ミニキャブは三菱の軽商用自動車。「ミニキャブ・ミーブ」はそのワンボックスタイプである「ミニキャブ バン」をベースとした電気自動車である。
三菱 ミニキャブ・ミーブとは?
2011年11月に登場した三菱のミニキャブ・ミーブ。
名前からも想像がつくように軽商用モデルの「ミニキャブバン」をベースとした電気自動車である。
ミニキャブ・ミーブでは先にデビューしたアイミーブ(i-MiEV)の開発で培った技術をフルに活かし、今度は商用モデルのミニキャブバンに適用した形だ。
それまでの660CCガソリンエンジンからモーターに置換することで高い環境性能に加え、商用車に必須な経済性、積載性、走行性能、信頼性を両立したモデルとなっている。
モデル構成はユーザーのニーズにあわせて総電力量(バッテリー容量)が異なる2種類を設定。
ひとつはJC08モードで充電走行距離 100kmの「CD 10.5kWh」。もうひとつはJC08モードで150km走行可能な「CD 16.0kWh」。
共に商用モデルのCDグレードをベースとし、主要コンポーネントを6代目ミニキャブバンから。電気自動車のコンポーネントをアイミーブと共通化することで車両価格を大幅に抑制。電気自動車としてはかなり割安な173万円から(※補助金制度適用の場合)とアイミーブよりもかなり低価格となっていた。
ミニキャブ・ミーブが優れいているのは電気モーターゆえの発進トルクで、軽ターボよりも大きい196 n・m(20kg)の最大トルクをわずか300rpmで発生する点。
これは普通車の1.5Lクラスを上回り、2.0Lぐらいのセダン並みの出だしとのこと。アイミーブよりも最大トルクが抑えられているものの軽商用バンにありがちなもっさり加速が無い点は荷物満載時でもパワー不足になりずらく、絶対的な速さは無いものの特に街乗りオンリーな商用モデルにとって優れていた。
ボディカラーも白系ホワイトソリッドのほかに銀系クールシルバーメタリックの2色を設定。
なお、デビュー当初は安い航続距離100kmモデルと、価格が高い150kmモデルの2種類だったが、2017年1月の一部改良ではグレード体系の見直しを実施。
これにより航続距離100kmの「CD 10.5kWh」モデルを廃止。この時に2シーターは「CD(16.0kWh)」のみの設定となる。
2020年9月の一部改良ではさらにグレード体系を集約し、ハイルーフのみに。グレードも「CD(16.0kWh)」のみで2シーター(フロントシートのみ)と4シーター(リアーシート付き)の2種展開とした。
ミニキャブ・ミーブ セットオプションのエクシードパッケージとは?
ミニキャブ・ミーブにはメーカーオプションで内外装のドレスアップをセット化した「エクシードパッケージ」も設定していた。
これを選択すると
- フロントメッキグリル
- ボディ同色ミラー
- ミニキャブ・ミーブ専用デカール
- フロント/リアシートの生地張り化
などがセットで装着され、乗用モデルのようなスタイリッシュな内外装に変化する。
ミニキャブ・ミーブの特徴とガソリン車との違い
ミニキャブ・ミーブではエンジンを搭載しないため、ガソリンエンジンよりも静かでトルクフルな加速や、オイル交換などが不要などガソリンエンジンに由来する部分がミニキャブ・ミーブでは大きくとなる。
また充電に関しては、家庭でもEV専用スタンドでも充電できるが、家庭の場合は200Vの専用充電器を増設すると充電時間を短縮できる(既存の100Vでも可能だが時間がかかる)。
ただし、家庭用コンセントをそのまま挿せばOKとはならず、専用充電器を設置しないといけなのでこの点は注意。
ミニキャブ・ミーブのグレード一覧 CD 10.5kwh、CD 16.0kwh、2シーター、4シーター、ハイルーフ、標準ルーフの違いなど
ミニキャブ・ミーブのグレード構成
ミニキャブ・ミーブのグレード展開は大きくはエントリーグレード「CD (10.5kWh)」と上級「CD (16.0kWh)」の2種類。それぞれに2シーターと4シーターが設定される。
さらにエントリーの「CD (10.5kWh)」ではハイルーフのみだが、「CD (16.0kWh)」では標準ルーフとハイルーフの2種類を設定する。
モデル中盤ではエントリーの「CD 10.5kWh」の2シーター・ハイルーフと「CD 16.0kWh」・4シーター標準ルーフが廃止。
終盤には「CD 10.5kWh」も廃止となり、「CD 16.0kWh」のハイルーフのみとなった。
CD 10.5kwh2シーター ハイルーフ
