プレオはスバルのワゴン型軽自動車。プレオRSはそのスポーティーモデルである。本稿では2001年10月マイナーチェンジ以降のモデルを後期型とし、これを扱う。
出典:Goo-net
スバル 初代プレオとは?
1998年10月の軽自動車新規格で登場したスバルのプレオ。
スズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱の各社が背の高い軽自動車(ワゴンR、ムーヴ、ライフ、ミニカトッポ等)をラインアップする中で最後発の登場であった。
ただし、そこはスバルらしく他車を真似るのではなくあえて全高を低めに設定し、「クラスを超えたコンパクトワゴン」というコンセプトのもとボンネットエリアを広く取ることで普通車のようなスタイリング(乗用ワゴンテイスト)と走りの良さを重視したパッケージグとなっていた。
グレード展開も幅広く、ヴィヴィオの後継とうこともあり商用のバンタイプから乗用はベーシックなモデルとスポーツモデルの3タイプを設定(スズキに例えるならワゴンRに商用バンとスポーツモデルを設定するイメージ)。資金力が乏しい弱小メーカーゆえの販売方法だった。
メカニズムはスバル伝統の4輪独立懸架式サスペンションにEN07型直列4気筒エンジンを採用。ベーシックなSOHCエンジンの他、加速と燃費を両立させたSOHCマイルドチャージャーエンジン、高圧加給のSOHCスーパーチャージャーエンジン、スポーティなプレオRS用にDOHCスーパーチャージャーエンジン(※燃料はハイオク仕様)を設定するなどその多様なラインナップに合わせて4種類のエンジンを用意していた。
トランスミッションもヴィヴィオ時代(ECVT)の問題点を改善させた「i-CVT」をATの全グレードで搭載。スポーティなRMとRSグレードでは7速マニュアルモードを備えた「SS i-CVT」でATながらスポーティな走りを実現していた。
また、ブレーキは全グレードでフロントにディスクブレーキ。RSではリアディスクブレーキを標準装備するなど独立懸架式サスペンションと合わせてコストカットとは無縁な豪華な足回りとなっていた。
プレオRSとは?特徴と標準プレオとの違い
そのスポーツモデルであるプレオRSはノーマルのプレオに対し、外観では
- 専用ヘッドライト(インナーブラック)
- 大型フォグランプ付き専用バンパー
- サイドアンダースポイラー
- リアスポイラー
- 専用リアバンパー
- アルミホイール
- 後輪ディスクブレーキ
内装でも
- 専用インパネ
- 専用シート
- タコメーター付き3眼式スピードメーター
- 7速マニュアルモード付きCVT
などを標準装備とし、エンジンはプレオの中でも最もスポーティかつパワフルなDOHC4気筒16バルブスーパーチャージャーエンジンを搭載するスポーツグレードである。
またボディも高性能エンジンに耐えるよう強化されており車重が標準プレオよりも100kgほど重たくなっている。
RSはデビュー当初から設定されたが、最初のモデルには5MTが無く7速マニュアルモード付きのCVTのみだった。それがこの後期型で5MTを追加設定。それまでのAT仕様に加え、一般的なMT仕様も選べるようになった。
後期型プレオRSとは?前期・中期プレオRSとの違いなど
後期型(最終型)プレオRSの特徴
プレオRSは2002年10月のマイナーチェンジで後期型(最終型)に移行。
出典:Goo-net
後期プレオRSではテールランプがマルチリフレクター化され、上部にはリフレクターガーニッシュが追加されよりスポーティな雰囲気がプラス。
それまでRSリミテッド専用だったハイマウントストップランプ付き大型リアスポイラーが標準装備となり、リアにかけての見た目が良くなった。
中期型(2002年9月以前)まではリアのテールランプがマルチリフレクターではないレンズカットタイプの旧式で古臭く、クリアータイプでも見た目があまり良くなかった。
さらに青系ボディカラーも前期のGC8型インプレッサの「ソニックブルーマイカ」から、GD系インプレッサの「WRブルー・マイカ」に変更し鮮やかさがアップ。
これらリアビューまわりを含めた変更が後期モデル最大の特徴である。
※ヘッドライトやグリル、フォグランプまわりは中期モデルと同じで、前期とは異なるスタイリッシュタイプに変更されている。
前期型プレオRSや中期型プレオRS、A型~C型、D型、E型の特徴や違いなど
初代プレオは通称A型からE型までが存在し、4回にわけて仕様変更やマイナーチェンジがあった。一般的にA型~C型までが前期型。D型~E型が後期型とされることが多い。
またD型以降の後期型でもテールランプまわりのデザインがD型とE型とでは異なり、内装もD型がブルー&ブラック系、E型はグレー&ブラック系で異なる。
