ピクシストラックはトヨタの軽トラック型軽自動車。ダイハツ・ハイゼットトラックのOEMモデルである。本稿では2代目のS500UおよびS510U型の2014年9月~2021年11月までを扱う。
2代目 トヨタ・ピクシストラックとは?
2014年9月にフルモデルチェンジし、2代目となったピクシストラック。先代と同じくダイハツハイゼットトラックのOEM供給を受けた販売されるモデルである。ただし初代と同じくジャンボや保冷車など特装車の設定は一切なく、基本グレードのみの展開となる。
エクステリアは軽トラの枠を越えたスタイリッシュさを追求。ベーシックでありながら乗用車のような雰囲気を持たせた顔つきに変化した。
また、既存の軽トラには無かった個性的なボディカラーも含め全8色を設定。街乗りなど普段使いにも嬉しい仕様としている。
インテリアは使い勝手とシンプルさを両立。大型オープントレイなど合計20個の収納スペースを設けた。室内空間もフロントガラスを前だしにし、運転席とフロントガラスの距離を拡大。ステアリング角度見直しとシートスライド量も増加させたことで広くて快適な室内空間に。ドアの開閉角度が拡大されたことにより女性や高齢者でも乗り降りしやすくなった。
メカニズムではプラットフォームを刷新。ボディ骨格の見直しやパネル剛性のアップ、マフラー変更によりノイズ発生を抑制。
エンジンもイーステクノロジーを適用し、高圧縮エンジンや電子スロットルを採用。5MTは5速をハイギア化&低粘度オイルを採用。ATには当時の軽トラとしては珍しい4ATを採用した。
さらにフロントサスペンションは型式を変更し操縦安定性を向上。ショートホイールベースも踏襲し最小回転半径を3.6mに進化させた。
安全面ではボディ骨格やや高張力鋼板の採用で衝突時のエネルギーを効率よく分散&吸収する骨格構造を実現した。
さらに運転席SRSエアバッグとプリテンショナー&フォースリミッター機構付フロント3点式ELRシートベルト(運転席と助手席)を全車に標準装備とした。もちろん56km/hオフセット衝突にも対応している。
防錆性能としてはキャビン、ドア、荷台などで構成されるアッパーボディの表面全てを防錆鋼板化。フレームの防錆鋼板化を拡大、カチオン電着塗装、中塗り、表面塗りの3層塗装を採用、フロントパネル樹脂化などおこない、「ボディ外板穴あき錆保証5年」、「ボディ外板表面錆保証3年」を全車につけた。
そして2代目ではダイハツ同様に軽トラとしては珍しいパックオプションを豊富に設定。
「ビューティーパック」、「農業女子パック」、「スタイリッシュパック」など女性ユースをメインとしたセットパックオプションや、
「荷台パック」、「キャビンパック」、「スタイリッシュパック」、「ストロング防錆パック」など
実用性や快適性、カスタム性をアップさせるオプションなどを選択可能とした。
2代目ピクシストラックとハイゼットトラックとの違い
ピクシストラックとハイゼットトラックとの違いはエンブレム程度で、内外装はハイゼットトラックとまったく同じ。グレード構成もほぼ同じで違いは殆どない。
ただし最上級でキャビンを拡大した「ジャンボ」や特装車の「ダンプ」シリーズ、「保冷車」シリーズなどは未設定で、基本グレードのみの展開となる(※スバルへOEM供給されるサンバートラックの方には設定)。
2代目・前期ピクシストラックのグレード一覧 スタンダート、スタンダート エアコン・パワステレス、農用スペシャル、エクステリアの違いなど
2代目ピクシストラックのグレード構成は下から順番に廉価グレード「スタンダード エアコン・パワステレス」、ミドル「スタンダード」、農家向け「スタンダード 農用スペシャル」、上級グレード「エクストラ」の4種類。
スタンダード エアコン・パワステレス
2代目ピクシストラックの廉価(エントリー)グレード。装備を簡略化し価格を抑えたグレード。
先代では「スペシャル」という名前が廉価グレードだったが、2代目では名称が「スタンダード」に変更され、かつエアコンやパワステが標準装備となった。
「スタンダード エアコン・パワステレス」は、名前の通りエアコンは標準装備するものの、パワーステアリングをレス仕様(非装備)とした廉価グレード。
