KeiはスズキのクロスオーバーSUV型軽自動車。Keiワークスはそのスポーツモデルである。本稿ではデビュー当初の2002年11月~2006年5月までを前期型とし、これを扱う。
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スズキ・Keiワークスとは?
2002年11月に登場したスズキ・Keiワークス。それまでスズキの軽スポーツモデルといえば「アルトワークス」が有名だった。
が、この時代はそれまでのベーシックな「アルト」や「ミラ」にかわり「ワゴンR」や「ムーヴ」など室内空間が広く実用性を重視したトールワゴンにシフトしており、かつてのホットモデルは販売低迷から生産終了となっていた。
一方でワークス復活を希望する声は少なからず存在し、その声に答える形でターボエンジンを搭載したKeiをベースとしたホットモデルを登場させた。それがこの「Keiワークス」である。
Keiというモデルそのものは1998年10月の軽自動車新規格に登場したスズキでは新ジャンルとなる軽自動車で、背の低いアルトをベースに最低地上高を少し上げてSUVの性格をもたせた「クロスオーバー」なモデルである。
ちょうど後継モデルのハスラーがあるが、Keiはその前進モデルで販売終了後も特に雪国では根強い人気を誇ったモデルである。
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Keiはデビュー当初はジムニーとワゴンRやアルトの間を埋めるような位置づけのライトなSUVモデルであったが、2000年10月のマイナーチェンジ(中期型)で3ドアを廃止。フロントデザインもファニーフェイス寄りに変更しSUV感を薄めた。
これと同時にスポーツ色を全面に押し出した新グレード、「Keiスポーツ」を登場させた。その後KeiワークスはこのKeiスポーツに交代する形でデビューとなった。
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Keiワークスは専用装備として外装では
- 専用フロントグリル
- 専用バンパー
- 大型フォグランプ
- 大型ルーフエンドスポイラー
- サイドアンダースポイラー
- ローダウンサスペンション
- 15インチアルミホイール
- 4輪ディスクブレーキ
- 5MTのFFモデルではヘリカル式のリミテッドストップデフ(LSD)
を標準装備。
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内装ではブラックカラーをベースに
- タコメーター付きシルバーメーター
- 本革巻ステアリングホイール
- ドイツ・レカロ社と共同開発した専用レカロシート(セミバケットタイプ)
を標準装備。
リアシートもワークス専用のシート表皮とし、内外装で大幅にスポーティーな仕様としたモデルとなっている。
エクステリア(外装)
フロント
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フロントデザイン。ワークス仕様として専用となる大型フォグランプ付きのバンパーと開口部をしぼられた専用グリルを装着。
元々中期型Keiは女性受けするようなファニーフェイス寄りの顔つきだったが、この専用装備により攻撃的な厳つい顔つきに変貌した。
ヘッドライトはノーマルのKeiと共通。
7型改良でWorksエンブレムが変更&Sマークも刷新
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なお、デビュー当初はワークスのエンブレムがレッドだったが、2003年9月の小改良(7型)でエンブレムの色をブルーに変更。加えてボンネット中央に着いていたブランドロゴマークも旧来タイプから立体的なSマークに変更となった。
サイド&ローダウンサスペンション
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サイド。ワークス仕様としてサイドアンダースポイラーと-15mmのローダウンサスペンションを標準装備。このほかフロントグリルと同じエンブレムを前ドアに貼り付けた。
前期Keiワークスのボディカラー
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ボディカラーはデビュー当初は標準色として黒系の「ブルーイッシュブラックパール3」、赤系の「ブライトレッド2」、オプションカラーとして灰色系の「マジョーラミディアムシルバー」、白系の「パールホワイト」の4色を設定。
ただし、7型以降(2003年9月)で赤系の「ブライトレッド2」を廃止(それ以降は復活せず)となった。
Keiワークスはイエローが希少と思われがちだが、この赤も実は希少カラーで特に赤いエンブレムと被ってあまりいい色とは言えなかった部分が不人気で、これも希少なのである。
