タントエグゼカスタムはダイハツのトールワゴン型軽自動車。タントエグゼのカスタムモデルである。本稿では2011年11月~2014年10月までを後期型と定義し、これを扱う。
概要
2009年12月登場のダイハツ・タントエグゼ。当時の売れ筋となった「タント」の派生モデルとして大人がゆったり乗れる軽自動車として開発されたモデルである。
タントの広々とした室内空間はそのままに、スライドドアを廃止しフロントはもとよりリアも上質なシートとしたことで、特にリアシートの座り心地とスペースの広さからくる快適性がウリのモデルであった。
シャーシーこそ2代目タントと共通であるものの、そのコンセプトから室内空間は異なる。タントでは居住空間やシートアレンジを優先したため、シート生地が安っぽくなっていたが、タントエクゼではその反対にシート生地が上質なものとなっている。
また、スライドドアを廃止したためタントよりも60kg程度軽量になっているのがベースのタントとは違う特徴だ。
そのカスタムモデルである「タントエグゼカスタム」は、タントエグゼをベースに専用ヘッドライト、専用グリル、専用フォグランプ付きバンパー、アルミホイール、クリアーコンビランプなどスポーティーな専用パーツにより外観を精悍かつスタイリッシュに仕立てたモデルである。
内装でもノーマルに対してブラック系のインパネとシート表皮とすることで上級感を演出。タントエグゼの中でもより男性向けとしたモデルであった。
後期型タントエグゼカスタムの改良点と前期との違い
2011年11月にはノーマルのタントエグゼと共にマイナーチェンジし、後期型に。
後期ではエクステリアでフロントグリルとバンパーやフォグランプまわりのデザインを変更し、より存在感の大きいデザイン変更。
メカニズムではミライースで開発された「e:sテクノロジー」から新エンジンと改良型CVT、停車前アイドリングストップ(エコアイドル)、エコ発電制御を採用したことで大幅な燃費向上を果たした。
インテリアではインパネのセンタークラスターをピアノブラック調に変更し、オーバーヘッドコンソールとセンターフロアコンソールのイルミネーション部分にメッキパーツを追加。
内装でも上級感あふれるマイナーチェンジとなっている。
後期型・タントエグゼカスタムのグレード カスタムG、カスタムRSの違い、おすすめグレード
後期タントエグゼカスタムのグレード構成は自然吸気エンジンで上級の「カスタムG」、上級ターボ仕様「カスタムRS」の2種類のみ。
前期タントエグゼカスタムには「Xグレード」や「Sグレード」が設定されていたが、後期モデルで「カスタムG」に集約された。
特別仕様車の設定は無かった。
カスタムG
タントエグゼカスタムのエントリーグレード。自然吸気エンジン仕様で、標準タントエグゼよりもスタイリッシュな内外装が特徴。
エクステリアではカスタム用ディスチャージヘッドランプ、フォグランプ、メッキグリル、エアロバンパー、サイドアンダースポイラー、リアスポイラー、LEDサイドターンランプ、クリアーコンビランプ、メッキドアモール、シルバー塗装アウターハンドルを標準装備。アルミホイールはGは14インチ。
インテリアではブラックインテリアにメッキ加飾が加わり、オーバーヘッドコンソールを備えるが、ステアリングはウレタンステアリング。
快適装備はキーフリーシステム、アジャスタブルパック(チルトステアリング、運転席シートリフター、アジャスタブルショルダーベルトアンカー)などを標準装備。
4WDではヒーテッドドアミラーとリアヒーターダクト、寒冷地仕様が標準装備となる。
カスタムRS
タントエグゼカスタムの上級グレード。ターボエンジンを搭載し、走行性能を向上させた最上級モデル。
エクステリアではカスタムGの装備に加えてアルミホイールが15インチ化。フロントスタビライザーやフロントベンチレーテッドディスクブレーキ、フロントスタビライザーも標準装備。
インテリアでは本革巻きステアリングにステアリングとオーディオパネルはピアノブラック加飾付き。シートも革調のアクセントを施した専用シートを採用し、6スピーカーシステムも標準装備。
4WDではヒーテッドドアミラーとリアヒーターダクト、寒冷地仕様が標準装備となる。
タントエグゼカスタムのおすすめグレードはRS
タントエグゼカスタムは、タントほどではなが車重が重たく加速性能が良くない。
自然吸気エンジンだとCVTといえど高速域の加速がもっさりしているので、遠出や高速道路を利用するなら素直にターボエンジンを搭載したRSがおすすめ。
上質な内外装に疲れづらいシートは長距離移動に適しており、ターボエンジンで走りも良くなるため、満足感が高くなる。
特に後部座席に人を載せて移動する場合は車重が増え、加速性能に影響するためパワフルなターボエンジンのRSがおすすめだ。
エクステリア
