R1はスバルのハッチバック型軽自動車。「プレミアムブラックリミテッド」はモデル末期に追加された特別仕様車である。
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スバル・R1とは?
2005年1月に登場したスバルのR1。先に登場したスバル・R2よりもさらに一回り小さく設計され、メインターゲットに子供が独立した世帯や女性を狙うプレミアムな軽自動車であった。
その特徴のひとつとして内部は2+2シーターパッケージ(メインの座席は2つで、リアは補助的なもの)の2名乗車を基本とする、パーソナルカーな設計となっている点。
エクステリアはフロントからルーフにかけて流れるような流線型ボディに張りのある曲面、躍動感のあるフォルムなど他社の軽自動車では見られないスバルらしい独創的なスタイリングが与えられた。
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インテリアでは2名乗車を基本としつつ、多彩なシートアレンジを持たせ利便性を向上。そのせまい室内空間では考えられないほどの使い勝手の良い室内空間を実現した。
また、内装にもこだわり、レッドとブラックのツートンカラーを基本としインパネやシート表皮、ステアリングなどに適用することで、軽自動車の枠を越えた上質なプレミアムコンパクトカーとした。
エンジンは電子制御スロットルやAVCSを採用した直列4気筒DOHC16バルブAVCS付自然吸気エンジンにi-CVTを組み合わせ、「力強く、スムーズな走り」と「優れた燃費性能」を実現。
4WD仕様車にはビスカス式を採用しつつ、同時に軽量・コンパクト、高剛性なリアデフユニットの採用で全体の重量増を抑え、4WDでも低燃費を実現した。
安全性能では卵のようなワンモーションフォルムを採用した新環状力骨構造ボディで高剛性と軽量化を両立。特にフロント・リヤフレームを高い位置にストレートに配置したことで、自車より大きな車と衝突した際に受ける衝撃を軽減する設計とした。また、EBD付きABSを全グレードに標準装備としている。
機能面ではダイヤル式シートリフター、大開口な左右ドアの採用、助手席にシートバック機構を取り入れ、背面をテーブルスペースとして活用、リアのラゲッジスペース下部に深さ20cmのサブトランクを設けるなど小さいながらも使い勝手を良くしている。
そのR1は高い趣味性から全体的にR2より販売が伸びなかった。このころはスタイリングや性能よりもとにかくワゴンRやタントなど実用性が重視される傾向にあり、R2よりもひと回り小さいR1で、かつ基本2人乗りというパッケージではかなり厳しかった。
その販売不振が影響したのか、2008年4月にトヨタとの業務提携強化と共に軽自動車の撤退を発表。R1とR2も生産終了のはこびとなった。
R1 プレミアムブラックリミテッドとは?特別装備とノーマルとの違い
そのR1に2009年11月、生産終了前の特別仕様車が追加された。それがこの「プレミアムブラックリミテッド」である。
プレミアムブラックリミテッドでは自然吸気エンジンの「R」グレードとスーパーチャージャー付きの「S」グレードをベースにそれまで赤系だった内装を落ち着きのあるブラック系に変更。最終モデルに相応しいプレミアムな1台となっている。
エクステリアではノーマルと同じものの、インテリアでパールスエードと本革を組み合わせた専用ブラック色シート表皮、ブラック色本革巻ステアリング&本革巻きシフトノブ、アルミパッド付きスポーツペダル、フロスティパールの加飾インパネを特別装備し、ノーマルとも、アルカンターラ仕様とも異なる魅力を与えた特別仕様車となっていた。
エクステリア
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フロントデザイン。外装に関しては特に変更はなく、R1らしく個性的なグリルとヘッドライトが特徴だ。R2では後期型でグリルまわりの変更を行なったが、R1は個性を尊重しそのままとなっている。
フォグランプは標準装備で、HID(プロジェクター式ヘッドライド)はオプション設定。
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サイド。フロントはR2とほぼ同じだが、リアにかけてが独特のデザインとなっている。
足元もベースモデルと同じで「S」グレードベースでは15インチスポークデザインのアルミホイール、
Rベースではデザインの異なる15インチアルミホイールとなる。サイズはともに155/60R15。
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リア。このあたりも共通。
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R1はこの斜め後ろからの眺めが美しい。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは4気筒のDOHC自然吸気エンジンとスーパーチャージャー付きエンジンの2種類。
「R」グレードベースの自然吸気エンジンは直列4気筒DOHC AVCS(可変バルブタイミング)自然吸気エンジンを搭載。
