンガンのフェンダーから後ろをごっそりミニカトッポとしたものであった。
車重はミニカ・ダンガンより重くたく、空気抵抗でも不利なためハッチバックのミニカダンガンと比べるとモッサリ感が強いアミスタターボであったが、ミニカが8代目へとフルモデルチェンジした際に、ホットモデルのミニカ・ダンガンは消滅。
一方で背の高いミニカトッポの後継として登場したトッポBJにはスポーツモデルとして継続設定されたため、これは実質的なミニカ・ダンガンの後継モデルとなっている。
時代はワゴンRのようなスペース重視の軽自動車へ人気がシフトする中、三菱も主力モデルをミニカトッポへとシフトさせていった。
トッポBJ Rグレードの特徴と前期・後期型との違い
トッポBJの最上級Rグレードは三菱の名機、4A30型直列4気筒DOHC20バルブインタークーラー付きターボエンジンを搭載するホットなモデル。
決して速くはないであろうトールワゴンボディに豪華なツインカムで5バルブ、インタークーラー付きのターボエンジンを搭載するというギャップ感はマニアにはたまらない1台。さらに5MTも設定された隠れ名車である。
エクステリアは
- 専用フロントバンパー
- フロントグリル
- エアダクト付きボンネット
- フロントアンダースポイラー
- サイドアンダースポイラー
- リアアンダースポイラー
- 大型リアスポイラー
でフルエアロ化。13インチアルミホイールを標準装備し、ノーマルのトッポとは完全差別化。
内装でもブラック内装にセンターとサイドでシート表皮を分けたトッポBJ R専用シート&ドアトリムクロスなどでこちらもスポーティな雰囲気とした。
そしてエンジンには伝説の4A30型DOHC20バルブインタークーラー付きターボエンジンを搭載し、5MTまたは4ATの組み合わせでミニカ・ダンガンの後継モデルとなるべく高い走行性能が与えられたモデルである。
なお、後期型ではヘッドライトやバンパー、リア周りが大きく変更され、かなり大人しいデザインとなる。人によってはガンダムのような前期型が好みという人と、大人しいデザインに高性能エンジンを積み込んだギャップが面白い後期型が好みというパターンが存在する。
エクステリア
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フロントデザイン。スポーツモデル専用のグリルとフォグランプ付きバンパー、フロントリップスポイラーにボンネットにはエアダクトが設けられノーマルとはかなり差別化されている。かつてのダンガンのような勇ましい外観が印象的だ。
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サイドから。アルミホイールにサイドアンダースポイラーを標準装備。タイヤサイズは155/70R13。
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リア。コンビランプは共通。リアバンパーも共通だがアンダースポイラーを付けてワイド感を強調している。
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そして上部には専用の大型リアスポイラーを標準装備。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは4A30型直列4気筒DOHC20バルブインタークーラー付きターボエンジン。最高出力は64ps(47kW)/7000rpm、最大トルクは10.2kg・m(100N・m)/3500rpm。
トランスミッションは4ATまたは5MTで駆動方式はFFか4WD。SOHCの60馬力仕様は「M-T」グレードに存在したが、外見は同じなので注意するように。
この4気筒DOCHターボはミニカ・ダンガンから続くツインスクロールターボで、4気筒ターボ好きにはたまらないエンジン。
ちなみにコペンのJB型が高回転型だったのに対し、トッポBJやパジェロミニに搭載された三菱の4A30型ツインカムエンジンは中速域重視のエンジン。そのため高回転までストレス無く回るが伸びはイマイチ。車重もあるのでもっさり感があるが、その分中低速域が分厚く気持ち良い中間加速が味わえる。
ただしこのエンジン。排気ガス規制をクリアできなかったため2002年9月マイナーチェンジで4A30型は消滅。ターボモデル自体が無くなり、このRグレードもここで終了となった。
※2代目パジェロミニはSOHCをターボ化して継続設定
ちなみに自然吸気エンジンのZグレードではトッポBJ Rと同じ外観にSOHCの自然吸気エンジンを搭載するモデル。今で言うところの○○カスタムの自然吸気エンジン仕様といったところ。