外装では樹脂タイプのドアミラー&ドアハンドルを。快適装備ではパワーウィンドウ、キーレスエントリーも非装備となる。
UVカットガラスやAMラジオは標準装備で、ボディカラーはホワイト1色のみ。先代同様にMTには副変速機が付かない。
スタンダード
2代目ピクシストラックのエントリーグレード。
「スタンダード エアコン・パワステレス」に比べてパワーステアリングを標準装備。
パワーウィンドウやキーレスエントリー、後部ガラスのプライバシーガラスはオプション設定で選択可能とし、快適装備が豪華になる。
ボディカラーは「ホワイト」以外にメーカーパックオプション(選べるボディカラー)を選択すると豊富な全8色に増加。
選択できるボディカラーは「トニコオレンジメタリック」、「ミストブルーマイカメタリック」、「ライトローズマイカメタリック」「ブライトシルバーメタリック」「ブルーマイカメタリック」「ブラックマイカメタリック」「オフビートカーキメタリック」
これは昨今流行りの”農業女子”のニーズを狙ったもので男性だけでなく一部の女性ユーザーもターゲットとした軽トラになっている。
これ以外に選べるカラーパックではドアミラーとドアハンドルがシルバー塗装となる。
スタンダード 農用スペシャル
上記スタンダードグレードをベースに農家向けに特化させたグレード。スズキ・キャリィの農繁仕様と同じ位置づけ。
農用スペシャルでは農道などの急勾配やぬかるみに対応できるよう、副変速機にスーパーデフロックを標準装備。さらに繁忙期の収穫や荷物運搬に対応すべく重荷に耐えうるリヤ4枚リーフスプリングを標準装備としする。
快適装備ではパワステとエアコンを標準装備。キーレスエントリーとパワーウィンドウは非装備(オプション選択可)で、5MT&4WDのみな硬派な仕様となる。
ボディカラーはスタンダードと同じくセットパックオプション選択時は最大全8色。
スタンダード SA Ⅲt
2019年10月追加の新グレード。スタンダードグレードをベースにスマートアシストⅢtを標準装備した新グレード。
自動ブレーキのほか、VSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステム(4AT仕様のみ)も標準装備となる。
スタンダード 農用スペシャル SA Ⅲt
2019年10月追加の新グレード。スタンダード農用スペシャルにスマートアシストⅢtを標準装備した新グレード。
自動ブレーキのほか、VSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステム(4AT仕様のみ)も標準装備となる。
エクストラ
ピクシストラックの上級グレード。内外装や快適装備が豪華なカスタム仕様。
外装ではメッキフロントグリルにボディ同色ミラー&アウタードアハンドル、フォグランプを標準装備。
快適装備ではパワステ、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーに2スピーカーなどを標準装備(※オーディオはレス仕様)。シート表皮もファブリックシートとなり、アイドリングストップシステムも標準装備となる。
ボディカラーはスタンダードより少し減り全5色(※セットパックオプションが選択不可でトニコオレンジメタリック、ミストブルーマイカメタリック、ライトローズマイカメタリックが非設定)。
このほか4WD仕様ではリヤ4枚スプリングを標準装備。4WDの5MTには副変速機のほか、デフロックも標準装備となる。
エクストラ SA Ⅲt
2019年10月に新設定の最上級グレード。
それまでのエクストラグレードにスマートアシストⅢtを標準装備化したグレードで、以後はエクストラがこのグレードに置き換わった。
それまでのエクストラの装備に追加でスマートアシストⅢtやVSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステム(4AT仕様のみ)が標準装備となる。
2代目ピクシストラック 前期型の一部改良など
2014年12月一部改良
