KeiはスズキのクロスオーバーSUV型軽自動車。Keiワークスはそのスポーツモデルである。本稿では2006年4月マイナーチェンジ(9型)以降を後期型とし、これを扱う。
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スズキ・Keiワークスとは?
2002年11月に登場したスズキ・Keiワークス。それまでスズキの軽スポーツモデルといえば「アルトワークス」が有名だった。
が、この時代はそれまでのベーシックな「アルト」や「ミラ」にかわり「ワゴンR」や「ムーヴ」など室内空間が広く実用性を重視したトールワゴンにシフトしており、かつてのホットモデルは販売低迷から生産終了となっていた。
一方でワークス復活を希望する声は少なからず存在し、その声に答える形でターボエンジンを搭載したKeiをベースとしたホットモデルを登場させた。それがこの「Keiワークス」である。
Keiというモデルそのものは1998年10月の軽自動車新規格に登場したスズキでは新ジャンルとなる軽自動車で、背の低いアルトをベースに最低地上高を少し上げてSUVの性格をもたせた「クロスオーバー」なモデルである。
ちょうど後継モデルのハスラーがあるが、Keiはその前進モデルで販売終了後も特に雪国では根強い人気を誇ったモデルである。
Keiはデビュー当初はジムニーとワゴンRやアルトの間を埋めるような位置づけのライトなSUVモデルであったが、2000年10月のマイナーチェンジ(中期型)で3ドアを廃止。
フロントデザインもファニーフェイス寄りに変更しSUV感を薄めた。これと同時にスポーツ色を全面に押し出した新グレード、「Keiスポーツ」を登場させた。KeiワークスはこのKeiスポーツに交代する形でデビューとなった。
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Keiワークスは専用装備として外装では
- 専用フロントグリル
- 専用バンパー
- 大型フォグランプ
- 大型ルーフエンドスポイラー
- サイドアンダースポイラー
- ローダウンサスペンション
- 15インチアルミホイール
- 4輪ディスクブレーキ
- 5MTのFFモデルではヘリカル式のリミテッドストップデフ(LSD)
を標準装備。
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内装ではブラックカラーをベースに
- タコメーター付きシルバーメーター
- 革巻ステアリングホイール
- ドイツ・レカロ社と共同開発した専用レカロシート(セミバケットタイプ)
を標準装備。リアシートもワークス専用のシート表皮とし、内外装で大幅にスポーティーな仕様としワークスの名前に相応しいテコ入れが行われたスポーツモデルとなっている。
後期型Keiワークスとは?前期型Keiワークスの違い
後期型Keiワークスの特徴
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そのKeiワークスは2006年4月のマイナーチェンジ(9型)で内装カラーなどを変更し後期型となった。
後期型では新たに「赤黒ツートンのシート表皮」を採用したほか、ヘッドライトに「マニュアルレベリング機構」を追加。「アルミホイールのカラー変更」の他に「助手席にシートバックポケット」を追加し。
ボディカラーにスイフトスポーツの「チャンピオンイエロー4」を設定するなどより魅力を高めたマイナーチェンジとなっている。
前期型Keiワークスと後期型との違い(6型~11型)
Keiワークスは6型から11型まで存在するが、上述のとおり2006年4月マイナーチェンジ(9型)以降とそれ以前では内装色が黒系と赤系で大きく異る。
また、前期にはレッド系のボディカラーが6型のみ存在したが、後期では完全廃止。スイフトスポーツでお馴染みのチャンピオンイエローは後期の9型のみで、設定期間が1年ほどとかなり短くタマ数が極端に少ない。
また、後期型では9型以降にヘッドライトにマニュアルレベライザーが搭載され、かつアルミホイールの色も明るいガンメタリック塗装からシルバー塗装へ変更。助手席にはシートバックポケットを追加するなど改良が施されている。
ちなみにWorksエンブレムの色は2種類あって、前期は赤と青。後期は赤のみとなる。
6型Keiワークスの特徴
ボンネットのエンブレムが旧Sマークで、リアゲートにはエンブレムでなく、SUZUKIアルファベットエンブレムが上部左側。KeiWorksエンブレムが右側。
ボディカラーには6型のみのレッド系(ブライトレッド2)の設定があった。
7型&8型Keiワークスの特徴