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トッポBJ・Rは車重が7代目ミニカダンガンよりも150kg以上増加し、アミスタターボよりも100kg近く重たくなっているため、かつての刺激的な加速は無くなっている。
1999年11月マイナーチェンジ(中期型)ではそれまでのSOHCをターボ化し60馬力とした「M-T」グレードを追加。Rよりもお求めやすい価格設定を行なった。
トランスミッションは4ATまたは5MTで、駆動方式はFFまたは4WD。この手のワゴンタイプではターボとMTの組み合わせが消滅する中、後期型までターボ&MTが継続設定された。
トッポBJ H42AとH47A型との違い
トッポBJ RのH42A型とH47A型との違いは駆動方式。H42A型は前輪を駆動するFFモデルのトッポBJ R。H47A型はH42A型をベースに全輪駆動とした4WD仕様のトッポBJ Rである。
4WDにはビスカスカップリングを用いたオンデマンド式。普段はFFで走行し、滑りやすい路面になると自動的に4WDに切り替わる。パジェロミニのようなパートタイム4WDにありがちなタイトコーナーブレーキング現象が起きづらいので街乗りではとても扱いやすい。
ただし、本格的な悪路走行の場合、路面状況によって4WDが自動的に切り替わる分、直進に対する推進力が劣る場面もある。このあたりはトレードオフといったところ。
さらに過走行のビスカスカップリングを用いた4WD車では摩耗により部品が劣化しカーブで異音が発生する場合もある。中古で購入する場合はビスカスカップリングから異音がしないか確認することをオススメする。
トッポBJの4ATは故障しやすい&持病持ちで注意が必要
トッポBJに搭載された4ATは高確率で故障することで有名だ。トッポBJ以外にもパジェロミニやeKスポーツ、タウンボックスなど同年代の4ATは高確率で故障しやすく、ATモデルの中古を買う場合は注意が必要だ。
AT・バルブボディ(ストッパープラグ)の故障
いちばん有名なのは4AT。バルブボディという部品に不具合が生じて変速が上手く行われにくくなる。
症状としては1速から2速にかけの変速が上手く行われず、ムチウチのような大きなショックが発生するようになる。またリバースに入れても後退できなくなり、最悪ミッションブローとなる。
ATF交換で多少は改善する場合もあるが上記バルブボディ内のストッパープラグが破損している場合は根本的解決とはならず、放置するといずれATミッションブローに発展する。
特に高速走行や登坂走行などを繰り返し、ATFが高油圧走行となるような使い方をすると壊れやすい。故障した場合はバルブボディの交換で治るケースもあるがバルブボディで完治しない場合はATミッション交換修理となり、20万~30万円ほどかかるケースも。
そのためトッポBJの4AT搭載モデルを中古で買う場合はかならず試乗してATに異常がないか確認することをオススメする。
サーモスタットの寿命
次に有名なのはサーモスタットの故障。サーモスタットは冷却水付近にあるパーツで、温度によって弁が開いたり閉じたりするのだが、これが壊れた開いたままの状態になる。
そうなると走行しても水温計が真ん中まであがらず、あるいは全然上がらずヒーターすら効かなくなってしまい、さらにアイドリング回転数も上昇するため極端に燃費が落ちる。
この年代の三菱製軽自動車のサーモスタットは経年劣化や過走行で壊れやすく、特に10年以上または10万キロ以上の個体であれば不具合が起きやすい。
こちらについては素人のDIYでも作業可能なので特に大きな心配は不要だが、発生した場合はできるだけはやめの対処をおすすめする。
なお、古いトッポBJのサーモスタット交換の際に紙パッキンを使用する時は「液体ガスケット」も併用することをオススメする。
新しい紙ガスケットをそのまま使うと、どんなに綺麗にヤスリで削りとっても古いガスケットが残り、密着性が低くなり、高確率で水漏れの原因になる(管理人も自分の車で経験した)。
なので、紙ガスケットの周囲に薄く液体ガスケットを塗って気密性を高くすると水漏れが回避可能となる。
点火プラグとイグニッションコイルの摩耗
あとは持病とまではいかないが過走行のトッポBJ(8万キロ以上)は点火プラグとイグニッションコイルが交換時期にきている場合がある。
特に4A30型エンジンのイグニッションコイルは2気筒で1本を使用するタイプ。1本1気筒のタイプより2倍負荷がかかり、かつ4気筒で高回転を多様しがちな4A30型エンジンではイグニッションコイルにかかる負荷もかなりのもので、一般的な軽自動車のイグニッションコイルの寿命目安である8万キロよりも短めと考えたほうが良い。
