タウンボックスは三菱の1BOX(ワンボックス)型軽自動車。本稿ではスズキ・3代目エブリイワゴンのOEMモデルである3代目のDS17W型を扱う。
出典:三菱認定中古車
3代目 三菱・タウンボックスとは?
3代目タウンボックスとは?
2015年3月にフルモデルチェンジし、3代目となった三菱・タウンボックス。
初代タウンボックスは1999年に4ナンバー軽貨物で乗用思考の「ミニキャブバン・ブラボー」の後継モデルとして、ミニキャブバンを5ナンバー化したモデルとして登場。
2代目は軽バンと同じく販売不振や収益性が見込めないことから自社生産から撤退。スズキ・エブリイワゴン(2代目・DR64W型)のOEM供給を受けてフルモデルチェンジした。本稿の3代目も引き続きエブリイワゴンのOEMモデルとなる。
3代目ではエブリイワゴン同様、軽貨物・ミニキャブバンとの同時デビューとなりフルモデルチェンジにふさわしいアップデートが施された。
室内空間と使い勝手の向上
3代目は当時の軽自動車としてはトップクラスとなる
- 2240mmの室内長(旧モデルから195mm延長)
- 1420mmの室内高(旧モデルから35mm延長)
- 1355mmの室内幅(旧モデルから50mm延長)
で先代よりも前方向に室内空間を拡大。これにより前後乗車間隔は1080mmとなった。
また、フロントシートにはベンチシートを採用し、シートスライド量を65mm、助手席で60mm拡張したことにより運転席と助手席間の移動や、乗り降りの利便性を向上させた。
さらにホイールベースを拡大し、リヤシートスライド量も拡張したことにより前後乗員間距離はクラストップの1,080㎜を実現。後席足元もさらに居住性を向上させた。
利便性・操作性の向上
ワンタッチで開閉する電動式のパワースライドドアをGスペシャルに後席両側、Gでは助手席後方に標準装備し、利便性を向上。3代目ではリアスライドドアのドアハンドルを縦型に変更し操作性も向上。
助手席側のサイドミラーにはサイドアンダーミラーを採用し、車速連動式オートドアロック、オートライトコントロール、エンジンスイッチ+キーレスオペレーションシステムを新採用。利便性を向上。
視認性の高い大型3眼式メーターや3本ステアリングホイールなど、内装の質感や操作性も向上させた。
走行性能、燃費性能の向上
エンジンは先代のK6A型エンジンに変わり新世代のR06A型エンジンを採用。
R06A型吸気可変バルブタイミング機構に電子制御スロットルなどを採用し、燃焼効率を高めたDOHCインタークーラー付ターボチャージャーエンジンで、軽量化したボディと組み合わせて力強い走りと低燃費を両立させた。
安全性能の向上
3代目タウンボックスでは初となる先進予防安全技術「e–Assist」を搭載。
低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM-City)および誤発進抑制機能により衝突の危険を察知してドライバーに知らせるとともに、被害を回避、軽減できるようにサポートすするようにした。
3代目ミニキャブバンの一部改良など
2019年7月・一部仕様変更
2019年7月の一部仕様変更では安全装備を強化。
予防安全技術「e-Assist」がアップデートされ、レーザーレーダー方式からフロントカメラ方式に変更。前方の歩行者検知を可能にし、作動車速域を約30km/hまでから約100km/hまでに拡大した。
加えて
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
- ハイビームアシスト
- ヒルスタートアシスト
- 後退時用衝突被害軽減ブレーキ「後退時ブレーキサポート」
が標準装備となり、誤発進抑制機能は前方に加え後方にも対応した。
2021年9月・一部改良(4型相当)
2021年9月の一部改良ではアイドリングストップシステムの「オートストップ&ゴー」とUSB電源ソケット(2個)を標準装備化。
4WD車に標準装備の運転席シートヒーターを2WD車にも拡大して標準装備化。
2022年4月・一部改良(5型相当)