Keiワークスのタイヤサイズ・純正アルミホイール・後輪ディスクブレーキ
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足元は専用デザインの15インチアルミホイール(タイヤサイズはハスラーと同じ175/60R15)。ガンメタリックカラーでノーマルのKeiとはかなり印象が異なる。
後輪はワークス仕様としてディスクブレーキに変更。軽自動車としては珍しい4輪ディスクブレーキとなる。
リア
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リア。リアバンパーはKeiスポーツと同じタイプ。デビュー当初(6型)のエンブレムはリアハッチ右側にKeiワークスエンブレム。左側にSUZUKIエンブレムとなる。
2003年9月小改良(7型)ではSUZUKIエンブレムを廃止しリアハッチ中央にSマークエンブレムを。Keiワークスエンブレムもレッドからブルーに変更となった。
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このほかワークス仕様として大型ルーフエンドスポイラーを標準装備。軽自動車に付いている純正リアスポイラーとしてはかなり大きく、フロントデザイン同様にノーマルのKeiやKeiスポーツとの差別化がなされいてる。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはK6A型3気筒直列DOHCインタークーラー付きターボエンジンのみ。
最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.8kg・m(106N・m)/3500rpm。
トランスミッションは5MTまたは4ATで、駆動方式はFFまたは4WD。FFの5MTモデルでは純正でヘリカルLSDが付く。安全装備として運転席&助手席エアバッグとABSを標準装備する。
車重は最軽量の5M&FFモデルで790kgと4代目アルトワークス(RS/Z)の5MT&FFよりも100kg程度重たい。
このためアルトワークスほどの刺激的な加速力は無く、しばし批判される部分でもあった。また、4WDシステムは他のスズキの軽自動車と同じビスカスカップリング式でタイヤが空転すると後輪にも駆動が伝わり、基本はFFとなるタイプだ。
ただしスズキの場合は微妙に常時後輪にも駆動力が加わっているため、ときおりフルタイム4WDと呼ばれる場合がある。
Keiワークスの持病・ビスカスカップリングの故障
このビスカスカップリングだが、耐久性に問題があり走行距離や使用具合によってこのビスカスカップリングから異音がするトラブルが数多く報告されている。
この部品は2代目と3代目ワゴンR(MC系とMH系)、5代目アルト(HA系)、初代アルトラパン(HE系)などでも部品を共有していたのだが、この車種すべてで部品の延長保証が行われたぐらいで、スズキの持病ともいえる有名な部品となっている。
4WDのKeiワークスを購入する場合は、前オーナーが修理しているか確認したほうが良い(自費で修理するとリビルド品で5万円前後、新品で7万前後+工賃がかかる)。
試乗の際に駐車場等でハンドルを思いっきりきって曲がった時(4WD状態を作って)、後方から変な異音がしないか確認することをオススメする。
KeiワークスとBターボの違い
KeiワークスとBターボの違いは外装、内装、サスペンション、エンジン出力、後輪ディスクブレーキ、FFモデルにはヘリカルLSD、など多岐にわたる。
また年式によってBターボは60馬力仕様のタイプと、64馬力仕様のBターボと2種類ある。
それぞれ5MTのほか4ATが設定されたのもの同じだが、ATに関してはワークス専用設定がなされたATが入っており、ECUやATFの量も異なる。もちろん5MTのECUもBターボ用とでは異なる。
ただ、中古価格でも特に5MTのワークスは意外といい値段がするため、格安なBターボの5MTを買ってカスタムして楽しむというのもアリである。
特に雪国で冬期の積雪対策に最低地上高が少しでも高い方がいい場合は、ローダウンされたワークスでなくBターボを選んでもいいと思う。
インテリア(内装)
インパネ
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インパネ。ワークス仕様としてブラックをベースにオーディオパネルをシルバー塗装した。ステアリングもワークス仕様として本革巻きステアリングを標準装備。エアコンはマニュアル式エアコン。
スピードメーター
スピードメーター。ベースモデルは黒系の背景だっためシルバーメーターでスポーツな印象だ。ただし専用品ではなく同年代のワゴンRのカスタムモデル(RR)と同じタイプとなっている。
シフトノブ
マニュアルのシフトノブ。シフトブーツが軽トラのような旧来品でチープ感が漂う。
ATは旧来の4ATタイプ。マニュアルモードも無く昨今のスポーツモデルと比べるとあまりオススメできない仕様となる。
