R2はスバルのワゴン型軽自動車。初代プレオの実質的な後継モデルである。本稿では昭和のR2ではなく、平成版のRC系R2について記述する。
出典:Goo-net
スバル R2とは?
2003年12月にデビューしたスバル・R2。
R2はそれまでの他の軽自動車とは一線を画するデザインと優れた燃費性能&衝突安全性、合理的なパッケージング、使いやすくキビキビとした走りで新しいミニカーの価値を追求したモデルである。
エクステリアは航空機をモチーフにした「スプレッドウィングスグリル」を採用。フロントからリヤにかけて流れるようなボディシルエットや張りのあるボディ形状によりスポーティーでエレガントなフォルムを表現。個性豊かな11色のボディカラーを設定。
インテリアはにボディカラーにあわせたアイボリーとブラックの2種類のインテリアカラーを。暖色系ランプ&LEDを用いたインテリア照明で上品さを追求。
パッケージングは衝突安全性を保ちながら後席の乗員にも配慮。前席の乗員スペースを重視した設計とした。
出典:Goo-net
安全面ではワンモーションフォルムの採用でタマゴのように衝突を効率的に吸収できる形状とした。また、フロント・リヤフレームの高さを合わせることで自分よりも重たい車との衝突を軽減。
軽自動車でありながら2004年の試験時に衝突安全性能評価で運転席・助手席ともに星5つ(ファイブスター)を獲得している。
このほかセイフティペダルやシート形状をむち打ちを軽減する構造のものを標準で採用。さらにオプションではフロントアクティブセイフティシートも用意。ISO FIX方式チャイルドシートへの対応にテザーアンカーも標準装備。
ボディ前部は歩行者との衝突に対応した衝突吸収構造を採用した。また、EBD(電子制御制動力配分システム)付ABSを「R」および「S」に標準装備。「i」グレードではオプションとした。
エンジンは新開発のEN07型DOHC16バルブAVCSエンジンに初代プレオからあるSOHCエンジンと同じくDOHCインタークーラー付きスーパーチャージャーエンジンの3種類を設定。
DOHCの自然吸気エンジンではAVCS(アクティブバルブコントロールシステム:可変バルブタイミング)の採用により、「力強く、スムーズな走り」と「低燃費」を高次元で両立した。
トランスミッションはi-CVTと5MT(※自然吸気エンジンのみ)の2種類を用意し、スーパーチャージャー搭載車にはマニュアルモードを設定した。
前期型R2のグレード一覧 i、iプラス、iカジュアル、R、S、カスタムR、カスタムタイプS R、カスタムタイプS Sグレードの違いなど
前期型R2のグレード展開は自然吸気エンジン・廉価グレード「i」、「iカジュアル」、自然吸気エンジン・上級「R」、過給器・上級「S」などを設定。
このほか特別仕様車には「iプラス」、「カスタムi」、「カスタムR」、「カスタムタイプS R」、「カスタムタイプS S」などが設定されていた。
グレードにより搭載エンジンが異なり、廉価グレードは「4気筒SOHC自然吸気エンジン」、上級グレードは「4気筒DOHC自然吸気エンジン」、過給器タイプは「スーパーチャージャー付き4気筒DOHCエンジン」となる。
5MTの設定もあるが自然吸気エンジン系グレードのみの設定で、スーパーチャージャー仕様ではi-CVTのみ。過給器グレードではスポーツ&マニュアルモード付きi-CVTを採用する。
i
前期R2の廉価グレード。価格を抑えた一番安いグレードで、内外装がRやSグレードよりも簡略化される。
エクステリアでは13インチスチールホイール+ホイールキャップで、フォグランプはオプション設定。
インテリアでも
- マニュアル式エアコン
- 単眼式スピードメーター(タコメーター無し)
- ボディカラーによりアイボリー&グレー内装またはブラック内装
など、ベーシックな装備となる。快適装備や安全装備も
- ABS
- UVカットガラス
- リアプライバシーガラス
- 電動格納式ドアミラー
- 運転席シートリフター
がオプション設定。
搭載エンジンも安価で一番パワーの無い4気筒SOHCエンジンを搭載し、コストが抑えられていた。
※2004年11月一部改良でフォグランプは標準装備化
特別仕様車 iプラス
