バモスはホンダの1BOX型軽自動車である。本稿では平成になって復活した2代目のHM1/2型を扱う。本稿では2代目1999年6月~2007年1月までを前期型とし、これを扱う。
概要
1996年6月登場のホンダ・バモス。それまでのストリートの後継として、360CC時代に存在したかつての懐かしい名前を復活させた。
バモスは軽バンのアクティバンと同時デビューで、それまで存在したストリートの後継モデルとして登場。
バモスでは5ナンバー乗用モデルとしてアクティバンと共有する部分もありながら、リアまわりは専用設計とし、全高の低いロールーフ仕様としている。
そしてバモス最大の特徴はエンジンを後方に配置し、後輪を駆動するミッドシップレイアウト(MR)方式を採用する点。
これにロングホイールベースを組み合わせ底床かつフルフラットなフロアをフロント、リア、ラゲッジスペースに確保。快適な室内空間とした。
画像参照元:ガリバーアウトレット
当時のライバル他社(※スバル・サンバーを除く)が運転席の下にエンジンを配置したキャブオーバーに対し、バモスは後方配置により優れた重量配分と低床フロアを実現。
乗り心地や静粛性、ラゲッジスペースの使い勝手などが優れていた。
エクステリアはバモス専用のグリルで乗用車らしいスタイリッシュな顔つきと、サイドスカート、アルミホイール(またはホイールキャップ)、専用テールランプで4ナンバーの軽バン(アクティバン)とは差別化。
インテリアでもバモス専用内装と6:4分割可倒式リアシート(※ポップアップ機構付き)の採用で居住性とラゲッジスペースの使い勝手を両立。
エンジンは「ハイパー12バルブ PGM-FI エンジン」を搭載。最高出力:46PS/5,500rpm (ネット値)、 最大トルク:6.0kgm/5,000rpm (ネット値)を発生。4WD車には自動で切り替わるリアルタイム4WDを採用。
安全装備はSRSエアバッグにEBD付きABSをオプション設定。
快適装備にはエアコン、電動パワステ、間欠&ミスト機構付フロントワイパー、リアワイパー、パワードアロック(※キーレスはグレード別に装備)、フロントパワーウィンドウ、プライバシーガラス、4WDにはリアヒーターを標準装備する。
2代目バモス 前期と中期型の違い
2代目バモスの前期と中期の違いはフロントグリル&バンパーとインパネデザインが異なる。
前期のフロントは大きな開口部のグリルにボディ同色のバンパー。
中期型のデザインはグリル開口部を小さくし、上下2段に分けた立体構造とグリルもブラックパネルを組合せ開口部を拡大。よりスタイリッシュなデザインとしている。
また、テールランプも前期はウィンカーがオレンジ色に対し、中期ではオレンジ部分がクリアー化される。
内装ではインパネが前期は1DINのみのタイプ。中期では2DINが使えるようエアコン吹き出し口が上部に移動。インパネアンダートレイも追加され使い勝手が良くなる。
2代目前期バモス グレードのMタイプ、Lタイプ、ターボ、Mターボ、Lターボ、スペシャルの、デラックスの違い
Mタイプ
バモスのエントリーグレード。ボディ同色グリルに樹脂タイプ(非塗装)のドアミラー、ホイールキャップ(※4WDのAT車のみアルミホイール)で見た目が簡素。
快適装備もキーレスエントリーとハーフシェイド・フロントウインドウが非装備。AM/FMラジオ+フロント2ツイーター&2スピーカーはホンダナビゲーションシステムとセットがオプション設定となるなど、簡略化される。
これ以外は上述の電動パワステやUVカットガラス、プライバシーガラス、リアワイパー、SRSエアバッグ、フロント3点式ロードリミッター付プリテンショナーELRシートベルト、リア3点式ELR/ALR(チャイルドシート固定機構)シートベルト、2眼式スピードメーターが標準装備となる。
Lタイプ
バモスの上級グレード。ボディ同色ドアミラー、メッキフロントグリルや木目調センターパネル、アルミホイール、エキパイフィニッシャーなどスタイリッシュな外観と豪華な装備が特徴。
快適装備はLタイプと比較してキーレスエントリーや、AM/FMラジオ+フロント2ツイーター&2スピーカーが標準装備(ナビゲーションシステムはオプション設定)。
ターボ
2000年2月に追加設定されたバモスの上級ターボ仕様。Lグレードをベースにターボエンジンを搭載し、走行性能を高めたグレード。
ターボグレードではLグレードに追加でハーフシェイド・フロントウインドウ、カーボン調センターパネル(※木目調パネルと置換)、大径エキゾーストパイプ、メッキエンブレム、ターボ専用アルミホイールを標準装備し、よりスタイリッシュな外観となる。
また、内装もターボグレードではブラックインテリアを採用し、質感も高い。
2001年9月マイナーチェンジではEBD付きABSが標準装備化。これと同時にインテリアカラーがグレーに変更され、オプションの「Sパッケージ」選択時のみブラックインテリアとなる。