ミニキャブ・ミーブの一番安いエントリグレード。デビュー当初の新車価格は226.8万円。
リアシートが無い2名乗車の配送業務特化仕様。車重は最も軽く、1080kgだった。
快適装備もマニュアル式エアコンやパワステが標準装備となるものの、キーレスエントリーやリアのプライバシーガラス、運転席シートヒーターなどはオプション設定でコストカットがなされていた。
2017年1月の一部改良で廃止。
CD 10.5kwh 4シーター ハイルーフ
ミニキャブ・ミーブのエントリーグレードの4シーター仕様。
2シーターとは異なり、リアにも軽バン用のベンチシートが備わり最大4名乗車としたグレード。
装備面はCD 10.5kwh2シーターと同じでキーレスエントリーやプライバシーガラスなどがオプション設定されていた。
2017年1月の一部改良で廃止。
CD 16.0kwh2シーター ハイルーフ
ミニキャブ・ミーブの上級グレード。搭載バッテリーに大容量の16.0kwhタイプを採用し航続距離を伸ばしたモデル。
2シーター仕様では無い2名乗車の配送業務特化仕様。
なお、快適装備に関しては16.0kwhモデルでも同じでキーレスエントリーやプライバシーガラスなどがオプション設定となっていた。
2017年1月の一部改良では寒冷地仕様を標準装備化し、これに伴い運転席&助手席シートヒーターを標準装備化。さらに運転席・助手席パワーウィンドウも標準装備化した。
2022年10月の再販時にはオートライトコントロール・ASC(アクティブスタビリティコントロール)に関するメーター内インジケーターの追加が施された。
CD 16.0kwh2シーター 標準ルーフ
ミニキャブ・ミーブの上級グレードで2シーターの標準ルーフ版。
ハイルーフよりも天井空間を下げ、全高も低くしたロールーフ仕様。
2013年11月の一部改良で廃止。
CD 16.0kwh 4シーター ハイルーフ
ミニキャブ・ミーブの上級グレード。搭載バッテリーに大容量の16.0kwhタイプを採用し航続距離を伸ばしたモデルで、4名乗車仕様。
ただしリアシートはエントリーの10.5kwhモデルと同じくベンチシートで、後部座席の快適性は軽バンなり。
2017年1月の一部改良では運転席・助手席パワーウィンドウが追加。
2022年10月の再販時にはオートライトコントロール・ASC(アクティブスタビリティコントロール)に関するメーター内インジケーターの追加が施された。
CD 16.0kwh 4シーター 標準ルーフ
上記の標準ルーフ仕様。2017年1月の一部改良で廃止。
ミニキャブ・ミーブ 2シーターと4シーターとの違い
ミニキャブ・ミーブの2シーターと4シーターの違いは最大乗車定員および座席数。
2シーターはその名の通りフロントのみ座席があって、リアシートは最初から付いてない2名乗車仕様。
4シーターはリアシート付きで4名乗車可能なタイプ。ただし一般的な乗用モデルのリアシートとは異なり、軽バン用のヘッドレスト無し・左右一体可倒式で簡素なベンチシートがつく。
あくまで最大4名乗れるのであって、後部座席においては4シーターでも乗用モデルのような快適性は薄い。
ミニキャブ・ミーブ 標準ルーフとハイルーフの違い
ミニキャブ・ミーブの標準ルーフとハイルーフの違いはキャビン容量と全高の違い。
ハイルーフは標準ルーフよりも上方向に室内空間が少し広く、全高もハイルーフが1,915 mmに対し標準ルーフが1,810 mmと95mm程度異なる。これによりハイルーフの方が室内空間が広く開放感があり、荷物を載せた時もより多くの荷物を載せられるメリットがある。
ただし室内空間が広くなったことで腰高感が高くなり、
- 急カーブでのロール感が強くなる
- 横風により煽られやすい
- 猛暑日でエアコンを使用した場合は、標準ルーフよりも分冷却効率が若干悪い
などのデメリットもある。
ただしデメリットを考慮しても軽ワンボックスはいかに荷物を載せられるかに重点が置かれるため、他の軽ワンボックスでも標準ルーフよりもハイルーフが選ばれる傾向にある。実際、スズキもダイハツも現在では過去に設定のあった標準ルーフの軽バンがラインナップから消滅。ハイルーフのみとしている。
ミニキャブ・ミーブ バッテリー容量10.5kWhと16.0kWhの違い
ミニキャブ・ミーブの10.5kWhと16.0kWhの違いはバッテリー容量。搭載バッテリーの容量が異なり航続距離に違いが生じる。
価格が安い「CD 10.5kWh」の航続距離は約100km。対して「CD 16.0kWh」の航続距離はJC08モードで約150km。エンジンモデルとは異なりすべてをバッテリーに依存するEVの場合は夏季にエアコンを使用すると航続距離も減少し、実際にはもっと走れなくなる。