2004年6月設定の特別仕様車。上記iグレードに追加で充実装備を追加しつつ、お買い得としたモデル。
iグレードに追加でiプラスでは
- インテグレーテッドCDプレーヤー&AM/FMチューナー(2スピーカー)
- 電動格納式リモコンカラードドアミラー
- UVカット機能付濃色ガラス(リヤドア・リヤゲート)
- 運転席シートリフター(ダイヤル式)
- フロントフォグランプ
- 運転席&助手席バニティミラー(照明付)
を特別装備する。
iカジュアル
2004年11月の一部改良で追加された新グレード。iグレードよりもさらに価格を抑えてお買い得感を高めたもの。
iグレードではデビュー当初、リアのプライバシーガラスがオプション設定だったが、この時の一部改良で標準装備となった。
R
前期R2の自然吸気エンジン・上級グレード。iグレードよりも内外装やエンジンが豪華になり、質感も高くなる。
エクステリアでは
- 14インチアルミホイール
- リアプライバシーガラス
- フォグランプ
- プロジェクター式ディスチャージヘッドランプはオプション設定
を標準装備。インテリアや快適装備でも
- タコメーター付き2眼式スピードメーター
- 運転席シートリフター(ダイヤル式)
- ABS
- ボディカラーによりアイボリー&グレー内装またはブラック内装
- シート表皮はジャージー&トリコットのコンビシート
などを標準装備し、iグレードよりも質感が高くなる。またエンジンも4気筒DOHC(ツインカム)自然吸気エンジンとを搭載し、最高出力やトルクがiグレードのエンジンよりも若干高くなり、高回転域の伸びが良くなる。
S
前期R2の過給器(スーパーチャージャー)搭載の上級スポーツグレード。
Sグレードではスーパーチャージャー付きのDOHCエンジン(ハイオク仕様)に7速マニュアルモード付きCVTを装備する最上級のスポーツモデル。
エクステリアでは
- フォグランプ
- 15インチアルミホイール(Sグレード専用デザイン)
- プロジェクター式ディスチャージヘッドランプはオプション設定
- フロントスタビライザー
を標準装備。インテリアでは
- タコメーター付きスピードメーター
- 7速マニュアルモード付きスポーツシフト
- ボディカラーによりアイボリー&グレー内装またはブラック内装
- シート表皮はジャージー&トリコットのコンビシート
- フルオートエアコン
などよりスポーティーな雰囲気が与えられている。
特別仕様車 カスタムi/カスタムR
2004年11月設定の特別仕様車。
スポーティーな専用フロントバンパー(フォグランプ付き)とクリアーサイドターンレンズを標準装備とし、それまでのR2とは異なるスポーティなカスタムイメージを与えた特別モデル。
ベースモデルはそれぞれ「i」と「R」グレードで共に外装には
- 専用フロントバンパー
- クリアーサイドターンレンズ
ボディカラーでは新色「トパーズイエロー」を含む全5色を設定。
内装では
- インテグレーテッドMD+CDプレーヤー&AM/FMチューナー一体オーディオ
(2スピーカー)
機能装備としては
- リヤドア、リヤゲートにUVカット機能付濃色ガラス
を標準装備とした特別仕様車となっていた。
特別仕様車 カスタムタイプS R/カスタムタイプS S
2005年6月設定の特別仕様車。
先に登場したカスタムiやカスタムR用のスポーティーなカスタム専用フロントバンパー&グリルにガンメタ塗装アルミホイール、ボディカラーにかつてのプレオRSに設定していたWRブルー・マイカなどを専用設定し、過給器モデルを追加してよりスポーティーなイメージを与えた特別モデル。
ベースモデルは「カスタムタイプS R」が自然吸気エンジンの「R」グレード。「カスタムタイプS S」がスーパーチャージャー付きエンジンの「S」。
それぞれ共通でエクステリアでは
- 専用フロントバンパー&グリル(フォグランプ付き)
- クリアーサイドターンランプ
- ガンメタ塗装アルミホイール
- UVカット機能付濃色ガラス(リヤドア・リヤクォーター・リヤゲート)
を与え、専用ボディカラーとしてインプレッサWRX・STiなどでお馴染みの「WRブルー・マイカ」と「チタニウムグレー・メタリック」の2種類を専用色として追加設定。
内装では
- タコメーター付きの独立3眼エレクトロルミネセントメーター
