アルトはスズキのハッチバック型軽自動車。「アルトワークス」はそのスポーツモデルである。本稿ではアルトワークスとしては4代目のHA22S型の後期型RS/Zについて扱う。
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4代目・アルトワークスとは?
1979年に初登場したアルト。今現在も主力車種の一つとなっているベーシックなセダンタイプの軽自動車である。
そのアルトにターボを追加し、スポーツ仕様にしたのがアルトワークス。
アルトワークスは1987年に登場し、軽自動車の64馬力自主規制の元になったほど当時としては非常にパワフルだった。それから数えて4代目にあたるHA22S型は、1998年の新規格後に登場したモデルだ。
4代目アルトワークスは先代同様に廉価グレードのie、上級モデルのRS/Zの2本立て。
先代、先々代から続くトレードマークの丸目ヘッドライトを踏襲し、ベースからかなりスポーティーに仕上げられている。このうち本稿で扱うのは上級モデル(トップグレード)のRS/Zである。
エクステリアでは
- 専用丸目ヘッドライト
- 専用バンパー、
- サイドアンダースポイラー
- リアスポイラー、
- 専用リアコンビランプ
- 専用デカール
- 14インチアルミホイール
- ワークス用にチューニングを施した専用サスペンション
- エアダクト付きボンネット
- 4輪ディスクブレーキ
- FFモデルはフロントにLSD
を。
内装では「専用シート」に「タコメーター付きのスピードメーター」を備え内外装でスポーティに仕立てたアルトベースのスポーツモデルである。
後期型・4代目アルトワークスの特徴と前期との違い
4代目アルトワークスはそれから1年後の1999年10月にマイナーチェンジを行い後期型となった。
後期型では外装でヘッドライトのインナーブラックをメッキ化。
同時に外装エンブレムデカール(RS-Z)をレッドからブルーに変更を行った。内装でもシート色をレッドからブルーへ変更。
メカニズムではエンジンの出力調整(可変バルブタイミング機構の廃止)が行われ、前期型とは違う内外装とエンジン出力の変更などが行われた。
以下に詳細を解説する。
エクステリア
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フロントデザイン。後期型ではヘッドライトのインナーブラック部分をメッキ化。見た目にもちょっと新鮮な顔つきとなった。
前期型ではインナーブラックにより歴代の丸目を表現していただけにそういった意味にでは大胆な変更ともいえる。
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サイドから。フェンダー部の「WORKS」エンブレムの文字色が青色へ変更されている。
リアはディスクブレーキ。FF車の場合、フロントに純正でLSDが装着される。
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リア。フェンダーエンブレムと同様に「WORKS」デカールも青色へ。全体的に前期で赤だった部分は青色へ変更されている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはK6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみ。
最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクが10.8kg・m(106N・m)/3500rpm。
前期型ではVVT(可変バルブタイミング)が付いていたが後期型ではコストカットやチューニングの観点から廃止。
最高出力(64PS)は変わらないもののトルクが11.0kgから10.8kgへ戻っている。
トランスミッションは4ATまたは5MTで駆動方式はFFまたは4WDの2種類。前期型同様に4WDモデルは5MTのみの組み合わせとなる。ABSは標準装備。
4代目アルトワークス、HA12SとHA22Sとの違い
HA12SとHA22Sとの違いはエンジン形式と内外装やグレードにある。
4代目までのアルトワークスには外観がほぼ同じでも価格が安い「ie」というグレードと、その上に位置するホットな「RS/Z」というグレードの2種類が存在した。
HA12S型アルトワークス「ie」のエンジンはタイミングチェーン式のF6A型SOHCインタークーラー付きターボでシングルカムの60馬力仕様となる。
一方HA22S型アルトワークス「RS/Z」ではタイミングチェーン式のK6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンで64馬力仕様となる。
この64馬力エンジンは前期と後期でも若干異なり、前期では可変バルブタイミング機構付きで最大トルクが11.0kgとなり、後期ではこれが廃止され10.8kgとなっていた。
また、外装においてはHA22SのRS/Zのみリアのブレーキがディスク化され、同じくRS/Zの5MT・FF仕様ではヘリカル式LSDが標準装備となっていた。
さらにieはデビュー当初ATが3AT(オートマ)仕様のみ対し、RS/Zは5MTのFF、4WD、4ATはFFのみという硬派なスポーツモデルとしてラインナップされていた。
その後後期型ではHA12Sのieが4ATに置換されるもieの5MTモデルを廃止。後期でieは4ATのみの仕様となった。
さらにインテリアにおいてもエンジン特製の違いからタコメーターのレッドゾーンが異なり、HA12Sのieではレッドゾーンが7000回転から。
一方のHA22SのRS/Zではレッドゾーンが8000回転までとなるなど、タコメーターのレッドゾーンに違いがある。
インテリア
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インパネ。前期型にあったエコボタンは後期型では廃止されている。
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ステアリング&スピードメーター。後期型ではエアバッグが標準装備となった。スピードメーターは前期型と同じで「WORKS」の文字がない流用品。
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MTのシフトノブ
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フロントシートはセミバケットシートタイプ。前期型の赤から青へ変更されている。
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リアシートも赤から青へ。
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ラゲッジルーム。
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リアシートを倒した状態。
まとめ
4代目アルトワークスの後期型はイメージを変えたフロントに青色のシート、VVTが廃止されたエンジンがポイントである。
前期型ではVVTだったためにチューニングが難しく改造を楽しむユーザーから敬遠されがちだったが後期型ではこれを廃止したことによりVVTの懸念は無くなった。
ただ、先代にあった競技特化モデル「ワークスR」の設定がなかったために競技使用を考えると全体的に人気が無かったモデルである。
そして時代はワゴンRやタントなどスペース重視の軽自動車に人気がシフトし、アルトワークス13年の歴史は一度幕を閉じることとなる(その後2015年12月にはおよそ15年ぶりに5代目としてアルトワークスが復活する)。
中古市場では15年ものの間後継となるモデルが存在しなかったためにこの後期型アルトワークスは状態がよいと高値で取引される傾向にあった。
ただ、新型アルトワークスが登場したことにより4代目後期型のアドバンテージは少なくなると予想する。
しばらくは中古車が流れるまで時間がかかると思うが、数年立てば以前のような高値もなくなりそうである。
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