タントはダイハツのトールワゴン型軽乗用車。タントカスタムはそのカスタムモデルである。本稿では初代のL350およびL360S系に設定された特別仕様車「VS」および「VSターボ」を扱う。
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初代 ダイハツ・タントとは?
2003年11月に登場したダイハツ・タント。
それまでボンネット内にエンジンを持つ乗用モデルとしてはミラに変わって背の高いムーヴが売れ筋だったが、ムーブよりもさらに全高を上げ室内空間を徹底的に確保したのがタントだ。
軽自動車の規格で全幅と全長方向はすでに目一杯使ってしまっているので、残りの縦方向に拡大するという思い切った発想だった。
結果、全幅や全長はムーブと変わらないものの、高さが増えたことにより室内空間がとても広く感じられ、ムーブ以上の開放感を得ることに成功し街乗りをメインとする主婦層をターゲットに大ヒットとなった。
これはコンパクトカーやコンパクトセダンを凌ぐ広さで、感じ方によってはミニバンにも匹敵するかもしれない。
ボディは当時の最新鋭の衝突安全ボディのTAFを採用。超ハイテン材などの採用で強固なキャビンと軽量化を実現。
これにより当時の国内および欧州衝突安全基準を余裕をもってクリア。また、前面フルラップ55km/h、前面オフセット64km/h、側面55km/h、後面50km/hにおいても優れた安全性能を確保した。
安全装備としてはデュアルSRSエアバッグを運転席&助手席に標準装備。プリテンショナー&フォースリミッター(運転席可変)機構付フロント3点式ELRシートベルトも標準装備とした。さらに標準タントのLグレードを除いてABSを標準装備とした。
エンジンは自然吸気のEF-VE型エンジンとターボエンジンのEF-DETの2種類を設定。トランスミッションは電子制御式4ATを採用することで低燃費と優れた加速性能を両立した(※Lグレードの4WDのみ3AT)。
インテリアではライトグレーとベージュのツートンインパネカラーやシンプルなデザインのインパネを採用。また、シートもこだわりソファー感覚で座り心地の良いシートを採用。
スピードメーターも大型のものをインパネセンターに配置するセンターメーターを採用。さらにインパネATシフトの採用でサイドウォークスルーを実現した。
また、肌に優しいアトガード加工を施したシートカバー、消臭機能を持つトリプルフレッシュ加工を施したカーペットマットなど快適な室内空間を提供する用品をオプション設定。快適さにもこだわっている。
初代タントカスタムとは?特徴とノーマルとの違い
そのカスタムモデルとして2005年6月に登場したのが初代「タントカスタム」である。
タントカスタムではムーヴカスタムのようにノーマルとは異なる専用ヘッドライト、専用メッキグリル、専用バンパー(フォグランプ付き)、専用リアコンビネーションランプ、フルエアロなどで外装をドレスアップ。
内装でもブラックインテリアの採用やタコメーター付きの専用メーター等で上級感を高めたモデルとなっている。
なお、初代のタントカスタム(L350S/L360S)と2代目タントカスタム(L375S/L385S)では外観や内装のデザイン以外にスライドドアの有無が大きく異なる。
初代はスライドドアが非装備で追加の初代タントカスタムでもスライドドアが非装備だった。そのためスライドドア付きのタントを探す場合は必然的2代目以降となる。
初代タントカスタム(L350S/L360S)VS/VSターボとは?特徴と違いなど
そして初代タントカスタムに2006年11月、カスタムXとRSをベースに専用ヘッドライトや専用内装で差別化。ベースモデルよりも魅力を高めた特別モデルが設定された。
それがこの「VS」と「VSターボ」である。
VS仕様ではエクステリアに
- VS専用15インチアルミホイール
- VS専用メッキグリル
- 大径フロントベンチレーテッドディスクブレーキ (※RSには標準装備)
を標準装備。
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インテリアでは
- VS専用シート表皮(プロテインレザー&スエード調)
- オーバーヘッドコンソール (※RSには標準装備)
- リヤマップランプ(左右)&残照式ルームランプ (※RSには標準装備)
快適装備は
- トップシェイドガラス
- フロントスタビライザー (※RSには標準装備)
- キーフリーシステム(イモビライザー付)
採用。タントカスタムの精悍な外観にワンポイントをプラスさせる専用パーツよりタントカスタムの魅力をよりアップさせた特別仕様車となっている。
エクステリア
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フロントデザイン。VSではバンパーの開口部に4本のラインがプラスされた囲い状の専用メッキグリルが加わった。
ノーマルのタントカスタムX(自然吸気エンジン)では開口部を覆うだけのグリルだったので、専用メッキグリルでフロントの精悍さがアップ。RSでは似たようなメッキグリルだったが、2本のラインが4本に増えたことでさらなるドレスアップとなった。