- インテグレーテッドMD+CDプレーヤー&AM/FMチューナー
- 本革巻ステアリングホイール
- 本革巻きシフトノブ
- 専用ブルーシート
を標準装備とし、内外装で前回登場の「カスタムi」や「カスタムR」よりもスポーティー感をアップさせた特別仕様車となっていた。
前期・R2のエクステリア(外装)
出典:Goo-net
フロントデザインはかなり特徴的で、遠くからでもひと目でそれとわかる個性的なデザインだ。斜め方向にひょろ長いまるでいきもののようなヘッドライトに、特徴的なフロントグリルが組み合わされ、他の軽自動車メーカーには全く存在しない唯一無二のデザインとなっている。
当時デザインを担当したのはアルファロメオでデザイン経験のあるアンドレアス・ザパティナス氏で、グリルの通称豚っぱな部分はその影響を受けていると噂されている。好き嫌いがはっきりと別れるデザインだが、個性的であることは間違いない。
出典:Goo-net
サイドから。一応ワゴン型に近いボディなのだが、全体的に流線型をなしておりフロントはフロントガラスからボンネットまで一直線に傾斜している。
リアも後部座席に進むにしたがって天井が少しづつ傾斜しており、こちらも他の軽自動車にはない独創的なデザインだ。サイドミラーも独特な三角形の形をしておりこれも特徴的。フロントのデザインと相まって愛嬌あるボディスタイルとなっている。
足元は「i」グレードが13インチホイールキャップ。
「R」グレードでは14インチアルミホイール。サイズは155/65R14。
最上級で過給器付きの「S」グレードのみ15インチアルミホイールで、サイズは155/60R15。
出典:ガリバー
リア。タイヤハウス部の出っ張りが他にはないデザインで独創的だ。コンビランプは上部に取り付けられ、この部分だけは三菱のi(アイ)に似ている。
テールゲートの中央の六連星もかなり大きく、ここがリアゲートの開閉ノブとなっている。グレード名を示すエンブレムは無く、シンプルにR2エンブレムが右側に付く程度。
テールランプの造形もコストがかかっており、オプションでクリアータイプも販売されていた。現在では絶版となり基調なオプション品で、ヤフオクあたりで高値で取引されている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは4気筒のNA・SOHCエンジン、NA・DOHCエンジン、スーパーチャージャー付きDOHCエンジンの3種類。
「R」グレードに搭載のDOHC自然吸気エンジンは最高出力54ps(40kW)/6400rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4400rpm。
廉価グレードとなる「i」グレードに搭載のSOHC自然吸気エンジンは最高出力46ps(34kW)/6400rpm、最大トルクは5.9kg・m(58N・m)/5200rpm。
「S」はインタークーラー付きスーパーチャージャーエンジンとなり、最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3200rpmのハイオクガソリン仕様。
トランスミッションはCVTまたは5MTの2種類だが、5MTを選べたのは廉価の「i」と中間グレードの「R」グレード(すなわち自然吸気)のみで、スポーツタイプには5MTの設定はない。
駆動方式はFFまたは4WDとなる。ABSは「S」と「R」に標準装備で、「i」ではオプション設定となっていた。
安全装備としては運転席&助手席エアバッグを全グレードに標準装備。
スバルR2 RC1型とRC2型との違い
R2のRC1とRC2の違いは駆動方式。RC1はボンネットにエンジンを配置し前輪を駆動するFFのR2。RC2はRC1をベースにビスカスカップリングを使って全輪を駆動する4WDのR2。
ただし4WDに関してはジムニーやパジェロミニなどの本格軽SUVとは異なり、基本はFFで、前後の回転差が生じた時(滑った時など)に4WDとなるパッシブタイプのオンデマンド4WD方式。
パートタイム4WDのようなタイトブレーキング現象が発生せず街乗りでは扱いやすいが、その分本格的な悪路走行には向いていないのでその点は十分注意されたい。
前期R2のインテリア(内装)