運転席上部に既存の「オーバヘッドコンソール」から置き換えで「オーべヘッドシェルフ」を標準装備。使い勝手を向上した。
Gスペシャルではステアリングを本革巻きステアリングに変更。
ボディカラーには新色の「クールカーキメタリック」が追加され全4色となった。
なお、エブリイに設定の7インチディスプレイのバックカメラ付きスマートフォン連携ディスプレイオーディオはミニキャブバンには非設定。
三菱純正オプションの「オリジナル7型ナビゲーション」と「リアビューカメラ」を同時装着することで相当品としている。
3代目タウンボックス(DA17W)のグレード一覧 G、Gスペシャルの違いなど
3代目タウンボックスのグレード展開はベーシックな「G」グレードと、上級「Gスペシャル」の2種類のみ。
エブリイには標準ルーフを採用した廉価グレードの「JPターボ」があるが、タウンボックスでは非設定で、全グレード・ハイルーフ仕様となる。
自然吸気エンジンも非設定でターボ車のみ。特別仕様車はベースモデル同様に設定されていない。
G
Gグレードの装備など
3代目タウンボックスのベーシックグレード。エブリイワゴンの「PZターボ」のOEMグレード。
エブリイワゴンの廉価グレードである「JPターボ」より新車価格が高いがその分装備が豪華。
エクステリアでは
- 14インチアルミホイール
- フロント&リアエアロパンパー
- サイドアンダースポイラー
- ルーフエンドスポイラー
- フォグランプ
- ハイロー独立式(4灯式)ディスチャージヘッドライト
- 後席左側ワンアクションパワースライドドア(ワンアクションスイッチ付き)
- メッキグリルにディスチャージヘッドランプ
- フォグランプ(メッキ加飾)
- ルーフエンドスポイラー
などを標準装備。
インテリアや快適装備は
- 6スピーカーシステム
- 3眼式スピードメーター(タコメーター付き)
- ステアリングオーディオスイッチ
- フルオートエアコン
- メッキメーターリング
- キーフリーシステム&プッシュエンジンスタート
が標準装備。自動ブレーキも「e-Assist」を標準装備する。
GグレードとGスペシャルとの違い
Gスペシャルと大きく異なるのは「パワースライドドアが助手席側後方のみ」となり、
- 「電動オートステップ」
- 「LEDターンランプ付きドアミラー」
- 「革巻きステアリング」
が非装備になるなど、快適装備や機能装備が一部省略される。
Gスペシャル
3代目タウンボックスの上級グレード。
エブリイワゴン「PZターボスペシャル」のOEMグレードで、Gグレードよりも装備が豪華になる。
エクステリアではPZターボの装備に加えて
- 両側ワンアクションパワースライドドア
- 電動オートステップ(後席左側)
- LEDサイドターンランプ付きドアミラー
を標準装備。
インテリアでは「本革巻きステアリング」を標準装備する(※2022年4月一部改良以降)。
3代目タウンボックス(DS17W)と8代目ミニキャブバン(DS17V)との違い
タウンボックスとミニキャブバンの違いは内外装や機能装備にある。
タウンボックスは乗用モデルで内外装が豪華なのに対し、ミニキャブバンは簡素でグレードにもよるが必要最低限な装備が特徴。
さらにミニキャブバンの手動式スライドドアに対しタウンボックスは全グレードでパワースライドドアを標準装備。最上級グレードでは助手席側にオートストップを備えるなど、機能装備も豪華。
出典:三菱認定中古車
エクステリアではタウンボックスはフルエアロ化され、メッキグリルに4灯式ヘッドライト、専用テールランプ、アルミホイールでスタイリッシュとなるが、
出典:三菱認定中古車
ミニキャブバンは軽バンらしくスチールホイールまたはホイールキャップ、エアロパーツも無く、ハロゲンヘッドライトに従来どおり貧素なテールランプなど、コストカットされる。
またタウンボックスに標準装備のパワースライドドアが基本非装備で、リアシートもタウンボックスはヘッドレスベッドやアームレスト付きで快適性が高く、足元空間が広いが、
ミニキャブバンではブラボー以外はヘッドレスベッドなしのベンチシートタイプで、足元も狭い。