特に初代タントカスタムは直線基調のヘッドライトと中央のメッキグリルの組み合わせだったため、バンパーにプラスアルファとなるメッキグリルがプラスされたことで上下でワイドな印象と高級車のような顔つきに変化した。この他VS仕様としてトップシェイドガラスを標準装備。
この他、ベース同様にロービーム側にディスチャージヘッドライトを標準装備。
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サイド。VS仕様としてカスタムRSベース(VSターボ)では特に変更点は無いのだが、自然吸気エンジンのカスタムXベース(VS)ではアルミホイールが15インチにグレードアップ。
さらにフロントスタビライザーも標準装備となった(VSターボはベースモデル(RS)に標準装備)。
VS専用デザインのアルミホイールに変更される。さらにターンランプ付きドアミラーとセキュリティーアラームはベース同様に標準装備。この他VS仕様としてキーフリーシステム(イモビライザー付き)を標準装備とした。
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リア。このあたりは特に変更点はなく、ノーマルと同じ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはEF型の3気筒DOHC自然吸気エンジンとインタークーラー付きターボエンジンの2種類。それぞれベースはカスタムXとカスタムRSとなる。
自然吸気エンジンは58ps(43kW)/7600rpm、最高出力6.5kg・m(64N・m)/4000rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6400rpm、最大トルク10.5kg・m(103N・m)/3200rpmとなる。
トランスミッションは4ATまたは3ATで、駆動方式はFFまたは4WDとなる(※ただし、自然吸気エンジンの4WD仕様のみ3ATで、ターボ仕様の4ATは電子制御式。自然吸気エンジンの4ATは油圧制御式)。
安全装備は運転席&助手席エアバッグ、EBD付きABSを全グレードに標準装備。ISO FIX対応チャイルドシート固定専用バー&アンカー(後席)、セキュリティーアラームも全グレード標準装備する。
スペアタイヤはオプション設定となっていた。
初代タントカスタムL350S型とL360S型との違い
L350SタントカスタムとL360Sタントカスタムの違いは駆動方式にある。
L350Sは前輪駆動のFFモデル。L360SはFFベースの4WDモデルとなる。ただし、L360Sは本格的な4WDとは異なりいわゆる生活四躯(スタンバイ4WD)と呼ばれるタイプ。FFをベースにビスカスカップリングで後輪を駆動させる。
ジムニーやパジェロミニなどの本格4WDでは2駆と4駆を任意に切り替えるパートタイム4WDが採用されるが、スタンバイ4WDは必要なときだけ自動的に4WDに切り替わるので、燃費性能やコスト面で有利なシステム。SUV以外の一般的な乗用車によく用いられる4WDシステムである。
このビスカスカップリングは消耗品で走行距離により寿命を迎える。よって過走行の4WDのタントカスタムを購入する際は特にカーブ等でビスカスカップリングから異音がしないかなど試乗して注意したほうがいい。
インテリア
インパネ。RSベースのVSターボではモモ製本革巻ステアリングホイールを標準装備。
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さらにVS仕様としてオーバーヘッドコンソールを標準装備とした(※RSベースは既装備)。
スピードメーター。このあたりはベースと同じ。
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フロントシートはベンチシートタイプ。VS仕様としてプロテインレザー&スエード調の専用シート表皮を採用。ノーマルではファブリックシートのみだったので、質感が高くなり特別感もある。
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リアシート。スライド機構付き。一方で初代なのでスライドドアは無し。
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ラゲッジルーム。
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リアシートを倒した状態。
まとめ
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初代・タントカスタムに設定された特別仕様車の「VS」および「VSターボ」は、初代タントカスタムのデザインにプラスアルファとなる専用メッキグリルと自然吸気エンジンでは15インチアルミホイール。
内装では専用シート表皮がプラスされるなど、初代のタントカスタムでは最もデザインの良いモデルとなっている。
ノーマルの初代タントはベーシックすぎる顔つきから、2代目や3代目と比較すると見劣りする部分があるが、初代のタントカスタムはシンプルなデザインにメッキパーツでそれがなく、かつ専用メッキグリルが加えられたVS仕様は2代目タントカスタムや3代目タントカスタムにも劣らない魅力ある外観となっている。