A型 (1998年10月9日発売~1999年6月まで)
フロントのウィンカーとリアのウィンカーがオレンジ色のレンズタイプで、グリル内のエンブレムがPマーク。
ブルー系のボディカラーは「ラピスブルー・メタリック」でGC8インプレッサの純正色「ソニックブルー・マイカ」とは微妙に異なっていた。
B型(1999年6月23日一部改良~2000年10月5日まで)
MT車はクラッチスタートシステムが標準装備化され、遮音性能などの向上により、静粛性を向上。
C型(2000年10月6日一部改良~2001年10月8日まで)
フロントとリアウインカーをクリアーレンズ化。
大型リアスポイラーやガンメタのホイールが付いた特別仕様車「RSリミテッド」を発売。RSリミテッドではボディカラーにGC8インプレッサと同じ「ソニックブルー・マイカ」が選択可能だった。
D型(2001年10月9日一部改良~2002年10月8日まで)
フロントまわりの大幅なデザイン変更や走行性能の向上、機能装備の充実化を実施。
エクステリアでは
- ヘッドライトと車幅灯(ポジションランプ)のデザイン変更+インナーブラック化
- 前後エアロバンパーの大型化
- フロントフォグランプとウインカーを一体化
(インテグレーテッドフォグ&ターンランプ) - アルミホイールのデザイン変更
- フロントのエンブレムがプレオのPマークからスバルの六連星に変更
走行性能・足回りでは
- フロントクロスメンバーの強化(2WD車)
- ダンパーをKYB製からショーワ製に変更し、しなやかな乗り心地に
- タイヤのサイズアップ(155/55R14から165/55R14へ変更)
- 液入りエンジンマウントの採用により、微振動をおさえ、走りの質感を向上
- スーパーチャージャーのプーリー比の変更やカムプロフィール変更などにより、DOHCスーパーチャージャーエンジンのトルク向上
(99N・m<10.1kg-m>から103N・m<10.5kg-m>へアップ) - 7速スポーツシフトi-CVTのシフトスケジュールやマニュアルモードの変速比を変更し、よりスポーティな走りを実現
- CVTに登降坂制御を採用
- RSに5MT車を追加
機能装備では
- RS スポーツシフトi-CVT車にフットパーキングブレーキを採用
- スポーティなデザインのメーターパネルを採用
- ブルー&ブラックのスポーティな内装に変更
- RSにシートリフター、オートエアコン、電動格納式ドアミラー、オフディレイ式ルームランプ、防眩ルームミラーを採用するなど、仕様・装備を充実させ、快適性をアップ
このほかクリアテールやブルーリフレクターヘッドランプやGD系インプレッサと同じ「WRブルー・マイカメタリック」が特徴の特別仕様車「RSリミテッドⅡ」、廉価版の「LSリミテッド」を発売した。
E型(2002年10月8日一部改良~生産終了まで)
最終型は主にリア周りのデザイン変更を実施。
- テールゲート&テールランプの形状変更しマルチリフレクター化
- サイドウインカーのクリアレンズ化
- ブルー&ブラック内装を廃止し、ブラック&グレーに変更。
このほかRS専用ボディカラーにGD系インプレッサと同じ「WRブルー・マイカメタリック」を設定。
特別仕様車にはRSリミテッドに外観を近づけつつお買得とした「LSリミテッド」、ゴールド塗装のアルミホイールを標準装備とした「RSリミテッド」を発売。
後期プレオRSのエクステリア(外装)
出典:Goo-net
フロントデザイン。2001年10月マイナーチェンジではフロントににかけては前期から比べるとエンブレムが6連星になっている点と、新ヘットドライトの採用に、フォグランプおよびウィンカー球のデザイン変更(丸型へ)が大きなポイントだ。
前期ではエンブレムがPマークだったので、同年代のインプレッサと同じくブランドロゴとなってスバルであることを強調するデザインに。
それ以外にもヘッドライトがブラックメッキ化されよりスポーティーな雰囲気に。さらにフォグランプまわりもブラックアウト化され前期型よりも差別化がよりなされた。
出典:Goo-net
サイドから。このあたりは特に変更点はなし。
出典:Goo-net
足元はアルミホイールを標準装備。後期型ではアルミホイールのデザインが変更された。この他にプレオRSでは標準で後輪ブレーキはディスクブレーキが採用されている。
軽自動車でディスクブレーキは珍しく、Keiワークスや4代目までのアルトワークスなどごく一部の車でしか採用例がない。この点は希少だ。
RSリミテッド2ではブラックカラーのアルミホイールを標準装備。2003年6月マイナーチェンジのRSリミテッドではこれがゴールド塗装となる。
出典:Goo-net