最高出力は54ps(40kW)/6400rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4400rpm。
「S」グレードベースのスーパーチャージャー仕様では後期型のためレギュラー仕様となり、最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.5kg・m(93N・m)/4000rpm。
トランスミッションはCVTのみで、スーパーチャージャー仕様では7速マニュアルモードが備わる。駆動方式はFFまたはビスカスカップリング式4WDの2種類。スバル伝統の4輪独立懸架も健在だ。
このほか安全装備としてはEBD付きABSとSRSエアバッグが標準装備となっていた。
インテリア
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インパネ。プレミアムブラックリミテッド最大の特徴がインパネ。ノーマルでは赤系を貴重としたちょっと派手なデザインだったが、ブラックの名前にもある通り、落ち着きのあるブラック系で統一されている。
「R1が欲しいんだけどあの赤い内装は…」といった人にうってつけな仕様だ。これ以外にアルミペダル、本革巻ステアリングホイール、本革巻シフトレバーを標準装備。インストルメントパネルはフロスティパールで飾られている。
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本革巻ステアリングホイールと本革巻シフトレバー。写真は自然吸気モデルだが、R2のスーパーチャージャー仕様と同様に過給器モデルではCVTのシフトレバーにマニュアルモードが備わる。
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プレミアムブラックリミテッドのスピードメーター。自然吸気エンジンでも3眼独立式メーターが備わる。
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フロントはセパレートタイプ。プレミアムブラックリミテッド専用のブラックシート表皮で、メインがパールスエード、サイドには本革を用いた上質なシートとなっている。R1のそれまでのシートというと赤系アルカンターラのイメージがある人とってはとても新鮮だ。
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リアシート。基本は2名乗車なので補助的なシートと考えたほうが良い。
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ラゲッジルーム。このままでは狭いが、
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リアシートを倒すと実用的な広さに。基本はこの状態で使うのがベスト。R2ではフルフラットにならないがR1ではラゲッジルームの利便性が考慮されている。
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さらに助手席もこのように前に倒れるのでちょっとした長物なら意外と積める。
まとめ
R1のプレミアムブラックリミテッドはR1の最終モデルとして特別設定された最後のプレミアムなモデルである。
それまでの赤系に変わってブラック系の内装を用いたことでより万人受けできる仕様となっている。さらに自然吸気に加えスーパーチャージャー仕様も選択できたので、より多くのニーズに答えられるようになっていた。
実際、生産終了が告知され、このプレミアムブラックリミテッドが発表された際はそれまでの販売台数を大幅に上回る駆け込み需要が発生した。あまり売れなかったR1にはなんとも皮肉な話である。
中古市場ではR1自体が不人気だったこともあり自然吸気エンジンでは安い個体もあるがスーパーチャージャー仕様ではプレミアムが付いていて高価な個体もある。
そしてこの最終型の特別仕様車はその存在自体がレアでかつノーマルとは違う内装から人気が続いており、自然吸気エンジン仕様でも高値で取引されている。
特にタマ数が極端に少なく、そのスーパーチャージャー仕様ともなればさらに高値となりそうだ。ただ、もうこのような個性的な軽自動車はスバルから買えないことを考えると十分に価値のあるモデルといえるかもしれない。
奇しくも2015年あたりからスペース重視以外にスペースはそこそこで外観など個性的な軽自動車が人気を博してきた。これは軽自動車が新車全体の4割にもなり、他人とは違う軽自動車が欲しいというニーズや、各社似たような軽自動車が多い中買い替えの動機となるような個性を求める需要が出てきたところにある。
そのような市場ではこのR1は再び再評価されてもおかしくない存在なのかもしれない。かつてソニカやセルボSRなどプレミアム路線を謳った軽自動車は長続きすることなくいつの間にか消えてしまったが、結果的に時代を先読みしすぎていたようだ。
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