Mターボ
2005年12月マイナーチェンジ時に新設定となった廉価版ターボグレード。
MグレードをベースにLターボと比較してオーディオレス、樹脂タイプミラー、インテリアのメッキ加飾レス、ホイールキャップ仕様などとすることで価格が安くなっていた。
Lターボ
2005年12月マイナーチェンジ時に新設定となった上級ターボグレード。
特別仕様車 デラックス
2000年10月設定の特別仕様車。LグレードをベースにAM/FMチューナー付CDプレーヤー、専用インテリア、ハーフシェイド・フロントウインドウなどを標準装備し、快適性を高めた特別仕様車。
特別仕様車 スペシャルA
2002年12月設定のお買い得な特別仕様車。
スペシャルAはMグレードをベースにAM/FMチューナー付CDプレーヤー+フロント2ツイーター&2スピーカー、電波式キーレスエントリーシステム、メッキフロントグリル・テールゲートハンドルケースを採用。
ボディカラーは専用色の「クリオネシルバー・メタリック」を含めた全9色。
バモスとアクティバンとの違い
バモスとアクティバンとの違いは大きくは5ナンバーか4ナンバー(軽バン)かの違い。細かくはフロントグリルが専用品。標準ルーフまたはハイルーフ、内外装などが異なる。
バモスでは専用グリルが付くが、アクティバンでは軽バンらしいシンプルなグリルで簡素化される。
全高もバモスが標準ルーフ、アクティバンはハイルーフなため異なり、ラゲッジスペースの室内高さもアクティバンの方がより高く荷物を沢山載せられる。
リアはバモスがテールランプをリアゲート左右上部に配置するのに対し、アクティバンはテールランプ下部にくる。開口部もアクティバンの方が大きく荷物が出し入れしやすい。
インテリアもバモスとアクティバンとでは異なり、シート表皮やインパネ加飾などバモスの方が若干上質なインテリアとなる。
リアシートはバモスが左右分割式シートに対し、アクティバンは左右一体可倒式の軽バンシートを採用。ラゲッジスペースもリアシートを倒さない状態ではアクティバンの方が広く設計されている。
なお、バモスにはターボ仕様の設定があるがアクティバンには非設定で、自然吸気エンジンのみとなる。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。同年代のステップワゴンのような顔つきで、いうなれば「ミニステップワゴン」という雰囲気。オーソドックスではあるが、可愛い感じもあり愛着の持てる絶妙なデザインだ。上級のLグレードではメッキグリルを標準装備する。
2001年9月マイナーチェンジ(中期型)ではメッキグリルとバンパーのデザインを変更。メッキ加飾部分を上部だけにし、下部には仕切りを追加した立体造形としたことでよりスタイリッシュな顔つきに。
2005年12月マイナーチェンジ以降は全グレードにこのメッキグリルが標準装備となった。
サイドから。バモスはロールーフ仕様のため全高が低め。両側はスライドドアを標準装備し、全グレードにスモークガラスが付く。
足元は12インチアルミホイールでタイヤサイズは145R12-8PR。Mグレードではホイールキャップとなる。
リア。高い位置に設置されたテールランプは、後続へのアピール効果が高い。またバンパーが事故った際にも交換費用が安いメリットがある。逆に開口部はバンパー内蔵タイプよりも狭いため貨物(軽)バンではほとんど採用されなくなった。
前期型のコンビランプはレンズカットタイプで古臭いが後期型ではクリスタルに変更された。ポン付けで後期テールへ交換も可能なので気になる人はヤフオクあたりで探すと良い。あるいは社外品も出ているのでカスタムが楽しめる。
エンジン・機能装備・自動ブレーキなど
エンジンはE07Z型直列3気筒SOHC12バルブ自然吸気エンジンとターボ仕様の2種類。
自然吸気エンジンの最高出力は46ps(34kW)/5500rpm、最大トルクは6.0kg・m(59N・m)/5000rpm。
自然吸気エンジンでも4WDの4AT仕様のみ若干出力やトルクが異なり、最高出力は52ps(38kW)/7000rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.5kg・m(93N・m)/3700rpm。
トランスミッションは2WDモデルが5MTと3AT、4WDモデルが5MTと4ATとなる。駆動方式はMRまたは4WD。EBD付きABSはデビュー当初全グレードでオプション設定だったが、2001年9月マイナーチェンジでターボグレードに標準装備化された。
トランスミッションは3AT、4AT、5MTのいずれか(ターボとの組み合わせは4ATのみ)、駆動方式はMRまたは4WD(ビスカスカップリング式)となる。
