ミラはダイハツのハッチバック型軽自動車。本稿では7代目のL275SおよびL285S型系のデビュー当初である2006年12月~2011年6月までを前期型とし、これを扱う。
7代目 ダイハツ・ミラとは?
2006年12月にフルモデルチェンジし、7代目となったダイハツ・ミラ。
軽自動車新規格から数えて3回めのフルモデルチェンジであり、先代の居住性を重視したパッケージングを継承しながら愛嬌のある可愛らしいデザインとなった。
7代目ではエンジンやプラットフォームを一新し、クラスを超えた軽乗用車を目指して開発。コンセプトは「街乗りクオリティ・ミニ」でダイナミックかつフレンドリー感あふれるデザインと、乗り降りのしやすいパッケージング、優れた低燃費などが大きな特徴だ。
ミラは先代の6代目からムーヴのような全高を与え室内空間が飛躍的にアップしたが、7代目では新設計により室内長、室内幅、室内高をもうひとまわり拡大。
外観上は全高が30mmほどアップした程度だが、室内長は1895mmから2000mm。室内幅は1300mmから1350mm、室内高は1250mmから1265mmとなるなど背の低いハッチバックタイプながら優れた居住性を与えている。
もちろんムーヴやタントでは不可能な立体駐車場に入る高さ(全高1530mm)も健在で、従来のニーズに答えられるパッケージングとしている。
デザイン面でもそれまでの保守的なデザインから一新。フレンドリー感あふれるスタイリッシュかつダイナミックなデザインとなり、内装もシンプルながら上質感を高めたのものとした。
エンジンはエッセから採用された新開発のKF型エンジンを採用。一部グレード(最上級のXリミテッド)ではアイドリングストップ機構を採用し、FFのCVTモデルで25.5km/L(10.5モード)の優れた低燃費を実現した。
なお、先代では商用バンと乗用モデルが同時フルモデルチェンジだったが、この7代目では先行して乗用モデルが先にデビュー。商用バンは遅れること1年後の2007年12月にフルモデルチェンジとなった。
前期・7代目ミラのグレード L,X,Xスペシャル,Xリミテッド,スマートドライブパッケージ、TX、TLの違いなど
7代目前期ミラのグレード展開は下から順に「L」、「X」、「Xスペシャル」、「Xリミテッド」、「Xリミテッドスマートドライブパッケージ」が設定されていた。
軽貨物のミラバンは「TL」と「TX」の2種類。
特別仕様車は「メモリアルセレクション」、「Lセレクション」、「XリミテッドER」がある。
なお、ターボ仕様はカスタムモデルの「ミラカスタム」のみに設定。標準ミラとは差別化がなされる。
TL
7代目ミラバン(軽バン)の廉価グレード。TXグレードよりも一部装備が簡略化され価格を抑えたグレード。
出典:トヨタ認定中古車
TXと比較してTLではセキュリティアラーム、パワードアロック、キーレスエントリーが非装備。スモークガラスとABSはオプション設定。
快適装備のユースフルパック(パワーウィンドウ&フューエルリッドオープナー&助手席サンバイザー)も非設定。
ドアミラーは手動タイプで、樹脂タイプアウタードアハンドル(無塗装)にホイールキャップの設定が無い。
出典:トヨタ認定中古車
このほかパワステ、UVカットガラス(フロントウィンドウ)、デュアルSRSエアバッグ、マニュアル式エアコンは標準装備となる。
ボディカラーはオフホワイトとブライトシルバーメタリックの2色のみ。トランスミッションは5MTと3ATを設定。
7代目ミラバンについてはこちらから。
TX
7代目ミラバン(軽バン)の上級グレード。
TLで省略されていたセキュリティアラーム、パワードアロック、キーレスエントリーを標準装備。
パワーウィンドウや助手席サンバイザー、フューエルリッドオープナーをセットにした「ユースフルパック」が選択できるようになる。
スモークガラスとABSはTLと同じでオプション設定。このあたり以外はTLと同じ。
7代目ミラバンについてはこちらから。
L
7代目ミラの廉価グレード。装備を簡略化し価格を抑えた安いグレード。ミラバンの装備に少し近い。
エクステリアでは手動ドアミラーにプライバシーガラスが非装備。13インチホイールキャップは標準装備。
インテリアでは大型1眼式メーター(タコメーター無し)、フロアシフト、レバー式サイドブレーキにバニティミラーは照明が省略される。
快適装備はマニュアル式エアコン。キーレスエントリーは標準装備。ABSがオプション設定。7代目ミラ・乗用モデルの中で唯一、5MTを設定するグレード。ATは3ATを設定。
なお、乗用モデルではミラバンで省略されていたパワーウィンドウ、パワードアロック、フューエルリッドオープナーは標準装備で、カラードドアハンドル、UVカットガラスがフロントドアにも追加。
インパネはツートンカラー、シート形状もヘッドレスト分離タイプとなるなど乗用車らしい内外装や装備となる。
X
7代目ミラのミドルグレード。Lよりも若干装備が良くなる。
エクステリアでは電動格納ミラー(リバース連動ドアミラー)にプライバシーガラスを標準装備。
快適装備はフルオートエアコンを標準装備。トランスミッションは4ATとなる。
Xスペシャル
2009年9月に追加設定したグレード。
