NV100クリッパーリオは日産のワンボックス型軽自動車。スズキ・エブリイワゴンのOEMモデルである。本稿では3代目のDR17W型について扱う。
出典:日産UCARS
3代目 日産・NV100クリッパーリオとは?
2015年2月にフルモデルチェンジし、3代目となった日産のワンボックス軽自動車「NV100クリッパーリオ」。
初代は「クリッパーリオ」として三菱のタウンボックスOEMモデルだったが、タウンボックスの生産終了を期にスズキのエブリイワゴンOEMに変更。
このときサブネームとして「NV100」が付く形となり、3代目のフルモデルチェンジでもそれを継続。エブリイワゴンとしては2回目のOEM供給となった。
3代目クリッパーリオは同時期にフルモデルチェンジしたスズキ・3代目エブリイワゴンがベース。
日産仕様としてはエンブレム一体型フロントメッキグリルやリアのエンブレムと日産マークのみでこれ以外はベースモデルと同じだ。
初代のクリッパーリオ時代ではグリルのデザインを日産風にデフォルメするなど多少の違いがあったのだが、2代目以降ではこれがなくなり3代目でも同じ仕様となっている。
パッケージングは当時の軽自動車としてはトップクラスとなる2240mmの室内長(旧モデルから195mm延長)にハイルーフ車では1420mmの室内高(旧モデルから35mm延長)、1355mmの室内幅(旧モデルから50mm延長)で先代よりも前方向に室内空間を拡大。
これにより前後乗車間隔は1080mmとなった。
エンジンはそれまでのK6A型エンジンに変わり新世代のR06A型エンジンを採用。全グレードでターボエンジンを採用し、低速域からのトルクと高速域での伸びやかな走りで軽快な走りと低燃費を両立。
快適装備としてはワンアクションパワースライドドア、電動オートステップ、車速連動式オートドアロックシステムを採用し利便性と安全性を向上。
エクステリアはスズキ版同様にそれまでのイメージを継承しつつよりスタイリッシュになったヘッドライトとこれに乗用モデルでは大型のメッキグリルを組み合わせスタイリッシュ感と精悍さを両立させたデザインとした。
インテリアは機能性を重視し、ベージュを基調に包み込まれるような安心感と広々とした開放感に満ちた室内空間を実現した。
安全装備としては当時の軽ワンボックスタイプとしては初となる衝突被害軽減ブレーキ等を採用し、これを全グレードで標準搭載とした。
スズキ・エブリイワゴンと日産・NV100クリッパーリオとの違い
NV100クリッパーリオ(DR17W型)と3代目エブリイワゴン(DA17W)との違いは外観はエンブレムのみで、基本的な見た目は同じ。
初代は日産のウィンググリルやVモーション型グリルを取り入れるなどデフォルメがなされていたが、スズキからOEM供給となった2代目以降は廃止。3代目も同じエンブレムのみの変更となる。
内装もステアリングのオーナメントが日産マークなる程度で基本的にはスズキ・エブリイワゴンと同じ内容となる。
ただし、グレード構成に違いがありスズキにあった廉価グレード(JPターボ)の設定がない。日産版だと装備が豪華になってその分最低価格も160万円からとお高くなる。
3代目NV100クリッパーリオのグレード構成 エブリィワゴンとの違い
3代目NV100クリッパーリオのグレード構成はエントリーグレードの「E」グレードと上級「G」グレードの2種類。ともにターボ車のみの設定。
デビュー当初はEグレードに標準ルーフの設定があったが、2021年9月の一部仕様変更で廃止。すべてハイルーフ車のみとなった。
4ナンバー軽貨物仕様の軽バン・NV100クリッパーについてはこちらから。
Eグレード
3代目のエントリーグレード。標準ルーフ(※2015年3月~2021年8月まで)とハイルーフの2種類を設定。エブリィワゴンの「JPターボ」と「PZターボ」の中間に相当するグレード。JPターボよりも装備が豪華で、新車価格が高い特徴がある。
Gグレードと比較すると本革巻きステアリングが非装備、電動オートステップ&パワースライドドアが後席左側のみ、LEDサイドターンランプ付きドアミラーが非装備となるなど、若干簡略化される。
ただし快適装備の
- プッシュエンジンスタート
- インテリジェントキー
- フルオートエアコン
- 14インチアルミホイール