フロントデザイン。前期ではカスタムともいえどノーマルに近いデザインで、ムーヴコンテカスタムの前期のようによく言えば無難なデザイン。
悪く言えばオシの弱いデザインだった。それが後期型では存在感の大きい大型メッキグリルを装着したことにより、カスタムらしいオシの強さがプラスされた。
加えてバンパーの開口部に沿うようにメッキパーツを与えフォグランプやウィンカー球まわりも新デザインとしたこで、精悍さとスタイリッシュ感をアップさせた。
全体的にはこれこそカスタムというデザインに仕上がっており、派生元のタントカスタムにようやく近づいた感じだ。
なお、ヘッドライトはカスタム用のハイロー独立タイプで、ロービームは全グレードでディスチャージヘッドライトを標準装備。
参考までに前期型のデザイン。グリルまわりとバンパー、フォグランプあたりのデザインが異なる。
サイド。このあたりは変更点は特に無い。前期同様にスライドドアは非装備。全グレードでLEDターンランプ付きドアミラーとサイドアンダースカートを標準装備。
カスタムGグレードでは後期型・新デザインの14インチアルミホイール。タイヤサイズは155/65R14。
ターボ搭載の最上級、RSグレードでは15インチアルミホイールを採用。タイヤサイズは165/55R15となる。
リア。後期型ではコンビランプのブレーキランプを電球からLEDに変更。加えてデザインも中央の赤いレンズが無くなりクリアー部分が多くなった。
また、リアゲート左下には「エコアイドル」のエンブレムが追加された。これ以外は前期と同じで、メッキドアモールとリアスポイラーを標準装備する。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはKF型の3気筒DOHC自然吸気エンジンとそのターボ仕様の2種類。
自然吸気エンジンはグレード名「カスタムG」、ターボエンジンは「カスタムRS」となる。
自然吸気エンジンでは最高出力52ps(38kW)/6800rpm、最大トルク 6.1kg・m(60N・m)/5200rpmを発生。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.5kg・m(103N・m)/3000rpmを発生する。
トランスミッションは全グレードでCVTのみ、駆動方式はFFまたは4WD。NAエンジンでは上述の通り「e:sテクノロジー」から新エンジンと改良型CVT、停車前アイドリングストップ(エコアイドル)、エコ発電制御を採用したことで大幅に燃費が向上。
FFモデルではデビュー当初、21.5km/lだったものが27.0km/lまでアップしている(※ただし、10・15モード燃費)。
その一方でスマートアシストなどの自動ブレーキの設定は一切なく、ABS(EBD&ブレーキアシスト付)が付く程度となっている。
これはムーヴコンテと同じく、デビューしたのがまだ自動ブレーキが流行りだす前のためで、その後のマイナーチェンジでも追加されることはなかった。
ターボエンジンに関してはフロントデザインの変更を伴うマイナーチェンジでは自然吸気エンジンと同じ仕様とはならず、遅れて2012年5月マイナーチェンジで「e:Sテクノロジー」を適用。
最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.4kg・m(92N・m)/4000rpmと、特に最大トルクが1.1kg低下した。
これは同時に仕様変更された「後期型ムーヴコンテカスタム」と同じもので、顔つきは同じでもエンジン出力に違いがある点に注意されたい。
特に最大トルクが1.1kgも落ちてしまっているので、よりパワーが欲しい人や最大定員の4名乗車をメインと考えている人はよりパワーのある2012年4月前までのモデルがオススメだ。
タントエグゼL455SとL465S型との違い
タントエクゼカスタムL455SとL465Sの違いは駆動方式にある。L455Sは前輪駆動のFFモデル。L455SはFFベースの4WDモデルとなる。ただし、L455Sは本格的な4WDとは異なりいわゆる生活四躯(スタンバイ4WD)と呼ばれるタイプ。FFをベースにビスカスカップリングで後輪を駆動させる。
ジムニーやパジェロミニなどの本格4WDでは2駆と4駆を任意に切り替えるパートタイム4WDが採用されるが、スタンバイ4WDは必要なときだけ自動的に4WDに切り替わるので、燃費性能やコスト面、扱いやすさで有利なシステム。SUV以外の一般的な乗用車によく用いられる4WDシステムである。
このビスカスカップリングは消耗品で走行距離により寿命を迎える。よって過走行の4WDのL455Sタントエクゼカスタムを購入する際は特にカーブ等でビスカスカップリングから異音がしないかなど試乗して注意したほうがいい。
タントエグゼカスタムは燃費が悪い?