Xグレードをベースに「スモークガラス」、「UVカットガラス」、「キーレスエントリー」を装備しつつ、お買い得としたモデル。
なお、価格を抑えるため本来であればXグレードではエアコンが「フルオートエアコン」だが、Xスペシャルでは「マニュアル式エアコン」に変更される。トランスミッションは4ATのみ。
Xリミテッド
7代目ミラの上級グレード。Xグレードよりも内外装が豪華になり、快適装備も追加装備される。
エクステリアではメッキグリル、LEDターンランプ付きドアミラー(リバース連動電動ドアミラー)を標準装備
インテリアでは瞬間燃費計付きの3眼式スピードメーター(タコメーター付き)、インパネシフト、足踏み式サイドブレーキ、バニティミラーが照明付きとなる。
快適装備は4WD仕様でリアヒーターダクトも標準装備となる。パワステはX以下とミラバンが油圧式に対し、電動式に変更される。
安全装備はEDB付きABSを標準装備。トランスミッションはCVTを採用。
Xリミテッドスマートドライブパッケージ
7代目ミラの最上級グレード。
Xリミテッドに追加でアイドリングストップシステムを搭載し、3眼式メーターにはマルチインフォメーションディスプレイを追加したグレード。2WDのみの設定。
特別仕様車 Lセレクション
2007年11月設定の特別仕様車。
Lセレクションはベーシックな(最廉価の)Lグレードがベース。
外装では電動格納式ミラー、スモークガラス(リアドア&リアクォーターガラス&バックドアウィンドウ)、メッキグリル。
内装ではブラウンカラーのシート表皮を与え廉価グレードのLグレードよりも見た目や快適性をアップさせた特別モデル。
Lセレクションについてはこちらから。
特別仕様車 メモリアルセレクション
2007年8月設定の特別仕様車。ダイハツの創業100周年を記念する記念特別モデル。
メモリアルエディションではXグレードをベースに上級グレードのみに設定されたCVTを標準搭載。
エクステリアではメッキグリル、電動格納ミラー、スモークガラスを標準装備。
インテリアではタコメーター付き3眼式メーター、専用インテリア(ブラウンシート表皮、ブランメタリックのセンタークラスター)、キーレスエントリーなどを装備しつつも価格を抑えたお買い得モデルとなっている。
メモリアルセレクションについてはこちらから。
特別仕様車 XリミテッドER
2009年4月設定の特別仕様車。
上級グレードのXリミテッドをベースに運転席シートリフター、チルトステアリング、アジャスタブルショルダーベルトアンカーなどの快適装備を採用しつつ、お買い得とした特別モデル。
ERとは「Economy&Reasonable」の頭文字からとったもので「エコノミー」の環境と「リーズナブル」の手頃なという2つの意味が込められている。
XリミテッドERについてはこちらから。
7代目ミラ・L275S/L275VとL285S/L285Vとの違い
7代目ミラL275SとL285S、およびミラバンL275VとL285Vの違いは駆動方式。L275SとL275Vは前輪を駆動するFFのミラ。L285SとL285VはL275をベースに全部のタイヤを駆動する4WDのミラとなる。
ただし4WDに関してはジムニーやパジェロミニなどの本格軽SUVとは異なり、基本はFFで、前後の回転差が生じた時(滑った時など)に4WDとなるビスカスカップリングを用いたパッシブタイプのオンデマンド4WD方式。
なお型式の「V」は軽貨物のバンを意味する記号で、乗用タイプであればここが「S」となる。
エクステリア(外装)
フロント
フロントデザイン。先代では台形のヘッドライトがオーソドックスなイメージを持たせていが7代目ではこれを心機一転。3代目後期ライフのようなカーブを描いた異型ヘッドライトに変更された。
これによりフロントデザインはがらりと変わり、可愛らしさが演出された。歴代のミラは角型ヘッドライトが特徴だったので、このイメージがあるとこれはかなりのイメージチェンジである。
出典:Goo-net
2007年12月追加の商用バンや乗用モデルのLグレードやXグレードではメッキグリルは非装備。ドアミラーも商用バンとLグレードでは無塗装タイプの手動式となる。
サイド
サイドから。先代から上方向に高くなったが7代目でもこれを継承。ただし、先代で角張った感じの強かったボディラインは曲線とエアロフォルムを加えて全体としてバランスの取れた形になった。
全高は先代よりも30mmほどアップ。立体駐車場に入る1530mmを維持しつつも設計を見直して室内空間が室内長、室内幅、室内高の3つすべてでひとまわり大きくなった。
サイド(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンのサイド。ドアミラーとドアハンドルカバーは非塗装で3ドアのみとなる。
ミラのホイールキャップ&タイヤサイズ
足元は13インチフルホイールキャップ。タイヤサイズは145/80R13。
ミラバンのスチールホイール&タイヤサイズ
商用バンでは13インチの鉄チンホイールでホイールキャップは無し。タイヤサイズは145/80R13。
セキュリティアラーム
セキュリティーアラームは商用バンのTLグレードを除いて全グレードで標準装備。