2014年12月には新セットオプション「エコパック」を追加設定。リアのディファレンシャルギアをハイギア化し、MTに副変速機を追加したことで低燃費と静かな走行を実現。
2016年10月一部改良
インパネのメーターやスイッチの表示のデザイン変更を実施。
同時にセットオプション「選べるカラーパック」の仕様変更を実施。ボディカラーは「ブルーマイカメタリック」を廃止。
入れ替えで新色の「アーバンナイトブルークリスタルメタリック」と「マスカットグリーンメタリック」を追加。
カラードドアアウターハンドルはボディ同色に、カラードドアミラーをブラック塗装(「ブライトシルバーメタリック」選択時は従来通りボディ同色)にそれぞれ変更。
インテグレートCD・AM/FM付ステレオを省く代わりに、シルバー加飾のオーディオ/ヒーターコントロールクラスターを追加。「スタンダード」(エアコン・パワステレスは除く)は「エクストラ」に標準装備しているスモークドガラス(リアウインドゥ)も追加。
2017年11月一部改良
2017年11月の一部改良ではLEDヘッドライトが廉価グレードの「スタンダード”エアコン・パワステレス”」以外でオプション選択可能となった。
このほか全グレードにEBD付きABSを標準装備化。このほかリア牽引フックの取り付け構造やガードフレームのT字フックが追加された。
さらに4WD車の5MT仕様のみに設定されていた13インチホイール&145R13 LT 6PRラジアルタイヤのメーカーオプションを廃止。
加えてボディカラーが一部変更となり、「選べるカラーパック」設定色から「アーバンナイトブルークリスタルメタリック」と「マスカットグリーンメタリック」が廃止。入れ替えで「ファインミントメタリック」が追加された。
2018年5月一部改良
衝突回避支援システム「スマートアシストIIIt(以下、スマアシIIIt)」が新採用。スマアシⅢt選択時はVSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステム(4AT仕様のみ)も標準装備となった。
また、新たなセットパックオプションとして「LEDパック」を新設。LEDヘッドランプ、LEDフォグランプ、メッキフロントグリルをひとまとめにした。
さらに「選べるカラーパック」選択時にはフロントウインドウにIR&UVカット機能を追加。ビューティーパック選択時にはトップシェイド機能が追加。
グレード体系が若干変更され、上級のエクストラはスマアシⅢtが標準装備となったことで名称が「エクストラ SA Ⅲt」に変更。
スタンダードや農用スペシャルにはスマアシⅢtを標準装備とした新グレード、「スタンダード SA Ⅲt」、「スタンダード 農用スペシャル SA Ⅲt」が追加された。
2019年10月一部改良
2019年10月の一部改良ではそれまでジャンボのみに標準装備だったLEDヘッドライトを「スタンダード”SA IIIt”」、「スタンダード”農用スペシャル SA IIIt”」、「エクストラ”SA IIIt”」、「ハイルーフ”SA IIIt”」グレードにに拡大して標準装備化。
さらに一旦廃止されていた「スタイリッシュパック」がLEDフォグランプ(メッキベゼル付)とメッキフロントグリルの新構成で復活設定した。
2020年9月一部改良
スマートアシストⅢt搭載グレードで新規にバックソナー標準装備化。AT車に装備されている誤発進抑制制御機能は前方に加えて後方にも対応した。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。先代のデザインを継承しつつ、少しヘッドライトを上部に移動させなおかつ切り込み形状を鋭角にすることでシャープさを演出している。
軽トラとしては軽トラの中でも対応が遅くなっていたマルチリフレクター化を果たしライトを点灯しない昼間の見た目もかなり良くなった。トヨタ版のデフォルメは特に無くエンブレムがトヨタエンブレムに変更されている程度である。
上級のエクストラではメッキフロントグリルとメッキガーニッシュ付きフォグランプを標準装備する。
サイドから。こちらも特に変更はない。