スライドドアが無かったり燃費や自動ブレーキなど最新モデルに敵わない部分はあるが、デザイン性やスライドドアが不要であれば中古車としてまだまだ魅力は十分にある1台といえよう。
中古市場では初代タントカスタムは年数経過もあってかなり買いやすい安価な中古車となっている。
スライドドアが無いものの室内空間の広さは初代から健在で、3代目のようなコテコテ感もなく、2代目よりもシンプルなデザインは好みの人には魅力なモデルかもしれない。
コメント
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詳しい説明、大変参考になりました!軽自動車の中古車を購入するにあたり、数ヶ月の間熟読させて頂きました。以前は中古車販売のサイト等をみていたのですが、知りたい情報が乏しいですし、インプレッション等も主観が強いですし、走りの面を詳しく知りたいわけではないので、やはりあまり参考になりませんでした。こちらは写真が豊富で文章も読みやすく、グレード体系も細かく掲載されているので、非常に参考になりました。色々なカタログを読んでいるみたいに、全ての記事、興味深く読ませてもらってます。年式の古い車から最新まで、様々な車を、どのように情報を集めて記事を起こしておられるのか分かりませんが、ご苦労様です。ほんとに参考になります!
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軽自動車の中古車を検討するにあたり、大変参考になりました!ここ数ヶ月間に渡り熟読させて頂きました。それまでは中古車販売のサイトやインプレッション等をみていたのですが、主観が強く、あまり参考になりませんでした。こちらは写真が多くあり文章も読みやすく、大変参考になりました!その他の記事もカタログを読む感覚で全て楽しんで読ませて頂いております。古い年式の車から様々な車の情報をどのように集めておられるのかな?と思いますが、ほんとにご苦労様です!こちらで読ませて頂いた情報を参考に、初代タントカスタムを愛車に選びました。ありがとうございました!
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みつさん、はじめましてこんばんは。コメントありがとうございます。
大したことないブログなんですが、参考にさせて頂いて嬉しい限りです。記事を書くモチベーションにつながります。こちらこそありがとうございます。
当ブログはインプレッション系の内容ではないのですが、軽乗用車そのものの魅力が伝わるように場合によっては1グレードにわけて外観や内装、メカニズムなどを中心に書いています。いろんなところから調べて文章を起こすため、調べきれなかったり記事よって抜けている部分、間違いもあるかもしれませんので、お気づきになったらコメントでご指摘いただけると幸いです。
初代のタントカスタム。僕もお気に入りでして、(記事本文でも書きましたが)ベーシックな感じとそれでいて派手すぎないカスタム感のバランスのとれたデザインだと思います。2代目以降のスライドドアがなかったり、燃費性能や自動ブレーキなど最新モデルに敵わない部分はありますが、室内空間の広さは初代から健在でかつ中古価格がハイト系のカスタムモデルの中では比較的安いという魅力も捨てがたいですね。
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これまでワゴンR RRのMC21Sに乗っていました。今回こちらの記事を参考にし、また実車を見て黒のタントカスタムに決めました。とにかく車内の広さにびっくりです。ノンターボモデルですが、僕にはなにも不満なく乗れてます。前のワゴンRはローダウンしており、とにかく突き上げ感が強かったので・・・(笑)
タントカスタム、大事に長く乗っていきたいです。年末に向け、磨き倒します(笑)
寒くなってますので、体調に気を付けて取り組んで下さいませ。クルマは購入しましたが、これからも楽しみに読ませて頂き、コメントさせて頂きたいです。
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ワゴンRのMC21S(RR)から初代タントカスタムにお乗り換えなら、相当広く感じるでしょうねぇ。僕の愛車はKeiワークスなんですが、2代目タントの助手席に初めて乗ったときは圧倒的に広い室内空間にびっくりしました。
記事は基本的には最低週2ぐらいの頻度であとはやる気とネタ切れしない限り更新をしています。過去記事に関しては、投稿日が古いものほど(2012年あたり)ちょっと内容が少なすぎるので暇をみて改修中なのですがなんせ記事数が現在600を越えてましてすぐには直せない状況です。間違いなどお気づきの点がありましたらコメントにてご指摘いただけると幸いです。もちろん雑談のような「この車懐かしい~」でも構いません。多くの人にブログを通して軽乗用車の魅力が伝わると嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いします。