インパネ。ツートンカラーでシンプルにまとめてある。写真のものはベーシックの「i」グレードでタコメーター無しだがミドルグレードの「R」やスポーツタイプではタコ付きメーターが備わる。
インテリアカラーはiとRグレードがボディカラーによりアイボリー内装またはブラック内装。Sグレードはブラック内装で固定。
タコメーター付きはRとスポーツタイプのSで同じものだが、後期型のスポーツタイプは専用の3眼タイプになる。
マニアックな5MTの様子。もともとインパネシフトで設計されていたので旧来のフロアシフトでは後付感が半端無い。デザインも軽トラのようなシフトブーツが付いており外観のおしゃれなデザインとは相反する残念なポイント。
メインターゲットを女性としている車において扱いづらい5MTにどれだけの需要があったかはわからないが、トランスミッションの選択肢が多かった点は評価できる。
なおCVTのインパネシフトではこのようになる。エアコンはスーパーチャージャー搭載のSグレードのみオートエアコンで、iグレードとRグレードではマニュアル式エアコンとなる。
フロントシートはセパレートタイプ。ベンチシートが多くなる中、R2はセダンタイプゆえにセパレートタイプを採用していた。
リアシート。初代プレオよりは足元が格段に広くなったが、車の設計が室内空間を少し狭めにとって安全性を高めているため、同年代のライバル(ワゴンRやムーヴ)などと比べると横幅が若干狭くなっている。
特に4名フル乗車するとその違いは顕著で、乗車定員MAXで乗る場合やタント系のスペース重視で車選びをしている人は要注意である。あくまでもR2はデザインと衝突安全性に重点を置いていると考えて欲しい。
ラゲッジルームは少し狭め。
リアシートを倒せば広くなる。が、フルフラットにはならずラゲッジスペースとリアシートとで段差ができてしまう。
前期・R2の総評
前期型のR2は個性的なフロントに流線型のボディデザインが特徴の軽自動車である。
クセが強すぎるフロントは好き好きがかなり別れるが個性的であるのは確かなので気に入った人には長く愛せる1台だ。デビュー当初の前期型のフロントはあまりにも個性が強すぎたため後期型ではオーソドックスなグリルに変更されている。
全体のボディデザインは気に入ったのにフロントで躊躇してしまった人は是非とも後期型を確認して欲しい。後期であれば少なくとも前期のようなクセは減っているので違って見えるはずである。
トールワゴン全盛期にあえてセダンタイプのボディを選択し、高い衝突安全性に個性的なエクステリア、質感の高いインテリア、4気筒エンジンや4独サスペンション、i-CVTなどスバル持てる技術を満載して勝負を挑んだR2だったが、これが完全に裏目に出てしまい販売台数は振るわなかった。
その後はスバルの軽自動車自社生産撤退を要因づけたモデルにもなってしまい、マーケティングは大失敗したのだが、軽自動車史上の中でも唯一無二の個性や質感は現在でも通じる部分があり、マニアにはたまらないモデルともなっている。
スバルR2の中古車は安価で買いやすいが、近年はタマ数が減少
中古市場では不人気モデルと年数経過もあってかなり安価なモデルとなっている。特に同年代の他社モデルよりも安い価格が魅力だ。
デザインに一癖あるため万人受けはしないが、インテリアは上質でかつ4独サスペンションや4気筒エンジン、CVTのお陰で乗り心地や質感も良くコストがかけられた部分は安価な価格の割に満足感も高い。
R2は個性的で可愛い&長く愛せる中古の軽自動車をさがしている人には是非ともススメてみたい1台である。現在ではスバルの軽自動車は全てダイハツのOEMに切り替わってしまったので、2度とこのような軽自動車が出ることは無い。
ネックとしてはタマ数が以前よりもかなり減ってしまい、少し見つけづらくなったこと。不人気モデルゆえに解体や部品取りにまわった固体が多く、現存する中古車数は2023年6月時点で全国200台ほど。
中でも隠れた人気は5MTモデルで、その中でもタコメーター付きの上級Rグレードの5MTが人気。絶対的な速さは無いが、高回転までMTで引っ張って走る楽しさがあり、しなやかな乗り心地と4気筒エンジンの魅力を堪能できるグレードである。
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