ボンネットのエンブレムが現行のSマークに変更され、リアゲートにもSUZUKIアルファベットエンブレムでなく、Sマークが中央に貼り付け。KeiWokrsエンブレムもリアゲート中央右側に移動。
Keiワークスエンブレムは赤色から青色へ変更。ボディカラーでは「ブライトレッド2」を廃止。
9型Keiワークスの特徴
KeiWorksエンブレムが再び赤色に戻され、アルミホイールがガンメタリック塗装からシルバー塗装へ。
内装ではシート表皮が赤と黒のツートン仕様に変更。革巻きステアリングもシルバーとブラックの2トーンとし、助手席シートバックポケットも追加。
ヘッドライトにマニュアルレベライザー(光軸調整機能)が追加され、ウィンカー部をマルチリフレクター化。フェンダー部分にはフェンダーウィンカーを増設し側面からの視認性を向上。
ボディカラーには9型のみの「チャンピオンイエロー4」が設定されていた。
10型Keiワークスの特徴
9型に設定されていた「チャンピョンイエロー4」を廃止。
後期・Keiワークスのエクステリア(外装)
フロント
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フロントデザイン。Keiワークス専用として大型フォグランプ付きバンパーと専用グリルを装着。
特にグリルは開口部が半分だけ空いた異型グリルで2代目アルトワークスや4代目後期ミラ・TR-XXアバンツァート、6代目前期ミニカ・ダンガンを連想させるデザインで昨今のモデルでは見ないものだ。
特にベースモデルはどちらかと言うと可愛らしいフロントデザインだったため、この変更点はかなり大きい。主に男性をターゲットしたスポーティなデザインに仕上がっている。
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なお、デビュー(2002年11月)から生産終了(2009年9月)までの約7年間にマイナーチェンジが5回あり、小変更が行われている。
後期型の9型Keiワークスでは限定色のチャンピョンイエローを設定(※ただし次の2007年6月(10型)で廃止)。
この黒いKeiワークスはデビュー当初(前期)の6型で、エンブレムが旧タイプのSマーク。エンブレムも赤色となっている。
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さらに6型では7型以降(2003年9月)で廃止(それ以降は復活せず)となった赤系の「ブライトレッド2」の設定もあった。
Keiワークスはイエローが希少と思われがちだが、この赤も実は希少カラーで特に赤いエンブレムと被ってあまりいい色とは言えなかった部分が不人気で、これも希少なのである。
7型のフロント
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7型(2003年9月)以降ではエンブレムを青に変更。スズキマークも現行の立体タイプに。
9型改良でウィンカーもマルチリフレクター化&レベリング機構搭載
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ヘッドライトは初期型ではヘッドライトのみマルチリフレクタータイプだったが、2006年4月の後期マイナーチェンジ(9型)でウィンカー部もマルチリフレクター化。加えて光軸角度を調整するマニュアルレベリング機構が備わった。
サイド
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サイドから。元々全高が少し高いKeiベースなのでアルトワークスと比べると腰高感がある。
ただし、ワゴンRよりは低く全高は1530mm。ノーマルよりも-15mmローダウン仕様のサスペンションが標準装備され適度に固い足回りとなっている(※ガチガチのスポーツ走行系のサスペンションではなく、街乗りで程よく固めのタイプ)。
デビュー当初はサイドウィンカーが無かったが後期型(9型)でノーマル同様に追加された。
フェンダー部分にはフロント同じエンブレムが左右に付く。このエンブレムは赤と青の2種類があり、デビュー当初の6型は赤。7型および8型で青に変更されたが後期型の9型以降で再び赤に戻った。
タイヤサイズ・純正アルミホイール
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足元は専用デザインの15インチアルミホイールを装着。サイズは165/60/R15でハスラーやキャストアクティバと同じサイズだ。後輪はワークス化に伴いディスクブレーキ化され軽自動車では珍しい4輪ディスクブレーキ仕様となっている。