タントエグゼカスタムは軽自動車の中でも車重が870kg~970kgとかなりの重量級。
トランスミッションも前期には4ATを採用したグレードがあり、この時代のトルコン式ATは効率が悪く重量も重たい4WD&4ATモデルではさらに燃費が悪くなる傾向がある。
2011年7月以降の一部改良ではCVTを改良。エコアイドルやエコ発電、エンジンも改良型の第2世代エンジンを搭載する関係で燃費が良くなった。
そのためタントエグゼで燃費が気になる場合は、前期モデルでなく、2011年7月以降か、後期モデルの購入をオススメする。
価格の安い前期モデルを購入する場合で燃費が気になる場合は、4ATモデルでなくCVT搭載のグレードを選ぶように。
インテリア
インパネ。後期型ではセンタークラスターをピアノブラック調に変更。
また、オーバーヘッドコンソールとセンターフロアコンソールのイルミネーション点灯部分にメッキパーツを加え消灯時の高級感を演出した。
最上級のRSグレードでは本革巻ステアリングホイールとなる。なお、前期型と後期の途中までRSグレードで本革巻きのモモステが標準装備となっていたが、2012年4月マイナーチェンジで廃止、メーカーオプション化された。
スピードメーター。こちらは前期型と同じ。自然吸気エンジンでもタコメーターを備える。
ATのシフトレバーはコラムシフトを採用。
エアコンは全グレードフルオートエアコン。
天井部分にはオーバーヘッドコンソールを備える。カラフルLEDはオプション設定。
フロントシートはこの手では珍しいセパレートタイプ。タントエグゼと同様にこだわりのシートが奢られ、体を包み込むようなゆったりとしたシートとなっている。
最上級のRSグレードではシルバーの革調のアクセントを施した専用シートで上級な外観に。
このシートはタントエグゼの売りである「4席グラマラスコンフォートシート」と呼ばれるもの。ホールド性を持たせるためにサイドのサポートを多くし、かつ立体的なデザインに仕上がっている。これだと長時間乗っていても疲れづらい。
特に軽自動車では後部座席のシートが簡略化される傾向にあるがタントエグゼカスタムでは後部座席もフロントと同じように良いシートが使われている。
ノーマルモデルではシート生地がベージュ系だったが、カスタムでは高級感を出すために黒系へと変更されている。タントエグゼは男性でも乗れるよう、タントと言いつつもかなりキャラクターが異なっている。
リアシート。軽自動車のリアシートでは珍しくかなり作り込まれており、肘掛けも中央に備えている。
当時のCM(リリー・フランキー&北のきい)ではリアシートの豪華さを表現する内容となっていたが、まさにその通りで軽自動車でも特にリアに座りたくなる仕様となっている。
後部座席にもアームレストが標準装備で、快適性が高い。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめとタントエクゼの生産終了
タントエグゼカスタムの後期型は、前期ではカスタムらしくなかったフロントデザインが改善され上級感と存在感がアップ。自然吸気エンジンでは燃費が大幅改善するなどかなりの仕様変更となっている。
特にデザイン面では同年代の2代目タントカスタムに引けを取らないデザインとなっているので、こちらの方がカスタムのイメージが当てはまりやすく素直にカッコいいデザインといえるだろう。
タントは子持ちのママさんがメインターゲットだったが、タントエグゼは子持ちでない大人がメインで、そのカスタムモデルである「タントエグゼカスタム」は大人の男性がターゲット。
上級なシートと存在感の大きいフロントデザインでタントカスタムにはない魅力をもつ車種である。
なお、エンジンの部分で説明した通り、年式により出力特性が異なるためこの点は要注意である。
スライドドアを廃止し、タントの室内空間を子供のためのスペースから上級感あふれる大人の空間に持っていったタントエグゼカスタムだったが、同年代のムーヴおよびムーヴカスタムとキャラクターが被る部分が出てしまい発売2年後から販売台数が伸び悩んだ。
さらに3代目タントデビュー後は月500台を割り込む落ち込みようで、2014年10月には生産を終了することとなった。
デビューからおよそ5年ほどの短命となってしまったタントエグゼカスタムだが、車自体は決して悪いものではなく、上級なシートと広大な室内空間は普通車に負けない魅力があり、スライドドアが不要な背の高い軽自動車が欲しい人にとってはうってつけである。
後期型では若干値が張るものの、タントカスタムに比べると不人気ゆえか割安感があり、この手の軽自動車にしては買いやすい部類に入る。中古車としては隠れた名車かもしれない。
兄弟車:スバル・ルクラカスタム
タントエグゼカスタムは2010年4月にスバルへ「ルクラカスタム」としてOEM供給されている。
タントエグゼカスタムとの違いはエンブレム程度で、ほとんど同じなのだがタントエグゼカスタムよりもタマ数が少なく、とても被りづらい。
後期モデルの変更もタントエグゼカスタムとまったく同じで、前期よりもフロントデザインが精悍になる。
タントエグゼカスタムが気に入った人はエンブレム違いの兄弟車としてルクラカスタムを探してみるのも悪くない。
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