- メッキグリル
- ルーフエンドスポイラー
- 自動ブレーキ
など安全装備は一通り付いているため廉価グレード的な扱いではない(※兄弟モデル・三菱タウンボックスのGグレードの装備に近い)。
エブリィワゴンのJPターボと比較してもディスチャージヘッドランプやルーフエンドスポイラー、メッキグリルなどが標準装備。その分、価格はJPターボよりも高い。
Gグレード
3代目NV100クリッパーリオの上級グレード。エブリィワゴンのPZターボスペシャルに相当する。ただし、標準ルーフの設定はなく、ハイルーフ車のみの設定。
装備面ではEグレードにプラスして本革巻きステアリング、両側パワースライドドア&両側電動オートステップ、LEDサイドターンランプ付きドアミラーが標準装備となる。
エクステリア
出典:日産UCARS
フロントデザイン。スズキ版と同じくヘッドライトの構造上の配置こそほとんどかわらないものの、斜め方向への切り込みを加える事で若干スポーティーなデザインとなった。
先代はオーソドックスで普通な感じだったのでイメージは残しつつも正統進化といっていいだろう。これ以外に廉価グレード以外でメッキグリルが標準装備となり存在感もかなり大きい。フォグランプのデザインも先代から変更され、縁がメッキで覆われている。
ヘッドライトはハイロー独立式。下段内側が車幅灯(スモールランプ)、下段両サイドがウィンカー、中部がロービーム、上部がハイビームとなる。
スズキ版ではベーシックグレードではハロゲンランプにフォグランプ無しだったが、日産版ではベーシックグレードでもロービームがHID&フォグランプ付きとなる。なお、日産仕様としてはエンブレム一体型フロントメッキグリルが日産マークになる程度で初代クリッパーリオのようなデフォルメは特になし。
出典:日産UCARS
サイド。横からは先代とほとんど変わっていないが、ハイト系であたりまえとなった両側電動パワースライドドアをGグレードに標準装備。Eグレードでは助手席後方のみパワースライドドアとなる。
電動パワースライドドアには従来型のリモコン以外にキーを持った状態でドアにワンタッチするだけで開閉する「ワンアクションパワースライドドア」も装備した。
足元は全グレードで14インチアルミホイールを標準装備。
後部左側には軽自動車で珍しい「電動オートステップ」をGグレードで標準装備。Eグレードでは非装備。
出典:日産UCARS
先代ではコンビランプが中央部両端についていたが3代目からは商用モデルと共通となり、バンパー下部へ移動した。ライバルのダイハツ・アトレーワゴンと同じようなデザインだ。
ただし、NV100クリッパーリオでは乗用モデルらしくデザインにこだわりが。赤いレンズ部分が大きく、またストップランプもLED仕様で今風の装備となっている。
なお、日産仕様としては中央に日産マーク。車名エンブレムがエブリイワゴンのリアゲート右下から左下に変更となる程度で専用のデフォルメは特になし。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみの設定。商用モデルではNAも設定するが、乗用モデルでは全てターボエンジンのみとなる。
最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpmを発生。
トランスミッションは4ATのみで駆動方式はFRまたは4WDとなる。先代では旧式のK6Aターボだったがこれを新世代のR06Aターボに置換。ボディも高張力鋼板の使用拡大やその他軽量化でシェイプアップし先代よりも最大で1Lあたり2km前後燃費を改善した。
安全装備としては当時の軽ワンボックスカーでは唯一となる衝突被害軽減ブレーキの「レーダーブレーキサポート」、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、横滑り防止装置の「ESP」を全グレードで標準装備。
2019年6月の改良ではこの「レーダーブレーキサポート」をステレオカメラ方式の「デュアルカメラブレーキサポート」にアップデート。
デュアルカメラブレーキサポート(※日産OEM時の名称はインテリジェントエマージェンシーブレーキ)では夜間歩行者検知が可能となったほか、「踏み間違い衝突防止アシスト」にはリアパーキングセンサーと前進時にエンジン出力を抑制する制御をプラス。さらに追加で