モデル後半では10.5kWhモデルが廃止され、全て16.0kWhモデルのみとなった。
なお、ミニキャブ・ミーブの駆動方式は後部にモーターを配置し、後輪タイヤを駆動するMR方式のみで、4WDは非設定。
ミニキャブ・ミーブの一部改良、マイナーチェンジなど
2013年11月14日・一部改良
運転席シートヒーターの範囲を座面のみから背面に拡大。
新たに助手席シートヒーターをオプション設定するなど装備内容の充実を図りながら、車両本体価格を「CD(10.5 kWh)」は23.49万円、「CD(16.0 kWh)」では37.225万円の大幅値下げ実施。平成25年度クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助金の上限額適用で実質負担額155万円台からのお求めやすい新価格となった。
グレード整理を行い、「CD(16.0 kWh 」2シーター 標準ルーフを廃止。「CD(16.0 kWh 」2シーターはハイルーフのみの設定となった。
2014年10月9日・一部改良
アクセルオフによる回生ブレーキで強い減速度を感知した場合にブレーキペダルを踏むことなくストップランプが自動点灯して後続車に注意を促す機能、
傾斜のある駐車場などでの充電中にパーキング以外にシフトチェンジした場合に車両の動き出し防止のためにブザーを鳴らしてドライバーに警告する機能の2点を全車に標準装備化。
併せて全車で車両本体価格の値下げも行われた。
2015年7月29日・一部改良
全車に急速充電機能を追加し、車両本体価格の値下げを実施。
2017年1月26日・一部改良
グレード体系を整理し、「CD(10.5 kWh)」の2シーター・ハイルーフ並びに「CD(16.0 kWh)」の4シーター・標準ルーフを廃止したことにより、全車ハイルーフのみ、2シーターは「CD(16.0 kWh)」のみに変更。。
このほか快適装備が強化され、充電中にエアコン等が使用可能となる空調機能を新採用。
メーカーオプション設定されているキーレスエントリーシステムのキーレスキーに乗車前の遠隔空調操作を可能にするプレ空調スイッチを追加したほか、全グレードで寒冷地仕様を標準装備化し運転席&助手席シートヒーター、加えて運転席・助手席パワーウインドウも全グレードに標準装備化した。
また、駆動用バッテリーの満充電、あるいは、満充電に近い状態における回生ブレーキ力の低下を知らせる回生ブレーキ力警告灯も装備した。
2020年9月17日・一部改良
グレード体系を「CD(16.0 kWh)」のみのモノグレード体系に集約し、2シーターと4シーターの2種展開のみとし、エントリーの「10.5kwh」モデルを廃止。
併せて、車両接近通報装置の法規対応に伴い、車両接近通報OFFスイッチとメーター内の車両接近通報OFF表記を廃止(キーOFF時や車両接近通報装置の故障お知らせ時のみ点灯する)、トラクションコントロールOFFスイッチの形状が変更。
通報音の発生車速域を「0km/h ~35km/h」へ拡大するとともに、音量と音程が最適化された。
2021年3月31日・生産の一旦休止
ミニキャブ・ミーブの生産休止を発表。
個人向けは販売が休止されるものの、法人向けは販売が継続されていた。一部メディアでは生産終了と報じられたため、ミニキャブ・ミーブの生産終了という噂が広まることとなる。
そのため三菱のミニキャブ・ミーブ公式ページでは休止当初の
「ボディカラー、オプションなどがお客様のご希望に添えない場合がございます。詳しくは営業スタッフへお問い合わせください」の記載から
「一般販売を中断しております。一般販売再開が決まりましたらホームページでご案内致します。」
に変更され、生産終了を否定するようなコメントが出されていた。
2022年10月13日・販売再開&一部改良
販売再開に伴い一部改良を実施。2022年10月13日の一部改良では荷室ユーティリティを強化。ミラー類(ルーム/ドア)を変更変更。
オートライトコントロール・ASC(アクティブスタビリティコントロール)・メーター内インジケーターを追加。さらに電費モードをWLTCモードに変更した。
ミニキャブ・ミーブのエクステリア(外装)
フロントデザイン。外観上は特に変更点はなく、6代目ミニキャブバン(および6代目タウンボックス)の後期型と同じ。
