タントはダイハツのトールワゴン型の軽自動車。本稿では初代(2003年11月~2007年11月)を扱う。
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初代 ダイハツ・タントとは?
2003年11月に登場したダイハツの初代タント。
それまでボンネット内にエンジンを持つ乗用モデルとしてはミラに変わって背の高いムーヴが売れ筋だったが、ムーブよりもさらに全高を上げ室内空間を徹底的に確保したのがタントだ。
軽自動車の規格で全幅と全長方向はすでに目一杯使ってしまっているので、残りの縦方向に拡大するという思い切った発想だった。
結果、全幅や全長はムーブと変わらないものの、高さが増えたことにより室内空間がとても広く感じられ、ムーブ以上の開放感を得ることに成功し街乗りをメインとする主婦層をターゲットに大ヒットとなった。
これはコンパクトカーやコンパクトセダンを凌ぐ広さで、感じ方によってはミニバンにも匹敵するかもしれない。
ボディは当時の最新鋭の衝突安全ボディのTAFを採用。超ハイテン材などの採用で強固なキャビンと軽量化を実現。これにより当時の国内および欧州衝突安全基準を余裕をもってクリア。
また、前面フルラップ55km/h、前面オフセット64km/h、側面55km/h、後面50km/hにおいても優れた安全性能を確保した。
安全装備としてはデュアルSRSエアバッグを運転席&助手席に標準装備。プリテンショナー&フォースリミッター(運転席可変)機構付フロント3点式ELRシートベルトも標準装備とした。さらにLグレードを除いてABSを標準装備とした。
エンジンは自然吸気のEF-VE型エンジンとターボエンジンのEF-DETの2種類を設定。トランスミッションは電子制御式4ATを採用することで低燃費と優れた加速性能を両立した(※Lグレードの4WDのみ3AT)。
インテリアではライトグレーとベージュのツートンインパネカラーやシンプルなデザインのインパネを採用。また、シートもこだわりソファー感覚で座り心地の良いシートを採用。
スピードメーターも大型のものをインパネセンターに配置するセンターメーターを採用。さらにインパネATシフトの採用でサイドウォークスルーを実現した。
また、肌に優しいアトガード加工を施したシートカバー、消臭機能を持つトリプルフレッシュ加工を施したカーペットマットなど快適な室内空間を提供する用品をオプション設定。快適さにもこだわっている。
初代・タントのグレード L、X、Xリミテッド、R、RS、VS、Xスマイルセレクション、Xハッピーセレクションの違いなど
初代タントのグレード展開はエントリー「L」、上級「X」、自然吸気エンジン・最上級「Xリミテッド」、ターボ搭載「R」、最上級ターボ仕様「RS」が設定されていた。
なお、モデル途中でタントカスタムが設定されため「R」は途中で廃止された。
このほか特別仕様車には「VS」、「Xスマイルセレクション」、「Xハッピーセレクション」などがある。
L
初代タントの廉価グレード。装備を簡略化し、価格を抑えたエントリーグレード。
エクステリアでは13インチスチールホイール+ホイールキャップ、手動式ドアミラー(カラード)などで簡素化。
インテリアでも照明付きバニティミラーが非装備で、エアコンもマニュアル式エアコン、オーディオも1DINタイプのAM/FM付きCDステレオとなる。
X
初代タントの上級グレード。Lグレードよりも少し装備が豪華になる。
Xグレードではエクステリアに14インチアルミホイールを標準装備。
インテリアでは照明付き助手席バニティミラーをオプション設定。
快適装備はフルオートエアコン、インテグレートオーディオに4スピーカー、電動格納式ミラーが標準装備となる。
安全装備は運転席&助手席エアバッグ、ABSが標準装備となる。
Xリミテッド
初代タントの最上級グレード。自然吸気エンジン仕様としては装備が最も豪華なグレード。
エクステリアではXグレードの14インチアルミホイール、電動格納式ドアミラーに加えて
- 大型エアロバンパー(フロント、リア)
- フォグランプ
- サイドストーンガード
- ルーフエンドスポイラー
を標準装備し、エアロパーツによるスポーティな外観となる。
R
初代タントのターボ搭載グレード。
Lグレードをベースにターボエンジンを搭載し、価格を抑えたターボグレード。
サイドストーンガードやルーフエンドスポイラーが付くが、前後エアロバンパーが非装備で、足元はホイールキャップ、マニュアル式エアコンを採用するなど装備が一部簡略化されていた。
タントカスタムが追加設定された2004年6月の一部改良で廃止。
RS
初代タントの最上級ターボグレード。
Xリミテッドをベースにターボエンジンを搭載したグレード。