ダイハツやスズキではエンジンを運転席の下あたりに配置しているがホンダのバモスではリアタイヤのすぐ手前に配置し、重量バランスを考慮した構造になっている。
安全装備として運転席&助手席エアバッグを全グレードに標準装備。EBD付きABSはターボ仕様で標準装備。LグレードとMグレードでオプション設定。後継のGグレードでは2015年3月一部改良でEBD付きABSが標準装備となった。
バモスの持病 不具合や故障しやすい箇所など
バモスは姉妹モデルのバモスホビオ、軽バンのアクティバンと同じくエンジンを車体中央部に横向き状態で設置されいている(※4WDの4ATを除く)。
通常は地面に垂直に設置するのが一般常識だが、床下配置でかつ底床フロアを実現するためエンジンの全高が高くなる垂直置きではなく、横向きで設置したものと思われる。
このためガスケットが地面に対して真横を向いているのだが、これがエンジンのオーバーヒートを招きやすくなっている。
理由はオイル管理が不十分だったり、構造的に熱がこもりやすかったり、高負荷運転(高回転多用)が多いなどが考えられる。
オーバーヒートだけで終われば良いのだが、高い確率でヘッドガスケット抜けを起こし、冷却水の水漏れの発生を招いてしまう。E07Z型エンジンを搭載するバモスホビオはこれが持病と呼ばれ、この状態では修理必須で注意が必要だ。
バモスは床下にエンジンを横置きする関係で整備性が悪く、工賃が高くなる傾向にある(10万後半~20万円程度)。その発生走行距離は10万キロ前後が多いため、特に過走行車を買う場合は「交換済み」かなど充分注意されたい。
バモスHM1型とHM2型との違い
バモスHM1とHM2型の違いは駆動方式。
HM1型はバモスの2WD(MR)モデル。HM2型はHM1型ベースの4WD仕様車。
4WDには「リアルタイム4WD」というビスカスカップリングを用いたオンデマンド式が採用されている(※この時代のエブリィやハイゼットカーゴは切替式のパートタイム式4WDだったが、ホンダはフルタイム4WDを採用)。普段は2駆のMRで走行し、前輪が滑ると自動的に4WDに切り替わるシステム。
他社のパートタイム4WDのように自分で切り替える必要がなく、タイトコーナブレーキング現象も起きづらいため非常に扱いやすい。
インパネ(内装)
インパネ。バモスのLグレードではセンターパネルウッド調パネルを採用。Mグレードはシルバー塗装。ターボではカーボン調パネルとなる。
2001年9月のマイナーチェンジ(中期)ではインパネデザインを小変更。センターのエアコン吹き出し口を上部に移動し、2DINオーディを使えるようにした。またセンターガーニッシュも横長タイプとなった。
この時にカーボン調パネルが廃止され、木目調(L/Lターボ)かシャンパンシルバー(M/Mターボ)となった。エアコンは全グレードでマニュアル式エアコンを標準装備。
前期のスピードメーター。タコメーター付きの2眼式。
ターボモデルでは文字盤がオレンジ色で右側に「TURBO」文字入りのスポーティな雰囲気となる。
フロントシートはセパレートタイプ。デビュー当初はMとLグレードがグレー色。ターボのみブラック表皮だったが、2001年9月マイナーチェンジ以降は全グレードでグレーに統一。「Sパッケージ」選択時のみブラックシート表皮となった。
リアシート。左右分割式を採用。リアガラスはパワーウィンドウでなく手動式。
ラゲッジルーム。
リアシートシートは2段階で倒せて、奥まで倒し込むとフルフラットになる。
リアシートを倒した状態。
2代目前期・バモスのまとめ
ホンダのバモスはステップワゴンのような外観に軽ワンボックス唯一のMR方式レイアウトを採用するユニークなモデルである。
タント、パレット(スペーシア)、N-BOXの登場により、5ナンバーの軽1BOXという車自体選択する人が少なくなっていると思うが、昔ながらの箱タイプは古いモデルながらラゲッジスペースがかなり広く、車中泊やトランスポーター的利用など利便性はかなり高い。
ただし設計年数が古く車重も重たいため特にATモデル燃費は悪い。3ATであれば高速道路での巡航もかなり煩いのでガソリン代を節約するなら自動ブレーキも備わった最新モデルの方が優位性が高い。
その一方で中古市場ではこの前期型は年式経過もあることから個体によっては安価な値段のモノもある。タマ数も豊富にあり、見つけやすい。持病には要注意だが、手頃なモデルとしてバモスの前期をチョイスしていみるのも悪く無い。
なお、バモス登場から数年後にはハイルーフ仕様の「バモスホビオ」が追加された。こちらは4ナンバーアクティバンベースの乗用モデルで、より多くの荷物を積んだり使い勝手が良くなっている。荷物メインの場合は同じく手頃なバモスホビオもオススメだ。
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