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なお、このホイールも9型(2006年4月)で色が変更されガンメタからシルバー系となった。
リア
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リア。Keiワークス用の大型専用リアスポイラーとバンパーを装着。
軽自動車の純正品としてはかなり大きなスポイラーで迫力満点な装備となる。
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おな、リアにも小変更がありデビュー当初、前期の6型(2002年11月)では左側にSUZUKIエンブレム、右側にKeiワークスエンブレム。
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この後の前期7型以降ではSUZUKIエンブレムが無くなって中央にスズキロゴマークエンブレム、右中方にKeiワークスエンブレムとなる。
エンジン・機能装備など
エンジンはK6A型3気筒直列DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみ。
最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.8kg・m(106N・m)/3500rpm。
トランスミッションは5MTまたは4ATで、駆動方式はFFまたは4WD。FFの5MTモデルでは純正でヘリカルLSDが付く。
車重は最軽量の5M&FFモデルで790kgと4代目アルトワークス(RS/Z)の5MT&FFよりも100kg程度重たい。このためアルトワークスほどの刺激的な加速力は無く、しばし批判される部分でもあった。
また、4WDシステムは他のスズキの軽自動車と同じビスカスカップリング式でタイヤが空転すると後輪にも駆動が伝わり、基本はFFとなるタイプだ。
ただしスズキの場合は微妙に常時後輪にも駆動力が加わっているため、ときおりフルタイム4WDと呼ばれる場合がある。
Keiワークスの持病
このビスカスカップリングだが、耐久性に問題があり走行距離や使用具合によってこのビスカスカップリングから異音がするトラブルが数多く報告されている。
この部品は2代目と3代目ワゴンR(MC系とMH系)、5代目アルト(HA系)、初代アルトラパン(HE系)などでも部品を共有していたのだが、この車種すべてで部品の延長保証が行われたぐらいで、スズキの持病ともいえる有名な部品となっている。
前オーナーが修理しているか確認したほうが良いだろう(自費で修理するとリビルド品で5万円前後、新品で7万前後+工賃がかかる)。
後期・Keiワークスのインテリア(内装)
後期インパネ
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インパネ。基本設計が古い車のため年式の割にデザインがチープな感じが強い。後期モデルでもインパネのデザインは同じ。
後期の本革巻きステアリング
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ステアリングは本革巻きステアリング。9型マイナーチェンジでカラーがツートンタイプとなった。
スピードメーター
スピードメーター。ベースモデルは黒系の背景だっためシルバーメーターでスポーツな印象だ。ただし専用品ではなく同年代のワゴンRと同じタイプとなっている。
シフトノブ
5MTのシフトノブ。デザインが古臭く残念な部分。社外品のシフトブーツが出ているので交換すると見た目が良くなる。
ATは旧来の4ATタイプ。マニュアルモードも無く昨今のスポーツモデルと比べるとあまりオススメできない仕様となる。
キーレスエントリー
Keiワークスのキーレスエントリー。この時代のスズキのキーレスは施錠と解錠が一体型のタイプで、ロックしたのかそれとも解除したのかは現物を見ないと確認できない。この点はちょっと不便だ。
後期・Keiワークス純正RECAROシート
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フロントシートはセミバケットシートタイプ。スズキとレカロの共同開発による専用シートで骨格をスズキが。シート生地をレカロ社から供給を受けて作られたもの。
バケットシートと比べるとサイドのサポートが弱いが街乗りメインだと扱いやすくまた遠出で長距離を乗ってもレカロ生地のおかげで腰の痛みが殆ど無いすぐれもの。
後期型の9型マイナーチェンジ以降ではシートカラーがブラック&レッドのツートンカラーとなった。
リアシート