リア。後期型(※2002年10月マイナーチェンジ~)最大の特徴がリアのデザインで、中期型までは旧来のレンズカットが入ったコンビランプだったのに対し、高級感のあるインナーメッキを使ったマルチリフレクタータイプに変更されている。
その上には長い反射板を備えデザイン的にもインパクトを与えるものとなっている。中には中期や前期の旧式タイプを好む人もいるが、軽自動車でさえリアのコンビランプにマルチリフレクターが採用されることが当たり前になった今日では、こちらのタイプでないと古臭さが全面に出てしまい見た目のマイナス点は大きい。
この点で後期型のリアは見た目が良い。この他に、2002年10月マイナーチェンジではそれまでリミテッドの専用装備品だったハイマウントストップランプ付き大型リアスポイラーをRSグレードでも標準採用。コンビランプと合わせてよりスタイリッシュ感をアップさせた。
出典:Goo-net
2001年10月~2002年9月までのRSのリア。スポイラーはRSリミテッドよりも若干小さめでハイマウントストップランプがないタイプ。コンビランプも前期型のレンズカットタイプとなる。
リアデザインのリフレッシュ前・後共にバックゲートの左側デカール(SUBARU PELO)は、エンブレムに格上げし右側に装着。
出典:Goo-net
このキラキラ感は涙目インプレッサのテールランプに通じるように感じるのは気のせいだろうか…
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはEN07型直列4気筒DOHCインタークーラー付きスーパーチャージャーエンジンのみ。最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3200rpm。
後期モデルでは前期モデルよりも最大トルクが向上している。
トランスミッションは5MTまたはCVT(7速マニュアルモード付き)で、駆動方式はFFまたは4WDとなる。なお、ガソリンはハイオク仕様となっていた。
安全装備は運転席&助手席エアバッグを標準装備するが、ABSはオプション設定となっていた。
プレオRSの燃料がレギュラーでなく、ハイオク(プレミアムガソリン)な理由
プレオRSは軽自動車の中でも珍しいハイオク仕様のガソリンを使用する。
これはプレオRSの前身モデルである、ヴィヴィオRX-Rに由来するもので、ヴィヴィオRX-Rに採用されていた高性能なEN07型4気筒DOHC16バルブインタークーラー付きスーパーチャージャーエンジンと同じものがプレオRSにも搭載されているためだ。
このエンジンは開発時にラリーなどのモータースポーツでの活躍を想定し、高出力を絞り出すために純正状態でハイオクガソリンを採用していた(※ヴィヴィオRX-Rの初期モデルはあまりにパワフルすぎて純正状態でも実測したら80馬力もあったことで有名)。
後継モデルであるプレオRSでも同じエンジンを採用し、ホットなスポーツハッチ路線で出力変更せずにそのままハイオクガソリンを使用する。
なお、プレオRSの後に出たR1やR2 スーパーチャージャー仕様でも当初はハイオク仕様だったが、後期モデルで最大トルクを抑え中速トルクや燃費重視にしたレギュラーガソリン仕様に変更された。
プレオRA1とRA2との違い
プレオRSのRA1型とRA2型との違いは駆動方式にある。RA1は前輪を駆動するFF(2WD)のプレオRS。RA2はRA1をベースに全輪を駆動する4WD(AWD)のプレオRS
プレオの4WDにはビスカスカップリングを用いたオンデマンド式が用いられ、普段はFFで走行し、悪路や雪道などで前輪と後輪との差分が発生すると自動的に4WDに切り替わる。
パジェロミニやジムニーのパートタイム4WDと比べると自分で切り替える必要がなく、タイトコーナーブレーキング現象も発生しないため、街乗り4WDには多く採用される。
なお、4WDはその特性上雪国で使われた固体が多く、中古で購入する場合は下回りのサビには要注意。
後期プレオRSのインテリア(内装)
インパネ。後期型ではインパネカラーを刷新。それまでブラックカラーのみだったものをスバルカラーであるブルーを加えてよりスポーティーな印象とした。
2002年10月マイナーチェンジでは再びブラックカラーに戻された。
インパネ右側のスイッチ部にスポーツシフトの切替スイッチを備える。
タコメーター付きの3眼式スピードメーター。これはマニュアルのスピードメーターだが、CVTでは7速の手動変速モードが備わり、このメーターにデジタル形式で1~7の数字を表示する。
出典:Goo-net
ミッションは5速MTと7速マニュアルモード付きCVTがある。CVTはステアリング付近に付くコラムシフトタイプだ。このCVTが大変良く、当時としては画期的だった。今では普通になりつつあるマニュアルモードだが、スバルではヴィヴィオで初採用され、プレオで7速化された。