過走行のパジェロミニで点火プラグ、イグニッションコイル、プラグコードをセットで新品交換すれば燃費改善や加速向上などが期待できる。
トッポBJ Rの燃費改善について
トッポBJ Rに搭載されたエンジンは4気筒の高回転型。そのため点火プラグやイグニッションコイルの劣化がはやく、車重やカタログ燃費以上に燃費を悪化させる要因となりうる。
特に軽自動車の点火プラグはイリジウムでも5万キロが限界だが、高回転なトッポBJのエンジンでは4万キロあたりが限界とみる。
そしてイグニッションコイルもセミダイレクトイグニッション式のため2気筒で1つを併用(残り一個はプラグコードで供給)するタイプ。1気筒1個タイプよりも劣化がはやく、点火プラグが劣化してくるとイグニッションコイルへのダメージも大きくなる。
そのため過走行なトッポBJ R(8万キロ以上)の場合は点火プラグやイグニッションコイル+プラグコードを新品交換することにより燃費アップやトルクの回復などが期待できる。
なお、点火プラグの限界を越えて使用し続けた場合、プラグ先端の金属がシリンダーに溶け落ちバルブを損傷させエンジンブローを引き起こす場合もある。
その際はエンジン載せ替えやオーバーホールなど高額な修理費用がかかるため、特に現状渡しの中古車を購入した場合はまず点火プラグやイグニッションコイルの確認をオススメする。
インテリア(内装)
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インパネ。同年代のミニカと同じインパネで専用設計でない分少しチープ感がある。
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ステアリングは残念ながら非本革タイプ。スピードメーターはタコメーター付きの3眼式だが、デザインが少し古いか。タコメーターのレッドゾーンは8000rpmからで4気筒ツインカムエンジンゆえの仕様となっている。
ターボ仕様のみタコメーター付きの3眼式スピードメーターとなるが、デザインはミニカに準ずるものでこのあたりは少し残念。エンジンにコストがかかっていたことを考えると致し方ないか。
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MTのシフトノブ。なお、後期のATモデルではコラムシフトとなる。
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フロントシートはセパレートタイプ。ノーマルとはスポーツグレード専用のシート表皮となっている。
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リアシート。
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ラゲッジルーム。リアハッチはムーブのように左右開閉式。リアガラスは上方向にオープンできる。
まとめ
前期型&中期型のトッポBJ Rグレードはそれまでのミニカ・ダンガンの4気筒エンジンにノーマルとはかなり差別化された勇ましい外観が特徴の軽自動車である。
全高こそかなり高くなってしまったがこれを除けばダンガンの後継モデルに相応しい外観といえよう。さらにはターボに5MTの組み合わせもあり、走り重視には嬉しい仕様であった。
ただ、逆に重たくなりすぎた車重や空気抵抗の大きいボディなど真の走りという部分ではミニカ・ダンガンに及ばない部分もあり、そこは室内空間や使い勝手とのトレードオフといったところだろうか。
スズキがアルトワークスを販売が伸びないことから一時生産終了し、スポーティーモデルをワゴンRにシフトさせたように、三菱でもミニカから背の高いトッポBJへとメイン路線をシフトさせていった。その中で残されたスポーティーなモデルがこのトッポBJ Rというモデルなのである。
中古市場では年式経過の部分も大きいがプレミアム価格はついておらず、相応の価格で購入可能だ。スペース重視でかつ走りも楽しみたいのなら面白い1台かもしれない。ただ、年式が20年ちかく経過しているため状態をよく確認するように。
上述のとおり4AT仕様は持病持ちで故障のリスクが高く、燃費もかなり悪いため可能な限り5MTモデルを強くオススメする。
車重は重たいものの、同じエンジンを楽しみたいならパジェロミニ(初代や2代目前期)もオススメ。加速性能はトッポBJ Rに劣るがエンジンの重厚さ、高回転域までスルスルまわるフィーリングなどはパジェロミニでも充分あじわえる。
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