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9型以降リアシート。リアの足元はワゴン系に比べるとかなり狭め。これはベースモデルのKeiが後部座席の居住性よりもラゲッジスペースの使いやすさに重点を置いた設計のためで、特に昨今の軽自動車の後部座席を経験しているとかなり狭く感じる。スライド機構も無いためこの点は要注意だ。
もっとも基本2名乗車なら問題はないのだが。
ラゲッジスペース
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ラゲッジルーム。リアシートの足元が狭かった分ラゲッジルームは広い。
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リアシートを倒すと広大な荷室が。フルフラットにもなって扱いやすい。Keiワークスの高い利便性はここにある。
後期Keiワークスの総評
スズキのKeiワークスは前期型は平成15年に登場し、21年の生産終了まで微妙に改良されながら生産され続けた。
特に写真のチャンピョンイエローは18年にのみ設定されたスイフトスポーツと同じ色。人気かつ希少色で中古のKeiワークスの中でもレアである。
Keiワークスは歴代のワークスと比較すると絶対的な速さは無いものの、5MTモデルであればターボにより軽快に走ることができ、純正レカロシートのお陰で長距離ドライブも疲れづらく、乗って楽しい軽自動車の1台。
また軽自動車の中でも珍しい後輪ディスクブレーキの採用(他に軽自動車ではプレオRSなどで採用)などで所有欲を満たしてくれるメカニズムもマニア心をくすぐる部分である。
アルトワークスに比べるとどうしても腰高感があり、違和感を感じる人もいるかも知れないがその分ラゲッジスペースの積載能力は高く、実用性は高い特徴がある。
アルトワークス復活でKeiワークスは隠居のはずだった?
Keiワークスはアルトワークスが不在の間はホットなスポーティ軽自動車として隠れた人気があったが、2015年12月には5代目のアルトワークスが復活。5MTでターボ&スポーツモデルという優位性は薄れていた。
加速力も8代目アルトがベースなため700kgを切る車重から旧規格時代のような鋭い加速をみせ正真正銘の「ワークス」に恥じないホットハッチモデル。
ただしKeiワークスの後輪ディスクブレーキが付いてなかったりリアスポイラーが無いなど大人しい部分もあるため人によってはこちらが好みという人も居るはず。そういう人にとってまだまだ人気のモデルである。
特に性能の割に安いとはいえ150万以上するアルトワークスの新車は誰でも買えるわけではないので予算的に中古車しか買えないとい人にとっては有力な選択肢だった。
ただしそのアルトワークスも2021年12月・9代目アルトへのフルモデルチェンジ時は継続設定されることなく、6年ほどで生産終了となってしまった。
後継モデルの予定も無いことと、半導体不足などの生産・納期遅れの影響もあって5代目アルトワークスの生産終了後は中古価格が上昇。Keiワークスにも派生していた。
中古市場のKeiワークスは5MTが高い傾向 ATモデルは安価
MTターボで背の低いスポーツタイプやセダンタイプの軽自動車が減る中、中古需要からもKeiワークスの5MTモデルは値が下がりづらく年式や走行距離の割に高値で取引されやすい。
特にATモデルは年式や走行距離相応の値段なのだが、MTは例外。これは中古車で買う場合はAT仕様よりもMTモデルの方を買う人が多く、オートマのKeiワークスは価値が無い(需要が無い)ためである。
軽自動車ユーザーが女性も多かったことから市場に出回ったオートマ仕様車が数多くある割に、中古車としての需要は走りを求めるマニュアル車を求めるユーザーが多いため。
これは同じようなキャラクターのラパンSSと同じ現象で、今後も新車で買えるMTの軽自動車が減る中、軽バンや軽トラとは異なるセダンタイプや背の低めなスポーツ仕様のMTターボ車はそこまで値崩れすることなく、顕著に推移していくと思われる。
兄弟モデル マツダ ラピュタSターボ
なお、同年代にKeiがマツダへ「ラピュタ」としてOEM供給されていたが、このKeiワークスも「ラピュタ S ターボ」としてOEM供給されていた。
顔つきこそワークスではなく、Keiスポーツに近いが中身は全く同じでレカロシートやディスクブレーキ、大型リアスポイラー等を装着するスポーツモデルとなっている。マイナーなKeiワークスよりもさらにマイナーだが、部品流用などでは大いに活用できるだろう。
Keiワークスは実用性の高い街乗りワークスである。
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