セルボはスズキのハッチバック型軽自動車。本稿では5代目・HG21S系の前期型(2006年11月~2009年4月)のターボモデルであるTおよびTXグレードを扱う。
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スズキ 5代目・セルボとは?
2006年11月にデビューした5代目セルボ。
初代は550CCの旧規格時代に登場し、そのあとも順調に代を重ね、歴史ある車種となっていたが新規格に移行する1998年10月の4代目を最後に生産が終了していた。それから8年後に車名を復活する形で登場したのがこの5代目セルボである。
かつてのセルボは一時期スペシャリティ路線で販路を見出そうとしたが、今回の5代目セルボも概ねそれに近いパッケージングになっている。
ボディスタイルはワゴンRのような全高を持ちつつも、全体が流線型を描く独特のスタイリングとなっており、カテゴリー的には背の高いアルト系ともいうべきハッチバックタイプに分類される(全高はKeiと同程度の1545mm)。
モデルコンセプトは「Fit on My Style」。乗ることや、所有欲など心の充足感をキーコンセプトに軽自動車のようなコンパクトな車が欲しいけど、ワゴンRなど既存の軽自動車では満足しない層(特に男性)をターゲットとしていた。
メカニズムではフロントサスペンションにスタビライザーとウレタン製のバンプストッパーを採用。加えて前後サスペンションのバネ定数や減衰力特性を最適にチューニングすることで、直進安定性だけでなく優れた操縦安定性を実現。快適な乗り心地と両立させた。
他には全グレードでゲート式フロア4ATを標準採用。ターボ仕様ではこれに4速マニュアルモードがプラスされる。
5代目セルボ(HG21S)のターボ(TおよびTSグレード)の特徴と違い
本稿で扱うターボモデルはデビューと同時に設定されたライトなスポーティーモデルだ。
出力はMターボで60馬力仕様ながら、軽自動車としては珍しいマニュアルモード付き4ATを備え、最上級のTXグレードではフロント&リア、サイドスポイラーにリアスポイラー(フルエアロ)をまとったスポーティーな外観と装備が特徴の上級グレードである。
セルボT/TXのエクステリア(外装)
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フロントデザイン。メッキグリル右側にターボ用のエアダクトが開けられている。ここがターボモデルの見分けるポイント(ただしSRを除く)。
これ以外に最上級のTXグレードではフロントアンダースポイラーとフォグランプが標準装備される。
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サイドから。TXグレードのみサイドアンダースポイラーを標準装備しフルエアロとなる。Tグレードではフロントおよびサイドアンダースポイラーは省略される。
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ターボグレード(Tグレード)ではスポーティーなデザインの14インチフルホイールキャップとなる。
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最上級のターボ仕様、TXグレードのみ14インチアルミホイールとなる。サイズはともに165/55R14。
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斜めの後ろ。TXグレードではリアスポイラーとリアアンダースポイラーが標準装備。
エンジン・機能装備・安全装備など
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エンジンはK6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジン。出力を抑え燃費と走りを両立させたマイルドターボとなり、最高出力60ps(44kW)/6000rpm、最大トルクは8.5kg・m(83N・m)/3000rpm。
後に64馬力直噴ターボエンジン搭載のセルボSRが追加されるが、このTおよびTXグレードでは控えめな仕様となっている。トランスミッションはマニュアルモード付き4ATのみで駆動方式はFFまたは4WD。
安全装備としてはEBDやブレーキアシスト付きABS、運転席&助手席SRSエアバッグを標準装備。自動ブレーキ等の装備は特になし。
セルボT/TXのインテリア(内装)
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インパネ。軽にしてはかなり落ち着いたデザインで、さすがスペシャリティ路線をうたうだけはある。同年代のワゴンRと比較しても高級なセダンというイメージ的なインテリアとなっている。
ステアリングは最上級のTXグレードのみ本革巻ステアリングホイール。Tではウレタンステアリングホイールとなる。
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シフトレバー。これも軽にしては珍しく段付きのデザイン。加えてTとTXグレードでは4速マニュアルモードが備わる。Dモード時に右に倒すとマニュアルモードに移行し、+または-に倒すとシフトアップorシフトダウンとなる。
スポーティーな走りを楽しむ以外に雪道など積極的にエンジンブレーキを効かせたい時にも便利だ。ただ、デザイン的にはかなりプラスチック感があり、安っぽく見える。
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スピードメーター。軽にしては落ち着いた感じでかつスポーティなタコメーター付き2眼式メーター。
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フロントシートはセパレートタイプ。昨今では珍しいサイドのサポートがわりかし多めなセミバケットのようなシートを採用。セルボがトールワゴンでなく、セダンタイプであることがはっきりわかる部分でもある。
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リアシート。残念ながらリアシートのスライド機構は付いていない。元々Keiの後継モデルとして設計された経緯もあり、リアシートの部分は似ている。ただし、ボンネットを切り詰め室内長がKeiよりも長く取られているため、後部座席の足元はKeiよりも広い。
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ラゲッジルーム。5代目セルボの場合、ラゲッジルームが広めに取られている。
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リアシートを倒した状態。
5代目 スズキ・セルボ T/TXグレードの評価
5代目セルボのTおよびTXグレードはスポーティな内外装にターボエンジンと、4ATながらマニュアルモードを備える珍しいモデルである。
今でこそCVTのマニュアルモードやスズキの5AGSなど走りを楽しめる機構がスポーティーグレードでは一般的になっているが、これはそれを4ATの軽自動車でも採用した珍しいモデルである。
ただ、肝心の走りはというと既にある4ATをマニュアルモード化しただけで、市街地はまだしも郊外の峠道等の登り坂で適切なギア比にならない場合もあり、この点は7速マニュアルモード付きCVTのセルボSRに劣ってしまう。
特にKeiワークスやラパンSSなどの5MT&ターボエンジンの組み合わせとは別物で、そのイメージがあるとこのSRでないターボグレードは大きく期待を裏切られるので十分注意が必要だ。
それ以外であればライトなスポーティー軽自動車として誰でも乗れるというメリットがある。トルコン式4ATにマニュアルモードが付いただけでも人によっては充分楽しめるモデルで、セルボSRよりも中古価格が安価という点もポイントだ。
ワゴンRでもムーヴでもタントでも無い独特のフォルムを持つ5代目セルボ。広さこそ前者に勝てないが、そこまでそれを求めないのであれば、他人と被らないという部分も含めてライトなスポーティーモデルの5代目セルボ(ターボ)を選んでみるのも悪く無い。
※個人的にはその独特のボディフォルムから初代MRワゴンからの乗り換え候補として有力だと思う
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