エクステリアは
- 14インチアルミホイール
- 電動格納式ドアミラー
- 大型エアロバンパー(フロント、リア)
- フォグランプ
- サイドストーンガード
- ルーフエンドスポイラー
などを標準装備し、追加でRSのみ「フロントスタビライザー」が標準装備となる。
4ATのみ設定。
特別仕様車 Xスマイルセレクション
2004年6月設定の特別仕様車。
Xグレードをベースに
- スマイルセレクション専用シート表皮(ハニーイエロー・撥水加工)
- 専用カラーインパネ
- 専用カラードアアームレス
- 専用ステアリングホイール(メッキオーナメント付)
- 専用カラーヒーターコントロールダイヤルハンズフリーキーレス
&オートリトラクタブルドアミラーセット - エアクリーンフィルター
- バニティミラー付サンバイザー(運転席用)
を標準装備とし、快適装備を充実させた特別モデル。
特別仕様車 Xリミテッド スマイルセレクションⅡ
2005年1月設定の特別仕様車。上記「スマイルセレクション」のバージョンⅡで、Xリミテッドにも適用した特別モデル。
XリミテッドスマイルセレクションⅡでは「RS用の前後エアロバンパー(フォグランプ付き)」を特別装備とし、ほぼRSと同じ外観とした。
このほかスマイルセレクション仕様として
- ハンズフリーキーレス&オートリトラクタブルミラー
- スマイルセレクション専用シート表皮(ナッツベージュ・撥水加工)
- バニティミラー付きサンバイザー(運転席)
- エアクリーンフィルター
- 専用ステアリングホイール(メッキオーナメント付き)
- 専用カラードアームレスト
などを標準装備する。
特別仕様車 Xハッピーセレクション
2005年12月設定の特別仕様車。
Xグレードをベースに
- ハッピーセレクション専用シート表皮(ハッピーオレンジ・撥水加工)
- プラズマクラスター付オートエアコン
- クリーンエアフィルター
- 専用カラードアアームレスト
- 大型2眼センターメーター(タコメーター付)
- 新開発のキーフリーシステム(イモビライザー付)
などの快適な機能装備を採用した特別モデル。
特別仕様車 VS
2006年9月設定の特別仕様車。廉価グレードLをベースに魅力的な内外装を与えつつ、お買い得としたグレード。
VSではLグレードをベースにXやRSグレードのような上級装備が加わる。
- 大型エアロバンパー(フロント/リヤ)
- サイドストーンガード
- ルーフエンドスポイラー(ハイマウントLEDストップランプ付)
- マルチリフレクターハロゲンフォグランプ
- 電動格納式カラードドアミラー(ターンランプ付)
- メッキアウタードアハンドル
- キーフリーシステム(イモビライザー付)
- 大型2眼センターメーター(タコメーター付)
- 専用インストルメントパネル
- 専用ブラックシート(撥水加工)
- 専用ドアトリム
- メッキインナードアハンドル
- 撥水ドアガラス(フロント)
- ABS(EBD&ブレーキアシスト付)
- 14インチアルミホイール
エクステリア
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初代タントのフロントデザインは非常にオーソドックスで、冒険的なデザインもなく無難な感じ。ヘッドライトは楕円形の横長タイプで、万人向けしやすい形となっている。
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サイド。当時の軽乗用車としては最大となる2440mmのロングホイールベースに2000mmの室内長を確保。さらに全高は既存のムーヴよりも高い1725mm(室内高は1330mm)でパット見は軽ワンボックスのようなルーフになっている。
革新的な室内空間(特に室内長は1,800cc~2,000ccクラス4ドアセダンに匹敵)を実現したものの、出た当初は奇抜なスタイリングで賛否両論だったが、結果的には子持ちの主婦層に受け要られこのカテゴリーのスタンダードな形になった。
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足元はLグレードとRグレードではフルホイールキャップ。
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上級のXグレードでは14インチアルミホイールとなる。
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リア。コンビランプもフロントと同じく横長を意識したデザイン。リアガラスもかなり大きく、バックした時の見切りは意外といい。
エンジン・機能装備・安全装備など