その分ラゲッジスペースはタウンボックスよりもミニキャブバンのほうが広く、より荷物を積めるようになっている。
また軽自動車税も異なり5ナンバーのタウンボックスは年10,800円に対し、4ナンバー軽貨物のミニキャブバンは年5,000円(営業用貨物登録だと3,800円)と半分ぐらい違う。
3代目タウンボックス(DS17W)と3代目エブリイワゴン(DA17W)との違い
タウンボックスとエブリイワゴンの違いはエンブレム程度で、それ以外はほぼ同じ。
ただし、パワースライドドア非搭載で廉価ターボ仕様の「JPターボ」が非設定で、ボディカラーもエブリイワゴンに設定のある
- ムーンライトバイオレットパールメタリック
が非設定となるなど、ボディカラーの設定が若干少ない。
またオプション設定で選択可能なスズキのスマートフォン連携ナビゲーションは直接設定されず、三菱純正の互換品での対応となる。
エクステリア
出典:三菱認定中古車
フロントデザイン。3代目では先代のイメージそのままによりスタイリッシュとなった外観が特徴だ。タウンボックスでは全グレード標準でメッキグリルが付き、乗用モデルらしい精悍な顔つきが特徴。
フォグランプのデザインも先代から変更され、縁がメッキで覆われている。
出典:三菱認定中古車
ヘッドライトもディスチャージヘッドランプを採用し、ハイビームとロービームが独立した4灯式を採用。軽バンのミニキャブバンとは差別化がなされる。
なお、タウンボックス仕様としてはメッキグリル内のエンブレムが三菱のスリーダイヤに変更となる程度でこれ以外はエブリイワゴンとまったく同じ。エンブレム違いの兄弟モデルとなる。
出典:三菱認定中古車
サイド。このあたりはエブリイワゴンと同じ。サイドアンダースポイラーや
出典:三菱認定中古車
14インチアルミホイールを標準装備装備する。タイヤサイズは165/60R14。
パワースライドドアはGグレードが助手席後方のみ。PGスペシャルでは両側に標準装備となる。
さらに上級GスペシャルではPZターボスペシャルと同じ電動オートストップが助手席に標準装備。乗り降りがしやすくなる。
出典:三菱認定中古車
リア。タウンボックス仕様としてはリアゲートのエンブレムがスリーダイヤに変更され、TOWN BOXエンブレムに変更になる程度で、これ以外はエブリイワゴンと同じ。
乗用モデルではルーフエンドスポイラー、エアロバンパー、横長のLEDテールランプを採用し、リアもスタイリッシュな雰囲気となる。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒のターボのみの設定。商用モデルではNAも設定するが、乗用モデルでは全てターボエンジンのみとなる。
R06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンは吸気側に可変バルブタイミング機構を備え、
最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。
トランスミッションは4ATのみで駆動方式はFRまたは4WDとなる。先代では旧式のK6Aターボだったがこれを新世代のR06Aターボに置換。
ボディも高張力鋼板の使用拡大やその他軽量化でシェイプアップし先代よりも最大で1Lあたり2km前後燃費を改善した。
エンジンは伝統的な運転席下に配置されている。
安全技術としては先進安全装備の「e-Assist」としてスズキの自動ブレーキがOEM供給され
- 衝突軽減ブレーキシステム[FMC] (※エブリイワゴンのエマージェンシーブレーキ)
- 誤発進抑制機能
- エマージェンシーストップシグナル
- 横滑り防止装置の「ASC」
などを全グレードで標準装備。
2019年7月には一部仕様変更を行い、「エマージェンシーブレーキ」がステレオカメラ方式の「デュアルカメラブレーキサポート」にアップデートされた。
これにより「e-Assist」がパワーアップし2019年7月以降は
- 衝突軽減ブレーキシステム[FMC]
- ハイビームアシスト
- 後退時ブレーキサポート
- 後方誤発進抑制機能