- 後退時ブレーキサポート
- 車線逸脱警報(LDW)
- ふらつき警報(インテリジェント DA)
- 先行車発進お知らせ
- ハイビームアシスト
- オートライトシステム
- 誤発進抑制機能(後方)
が新たに標準装備となった。特に後退時ブレーキサポートはリアバンパーに超音波センサーを追加したことで当時の軽バン・軽ワンボックスで初採用となった。
これ以外の安全装備は
- VDC(ビークルダイナミクスコントロール[TCS機能含む]
- EBD付きABS
- エマージェンシーストップシグナル
- 運転席&助手席エアバッグ
- ヒルスタートアシスト
- ブレーキペダル後退抑制機構
などを標準装備する。
2021年9月一部改良では停車時アイドリングストップシステムを搭載した。
インテリア
出典:日産UCARS
インパネ。先代のデザインを踏襲しつつ、ドリンクホルダー部分を追加するなど利便性を向上。エンジンスタートはプッシュ式。
日産仕様としてはステアリングのマークがスズキマークから日産マークになる程度でこれ以外はエブリイワゴンと同じ。ステアリングは角度を調節可能なチルト機構を備える。
2021年9月一部仕様変更ではUSBソケット(2口)、が全グレードに標準装備となった。
3代目では先代のデザインを踏襲しつつ、オーバーヘッドコンソールや新しい収納スペースとしてインパネドリンクホルダー部分を追加するなど、利便性を向上させている。
スピードメーター。タコメーター付きの自発光式3眼式メーターで、夜間はとても見やすい(エコドライブアシスト照明付)。
出典:三菱認定中古車
2019年7月の一部改良ではタコメーターのデザインが若干変更され、右側の燃料計がデジタル化。自動ブレーキの状態を示すマルチインフォメーションディスプレイとの一体型に変更された。
全グレードでオートエアコンを標準装備する。
ディーラーオプションでバックビューモニターを設定。シフトレバーをRに入れると後方映像をナビに表示し車庫入れなどが楽になる。
出典:日産UCARS
フロントシートはベンチシートタイプ。スズキ版同様に先代モデルではセパレートタイプだったが、3代目ではベンチシートに変更された。シートカラーはベージュとし、表面はファブリック表皮となる。
2021年9月一部仕様変更では全グレードに運転席シートヒーターが標準装備となった。
出典:日産UCARS
リアシート。
出典:日産UCARS
ラゲッジルーム。
出典:日産UCARS
シートは分割可倒式。リアシートを倒さない状態ではリアシートの足元空間を広く取った設計のためエブリイワゴンのほうが少しラゲッジスペースが狭い。
リアルームランプは2022年4月の改良でLED化された。
ラゲッジスペースには収納スペース(ラゲッジサイドアッパーポケット、サイドポケット)やラゲッジボードステーなどが標準で設定される。
まとめ
3代目となったNV100クリッパーリオはスタイリッシュなエクステリアにさらに広くなった室内空間。ワンランクアップしたインテリアに自動ブレーキや燃費向上などフルモデルチェンジにふさわしいアップグレードが与えられた。
基本的にはエンブレム違いのOEMモデルのためパット見は同じなのだが、他の軽自動車同様に日産エンブレム効果により人によってはスズキ版よりも印象が違ってみえる部分もありそういったニッチな需要だったり、先代以前のクリッパーリオからの乗り換えモデルといったとこだろうか。
ちなみにスズキ版とはグレード構成に若干の違いがありスズキ版では一番安いグレードがHIDやフォグランプ無しタイプで142万5600円殻に対し、日産版ではHIDとフォグランプありで160万5960円からとPZターボに相当するグレード以上の構成となる。
さらに3代目エブリイワゴンは多方面でOEM供給されており、元々スズキからOEM供給で軽自動車を販売するマツダには「3代目スクラムワゴン」として。
タウンボックスの自社生産を終了した三菱には「3代目タウンボックス」としてOEM供給されている。そのため2018年7月現在で4兄弟モデルという珍しい構成となっている。
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