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エンジンはEF型NAとターボの2種類を設定。
自然吸気エンジンは最高出力58ps(43kW)/7600rpm、最大トルクは6.5kg・m(64N・m)/4000rpm。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6400rpm、最大トルクは10.5kg・m(103N・m)/3200rpm。
トランスミッションは3ATと4ATとなる。尚、後にカスタムモデルのタント・カスタムが追加された。駆動方式はFFまたは4WDとなる。
車重と4AT(3AT)のためか加速が悪く燃費も良くない。現行の3代目タントやその一つ前の2代目後期タントでは燃費がかなり改善されているが、初代はまだ発展途上だったために燃費が悪い。
加速に関しては多くを求めらないのならNAでもいいと思うが出来ればターボモデルを選びたい。また、その全高からムーブよりも横風に弱く、橋の上や高速道路では注意が必要だ。
初代タントL350SとL360Sとの違い
初代タントのL350SとL360Sとの違いは駆動方式にある。L355Sは前輪駆動のFFモデル。
L360SはFFベースの4WDモデルとなる。ただし、L360Sは本格的な4WDとは異なりいわゆる生活四躯(スタンバイ4WD)と呼ばれるタイプ。FFをベースにビスカスカップリングで後輪を駆動させる。
ジムニーやパジェロミニなどの本格4WDでは2駆と4駆を任意に切り替えるパートタイム4WDが採用されるが、スタンバイ4WDは必要なときだけ自動的に4WDに切り替わるので、燃費性能やコスト面で有利なシステム。SUV以外の一般的な乗用車によく用いられる4WDシステムである。
このビスカスカップリングは消耗品で走行距離により寿命を迎える。よって過走行の4WDのタントカスタムを購入する際は特にカーブ等でビスカスカップリングから異音がしないかなど試乗して注意したほうがいい。
インテリア
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インパネ。初代からセンターメーターを採用。これはタントのアイデンティティーでもある。
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スピードメーター。ターボモデルに関してもタコ無しのシンプルなメーターとなる。なお、タントカスタムの追加以降はタコメーター付きがタントカスタムのみ設定された。
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フロントシートはベンチシートタイプ。
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リアシートは初代ながらにしてこの広さでスライド機構(260mmのロングスライド)付き。やはり最初の設計から広くとられていたのが伺える。
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リアシートは分割可倒式。
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リアシートを倒せば、全高と相まってかなりの荷物を積むことが出来る。
まとめ
初代のタントは革新的な室内空間とベーシックな顔つきが特徴の軽乗用車である。
デビュー当初は「なんだこの頭でっかちな軽自動車は?」といった感じだったが、それは大ヒットという結果で良い方向に期待を裏切られた。タントは一人で乗るよりも2人以上、特に子持ちのママ層に人気があり、チャイルドシートを取り付けてもその室内空間から後部座席の乗り降りが便利である。
特に2代目以降では助手席側がピラーレスのスライドドアになっており、そのキャラクター性を強めている。また室内空間の広さから荷物を沢山運んで移動する人や、車中泊という使い方にも向いている。昔ながらの軽ワゴン(ハイゼットやエブリイ)もあるが、見た目や新しさから言えばこの手のトールワゴン(ハイトワゴン)に軍配がある。
中古市場ではさすがに初代ともあってかなり安価に購入可能なモデルとなっている。スライドドアが付かない点や燃費、自動ブレーキなど不利な部分もあるが、外観があまり気にならず室内のとてつもなく広い足車としては十分なモデルといえよう。
なお、カスタムモデルのタントカスタムは初代と言えどシンプルかつ精悍さを持つデザインとなっているため、初代タントを検討している人はあわせて初代のタントカスタムも検討してみてほしい。比較的安価に購入できるモデルである。
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