フロントシート(純正RECAROシート)
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フロントシートはセミバケットシートタイプ。Keiワークスの特徴のひとつとも言える部分でドイツ・レカロ社と共同開発したレカロシートを標準で採用している。
ただし、サーキットで使うようなガチガチのバケットシートではなく街乗りに便利なセミバケットタイプとなっている。
一説によれば骨組みをスズキが。シート生地をRECAROから供給されて作ったもので独特のクッション性により長距離運転でも腰に優しい代物となっている。アルトやミラなどの安いシートとはまったく異なる豪華な装備品である。
リアシート
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リアシート。後部座席はさすがにRECAROではないもののワークス専用のシート表皮が与えられ上級感が演出されている。
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ただしこのように足元がかなり狭いため、昨今の軽自動車のリアシートのイメージがあるとかなり辛い部分がある。またリアシートのスライド機構も無いため後部座席はかなり窮屈だ。
これはKeiの設計時に後部座席よりもラゲッジルームを優先したつくりになっているためで、あくまでKeiワークスは二人乗りメインと考えたほうがいい。
ラゲッジスペース
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ラゲッジルーム。リアシートの足元が狭かった分ラゲッジルームは広い。
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リアシートを倒すと広大な荷室が。フルフラットにもなって扱いやすい。Keiワークスの高い利便性はここにある。
前期型Keiワークスのまとめ
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KeiワークスはクロスオーバーSUVのKeiをベースに外装では専用フロントグリルに専用バンパー、大型フォグランプ、大型ルーフエンドスポイラー、サイドアンダースポイラー、15インチアルミホイール、ローダウンサスペンション、4輪ディスクブレーキ、5MTのFFモデルではヘリカル式のリミテッドストップデフ(LSD)を。
内装ではブラックカラーをベースにタコメーター付きシルバーメーター、本革巻ステアリングホイールにドイツ・レカロ社と共同開発した専用レカロシート(セミバケットタイプ)を標準装備。
リアシートもワークス専用のシート表皮とし、内外装でKeiスポーツよりもスポーティーな仕様とした軽スポーツモデルである。
アルトワークスと比べるとどうしても車重が重たい分刺激的な加速が無く、しばしけなされる部分があるもののKeiワークスがデビューした当時は冒頭にも述べたがワゴンRやムーヴなどの軽ワゴン全盛期。
硬派なマニュアル&ターボの軽スポーツモデルがほとんど無い状況で、マニュアルの軽スポーツといえばこの「Keiワークス」か「初代コペン」程度しかなかった。そのため軽自動車でもマニュアル&ターボという需要には少なからず応えられる1台であった。
Keiワークスはこの後2006年4月のマイナーチェンジ(9型)で内装を一新。
ボディカラーにスイフトスポーツと同じチャンピョンイエローを設定するなどの後期型に移行する。この変更により内装が派手になるためブラックの落ち着いた内装が好きな人は前期型を。逆に赤黒の内装が好みの人は後期型がオススメである。
中古市場では後継ともいうべき復活した「アルトワークス(5代目)」が登場しているもののマニュアル仕様だと依然と高値が続いている。
5代目アルトワークスとは荷室の使いやすさや後輪ディスクブレーキなど細かい部分でKeiワークスに魅力的な部分がありまた、中古車としてみた場合5代目アルトワークスよりも手頃なため意外と需要があるのかもしれない。
さらに9代目アルトがフルモデルチェンジした際にアルトワークスが継続設定されず現時点ではアルトワークスが絶版状態。半導体不足による納車待ちの影響もあって中古車全体が高値となる中、Keiワークスの5MTには手堅い需要&中古価格が高値となりやすい傾向がある。
ちなみにKeiはマツダのOEM版として「ラピュタ」があるがこの「Keiワークス」も「ラピュタ Sターボ」として販売されていた。
ただしKeiワークスのような攻撃的なフロントデザインとはならず、Keiスポーツに似た上品なデザインでマツダ風のデフォルメが与えられていた。中身はまったく同じためマニュアル&ターボを探している場合はあわせて「ラピュタ Sターボ」も探してみるといいだろう。
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