- 誤発進抑制機能(前進時)
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
を備える。これ以外安全装備として
- オートライトコントロール
- アクティブスタビリティコントロール(ASC)
- EBD付きABS
- エマージェンシーストップシグナル
- 運転席&助手席エアバッグ
- ヒルスタートアシスト
- ブレーキペダル後退抑制機構
なども備える。
2021年9月一部改良ではアイドリングストップシステム「オートストップ&ゴー」を搭載した。
インテリア
出典:三菱認定中古車
インパネ。内装も三菱仕様としてはステアリングオーナメントがスリーダイヤに変更となる程度で、基本的にはエブリイワゴンと同じ。
3代目では先代のデザインを踏襲しつつ、オーバーヘッドコンソールや新しい収納スペースとしてインパネドリンクホルダー部分を追加するなど、利便性を向上させている。
出典:三菱認定中古車
ステアリングはウレタンスプリング。2022年4月の一部改良ではGスペシャルに本革巻きステアリングが標準装備となった。
エアコンは全グレードでフルオートエアコンを標準装備する。またタウンボックスではプッシュエンジンスタートを標準装備し、乗用モデルらしい機能装備となる。
出典:三菱認定中古車
スピードメーターはタコメーター付きの3眼式タイプを採用。視認性に優れ質感も高く乗用モデルらしい雰囲気を与えている。
出典:三菱認定中古車
2019年7月の一部改良ではタコメーターのデザインが若干変更され、右側の燃料計がデジタル化。自動ブレーキの状態を示すマルチインフォメーションディスプレイとの一体型に変更された。
出典:三菱認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。ベージュ柄の乗用モデルらしい上質感のあるシートで、アームレスト付き。
出典:三菱認定中古車
リアシートも。ヘッドレスベッドとセンターアームレスト付きの左右分割式シートを採用。ミニキャブバンのブラボー系グレード似たようなシートだが、リアの足元空間はタウンボックスのほうが広く取られ快適性が高くなっている。
出典:三菱認定中古車
ラゲッジスペース。リアシートを倒さない状態ではリアシートの足元空間を広く取った設計のためタウンボックスのほうが少しラゲッジスペースが狭い。
ラゲッジスペースには収納スペース(ラゲッジサイドアッパーポケット、サイドポケット)やラゲッジボードステーなどが標準で設定される。
まとめ
3代目タウンボックスはOEM元のエブリイワゴン同様にスタイリッシュになったエクステリア、拡大された室内空間、新型エンジンと軽量化による燃費アップ、自動ブレーキの搭載により安全性も向上させるなど、フルモデルチェンジに相応しいアップデートが施された。
エブリイワゴンと比較するとエンブレムが違うだけのOEMモデルではあるが、絶対数が多いエブリイワゴンや兄弟モデルNV100クリッパーリオよりも数が少ないため、他人とは被りづらいモデル。
軽ワンボックスでも他人と被りたくない人は選ぶ価値があるOEMモデルである。
兄弟モデル 日産・NV100クリッパーリオ(DR17W)/マツダ・スクラムワゴン(DG17W)
3代目タウンボックスは日産には3代目・NV100クリッパーリオとして。マツダへは3代目スクラムワゴンとしてもOEM供給されている。
タウンボックスと同じくエンブレムが違うだけで基本的には内外装が同じOEMモデルとなっている。
ただし、グレード構成的にはNV100クリッパーリオがタウンボックスに近く、スクラムワゴンには廉価グレードのJPターボの設定があるなど、細かい部分が異なる。
また、タウンボックスに非設定のボディカラー「ムーンライトバイオレットパールメタリック」はNV100クリッパーリオとスクラムワゴンには設定されていて、グレード構成からみると完全なエンブレム違いのOEMとしてはスクラムワゴンが一番該当する。
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