ヘッドライトは内側にくぼみが加えられたスタイリッシュな形状でバンパーもそれまでのデザインとは変更されている。なお、オプション設定の「エクシードパッケージ」を選択すると写真のようにメッキグリルとボディと同色のドアミラーがプラスされた。
サイド。このあたりもほぼ同じだが、ミニキャブ・ミーブではディーラーオプションで専用のデカール(エクステリアデカール)を設定。両サイドには電気のプラグをイメージした絵に電気自動車と MINICAB MiEVの文字などが入る。
足元は鉄チンホイール。タイヤサイズは12インチで145R12-8PR。
充電口。2015年7月マイナーチェンジでは「急速充電機能」が全車標準装備となった。
リア。リアゲート左下にはMINICAB車名デカールに加えて「MiEV」デカールが加わる。これ以外はベースと同じだ。なお、2014年10月マイナーチェンジではアクセルオフによる強い回生ブレーキ時にストップランプが自動点灯。後続車に注意を促す機能が追加された。
エンジン・機能装備・安全装備など
ミニキャブ・ミーブではそれまでの3G83型ガソリンエンジンに代わり、Y4F1型モーターを採用。最高出力は30kW[41PS]/2500~6000rpm、最大トルクは196N・m[20kgf・m]/0~300rpm。
最高出力は660CCのエンジンよりも低出力だが、前述の通り最大トルクは軽ターボを余裕で上回り、2000CCエンジン並のトルクに匹敵する。
これが0~300rpmで発生するため発進加速はかなりのもの。トランスミッションは備えず電気的にモーターを制御。回生ブレーキモードを備え、坂道や赤信号手前で上手く使えばバッテリーを長持ちさせることも可能だ。バッテリーは270V・10.5kWhと330V・16.0kWhの2種類を設定。駆動方式はMRのみとなる。
安全装備は運転席&助手席エアバッグとABS、トラクションコントロール(TCL)を標準装備する。
ミニキャブ・ミーブのインテリア(内装)
インパネ。基本的には6代目・後期型ミニキャブバンと同じ。ドリンクホルダーなど便利な収納スペースが設けられている。
ただしセミキャブボディの6代目後期ミニキャブバンがベースのためタイヤの張り出しがキャビン足元にあり、一般的な軽自動車よりもアクセルペダルの位置が左寄りになっている。
スピードメーター。アイミーブと同じもので、電気自動車専用となる。タコメーターは無いが、上半分に設けられたゲージで充電(Charge)またはエコ(ECO)など運転状況を表示する。
シフトノブ。デザイン的にはガソリン仕様のATと同じ。パワーを抑え駆動時間を伸ばしたいときはECOレンジ。力強い走りが欲しい場合はDレンジ。坂道などでより多くの回生ブレーキを使うときはBレンジを利用する。なお、回生ブレーキ自体はD、ECO、Bのいずれでも機能する。
フロントシートはセパレートタイプ。ミニキャブバンと同じヘッドレスト一体型。
4シーターのみリアシートが備わる。足元は比較的広いがシートが軽バンのベンチシートで座面も熱くなく、ヘッドレストの無い簡易的なシート。長距離移動には適さないが街乗りメインでたまに人を乗せるぐらいなら問題は無い。後部座席の窓ガラスは手回し式。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。電気自動車仕様に伴い床下が25mm高くなっている。ただしラゲッジルームの容量そのものはほぼ同じ。スペースの関係でスペアタイヤが床下からラゲッジルーム右側に移動された。
ミニキャブ・ミーブの総評
三菱のミニキャブ・ミーブはアイミーブの技術を商用モデルのミニキャブバンに適用し、経済性や静粛性、高い動力性能などを実現した電気自動車である。
上述のとおりトルクフルな出だしやパワーにより荷物満載時でも余裕の走りが可能で、かつ高い静粛性(ガソリンエンジン音が皆無な点)などから早朝の牛乳配達。
全く排気ガスを出さない部分では移動販売車としての需要が見込め、特に商用モデルに特化させた電気自動車となっている。
この手の商用モデルは遠出はほぼ使うこと無く、街中の移動だけに使うことが多いので、そこに電気自動車を組み合わせた部分は非常に合理的で評価できる部分といえよう。
電気自動車の軽ワンボックスはスズキ&ダイハツ&トヨタが共同で新型モデルを開発・2023年度内に販売予定だ。航続距離もミニキャブ・ミーブよりも長い200km程度を見込んでおり、これに伴いミニキャブ・ミーブの優位性は少し失われることになる。
スズキとダイハツ(トヨタ)が軽EVバン市場に本格参入することにより、三菱以外でも軽貨物においてEV化が本格的に進むこととなる。
コメント