海外メーカーの技術者がこの車にのり、オートマでありながらマニュアルのような感覚を味わえることに感動したそうだ。マニュアルにこだわりがないのなら、CVTでも良いだろう。
出典:Goo-net
フロントシートはセパレートタイプ。後期型ではブルーを基調とするスポーティーなシート表皮に変更された。また、ドアトリムクロスもブルー系に。
出典:Goo-net
2002年10月マイナーチェンジでは、後期型のブルー系シートからグレー系へカラー変更。
出典:Goo-net
リアシート。
出典:Goo-net
2002年10月マイナーチェンジ以降のリアシート。ノーマルと同じくリアの足元は狭い。ともにスライド機構は非装備。
出典:Goo-net
ラゲッジルーム。
出典:Goo-net
リアシートを倒した状態。
後期プレオRSの総評
出典:Goo-net
初代・プレオRSの後期型はリフレッシュされよりスポーティー感が強まったフロントデザインに、マルチリフレクター化されたコンビランプ(※2002年10月マイナーチェンジ以降)、5MTの追加と刷新された内装など前期型よりも魅力が高まったマイナーチェンジとなっている。
特に外観にこだわる人にとってはマルチリフレクターコンビランプの採用は大きなポイントで、これがあるだけでもあまり古さを感じさせない部分なので中古で選ぶ際は重要なポイントとなる。
プレオRS自体は前期型と同様にヴィヴィオ時代の6速マニュアルモード(ヴィヴィオ-RX-SS)を進化させた7速CVTによる軽快な走りは当時の軽ATスポーツとしては珍しい機構で、MT車のようなフィーリングで走りを楽しめた部分が新鮮であった。
その後スズキやダイハツもCVTのマニュアルモードをスポーティーなグレードに採用するが、スバルは1998年10月時点でこれを実現。時代を先取りしたメカニズムであった。
これ以外にスーパーチャージャー特有の加速感や4気筒エンジン、4輪ディスクブレーキに独立懸架式サスペンションなど走り好きを好む人にとっては魅力的な部分が数多くあり、年数が経過した今でもコアなファンに人気なモデルとなっている。
中古市場ではその珍しさや人気から15年ちかく経過するモデルにもかかわらずそれなりの値段が付くタマが多い。状態が良いものであれば2003年(平成15年)式の最上級グレード、RSリミテッド2では走行距離が7.5万キロにもかかわらず60万円近く値がつくなど古い軽乗用車にしては高めの値段となっている。
ヴィヴィオほどの刺激的さは薄れたが箱型ボディの割にかなり加速力があり、4気筒DOHCターボの魅力は健在。それでいて荷物もそこそこ積めて走りも楽しめ、5MTはもちろんATもマニュアルモード付きCVTでシフトチェンジが楽しめるモデルである。
なお、リミテッド2の後には再度無印リミテッドなどが設定され、特別感を高めたモデルも設定されていた。
プレオRSの廉価版、プレオLSリミテッドは安価
初代プレオには最上級のRSとほぼ同じ外観で、SOHCスーパーチャージャーエンジンや一部装備を簡略化して価格を抑えた「LSリミテッド」が設定されていた。
DOHCスーパーチャージャーエンジンに比べると最高出力が60馬力のマイルド仕様で、かなり大人しく、7速マニュアルモードが無かったりアルミホイールが13インチになるなど、簡略化されていたが新車価格が10万円ほど安く、お買い得感のある仕様だった。
ガソリンもRSのハイオクに対し、LSリミテッドではレギュラー仕様とお財布に優しく、RSよりは燃費が良かったので街乗りオンリーであればLSリミテッドもそこそこ人気があった。
中古市場では年数経過からタマ数が減ってしまったがRSよりも安い価格で販売されているので、見た目重視で4気筒エンジンを楽しみたい人にも嬉しいモデルである。
プレオRSの後継はR2スーパーチャージャーやR1スーパーチャージャー、ステラなど
プレオはその後R2とR1が登場したことにより乗用モデルを廃止。軽バンも7代目ミラOEM直前まで生産され続けた。
プレオRS・直接の後継モデルとまではいかないものの、R2にはプレオRSと同じエンジンに過給器を搭載した「R2 タイプS」、「R1 S」などが設定されスポーティなWRブルーと合わせて男性を強く意識したグレードや特別仕様車が設定された。
またトールワゴンタイプの初代ステラには過給器仕様のステラLS、カスタムRSなどが設定され、いずれもプレオの後継モデルとして誕生した。
いずれもプレオRSのような過激さは無いものの、4気筒エンジンや独立懸架式サスペンションなどスバル製軽自動車のこだわりを感じられる個性的なモデル。中古市場で見かけた場合はこのモデル達もオススメしたい。
コメント