足元は12インチ鉄チンホイール。タイヤサイズは先代と同じく145/80R12LT。
リア。後ろにかけてはフルモデルチェンジでもほとんど変更が無い。軽トラのリアは他の軽自動車と違
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジン・トランスミッション・駆動方式など
エンジンはKF型3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は46ps/5700rpm。最大トルクは6.1kg/4000rpmを発生。
エンジン以外にミライーステクノロジーを適用し高圧縮&低速トルク重視のエンジンで、燃費に貢献。トランスミッションは5MTまたは4AT。駆動方式はFRまたはパートタイム4WD(一部グレードではデフロック付き)となる。
その他にサスペンションを見なおしたことでノーズダイブ減少を低減している。さらにキャリイトラック同様に防錆化を強化したり、樹脂パーツを採用するなどで飛び石による塗装剥げの対策も行っている。
自動ブレーキについて
デビュー当初は自動ブレーキの設定が無かったが、2018年5月の一部改良で衝突回避支援システム「スマートアシストIIIt(以下、スマアシIIIt)」を新採用。軽トラに最適化したスマアシⅢとステレオカメラとソナーセンサーを用いることで軽トラでも自動ブレーキによる安全性能を高めた。
さらにスマアシⅢt選択時はVSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステム(4AT仕様のみ)も標準装備となった。
2020年9月の一部改良ではバックソナーも標準装備化。AT車の誤発進抑制機能が後方にも対応した。
セットパックオプション「エコパック」について
2014年12月に新規追加されたセットパックオプションの「エコパック」は、リアデファレンシャルギアをハイギア化し、MTに副変速機を追加するオプション。
これにより特にMT車では高速巡航時のエンジン回転数が低下し、静粛性と燃費性能が向上する。
スタンダードとエクストラの2WD・MT車に選択可能。
インテリア(内装)
インパネ。トヨタマークのステアリング以外はベースと同じ。2代目ではシンプルなデザインは踏襲しつつ、インパネデザインが変更され、特にインパネセンター部分に横長の収納スペースが誕生し、使い勝手が向上した。
エアコンは全車マニュアル式エアコンを標準装備する。
5MT。ATの場合もMTと同じくフロアシフトとなる。
ベースと同じく4WDの一部モデル(スタンダードを除いた農用スペシャルやエクストラ)では、ハイ・ロー切り替えが付いている。スズキのキャリイトラック同様にレバー式だ。
スピードメーターは商用らしくシンプルなデザイン。タコメーター無しの単眼式は先代よりも文字盤が拡大化され見やすさがアップ。右側には液晶パネルが追加された。
運転席の様子。上級のエクストラグレードではシート表皮がファブリックシートとなる。
2代目ピクシストラックのまとめ
2代目ピクシストラックはベースの10代目ハイゼットトラック同様にスタイリッシュになった軽トラックである。
違いはエンブレムのみしかないのだが、他のピクシスシリーズ同様にトヨタエンブレム効果で少し雰囲気が違って見える不思議な軽トラである。
もし純粋に農業用軽トラとして10代目ハイゼットトラックを考えているのならエンブレム違いのトヨタ版を買うのも面白いだろう。特に軽トラというユーザーが限られるジャンル&商用モデルでは他人と被ることが多く、少しでも違いを出すにはOEM版を買うという選択肢もありえるはず。
軽トラでも他人と被りづらいブランドが欲しい場合、有用な選択肢のひとつとなりうる。
この後のマイナーチェンジではFR用CVTを搭載し、AT免許でもデフロック付きの軽トラが乗れるようになり機能性が大幅向上する。MTが乗れない人で農作業に従事する場合は、2代目前期よりも2代目後期モデルがオススメだ。

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