リア
リア。先代と同じ縦長のコンビランプだが、ウィンカー部とバックランプ部分を丸型にし先代のオーソドックスな感じからちょっと上質な感じを与えている。
ハイマウントストップランプも車内上部からボディ上部へと移動され、LED化された。
なお従来通りリアハッチ右側の「Mira」マークはエンブレムではなく、デカールタイプとなる。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは新開発のKF型直列3気筒DOHC12バルブ自然吸気エンジンのみ。ターボモデルはミラカスタムのみに設定されている。エッセから搭載された新世代エンジンで、
最高出力は58ps(43kW)/7200rpm、最大トルクは6.6kg・m(65N・m)/4000rpmを発生。
トランスミッションは3AT、5MT、CVTの3種類で、駆動方式はFFまたは4WDとなる。なお、上級グレードのXリミテッドスマートドライブパッケージではアイドリングストップ機構を備える。
安全装備として全グレードに運転席&助手席エアバッグを標準装備。ABSはLとXにオプション設定。Xリミテッドで標準装備する。
インテリア(内装)
インパネ(Lグレード)
出典:Goo-net
インパネ。先代同様にブラックとベージュを組み合わせたカラーリングでシンプルかつ上質なデザインを両立させた。5MTと3AT、4ATはフロアシフト。
インパネ(X、Xリミテッド)
出典:Goo-net
CVT(X、Xリミテッドなど)ではインパネシフト。ブラックメタル柄のセンターガーニッシュが追加されている。
インパネ(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンではブラックインパネとなる。
ミラの5MTシフト
出典:Goo-net
歴代から続く5MTも継続設定。全体的に安っぽいデザインだが軽トラとは違うシフトブーツによりちょっとだけ高級感がある。
スピードメーター(タコメーター無し単眼式)
スピードメーターも2種類あり、商用バンと乗用モデルのLグレードではシンプルな1眼メーター。
スピードメーター(タコメーター付き3眼式)
上級グレードではタコメーターと瞬間燃費計付きのものとなる(ミラカスタムと共通)。
フロントシート(乗用モデル)
出典:Goo-net
乗用モデルのフロントシートはセパレートタイプ。
フロントシート(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンのフロントシート。ヘッドレスト一体型のセパレートタイプ。
リアシート(乗用モデル)
出典:Goo-net
リアシート。この手の軽自動車としてはかなり足元が広い。
リアシート(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンのリアシート。乗用モデルよりも作りが悪く、あくまで補助的なシート。
ラゲッジスペース(乗用モデル)
出典:Goo-net
乗用モデルのラゲッジルーム。
ラゲッジスペース(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンのラゲッジルーム。荷物を載せることを前提とした商用バンのため、リアシートの足元をせまくし、変わりにラゲッジルームを広く取っている。
リアシート折りたたみ時のラゲッジスペース(乗用モデル)
出典:Goo-net
リアシートを倒した状態。シートは一体可倒式だ。
リアシート折りたたみ時のラゲッジスペース(ミラバン)
出典:Goo-net
商用バンのリアシートを倒した状態。乗用モデルより出っ張りが少なく、フラットに近くなる。
7代目前期ミラの総評
7代目ミラは先代のボディサイズを継承しつつちょっと上質に可愛らしくなったモデルである。
この手の軽自動車は商用バンとデザインを共有するため商用に耐えうるオーソドックス感が求められるのだが、デビュー当初のライバル、アルトと比べるとまだオーソドックス感があり、女性受けする可愛らしさも持っているため、かなりクセの強いヨーロピアンなアルトよりもこちらの方が無難でもある。
ただし、この後に燃費に特化したミライースが登場したことで価格の割に低燃費ともあって同じ形でターゲットも被るためミライース登場後はあまり力が入れられてないモデルであった。
中古市場では年数経過とタントなどのスーパーハイトワゴンに比べて人気が劣るため比較的買いやすい値段となっている。
モノによってはミライースを新車で買ったほうが安上がりな個体もあるがデザイン的にはこちらの方が可愛らしく、そこまで燃費を重視しないのであれば7代目ミラは考慮しても良いだろう。
OEMモデル 2代目プレオ
なお、株式会社SUBARU(旧・富士重工業)には2代目プレオとしてOEM供給された。
エンブレム以外はミラとほぼ同じなOEMモデルだが、5MTモデルやミラバン(プレオバン)もスバルにOEM供給された。タマ数は少ないが価格も安価なので、7代目ミラの5MTモデルが欲しい人は2代目プレオもマイナーながらオススメ。
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